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Entry 2021/08/19
Update

【白石和彌監督インタビュー】映画『孤狼の血LEVEL2』松坂桃李らキャストの覚悟に応え“鬱屈を吹き飛ばせる作品”を作る

  • Writer :
  • ほりきみき

映画『孤狼の血 LEVEL2』は2021年8月20日(金)より全国東宝系でロードショー公開!

第42回日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を総なめにした映画『孤狼の血』の続編『孤狼の血 LEVEL2』が2021年8月20日(金)から公開されます。

前作にて命を落とした伝説のマル暴刑事・大上章吾(役所広司)。『孤狼の血 LEVEL2』はその大上の遺志を受け継いだ若き刑事・日岡秀一(松坂桃李)の“その後”の戦いを描いた作品です。


(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

本作の監督は、『日本で一番悪い奴ら』『凪待ち』など数々の話題作を手がけ、前作『孤狼の血』でも監督を務めた白石和彌。

原作シリーズとは異なる映画完全オリジナルストーリーによって、前作からさらにパワーアップした『孤狼の血 LEVEL2』について、白石監督にお話をうかがいました。

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自ら「断髪」を申し出た松坂桃李の覚悟


(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

──『孤狼の血 LEVEL2』にて松坂桃李さんは髪をバッサリ切り、前作とは雰囲気がガラリと変わっていますね。

白石和彌監督(以下、白石):髪型については桃李くんが「前作よりワイルドな内容になっているので、髪を切っていいですか」と自ら申し出てくれました。また「アクションがありますし、前回よりシャープな身体にしようと思います」と腹筋を鍛えてくれたりなど、撮影に向けて身体そのものから役作りを進めてくれました。

──主人公・日岡は物語が進むほどに心身を追い詰められていきますが、日岡を演じられた松坂さんご自身は撮影中どのようなご様子でしたか。

白石:『孤狼の血 LEVEL2』は前作から3年の月日が経ち、日岡は「大上の代わりになれた」と思っていたものの、実際はそうでいなかったと思い知らされる話でもあります。

作中の日岡はやることなすことうまくいかないし、とにかくボロボロになっていく。そうして追い詰められていく日岡を自らの心身によって演じること、その過酷な芝居の一つとしてのアクションを演じ切ることを、桃李くんは覚悟した上で撮影に臨んできてくれました。

松坂桃李だからこそ演じ切れたアクション

映画『孤狼の血 LEVEL2』メイキング写真より


(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

──アクションといえば、作中にて松坂さん演じる日岡が3階から飛び降りるアクションを描いた場面には驚かされました。

白石:脚本ではただ「逃げる」としか書いていなかったのですが、それだけではもったいない。スペクタクルを演出し、映画としてのエンターテインメント性をより高めていくためにもあの場面は特にこだわりたいと思い、早い段階からスタッフ陣に相談しました。

──実際の撮影は、どのように進められていったのでしょうか。

白石:桃李くんには撮影当日、現場に早めに入ってもらった上で、まずはワイヤーで吊った状態の高さに慣れてもらいました。そして「日岡が飛び降りる瞬間」と「パトランプにぶつかり、そのまま地面に転がるように降りる日岡の姿」にショットを分けて撮影を行いました。

ですから桃李くんは飛び降りる恐怖だけでなく、低い位置からではあるものの、パトランプにぶつかって受ける衝撃の痛みも撮影の中で経験しているわけです。撮影部・アクション部が万全の体制を整えての撮影ではありましたが、スタントマンが入ってもおかしくないアクションであり、演じる本人は大変だったと思います。それでも演じ切ってくれたのは、やはり桃李くんだからこそだと感じています。

ただ「映画『ガッチャマン』の撮影では、7階からワイヤーで吊られたこともあった」とも聞いていたので、「『ガッチャマン』に比べれば3階は楽勝かな。ワイヤーもいらないかもね」と冗談を言ったら「それだけは勘弁してください」と笑っていました。そして撮影が終わった後にも「どうだった?」と聞いたら「俺はトム・クルーズではありません」と彼は答えていました(笑)。

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日本映画界における「カーチェイス」とこだわりの「音」


(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

──またアクションの中でも、作中の「カーアクション」の描写に対して白石監督はかなり力を入れられていたと、本作の撮影を担当された加藤航平さんからお聞きしました。

白石:トンネルの中で車がぶつかる瞬間や車の横転シーンはカースタントマンに実際にやってもらいましたが、日岡と上林(鈴木亮平)が運転している場面はCG合成を用いています。倉庫にグリーンバックを張り、車2台を走らせているように見せながら撮っているんです。今はそうした技術で撮影が可能なわけですが、桃李くんも亮平くんも嬉々として演ってくれましたし、スタッフ陣も面白がりながら撮影を進めてくれました。

「カーチェイス」が登場する日本映画は限られていますが、世界にはたくさんある。だからこそ、あえて本作にも盛り込みました。そうして日本のアクションがどの位置にあるのかを手探りでも確かめ、撮影を通じて実践し続けなければ、世界の映画におけるアクションの水準から置いていかれてしまうのではと感じたんです。正直やり足りない部分も少しあったのですが、まだまだ日本の映画界にも、優れたアクションを撮れるスタッフが多く存在していることを改めて知れたのは嬉しかったです。

また音響効果を担当してくださったの柴崎憲治さんも、「カーチェイス」を扱うのは久しぶりとのことで喜んで「音」を作ってくれました。柴崎さんには当時「イメージとして『地面を這っている音』ではなく、『上に行っている音』で作るけれどいい?」と伝えられたのですが、完成した音を聴いてみると「なるほど」と納得しました。

他の場面での「雨音」などをはじめ環境音も作り込んでくれたので、本作の緊張感や臨場感の演出にとても繋がっています。音の効果って実はすごく大きくて、音にはいつも助けられています。ですから映画をご覧いただく際には、それぞれの場面の「音」にも注目してもらえるとありがたいです。

三夜にわたって撮りあげた死闘──日岡VS上林

映画『孤狼の血 LEVEL2』キャラクター動画・日岡編

──そして映画終盤で繰り広げられる日岡と上林の死闘の場面は、三夜にわたって撮影を行われたともお聞きしました。

白石:あの場面は、日岡と上林のデートのつもりで撮っていました。二人のサーガは一晩ではとても終わらなくて、どうにかそれをカメラで撮り切りたいと様々な方法を実践していたら、自然と3日かかってしまったという感覚です。

また派手なことをしていない分「痛み」を伝えられるアクションにしたかったのですが、それは俳優さんたちがある程度痛い思いをしなくてはと表現できないものでした。それでも桃李くんと亮平くんは、そのアクションを撮ることに「粋」を見出して「やりますよ」と答えてくれたので、凄くいい画を撮ることができました。

実はあの場面は、血糊の演出が大変でもあったんです。斬られて指が飛んだり、口から血を吐き出したりするときには、どうしても撮影を切らないといけない。一方で俳優さんたちのお芝居は、できるだけ切らずに撮り続けたい。そうした状況の中でも、桃李くんはある工夫しながらも演り続けてくれました。

──その工夫とは、具体的にはどのようなものだったのでしょうか。

白石:桃李くんはコンドームに血糊を入れ、それを軽く結わえたものを口に含んだ上で、セリフを喋った後にそれを噛み血を出したように見せるという技をいつの間にか習得していたんです。自分も当初はそれに気づかず、「セリフを言った後に、なぜあそこまでキレイに血糊が出せるんだろう」と思い尋ねた際に、本人が教えてくれました。そういうことをあくまで相談せずにサラっとやるのが、桃李くんの心憎いところですね。

映画『孤狼の血 LEVEL2』キャラクター動画・上林編

──その死闘の場面の直前に描かれていた雨中での闘いも、非常に迫力のある画となっていました。本作のみならず白石監督の作品では、常に「雨」が象徴的に描かれていますね。

白石:映画にとって「雨」は重要な要素であるため、「どういう場面に、どういう雨を降らせるか」はいつもこだわって考えています。今回は映画のクライマックスに向けた前哨戦として、ドラマチックな舞台がふさわしいと思い雨を降らせました。

また通常の撮影で特機のよる「雨降らし」をすると、俳優さんたちのセリフはどうしてもアフレコ音声を使用せざるを得なくなるんですが、「多分いけるよ」と言ってくれた録音技師の浦田和治さんのおかげで、ほぼ同録でセリフを録音することができました。僕自身も「あんなに雨降らしをしても同録ができるのか」とびっくりしたほどで、まさに浦田さんの技術力だと実感しました。

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「白石和彌の映画」だからできるものを


(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

──白石監督の作品では、出演されている俳優さんがみな活き活きと演じているように感じられます。

白石:特別、僕自身が何かをしているわけではありません。撮影やそれ以外の時間での声がけや伝える言葉も、他の監督さんとそこまでの違いはないと感じています。ですが、現場でちょっとした「アクション」を加えると、俳優さんたちが活き活きするということは結構ありますね。

以前、亮平くんに「監督は本物の映画狂いだ」と冗談半分で言われたことがありますが、映画だからこそエンターテインメントに昇華できるものがあると信じているからこそ、どうしたら映画で楽しんでもらえるか、1日のうち20時間ほどは考えています。

また俳優さんたちも「白石和彌の映画に出るのだから、普段できないことがやれるんじゃないか」と期待してくれているところがあるから、現場でも頑張ってくれるんだと思います。そう期待してもらえている以上、自分も監督として映画作りと向き合い続けたいですね。

現在の状況において人々の中に溜まり続ける鬱屈したものを、吹き飛ばせる映画だと僕は信じています。ぜひ、この作品を観て元気を出してもらえるとうれしいです。

インタビュー/ほりきみき

白石和彌プロフィール

1974年12月17日生まれ、北海道出身。若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として、行定勲監督、犬童一心監督などの作品に参加。2010年、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編デビュー。2013年の『凶悪』で第37回日本アカデミー賞優秀監督賞&優秀脚本賞、新藤兼人賞などを獲得。『日本で一番悪い奴ら』(16)は第15回ニューヨーク・アジア映画祭のオープニング作品に選出された。第46回ロッテルダム国際映画祭に招待された『牝猫たち』(17)では脚本も手掛ける。『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)は第42回トロント国際映画祭に出品され、第39回ヨコハマ映画祭監督賞と第60回ブルーリボン賞監督賞を受賞。2018年、『サニー/32』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』の3作品で第61回ブルーリボン賞監督賞、日刊スポーツ映画大賞監督賞を受賞。2019年、『麻雀放浪記2020』『凪待ち』『ひとよ』で第93回キネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞や第70回芸術選奨文部科学大臣新人賞などを受賞。

映画『孤狼の血 LEVEL2』の作品情報

【公開】
2021年(日本映画)

【原作】
柚月裕子「孤狼の血」シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)

【監督】
白石和彌

【脚本】
池上純哉

【キャスト】
松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、斎藤工、滝藤賢一、中村獅童、吉田鋼太郎

【作品概要】
2018年に公開された前作『孤狼の血』は第42回日本アカデミー賞に於ける最優秀4部門を含む最多12部門の優秀賞をはじめ30を超える映画賞受賞の栄冠に輝きました。続編『孤狼の血 LEVEL2』は監督を再び白石和彌が務めます。脚本は池上純哉。作家・柚月裕子の原作小説『孤狼の血』シリーズ三部作の何れとも異なる完全オリジナルでストーリーが紡がれました。

主人公のマル暴刑事・日岡秀一を演じるのは松坂桃李。その日岡の前に立ちはだかる上林組組長・上林成浩には鈴木亮平。日岡と上林との間でS(エス=スパイ)として揺れ動く近田幸太を村上虹郎、幸太の姉の「スタンド華」ママ・真緒を西野七瀬が演じます。

そして音尾琢真、早乙女太一、渋川清彦、毎熊克哉、筧美和子、青柳翔、斎藤エ、滝藤賢一、矢島健一、三宅弘城、宮崎美子、寺島進、宇梶剛士、かたせ梨乃、中村獅童、さらに中村梅雀、吉田鋼太郎と、前作からの続投組と初参戦の豪華俳優陣が入り乱れ、血で血を洗う壮絶な闘いが展開されていきます。

映画『孤狼の血 LEVEL2』のあらすじ

3年前、マル暴の伝説的刑事・大上(役所広司)は暴力組織の抗争に巻き込まれ命を落とした。若き相棒だった刑事・日岡秀一(松坂桃李)は大上の跡を継ぎ、広島の裏社会の顔役として警察組織や暴力団双方から一目置かれるようになっていた。 

そこに、上林(鈴木亮平)が刑務所から出所する。3年前の抗争で尾谷組・一之瀬に殺害された五十子を親と慕う上林は、抗争の裏で暗躍した刑事に報復を誓うとともに、五十子会が属する広島仁正会の中でのし上がっていった。

こうして日岡が保ってきた危うい秩序が崩れていき、やがて日岡は絶体絶命の窮地に追い込まれてしまう……。





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