地球にとって人類は疫病。特効薬は「地獄=インフェルノ」
ハーバード大学教授ロバート・ラングドンが歴史に秘められた謎を解き事件解決に挑む、ダン・ブラウン原作の大ヒットシリーズ映画化第3弾『インフェルノ』。
『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続き主役のラングドン教授を演じるのは、トム・ハンクス。そして、監督もこれまでと同様ロン・ハワード監督が務めます。
人口増加問題により人類の滅亡説を唱える生化学者ゾブリストによる、恐ろしいウィルスの開発が進んでいました。
人口の95%が感染する!?この世界が地獄になる前に、ダンテの叙事詩「神曲」の<地獄篇>に秘められた暗号を解き、パンデミックの爆心地を探し出せ! 映画『インフェルノ』を紹介します。
映画『インフェルノ』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ映画)
【原作】
ダン・ブラウン
【監督】
ロン・ハワード
【キャスト】
トム・ハンクス、フェリシティ・ジョーンズ、イルファン・カーン、オマール・シー、ベン・フォスター、シセ・バベット・クヌッセン、アナ・ウラル、アイダ・ダービッシュ、ポール・リッター
【作品概要】
ダン・ブラウン原作、世界的大ベストセラー「ラングドン・シリーズ」の実写映画化第3弾。『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続き、トム・ハンクスとロン・ハワード監督がタッグを組みました。ラングドンと謎に挑む女医シエナ役は、『博士と彼女のセオリー』『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』の、フェリシティ・ジョーンズが演じています。
映画『インフェルノ』のあらすじとネタバレ
フィレンツェの街を逃げ回る男の姿がありました。男は、高い塔の上までたどり着きます。追ってはすぐそこまで迫っていました。「隠し場所を教えるんだ」。
「地球にとって人類は疫病 特効薬は地獄」。男は塔の上から身を投げ出します。
ハーバード大学教授で宗教象徴学専門のロバート・ラングドンは、体の酷い痛みで目を覚ましました。どうやらここは病室のようです。
女医のシエナ・ブルックスが声をかけてきました。ラングドンは、自分がなぜここにいるのか、いったい何があったのか覚えていませんでした。
そこに警官の恰好をした女が、拳銃を撃ち乗り込んできます。自分が狙われていると分かったラングドンは、シエナに連れられ間一髪逃げ出します。
なぜ自分が狙われているのか。ラングドンは、頭に浮かぶ悲惨な光景にうなされます。黒マスクの男、焼かれた死体、逃げ惑う人々、斑点が浮き出た顔、それは黒死病の歴史のようでした。
シエナの部屋でラングドンは、ポケットに入った見知らぬバイオチューブを発見します。ラングドンの指紋で開いたチューブの中には、ファラデーの法則を利用したポインターが入っていました。
部屋を暗くしポインターの光りを壁に当てると、映し出されたのは「地獄の見取り図」。
イタリア・ルネッサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェルリが、ダンテの叙事詩「神曲」の<地獄篇>に影響を受け描いた作品です。その絵は、ラングドンが見ていた不気味な幻覚の正体のようでした。
ラングドンは映し出された映像と、本物の絵画の相違点に気付きます。アルファベットの文字が加筆されていました。「真実は死者の目を通してのみ見える」。
この暗号を潜ませた人物も判明します。先日フィレンツェで塔から身を投げた男、ベルトラン・ゾブリストによるものでした。
生化学者だったゾブリストは、インターネットで人口増加による人類滅亡説を訴え、多くの信者を獲得していました。
ゾブリストは、人工的にウィルスを製造、黒死病のごとくパンデミックを起こし、人口を減らそうとしていました。ウィルステロの首謀者です。
シエナの部屋に追っ手が到着します。ラングドンを追うのは、監視対応支援チームのクリストフ・ブシャール、WHOのエリザベス・シンスキー、そして大機構最高責任者シムズ総監です。誰が味方で誰が騙しているのか。ラングドンの記憶は曖昧のままです。
絵に隠された暗号に導かれ、ラングドンはシエナと共にヴェッキオ宮殿に向かいます。「真実は死者の目を通してのみ見える」。そこには、ダンテのデスマスクが展示されていました。
しかし、ラングドンたちが到着してみると、ダンテのデスマスクは盗まれた後でした。監視カメラには、マスクを盗むラングドンの姿が映し出されます。
シエナは「何か事情があるはず」と、ラングドンを信じ再び逃亡に手を貸します。
フィレンツェを追放されたダンテが帰りたかった場所、洗礼を受けたサン・ジョヴァンニ洗礼堂にマスクはありました。
無事マスクを回収し、裏面に記載された暗号にたどり着きます。最初の詩節はダンテの引用のようです。そしてまたしても、ゾブリストにより加筆された文が存在しました。
「馬の首を経ち 盲人の骨を奪った…水は血で赤く染まる」。そこにはヴェネツィアの文字もあります。奇しくもその場所は、ダンテが死の原因となったマラリアにかかった場所でもありました。
ラングドンとシエナは、ゾブリストが残した暗号により「ウィルス兵器」へと近づいていました。
その頃、ラングドンを追っていたWHOのエリザベスと、大機構最高責任者シムズ総監が手を組んでいました。
エリザベスは、ラングドンの古くからの知り合いです。お互いを大切に思いながらも、進む道の違いで恋愛関係を諦めていました。ラングドンの命が心配です。
シムズは、権力者たちの依頼を受ける「大機構」という名の機密組織の総監です。ゾブリストから指定日に公開するようメッセージビデオを預かっていました。
事の重要性に気付いたシムズは、ゾブリストの死の知らせの後、約束日を待たずに内容を確認し、ウィルス兵器の存在を突き止めます。
エリザベスとシムズも、ラングドンたちを追ってヴェネツィアに向かいます。
ラングドンとシエナは、サン・マルコ大聖堂に来ていました。「サン・マルコの馬」にまつわる品々が展示されています。親交のある館長エットーレが、2人を案内してくれました。
十字軍のとき、コンスタンティノープルから略奪され持込まれた4頭の馬像。輸送のために馬たちの首を切り落とし運んだという説があります。命令を出したのはエンリコ・ダンドロ総督です。
「私たちは来る場所を間違っていた。ダンドロ総督の墓は、まさしく馬が元々あった場所、コンスタンティノーブルだ」。
映画『インフェルノ』の感想と評価
ダン・ブラウンの小説の映画化は『インフェルノ』で3作目となりますが、このロバート・ラングドンシリーズは2020年現在までに5作出版されています。
また、映画化第1弾『ダ・ヴィンチ・コード』は、2003年刊行。第2弾『天使と悪魔』は、2000年に刊行と、映画化の順番が変わっています。
作品ごとに物語が完結しているので、どの作品から読んでも楽しめ、充分な読みごたえを得る事が出来ます。
ちなみに、「ダ・ヴィンチ・コード」と「インフェルノ」の間に「ロスト・シンボル」も出版されており、2017年刊行された「オリジン」となります。
人類の歴史に残る名画や建築物に隠された暗号を考察し、そこに現代の科学と宗教を織りぜた壮大なスケール感は、都市伝説好きには堪らないシリーズとなっています。
レオナル・ド・ダヴィンチ、イルミナティ、フリーメイソンと歴史上の重要人物や秘密結社の謎に迫ってきたダン・ブラウンが、今回取り上げたのは、ダンテの「神曲」<地獄篇>。
さらに、ダンテの<地獄篇>に影響を受け描いたとされる、サンドロ・ボッティチェルリの「地獄の見取り図」が映し出されます。
そして事件は、その「地獄の見取り図」を模倣するかのようなウィルステロへと繋がります。
2020年現在、中国・武漢を発生源とされる新型コロナウィルスが、世界中に感染者を増やし生命を脅かしています。
人口増加はこの先、人類を滅亡へと加速させるのか。人間の間引きが我々の知らない秘密裏に行われているとしたら……。信じるか信じないかはあなた次第です。
原作「インフェルノ」との違い
原作の謎解きはさらに深く、ラングドンが遭遇する危険度も増しています。謎の答え合わせとして小説を読んでみるのもお勧めです。
映画化で原作と違う点がいくつかあります。大きな違いは、エンディングにあります。
映画では、ラングドンと行動を共にしたシエナが最後は命を落としてしまいますが、原作ではシエナは生きのびます。
シエナは、ウィルスを作り出したゾブリストの恋人でした。彼の亡き後、意思を継ぎウィルス拡散にラングドンを利用しようとします。
映画では、ゾブリストとの愛を貫き体を張ってウィルステロを決行しますが、原作でのシエナは、ウィルス拡散を阻止すべく動いていたのです。
さらに原作では、ウィルスはすでに拡散されておりパンデミックが起こります。しかし、人々に変化は見られませんでした。
そのウィルスは、潜行性で誰も感染したことに気付かない、人の生殖機能を破壊するウィルスだったのです。
人口増加による人類滅亡を説いていたゾブリストが開発したウィルスは、今後全人類のDNAに根付き、世界人口の3分の1が生殖不能になり続けるという恐ろしいものでした。
ウィルス拡散を望まなかったシエナでしたが、新たなテクノロジー時代において遺伝子操作は進歩だと言い放ちます。
AI時代はより優れた人間を必要とするでしょう。より強く、より健康で、より高度な知能を持つ人間。トランスヒューマニズムは、もう避けては通れない人類の道なのです。
まとめ
ダン・ブラウン原作、世界中でベストセラーとなったラングドンシリーズの映画化第3弾『インフェルノ』を紹介しました。
「今、このスイッチを押せば人類の半分が死ぬ。しかし、押さなければ人類は100年後に滅びる。すべてはあなた次第」。
あなたなら、どちらを選択しますか?地球にとって人類こそが疫病なのでしょうか。
これまでにも人類は、数々のパンデミックと戦ってきました。人間は考える生き物です。自分は今何をするべきか。
決して地獄への道を選択しないよう、協力して明るい未来へと歩んでいきたいものです。