Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2022/02/05
Update

【鈴木睦海×西山真来インタビュー】映画『カウンセラー』異なるアプローチで演じた二人が42分で辿り着く衝撃の結末

  • Writer :
  • 咲田真菜

異例の反響を呼ぶ短編映画『カウンセラー』がついに2022年3月より、ユーロスペース渋谷での2週間レイトショー上映が決定!

2021年10月・下北沢トリウッドでの封切り後の同館アンコール上映をはじめ、2022年も岡山メルパ・名古屋シネマテーク・神戸資料館といった全国劇場にて上映が拡大されるなど、異例の反響を呼び続けている短編映画『カウンセラー』。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて、短編初のSKIPシティアワード受賞という快挙を達成し、清水崇監督など多数の映画人からも高い評価を得ている本作の監督・脚本を手がけたのは酒井善三監督。42分間、あっと驚く結末まで観る者を翻弄します。


photo by 田中舘裕介

このたび、倉田真美役を演じられた鈴木睦海さん、吉高アケミ役を演じられた西山真来さんにインタビュー取材を敢行。

W主演として緊迫感のあるやりとりを2人で演じられた感想、それぞれの役作りや酒井監督の演出について語ってくださいました。

倉田真美と吉高アケミ、異なる演技のアプローチ

倉田真美役:鈴木睦海さん


photo by 田中舘裕介

──本作は、42分間で怒涛のように物語が進んでいきます。中でも鈴木さん・西山さんの二人芝居の場面は緊迫感があるものでしたが、それぞれの役を実際に演じられてみてどのような感想を持たれましたか?

鈴木睦海(以下、鈴木):倉田真美という役を演じましたが、結構難しかったです。それはなぜかというと、倉田真美は作品内における立ち位置が受け身なんです。そういう立場で自分に何ができるのか、撮影中はずっと模索していました。

西山真来(以下、西山):初めての体験が多い撮影でした。鈴木さんと二人の場面は特にそうなのですが、リハーサルをしっかりやって、一緒に作品を作っていったような気がします。

鈴木さんの反応で私がやるべきことが分かったし、酒井監督のイメージと私が作り上げてきたアケミのイメージの中間のような人物像を作り上げていくことができました。その結果、自分の思考や感情、感覚が追いかけっこしているといいますか、まだ感情が追いついていないけれどせりふを言っているという、不思議な感覚があって面白かったです。

──撮影はどのように進んでいったのでしょうか?

鈴木:撮影そのものはスピーディーに進んでいきましたが、リハーサルは2日間ぐらいかけてじっくりやりました。また撮影当日になって監督の演出が変わったこともありました。

先ほど西山さんがおっしゃいましたが、役者が作り上げてきた人物像だけでなく、酒井監督が持ってきた役のイメージを現場で一緒にディスカッションする……ということが、撮影当日まで行われていたような気がします。

実は酒井監督には、倉田に関するキャラクターノートも事前にいただいていました。倉田という女性は、こういう背景があって、こういう経歴があるということが書いてありました。

西山:今、酒井監督が鈴木さんへキャラクターノートを渡されたという話を聞いて驚きました。私は一切そういうものがなかったんです。もしかしたら酒井監督は、私と言葉でやりとりするよりも、実際に演じながら人物像を作り上げていった方が良いと思ったのかもしれません。

また吉高アケミは、あらかじめ筋道を通してしまうとつまらない人物像になってしまうような気もしました。実際、撮影中にも「この場面ではこうだったけど、次の場面では別人になったみたいに演じていいですよ。人間ってそういうことありますから」と酒井監督に言われました。もしかしたら酒井監督は、役者や演じる役によって、演出の仕方を変えているのかもしれません。

短編作品ならではの「密度の濃さ」


(C)DrunkenBird 2020

──42分間で役を演じ切るのは大変だったと思います。短編作品ゆえに感じられたことはありますか?

西山:長編作品のように、演じる役がいろいろな体験を経てじっくり変化していくという進め方ではありませんが、短編作品だからこそ役として鮮やかに変貌していくことができたので、密度が濃い時間を過ごすことができました。

鈴木:役者としては短編だから特別なことはなくて、通常と変わりがなかったです。ただ倉田真美という女性にとって、ある1日だけの話となるので、何日かかけてその人物の人生を描いていくのとは違うと感じました。密度の濃さはありましたし、今回ずっと表情を撮られているという意識があったので、そこが難しかったです。

お互いが役者として信頼できるパートナー


(C)DrunkenBird 2020

──お互いの役者としての魅力についてお聞かせください。

西山:私が演じたら、むっつー(鈴木)はそれに反応してくれるので、むっつーの反応で自分の演技を知ることができました。鏡のような存在で、嘘がなく信頼できるパートナーでした。

鈴木:そう言っていただけてうれしいですね(笑)。私は西山さんが出演されている作品をたくさん観ていたので「西山さんと共演できるんだ!」と単純にうれしかったです。

西山さんは、普通の表情をしていても笑顔でいるような感じがして、西山さんの人柄が自然ににじみ出ていると思うんです。そして役と融合した時には、さらに説得力が増します。たぶん西山さんはとても面白い方だと思うので、演じるキャラクターの魅力が増すのかもしれませんが、そういうところを役者として私も見習っていきたいです。

「普通の人」ゆえに怖いアケミ、「船」の役割を担った真美

吉高アケミ役:西山真来さん


photo by 田中舘裕介

──それぞれが異なるアプローチを通じて演じられた役への思い入れをお聞かせください。

西山:吉高アケミは、観ている人にとって不気味で怖い存在だと思います。でも私は演じている時、全くそんな思いがなかったんですよ。今考えたら嘘みたいなんですが……私の中では「不気味で怖い人」ではなく、自分が信じていることをそのまま普通に話しているだけの人。だからすごく真面目に演じました。ただできあがった映像を観たら、めちゃくちゃ怖い人になっていて……(笑)。

最初から吉高アケミを「不気味で怖い人」と思って演じるよりも、普通の人だという思いで演じたからこそ、結果的により生々しいホラー作品ができあがった気がします。それが酒井監督の狙いだったのかもしれません。

アケミは衝撃のラストを迎えるわけですが、最初に脚本を読んだ時、監督に「こういうラストでなければいけないのでしょうか」と聞きました。その際に酒井監督は「映画は高尚なものではなく、俗なものだと表現したい」とおっしゃっていました。その言葉が印象的でしたね。

鈴木:そんな吉高アケミにずっと振り回される倉田ですが、酒井監督には「倉田は、映画を観ているお客さんと一緒に恐怖を体験していく船みたいな役割」だと伝えられていました。

最後まで理解できないことが起きていきますが、倉田の目の前で次々と起きていく出来事にどう影響されていくか、そういう意味で倉田という役をどう肉付けしていくか、監督と話し合って作り上げました。また西山さんが演じるアケミが本当に怖くて、あれを目の前でやられてしまうと、素で恐れおののくことができましたね。

現場の雰囲気も演出の一つ


photo by 田中舘裕介

──改めて作品の見どころをお願いいたします。

西山:撮影期間は短かったのですが、リハーサルをじっくりできたことはもちろん、撮影現場自体はとても和やかで、少人数でしたがすごくしっかりとした体制だったのでスタッフや現場の雰囲気が良かったです。

精神的な安全を感じられ、自由な心の状態で落ち着いて作り上げた作品です。何より酒井監督自身が楽しんで作られていました。

この作品を通して、現場の雰囲気も演出の一つなんだと実感しました。俳優だけでなく、関わったスタッフ全員がいたからこそできた作品だと思うので、みんなで生み出した作品をじっくり観ていただけたらと思います。

鈴木:完成した映像を観た時、まず思ったことは「何これ、楽しい!」でした。『カウンセラー』ってそういう作品なんだなと改めて思ったんです。脚本を読んだだけでは分からなかったことが、編集や音響の効果もあって、全く想像できなかった作品としてできあがりました。

観る前は「どんな作品かな?」と思うでしょうが、遊園地へ行くような気持ちで、映画館の座席に座って上映が始まるのを待ってもらえたらと思います。

インタビュー/咲田真菜

鈴木睦海プロフィール

1988年生まれ。日本マイム研究所にて身体表現を学ぶ。

主な出演作に、大工原正樹監督『やす焦がし』。

酒井善三監督『RIP』に続き二度目の出演。

西山真来プロフィール

1984年生まれ。

木村文洋監督『へばの』、坂本礼監督『乃梨子の場合』、堀禎一監督『夏の娘たち ひめごと』、濱口竜介監督『寝ても覚めても』、いまおかしんじ監督『れいこいるか』などに出演。

映画『カウンセラー』の作品情報

【公開】
2021年(日本映画)

【監督・脚本】
酒井善三

【製作】
百々保之

【キャスト】
鈴木睦海、西山真来、田中陸、松本高士、平仁、亀田梨紗、蒲池貴範

【作品概要】
『あれから』(2012)『SHARING』(2014)の脚本、『おもちゃを解放する』(2012)『RIP』(2018)などの監督を手がけた酒井善三による短編心理サスペンス映画。

主演を務めたのは『やす焦がし』(2016)『RIP』(2018)の鈴木睦海、そして『夏の娘たち~ひめごと』(2017)『乃梨子の場合』(2015)の西山真来。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021・SKIPシティアワードを受賞した本作は、2021年10月31日に下北沢トリウッドで封切りされるも、好評により同館でのアンコール上映が決定。その後も岡山メルパ・名古屋シネマテーク・神戸資料館などの全国劇場にて上映が拡大され、3月にはユーロスペース東京にて2週間レイトショー上映が決定しました。

映画『カウンセラー』のあらすじ

ある心理相談室に勤める心理カウンセラー・倉田真美は、妊娠6ヶ月目で産休前最後の出勤日を迎えていました。

予定していた最後の相談者を見送った後、一人の女性・吉高アケミが予約なしでやって来ます。やむなく「相談内容だけでもお聞きしましょうか」と伝えた倉田に、アケミは「……妖怪が見えるんです」と語り始めます。

謎めいた彼女の口から語られる暗い過去の物語が、奇妙なことに倉田を妄想に駆り立てゆき、不安の渦に堕としてゆきます……。




執筆者:咲田真菜プロフィール

愛知県名古屋市出身。大学で法律を学び、国家公務員・一般企業で20年近く勤務後フリーライターとなる。高校時代に観た映画『コーラスライン』でミュージカルにはまり、映画鑑賞・舞台観劇が生きがいに。ミュージカル映画、韓国映画をこよなく愛し、目標は字幕なしで韓国映画の鑑賞(@writickt24)。

関連記事

インタビュー特集

【眞田康平監督インタビュー】映画『ピストルライターの撃ち方』“原発事故が起こった町の《隣町》”を物語の舞台にした動機とは

映画『ピストルライターの撃ち方』は渋谷ユーロスペースで封切り後、2023年11月に〈新藤兼人賞〉の最終選考10傑入りを果たし、11月25日(土)〜富山・ほとり座&金沢・シネモンドにて、12月2日(土) …

インタビュー特集

【桜田ひよりインタビュー】劇場アニメ『薄暮』声優への初挑戦で得た様々な経験

映画『薄暮』は2019年6月21日(金)よりEJアニメシアター新宿、シネリーブル池袋ほかで全国ロードショー! 東北・福島県いわき市の豊かな自然を背景に描かれる、とある淡い恋心を描いたアニメ映画『薄暮』 …

インタビュー特集

【田中征爾監督×皆川暢二インタビュー】映画『メランコリック』で目指したオリジナリティ

映画『メランコリック』が、2019年8月3日(土)より、アップリンク渋谷ほか順次公開! アクション、コメディ、サスペンス、ホラー、ラブロマンスとジャンルを横断したエンタメ作品である本作は、映画製作ユニ …

インタビュー特集

【門田宗大インタビュー】映画『3つのとりこ』の一編「それは、ただの終わり」で経験できた役と生身の自己の“隙間”が生む芝居

オムニバス映画『3つのとりこ』は2022年4月23日(土)より池袋シネマ・ロサにて1週間限定レイトショー! 映画『3つのとりこ』は、何かに囚われ、心奪われる人々を描いた小川貴之監督による3つの短編『そ …

インタビュー特集

小森はるか+瀬尾夏美インタビュー|映画『二重のまち / 交代地のうたを編む』本の朗読と震災の記憶を通じての“継承のはじまり”

映画『二重のまち /交代地のうたを編む』は2021年2月27日(土)よりのポレポレ東中野・東京都写真美術館ホールでの公開をはじめ、4月2日(金)より京都出町座、4月3日(土)より大阪シネ・ヌーヴォと新 …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学