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Entry 2021/06/20
Update

【未体験ゾーンの映画たち2021おすすめベスト10】Wiki情報より詳細な考察ランキング発表。全41本を全て見たシネマダイバー《増田健セレクション》

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第42回【最終回】

さまざまな理由から日本公開が見送られていた映画を紹介する、毎年恒例の劇場発信型映画祭”未体験ゾーンの映画たち”。今回10回目となる「未体験ゾーンの映画たち 2021」の全41本の上映作品を鑑賞し、解説を加えて紹介させて頂きました。

コロナ禍に翻弄された「未体験ゾーンの映画たち 2021」。営業時間短縮の動きから上映時間が変更、上映予定の1本『TUBE チューブ 死の脱出』(2020)は感染症拡の影響で本国フランスで公開が延期、そのあおりを受け上映中止となるなど様々な影響がありました。

ちなみに『TUBE チューブ~』、フランスでは2021年5月26日にようやく公開されました。日本での動きにもご注目下さい。

全作品を見届けた私が、独断と偏見で選ぶベスト10を発表します。今年はどの作品も深掘りすると興味深い個性派ぞろい。完成度の高い作品、製作した国の社会問題に踏み込んだ作品、中々お目にかかれない珍品…。

順位に関わらず、コラムを参考に興味をそそられる作品を選んで頂ければ幸いです。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

『未体験ゾーンの映画たち 2021』より、第10位から第6位まで紹介

第10位『セブンソード 修羅王の覚醒』


(C)2019 All Rights Reserved By Tencent Penguin Pictures.

【日本公開】
2021年(中国映画)

【原題】
七剣下天山之修羅眼 / The Seven Swords

【監督】
フランシス・ナム

【キャスト】
チャン・チゥオ・ウェン、チェン・ジエ、アンヅゥイー、チァン・ハオ

【作品概要】
17世紀の中国を舞台に、7本の聖剣を巡り争う正義の剣士と巨大な悪との争いを、壮大なスケールで描くファンタジー・アクション映画。

監督は香港で監督・プロデューサーとして活躍するフランシス・ナム。本作に続き続編『七剣下天山之封神骨』(2019)、『七剣下天山之七情花』(2020)を手掛けています。

主演は『封神英雄』(2015~)などドラマで活躍するチャン・チゥオ・ウェン。その他華流ドラマで人気を獲得した俳優たちが出演した作品です。

2019年3月オンライン映画として公開されると中国で4500万回以上の視聴を記録、大きな話題を呼んだ作品です。

【鑑賞おすすめポイント】
情報量が多すぎる怒涛の展開に圧倒されますが、原作は梁羽生が1956年に発表した、歴史上の人物や事件を交えて創作した武侠小説「七剣下天山」。過去に中国・香港で何度も映画化された作品です。

様々な登場人物が絡む、愛憎渦巻く大河ロマンの剣劇物語をファンタジー化した作品。その一部とはいえ90分に詰め込んだ映画ですから、濃厚過ぎる内容にもなるわと覚悟して下さい。

中国の武侠小説は日本の小説・漫画、そして「友情・努力・勝利」でお馴染み少年ジャンプの作品に大きな影響を与えています。その原点を味わうためにもご覧になってはいかがでしょうか?

第9位『ファブリック』


(C)ROOK FILMS FABRIC LTD, THE BRITISH FILM INSTITUTE and BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2018

【日本公開】
2021年(イギリス映画)

【原題】
In Fabric

【監督・脚本】
ピーター・ストリックランド

【キャスト】
マリアンヌ・ジャン=バプティスト、シセ・バベット・クヌッセン、ジュリアン・バラット、グウェンドリン・クリスティー、ヘイリー・スクワイアーズ、ファトゥマ・モハメド、レオ・ビル、リチャード・ブレマー

【作品概要】
格式ある百貨店で購入したドレスが、人々に不条理と死をもたらす…。時に観客を放置して疾走する、悪夢のような映像世界の中毒性が高いホラー(?)映画。

監督は『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』(2012)、そして『The Duke of Burgundy』(2014)と、個性的な映画で知られるピーター・ストリックランド。

出演はドラマ『FBI失踪者を追え!』(2002~)のレギュラー出演者として有名なマリアンヌ・ジャン=バプティストに、『インフェルノ』(2016)や『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019)のシセ・バベット・クヌッセン。

またグウェンドリン・クリスティーは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)、『~最後のジェダイ』(2017)のキャプテン・ファズマ役、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011~)の女戦士ブライエニー役で有名です。

『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』と『The Duke of Burgundy』にも出演しているファトゥマ・モハメドが、今回も強烈な印象を残す役で登場します。

【鑑賞おすすめポイント】
一応ホラー映画、と呼んで良いのでしょうか?アレハンドロ・ホドロフスキーやデイヴィッド・リンチの映画が好きな方に お薦めです。この2人の名を聞いて「あぁ…そうですか…」と思った方、そんな作品ですから覚悟して下さい。

ストーリーを無視した悪夢のようなイメージを積み重ねた衝撃作。本作に「消費文明への皮肉」のメッセージを受けとる意見も多いですが、監督ご本人は自分の身近なあるあるネタや、秘めたるストレスや欲望を映像化したと語っています。

難しく考えず、不条理ショートコントを積み重ねた作品と見るのが正解かもしれません。たまには訳の分からない映画を見たい、鑑賞後「…はぁ!?」と言いいたくなる映画が好き、そんな奇特な方にお薦めの作品です。

第8位『ダーリン』


(C)2018 BY LITTLE BITER LLC. ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Darlin’

【監督・脚本・原作】
ポリアンナ・マッキントッシュ

【製作総指揮・原作】
ジャック・ケッチャム

【キャスト】
ローリン・キャニー、ポリアンナ・マッキントッシュ、ノラ=ジェーン・ヌーン、ブライアン・バット、クーパー・アンドリュース、ペイトン・ウィッチ、ジョン・マコーネル

【作品概要】
突如病院に現れた口のきけない野生児のような少女。彼女の存在が人間社会の良識の裏側にある闇を露わにします、衝撃的題材を取り扱ったショッキング・スリラー映画。

ジャック・ケッチャムの原作を、「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品『デス・ノート』のポリアンナ・マッキントッシュが監督。彼女は前2作の映画『襲撃者の夜』(2009)と『ザ・ウーマン』(2011)そして本作にも出演しており、彼女のライフワークである作品です。

主人公を演じたのは『おやすみなさいを言いたくて』(2013)のローリン・キャニー。彼女に接する修道女を演じるのは洞窟ホラー映画『ディセント』(2005)のノラ=ジェーン・ヌーン。ゾンビドラマ『ウォーキング・デッド』(2010~)に第7シーズンから出演のクーパー・アンドリュース、ドラマ『マッドメン』(2007~)のブライアン・バットが出演の作品です。

【鑑賞おすすめポイント】
過激な描写で物議を呼んだホラー・バイオレンス小説家ジャック・ケッチャムが、1991年に発表した「襲撃者の夜」。これが映画化された後に、『ザ・ウーマン』と本作の2本の続編が生まれその世界を広げました。

悪趣味暴力描写で批判されたジャック・ケッチャムは、一方でその題材を通じて人間の本質を描く作家でした。そして先達・後進の人々と良好な関係を結べる人物で、彼の人柄は作品と共に多くの人を魅了しました。

その1人ポリアンナ・マッキントッシュが、ジャック・ケッチャムの世界の集大成と呼べる本作を誕生させます。えっ、想像していたものとは別の意味で深刻な、著名な宗教の価値観に喧嘩を売る内容だ?それが作り手たちの狙いですから、覚悟してご覧下さい。

第7位『スカイシャーク』

(C)2020 Fusebox Films GmbH

【日本公開】
2021年(ドイツ映画)

【原題】
Sky Sharks

【監督・脚本・製作】
マーク・フェーセ

【キャスト】
トーマス・モリス、バルバラ・ネデルヤコーヴァ、エヴァ・ハーバーマン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、トニー・トッド、リン・ローリー、ロバート・ラサード、亜紗美、光武蔵人

【作品概要】
ナチスのゾンビ兵士に操られた空飛ぶジェットサメ兵器が、旅客機そして世界各国の主要都市を襲撃!という悪ノリSFホラーコメディ映画です。奇抜な設定ですが豪華ゲスト出演陣に、残酷特殊効果のスーパーバイザーはトム・サヴィーニ。

音楽で活躍しドキュメンタリー映画を製作、『Sex, Dogz and Rock n Roll』(2011)の監督であるマーク・フェーセが、どうやって本作にこれだけの人々を集めたのか、じっくり問い詰めたいものです。

【鑑賞おすすめポイント】
「未体験ゾーンの映画たち 2021」の『ゾンビ津波』(2019)など、映画ファンをワクワクさせるタイトルのホラー映画が多数あります。その期待が裏切られる経験は、B級映画ファンなら必ずあるでしょう。本作も爆笑悪趣味映画だ!と期待値が高かった人ほど、ガッカリしたかもしれません。

この映画はB級映画の常連俳優のみならず、何で?という映画人も多数、なぜか日本からも参戦、ドイツの人気ポルノ女優に有名ヌードモデルも出演しています。ナチにゾンビにサメに兵器、残虐シーンにエロやカッコいいアクション…監督が自分の趣味を全てブチ込んだ潔い作品です。

自分の興味に忠実な映画を、様々な批判や商売上の制約も覚悟の上で作った、実にロックでパワフルな作品こそ『スカイシャーク』。あなたと波長が合う部分があればその部分をシャウトして楽しむべき、パンクな映画としてお楽しみ下さい。

第6位『スプートニク』


(C)Vodorod Pictures LLC, (C)Art Pictures Studio LLC, (C)Hype Film LLC, (C)NMG Studio LLC, 2020

【日本公開】
2021年(ロシア映画)

【原題】
Спутник / Sputnik

【監督】
エゴール・アブラメンコ

【出演】
オクサナ・アキンシナ、フョードル・ボンダルチュク、ピョートル・フョードロフ、アントン・ワシーリエフ

【作品概要】
地球への帰還中に事故を起こした宇宙船の生存者は、軍事施設に監禁されます。彼の体内には何かが潜んでいました…。旧ソ連の宇宙開発を舞台にした本格的SFスリラー映画。

監督はこれが初長編映画のエゴール・アブラメンコ。彼の短編映画『Пассажир(Passazhir)』(2017)をより発展させた作品が本作になります。

主演は『ヴァーサス』(2016)のオクサナ・アキンシナ。『ワールドエンド』(2020)のピョートル・フョードロフ、『アトラクション 制圧』(2017)シリーズの監督フョードル・ボンダルチュク、『ストリート・レーサー』 (2008)のアントン・ワシーリエフらが共演した作品です。

【鑑賞おすすめポイント】
舞台は1983年、崩壊に近づきつつあるソビエト連邦で、秘密のベールに包まれた宇宙開発を舞台に描かれた本格的SFホラーです。どこかで聞いたことのある設定?ご指摘ごもっともですが、それだけに終わらぬ作品です。

当時を再現する数々のアイテムがレトロ趣味を刺激し、80年代ソ連映画を思わせる暗い画面と合わり、当時の暗い時代の雰囲気を見事に再現。この全編に漂う冷たいムードこそ、本作の魅力でしょう。

鬱になる映画、胸糞映画と言われるバットエンドは嫌だが、暗く重い雰囲気の映画が好み、旧ソ連にはそんな映画があったなぁ…なんて思える方なら必見。またソ連という社会主義国家を知らない方には、新鮮な体験になること間違いない映画です。

第5位『フロッグ』


(C)2019 ISY Holdings LLC
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
I See You

【監督】
アダム・ランドール

【脚本】
デヴォン・グレイ

【出演】
ヘレン・ハント、ジョン・テニー、ジュダ・ルイス、オーウェン・ティーグ、リーベ・バラール

【作品概要】
田舎街で発生した少年誘拐事件。街には過去にも同様の事件が起きていました。そして捜査を担当する刑事の自宅で、何が起きます…。この後展開する事態が観客を驚かせたサスペンス・ミステリー映画。

監督は『iBOY』(2017)、『ザ・トランスポーター ロンドン・ミッション』(2016)のアダム・ランドール。

俳優としてドラマ『デクスター 警察官は殺人鬼』(2006~)で主人公の少年時代を演じ、『この世に私の居場所なんてない』(2017)に出演のデヴォン・グレイ。脚本家としても注目を集める彼の、初の映画化脚本作品が本作です。

出演はアカデミー主演女優賞で『ナイト・ウォッチャー』(2020)のヘレン・ハントに、ドラマ『クローザー』(2005~)のレギュラー出演者ジョン・テニー。

ベテラン2人と『サマー・オブ・84』(2018)のジュダ・ルイス、ドラマ『BLOODLINE ブラッドライン』(2015~)のオーウェン・ティーグ、ドラマ『スニーキー・ピート』(2015~)のリーベ・バラールの、若手3人が共演した作品です。

【鑑賞おすすめポイント】
仕掛けのある映画が大好きな、デヴォン・グレイが書いた仕掛けのある脚本を映画化したミステリーです。仕掛けと謎解きの過程を楽しむパズル映画、それが『フロッグ』です。

描かれる犯罪の設定が強引で説得力に欠ける?謎解きのために用意された強引なトリック?その通りですが「名探偵コナン」や「金田一少年の事件簿」も、そんな事件ばかり登場するからそれでイイんです。

視点が変わると見えるものが変わる、この設定が心地良い物語で、それを見事に映画化した監督の手腕はお見事。ミステリー映画ファンなら大いに楽しめるでしょう。

第4位『BLISS ブリス』


(C)2019 Dragged Into Sunlight LLC

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Bliss

【監督・脚本・製作】
ジョー・ベゴス

【出演】
ドーラ・マディソン、トゥルー・コリンズ、リース・ウェイクフィールド、ジェレミー・ガードナー、グラハム・スキッパー

【作品概要】
スランプに追い詰められ、インスピレーションを得ようとドラッグを使用した女流画家。彼女が体験する狂気と暴力に満ちた世界を描く、感覚を徹底的に刺激するバイオレンス・ホラー映画。

『人間まがい』(2013)や『マインズ・アイ』(2015)、そして『VETERAN ヴェテラン』(2019)のジョー・ベゴス監督の作品です。

主演は『VETERAN ヴェテラン』や『イグジスツ 遭遇』(2014)のドーラ・マディソン。また『スウィング・オブ・ザ・デッド』(2012)の監督・脚本・主演を務め『マインズ・アイ』に出演したジェレミー・ガードナー、ベコス監督の全作品に出演している盟友グラハム・スキッパーが共演しています。

【鑑賞おすすめポイント】
本作と「未体験ゾーンの映画たち 2021」上映作品『ホワッツ・イン・ザ・シェッド』(2019)には共通点があります。それは共に、実は「〇〇鬼」映画であること。

しかし両映画とも「〇〇鬼」が主題ではなく、それが周囲の人間に与える影響を描いた作品です。『BLISS ブリス』は低予算映画ながら16㎜フィルムで撮影、様々なアーティスティックな表現とジョー・ベゴス監督お得意のバイオレンス描写が刺激的です。

ちなみに本作に出演し、製作でもあるベゴス監督の盟友グラハム・スキッパーは、あの伝説のホラー映画『ZOMBIO死霊のしたたり』(1985)の、2011年に上演されたミュージカル版(!)に出演した人物です。

『BLISS ブリス』には、このミュージカル版「死霊のしたたり」に出演した俳優陣が数多く出演、ちょっとした同窓会的環境で製作されました。グラハム・スキッパーの応援もあって完成した、インディーズホラー映画としてご記憶下さい。

第3位『サタニックパニック』


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Satanic Panic

【監督】
チェルシー・スターダスト

【出演】
レベッカ・ローミン、ヘイリー・グリフィス、ジェリー・オコンネル、ルビー・モディーン、ジョーダン・ラッド、アーデン・マーリン、ウィットニー・ムーア

【作品概要】
ピザの配達先が悪魔崇拝者の集会!処女との理由で命を狙われるハメになった娘が繰り広げる、血みどろのドタバタ騒動を描いたホラーコメディ映画。

監督はホラー映画女子として育ち、『パラノーマル・アクティビティ』(2007)製作のジェイソン・ブラムの製作会社、ブラムハウスで長らくアシスタントを務めたチェルシー・スターダスト。

主演のヘイリー・グリフィスを、『X-メン』(2000)のミスティーク役で有名なレベッカ・ローミン、『スタンド・バイ・ミー』(1986)出演のベテラン、ジェリー・オコンネルが支えます。

『マッドTV!』(1995~)で活躍したコメディエンヌ、アーデン・マーリンに『ハッピー・デス・デイ』(2017)のルビー・モディーンらが共演しています。

【鑑賞おすすめポイント】
世界中で格差が拡大し様々な社会問題を引き起こす現代社会。逃れられない現実なら笑い飛ばすしかない!というノリで作られたコメディ映画。社会を皮肉る小ネタの数々に笑わせてもらいました。

一方で熱心なホラー映画ファンであるスターダスト監督、様々な過去作へのオマージュも忘れていません。過激な残酷シーンとブラックな描写の連打で見せる、『スカイシャーク』のような悪趣味悪ノリ系ホラーと、一味違うユーモアが感じられます。

女流監督・女性出演陣が活躍する本作、過激なエロ描写も男性目線の描写とは異なるテイストがあり、なるほどと思わされました。女性たちによるシニカルな「ガーリートーク・ホラー」、そこに彼女たちの本音(と虚栄)を見い出すと深い内容です。それ以上に、単純明快に愉快な良作です!

第2位『アーカイヴ』


(C)Archive Films Limited 2020

【日本公開】
2021年(イギリス映画)

【原題】
Archive

【監督・脚本・美術】
ギャビン・ロザリー

【キャスト】
テオ・ジェームズ、ステイシー・マーティン、ローナ・ミトラ、トビー・ジョーンズ

【作品概要】
事故で妻を亡くしたロボット工学者は、隔絶された日本の山奥でアンドロイドの開発に従事します。彼の目的は妻を蘇らせることでした。お馴染みの設定を斬新な切り口と、スタイリッシュな美術で描いたSFミステリー映画。

ダンカン・ジョーンズ監督の『月に囚われた男』(2009)で、美術を担当したギャビン・ロザリー。数々のビデオゲームにも美術スタッフとして関わった、彼の初長編映画監督作です。

主演の孤独だが謎多い男を、『ダイバージェント』(2014)シリーズや『バグダッド・スキャンダル』(2018)のテオ・ジェームズが演じました。

共演は『ニンフォマニアック Vol.1/2』(2014)や『アマンダと僕』(2018)のステイシー・マーティン、『ドゥームズデイ』(2009)や『スカイライン 逆襲』(2020)のローナ・ミトラ。『ミスト』(2008)に「キャプテン・アメリカ」シリーズ、『裏切りのサーカス』(2011)の個性派俳優、トビー・ジョーンズが共演しています。

【鑑賞おすすめポイント】
愛する人を亡くした男が、彼女を復活させようとアンドロイドを作ります。しかしAIを搭載しバージョンアップしながら作られたアンドロイドにも、様々な感情が芽生えていた…。本作に登場する物言わぬ、また表情に乏しいアンドロイドの姿は胸に刺さるでしょう。

「機械人形」は言葉が少ないほど雄弁で、表情はより豊かである。この言葉に納得できるSFファンなら必見。子供の頃見たSF小説の表紙絵に魅せられて、美術の世界に進んだギャビン・ロザリー監督の趣味が全編に生かされた佳作です。

そしてAI・ロボットものとは、また別の仕掛けが本作に潜んでいます。この設定なら。誰も見たことのない雄大な風景を持つ山梨県(ロケ地・ハンガリー)が登場しても納得!…しました。美術はスタイリッシュ、物語はセンチメンタル。そんなSF映画としてお楽しみ下さい。

第1位『シンクロニック』


(C)2019 RED FLOWER FILM, LLC. All RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Synchronic

【監督】
アーロン・ムーアヘッド、ジャスティン・ベンソン

【キャスト】
アンソニー・マッキー、ジェイミー・ドーナン、ケイティ・アセルトン、アリー・ヨアニデス、ラミズ・モンセフ

【作品概要】
謎のドラックはタイムトラベルの入り口だった。ニューオリンズを舞台に斬新な設定で描くSFスリラー映画。

『モンスター 変身する美女』(2014)、『アルカディア』(2017)とユニークなSF作品を放つ、アーロン・ムーアヘッド&ジャスティン・ベンソン監督コンビの最新作です。

主演は「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズでお馴染みのアンソニー・マッキー。その友人役を「フィフティ・シェイズ~」シリーズのジェイミー・ドーナンが演じます。

『処刑島 みな殺しの女たち』(2012)の監督・主演のケイティ・アセルトン、TVドラマ『バッドランド 最強の戦士』(2015~)のアリー・ヨアニデスが共演した作品です。

【鑑賞おすすめポイント】
タイムトラベルを扱った映画は数あれど、こんな方法もあったか!という斬新なアイデアを、説得力ある表現で見せる本作。描写にはよく考えると、無理があるような気もしますが、大切なのはこのタイムトラベルが描く物語。

バラ色のタイムトラベルを描いた映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)ですが、そんなに都合良く話は進むでしょうか?そもそも主人公が黒人なら、洒落にならない目に遭うのでは…その発想からニューオリンズを舞台に、アンソニー・マッキー主演で作られた作品です。

こうして誕生した物語を、登場人物の絆を軸に詩的なセンチメンタルを交え描いた映画です。SF作家レイ・ブラットベリの小説や、藤子・F・不二雄が提唱したSF…サイエンスフィクションではなく「すこし、ふしぎ」を略したSF、日常の中に非日常的が忍び込むお話が好きな人にはたまらないでしょう。

「トワイライト・ゾーン」(1959~)や「世にも奇妙な物語」(1990~)のような、SF・ホラーアンソロジーのドラマ、小説、漫画が好きな方は絶対見るべき作品。自己犠牲の物語の中に蔓延するドラッグ、人種問題の歴史といったテーマが潜む、良心的な映画です。

マーベルドラマ『ファルコン&ウィンターソルジャー』(2021~)で重い責任を引き受けた男、アンソニー・マッキーに相応しい佳作としてもお楽しみ下さい。

まとめ

シネマダイバーの増田健がセレクトした、【未体験ゾーンの映画たち 2021】ベスト10はいかがでしたか。

今回チョイスした10本、振り返ると少々難ありでも、見逃すには惜しい尖った魅力を持つ作品に高い評価を与えた感があります。作品の完成度、泣ける映画やエモい作品、たくさん人が死ぬ映画を歓迎するなど、別の基準で評価すればランキングは変わります。

また今回『世界残酷物語』(1962)、『続・世界残酷物語』(1963)、『さらばアフリカ』(1965)の、グァルティエロ・ヤコペッティの”モンド映画”3作が上映されました。

従来型メディア、ソーシャルメディアのあり方が問われている現在、”モンド映画”の父・ヤコペッティは興味深い存在。時代を経て都市伝説化し、噂が独り歩きしているヤコペッティと彼の映画について、改めて解説・紹介した記事を用意しましたのでどうかお読み下さい。

大作・話題作であれ、「未体験ゾーンの映画たち」で紹介された映画であれ、どんな作品でも心に引っ掛かり、記憶に残る作品こそが、1人1人にとっての重要な映画。それがたった1つのシーン・1つのセリフであっても、あなただけの財産になるはずです。

そんな映画との出会いをお手伝いする「未体験ゾーンの映画たち見破録」、お読み頂ければ幸いです。そんな綺麗事に興味は無い、人の知らない悪趣味・悪ノリ・トンデモ映画を探しているだけだ!?ならばますます、このコラムをお勧めします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら




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