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Entry 2020/11/20
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永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

映画『Malu 夢路』は2020年11月13日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか順次公開中!

『アケラット ロヒンギャの祈り』で2017年の第30回東京国際映画祭・最優秀監督賞を受賞したエドモンド・ヨウ監督による日本・マレーシア合作映画『Malu 夢路』。謎めいた詩情とともにマレーシアと日本を往還する、美しき姉妹の永年の確執の物語を描き出します。

ともにマレーシア映画界に欠かせない女優であるセオリン・セオ、メイジュン・タンが主人公の姉妹を演じている他、細野晴臣が音楽を手がけています。


photo by 田中舘裕介

このたびの第33回東京国際映画祭での上映、2020年11月13日(金)からの劇場公開を記念し、本作に出演された永瀬正敏さんと水原希子さんにインタビュー。

日本に渡っていた妹ランを知る人々として姉ホンが出会ったシンスケとジュンをそれぞれ演じられる中で感じとったもの、エドモンド監督や作品に対する思いなど、貴重なお話を伺いました。

『Malu 夢路』の世界に触れたきっかけ


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

──はじめに、本作への出演経緯を改めてお聞かせ願えませんか?

永瀬正敏(以下、永瀬):東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターの共同企画として制作された『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』という映画があるんですが、僕は行定勲監督が手がけた『鳩 Pigeon』のキャストとして、物語の舞台だったマレーシアへ撮影に行ったことがあるんです。

その際に、同作のメイキング撮影、そしてそのメイキング映像を用いての自身の作品制作の最中だったエドモンド監督と初めて出会ったんです。彼とは当時から「いつか映画を一緒に撮れたらいいね」と話していたんですが、思ったよりも早い形でその約束が実現したわけです。


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

水原希子(以下、水原):私は一昨年の2018年、本作の音楽を担当された細野晴臣さんのアジアツアーの追っかけを個人的にしていたんです。国内だけでなく台北でのコンサート開催は当時中々ないことだったので「いちファンとしてこれは観とかなきゃいけない」と思いそうしたんですが、その頃に細野さんのマネージャーさんを通じて、本作のプロデューサーの一人である飯田雅裕さんをご紹介いただいたんです。

本作の企画や内容、また細野さんが本作の音楽を担当する予定であることもその際にお聞きし、多言語で多国籍な世界観がとても面白そうだなと感じました。それがこの映画の出演を決めた最初のきっかけでした。

「創作」に溢れていた撮影現場


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

──お二人の眼から見て、本作の監督・脚本を手がけられたエドモンド監督はどのような方だと感じられましたか?

水原:作品自体はシリアスに満ちているはずなのに、本人にはそういう雰囲気が全くないんです(笑)。撮影現場でもたくさん冗談を言っていて、とてもお茶目な方というイメージでした。本作の脚本が純粋に面白いと感じられたし、エドモンド監督と実際にお会いしてのお話や彼の持つ雰囲気からもこの作品に関わることへの魅力として感じ取ることができました。

またその時点で、既に撮影を終えられていたマレーシアパートの映像も観せていただいたんですが、それ以降の物語に自分がキャストとしてどう関わっていくのかは未知数に近いものでした。脚本は読んでいたんですが、完成した映画の姿を想像し切れなかったんです。そのため、ある意味ではフラットに、そしてフランクな形で本作に携わることにしたのが正直な気持ちです。


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

水原:本作の現場は軽やかというか、実験的な空間だったと感じました。カメラワークなどをはじめ、「こういうことをやってみたい」とスタッフがアイデアを出し合いながら撮影を進めていた、いい意味で「決まっているもの」がない現場でしたね。比較的若いスタッフ陣で組まれた現場でしたが、エドモンド監督のおかげもあってエネルギッシュな良い雰囲気の現場でした。

永瀬:エドモンドは現場で常に明るく前向きに皆んなを引っ張ってくれていました。様々な国の方が参加していた現場で、水原さんの言う通り映画の物語自体は重みがあるものでしたが、現場自体は非常に明るく軽やかなものでした。

またこの映画は脚本の段階から想像の「余白」が多くある作品だったので、その余白を大切にし、表現することをチーム全体で楽しんでいました。

夢路へと身を委ねることで


photo by 田中舘裕介

──撮影現場でのエピソードについて、より詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?

永瀬:今回の作品は、セオリンさんとメイジュンさんがそれぞれ演じられている姉妹がワンシーンの中で入れ替わる演出や過去と現在が同居するシーンが多かったこともあり、またランが僕の前では自分をホンと偽っていたりして「自分の目の前にいるのは、ランとホンのどちらなのだろう」と撮影前、様々な想像を膨らませていた場面が多々ありました。

ただ、だからこそ脚本を敢えて読み込まずに、この世界に身を委ねるような心持ちで撮影に臨んでいました。脚本を勝手に解釈して読み込んでも、むしろ自分勝手な混乱が深まってしまう。けれども「登場人物それぞれが自身の内に鬱屈とした悲しみを抱えている」という状況そのものは確かですから、夢と現実が混ざり合っていく世界を描き出していく現場に身を委ねることで、その世界に現れた人物の一人であるシンスケを演じることにしたんです。


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

──完成された映画を改めてご覧になった際、永瀬さんはどのような印象を抱かれましたか?

永瀬:やはりエドモンド監督の美学があると感じられました。その一部が先ほども触れた想像の「余白」なんでしょうし、ただ単に物語をこちら側で完結させて提示するのではなく、観客の皆さんにその余白を楽しんでいただき、物語をそれぞれ構築していただく。僕はそういう作品も好きなので、観客の皆さんにどう受け取ってもらえるか? 楽しみでした。それに彼は早稲田大学に留学した際、映画作家である安藤紘平さんの元で学んでいますから、映画への想いはもちろん、日本映画に対する彼のリスペクトを本作から感じ取られる方もいるんじゃないでしょうか。

実際、完成した作品を観た時には「監督はこういう形で余白を埋めていったのか」という驚きもありました。僕はいつも、撮影中にモニターなどで自分の芝居のチェックをしないようにしているんです。だからこそ、完成した作品への新鮮味も大きかったです。

細野晴臣の音楽が時空の「歪み」をもたらす


photo by 田中舘裕介

──本作でのジュンという役を、水原さんご自身はどのように捉えられた上で演じられたのでしょうか?

水原:彼女は姉妹たちの母のように「子どもを持つ母」の一人ですが、今は自身の親に子どもを預けて一人暮らしています。そうして5年もの時間を過ごしてきたわけですが、子どもの存在はずっと心の中に残り続けています。それ以上の詳細な事情は描かれていませんが、彼女の心の中に残っているものは、日本で暮らすランの内にあるものとつながっているんだと感じています。

ジュンは確かに、ランのことを知っているようで知りませんでした。それでもどこかで分かり合える部分があって、だからこそお互いが一緒にいられていた、一緒にいやすかったんです。ランのことを深く探ろうとはしないけれど、その痛みを寄り添おうとしてくれる人。それがジュンなんだと思います。


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

──完成された映画は、細野晴臣さんの音楽によってさらにその世界が広がっていったように感じられました。

水原:「夢路」という言葉通り、現実なのか夢なのか、或いは想像なのか。曖昧な映像がとても儚く美しくて……そこに細野さんの音楽が織り交ぜられることで「この夢は悪夢かもしれない」という不安感がさらに加味された独特な空気感が、個人的にとても好きなんです。そういった空気感を持った映画は、日本だけでなくアジアでも最近あまりみられないように感じています。細野さんの音楽が加わることで、美しく儚い夢と記憶の世界に、時空の「歪み」も生じたのかもしれません。

終始悲しみとつらさに包まれている物語ですし、その結末にも「答え」と言えるものはないとは思うんですが、私にとっては改めて「映画って素敵だな」と思えた映画になりました。

エドモンド監督が描き出す世界を楽しんでほしい


photo by 田中舘裕介

──最後に、これから本作をご覧になる方々に向けてのメッセージをお願いできますでしょうか?

水原:自分もいちお客さんとして改めて映画を観てみると、やはりエドモンド監督が作り出そうとした空気感がそこにあるんだと思えました。それを皆さんにも感じ取っていただきたいですし、言語などの様々なカルチャー、現実と過去の記憶、映像と音楽が混ざり合うことで生まれた「良い夢」とも「悪夢」ともとれる夢路へ、これから映画をご覧になる皆さんにも訪れてほしいです。

永瀬:東京国際映画祭で認められたエドモンド監督が再び日本に訪れてくれた上で撮った作品ということもあり、マレーシアと日本を股にかけて映し出されていく独特なエドモンド監督の世界を楽しんでもらえたらと思っています。

エドモンド監督は自分にとって「次はどんな作品を発表するのか?」が気になる監督の一人です。そして、皆さんにとってもエドモンド監督がそのような存在になってもらえるよう、本作についても「まず観ていただけら」と思っています。

インタビュー/出町光識・河合のび
構成/河合のび
撮影/田中舘裕介

永瀬正敏プロフィール

1966年生まれ、宮崎県出身。1983年、『ションベン・ライダー』でデビュー。その後、1989年の『ミステリー・トレイン』、1991年の『息子』を含む国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。またカンヌ映画祭では2015年『あん』、2016年『パターソン』、2017年『光』と出演作が3年連続で出品された他、2018年には芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞した。

近年の出演作は2019年の『赤い雪』『ある船頭の話』『カツベン!』『最初の晩餐』、2020年の『ファンシー』『二人ノ世界』『ホテルニュームーン』『さくら』など。また写真家としても活動し、現在までに多くの個展を開いている。

水原希子プロフィール

1990年生まれ、アメリカ出身・兵庫県育ち。アメリカ人の父親と韓国人の母親をもつ。2003年、ファッション誌「Seventeen」の専属モデルオーディションでミスセブンティーンに選ばれる。2007年からは「ViVi」をはじめ複数の女性ファッション誌にてモデルとして活躍。

2010年、村上春樹原作の『ノルウェイの森』のオーディションで緑役に抜擢されたことで映画デビュー。以降も2012年の『ヘルタースケルター』『I’M FLASH!』など数々の映画に出演。また2013年にはNHK大河ドラマ『八重の桜』にてTVドラマ初出演を果たした。近年の出演作は2016年の『信長協奏曲』『高台家の人々』、2017年の『ブルーハーツが聴こえる』『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』など。

映画『Malu 夢路』の作品情報

【日本公開】
2020年(マレーシア・日本合作)

【脚本・監督】
エドモンド・ヨウ

【音楽】
細野晴臣

【キャスト】
セオリン・セオ、メイジュン・タン、永瀬正敏、水原希子、リン・リム、シー・フールー

【作品概要】
謎めいた詩情とともにマレーシアと日本を往還する、美しき姉妹の永年の確執の物語。『アケラット ロヒンギャの祈り』で第30回東京国際映画祭・最優秀監督賞を受賞したエドモンド・ヨウ監督による日本・マレーシア共同製作作品。

マレーシアのセオリン・セオ、メイジュン・タンが主人公の姉妹を演じる他、日本からは永瀬正敏、水原希子が出演。また音楽を細野晴臣が担当している。

映画『Malu 夢路』のあらすじ


(C)Kuan Pictures, Asahi Shimbun, Indie Works, Mam Film

心を病んだ母のもと、幼い頃に決別したホンとランの姉妹。他人も同然になった2人は母の死を機に20年ぶりに再会し、同居生活をふたたびスタートさせる。

ある朝、姉のホンが目を覚ますと、そこにランの姿はなかった。数年後、ホンのもとに日本でランの遺体が発見されたとの知らせが届く。ホンは仕事も家庭も放り出し、日本へと旅立つが……。



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