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Entry 2020/04/20
Update

映画『残穢(ざんえ)』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。ラスト終えて尚も怖さを感じさせるJホラーの後味

  • Writer :
  • 中西翼

中村義洋監督×作家小野不由美
身近でおこる怪奇現象を鮮烈に描くJホラー映画

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は、作家・小野不由美の第26回山本周五郎賞受賞の同名同名ホラー小説を、『予告犯』(2015)『白ゆき姫殺人事件』(2014)の中村義洋監督によって映画化。

ホラー小説家の「私」と大学生の久保が、家に纏わる怪奇現象の源を探り、より恐ろしく根深い事象を暴き出すというJホラー映画です。

主人公の「私」役に竹内結子、久保さん役に橋本愛と人気女優の2人が共演し、その脇を佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一らが務めています。

小さく積み重なっていく恐怖の事象、点と点が繋がり線となって現れる怨念の連鎖。身震いするほどの恐怖が見る者に襲いかかります。

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』の作品情報

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

【公開】
2015年(日本映画)

【原作】
小野不由美

【監督】
中村義洋

【キャスト】
竹内結子、橋本愛、滝藤賢一、佐々木蔵之介、坂口健太郎、山下容莉枝、渋谷謙人、成田凌、松林慎司、橋本一郎、篠原ゆき子、松浦理仁、松岡依都美、須田邦裕

【作品概要】
本作品『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は、『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007)や「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズの監修、構成、そしてナレーションも手掛けた中村義洋が監督を務めたホラーサスペンス。原作は『十二国記』や『屍鬼』の小野不由美。「読み終わった後、手元に置いておきたくない!」といった感想が相次ぐホラー小説『残穢』の映画化です。

小説家の「私」に読者である女子大生の久保から届いた一通の手紙。物語はここから始まります。主人公の「私」役に竹内結子、久保役に橋本愛と人気女優が共演し、佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一らが脇を固めています。

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』のあらすじとネタバレ

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

「私」は、「仏壇の先で、焼けた手がいくつも見える」といった内容のホラー小説を書いていました。読者の投稿をもとに小説を書いているため、手紙は「私」に欠かせないものなのです。

そんな手紙の中のひとつに、ある怪奇現象が書いているものがありました。それは、大学生活のために引っ越した部屋の出来事です。畳の上で箒で掃くような音が聞こえ、覗いた先には和服の帯のようなものがあったらしいのです。

「私」には妙な既視感があります。以前にも同じような内容の手紙を読んだ記憶があったのです。

そして、投稿者の久保が暮らしているのと同じマンションから、昔に貰った手紙を見つけました。しかしかつての投稿者は、久保とは別の部屋で暮らしていました。

「私」は手紙の主である久保の家を訪ねました。久保と共に不動産屋で前の住人の情報を聞き、以前住んでいた男が引っ越した先で自殺したことを知ります。

前の住人であるその男は、赤ん坊の声に悩まされ続けて、ドアノブで自死していたらしいのです。

自死した前住人の怨念、そう片付けたいところでしたが、和服の帯という現象と合致しません。久保の部屋に現れた怪奇現象の正体は、前住人ではありません。

また、以前同じような現象があった部屋と久保の部屋は上下でも並びでもなく、それはホラー現象からするとおかしなことでした。「私」は土地そのものに何か曰くがあると思いました。

そして、「私」と久保は調査を続けることにして、近隣住民に聞き込みを開始しました。土地そのものに穢れがあるのであれば、代々その土地に不思議な出来事が起こっているはずです。

そこで、かつてゴミ屋敷の老人小井戸が孤独死したという話を聞きます。なんでも小井戸は、隙間を怖がって、部屋をゴミで埋め尽くしていたそうです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』ネタバレ・結末の記載がございます。『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

高野トシエという女性が、娘の結婚式帰りに着物を着たまま、首を吊って自死したということも、調査で分かりました。

高野もまた、久保の部屋の前住人と同じく、赤ん坊の声、それも湧いて出るような声に悩み続けたことを語っていたそうです。

久保の家に怨念が残っていたのは、高野トシエだったのです。

編集者との打ち合わせ中、「私」は久保の話をしていました。

そこへ割って入ってきたのが、どこか胡散臭くも頼もしい小説家の平岡でした。平岡は同じような話を千葉でも聞いたことがありました。

繋がりが大きく広がっていくというそんな根深い話はヤバイ……。それでも好奇心は止まりません。

新しい家に引っ越した「私」に、平岡から新しい情報が届きます。それは、中村という女性が次々と子供を産んでは殺したという乳児大量殺人鬼の話でした。

そしてその中村がかつて住んでいたのが、高野家が家を建てる前の土地だったのです。

全ては、中村がもたらした呪い、そう帰結しそうになったところに、また新しい情報が入ります。

吉兼家の友三郎という男が、高野家よりはるか昔にその土地に住み、発狂して座敷牢に閉じ込められていたというものでした。

友三郎は、夜な夜なトイレから地下へと辿り、「焼け、殺せ」とささやいていたというのです。

友三郎の発狂理由は継母のミヨシが持ってきた女性の絵にありました。それが寺に奉納されているとわかり、詳細を知るために住職を訪ねても、その絵はすでに焼けたと言われました。

絵を持ってきたのは、吉兼家に嫁入りしたミヨシという女性です。そして、ミヨシの実家は北九州にある奥山家でした。

ミヨシの父・奥山は「焼け、殺せ」というささやきに気が狂い、何人もの使用人を殺していたといいます。そのささやき声の原因、それは、炭鉱の火事で死んだ労働者たちの怨念でした。

奥山は炭鉱を持つお金持ちでした。しかし、ひょんなことで火事が起こり、その火事を村に広げないようにするため、何人もの労働者を見捨てることにして、逃げ場を遮断しました。

もちろん空気が無ければ火が広がることはありません。火事は終息しましたが、出口が閉ざされ焼け死んだ労働者もいたのです。そして、呪いや穢れは始まりました。

編集者は、かつての投稿者を思い出しました。それは、最初に「私」が書いていた焼けた手の小説の投稿者でした。

久保たちは、奥山家の跡地、廃屋になった真辺の家へと入り込みます。そこは、神や仏があり、最後にあったのは呪いの道具が敷き詰められた部屋でした。

真辺は奥山が残した呪いで苦しみ、神や仏に縋るも祓われず、最後は呪いに頼るもダメでした。

奥山の呪いは聞いても話しても呪われるという怪談として残り続けていたのです。そしてその呪いは、編集者にも襲いかかります。

編集者が記事の納品を待っている最中、キーボードに灰がついていることに気付きます。

拭ってもぬぐえない恐怖に慌てる編集者の前に現れたのは、真っ黒に焦げた男でした。彼は身体を掴まれ、闇の中へと引きずり込まれて行きました。

そして久保も「私」も、身の回りで奇怪な現象が起こり始めます。彼女たちは自らの身を案じて調査を止めました。

住職が一人、神妙な面持ちで箱を開きます。その中にあったのは、友三郎を狂わせたあの美人画です。やがてその絵の口元は歪み、こちらに笑いかけてきました。

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』の感想と評価

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

映画『残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-』は、過去の因縁や事件と複雑に絡み合った日本的な恐怖と怨念を描いています。

主人公はただの「私」として登場し、大学生の久保とともに、淡々と部屋に纏わる驚異現象の謎を解こうとします。

恐ろしい出来事、不審な死、それら全てが繋がっていき、最後に辿り着くのは「聞いても話しても呪われる」という最恐のストーリー。

過去に遡っていくことで物語が進んでいくというスタイルには、伏線が回収されていく心地良さがあります。

同時に、事件の奥に潜む得体の知れない後味の悪さや、特別怖いシーンが無いのに恐怖を覚える演出の上手さも……。

この映画の最も恐ろしい点は、今までの話や経緯を知ったがために、呪いが自分たちにも降りかかるのではないかと思わせる演出の妙味

「聞いても話しても呪われる」。それは、果たしてこの映画の中だけで完結するのでしょうか。怪奇現象を探っていた「私」や久保も「私は第三者だから大丈夫」と呑気に好奇心に任せていたのではないでしょうか。

こういった恐怖こそ、驚かせることを目的としたジェットコースター的ホラー映画と決定的に違ってくるところでしょう

原作者の小野不由美は「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズのファンであり、小説『残穢』は、それを参考にしたそうです。

そして映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』の監督は、「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズを手掛けた中村義洋

偶然ではないにしろ、この強烈なタッグで、‟怖くてたまらない日本的ホラー”の映画が産声をあげたといえるでしょう。

まとめ

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

何も知らず引っ越してきた部屋に恐ろしい怨念が籠っていたとしたら……。大学生の久保が出合った怪奇現象が、根深くて悍ましい怪奇現象に繋がっていくまでを描いた映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』

身近な違和感や、不思議な現象。それを辿っていくと、もしかすると、この作品のように恐ろしい恐怖が待っているのかもしれません。

映画は淡々と進み、観終わってもまだ続いている感じがあるのですが、真の恐怖は後からやって来ます。今まで気にも留めなかった物音や風の音、灯りの揺れがとても気になることでしょう。

払っても払ってもまとわりつくような怪奇現象が、本当に降りかかってしまうのではないかと、ゾッとするのです。

秀でたホラー映画といえる本作は、今住んでいる部屋や家でかつて何があったかということが気になりだすのと同時に、知らないままでいたいと思わせる、これまでにないタイプのホラー映画

あなたの住む自宅アパートやマンション、そこでネット配信で鑑賞すると、さらに怖さは倍増するに違いありません。

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