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Entry 2021/03/19
Update

映画『サタニックパニック』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。ホラーな残虐バトルコメディでピザのデリバリー娘VS上級国民悪魔崇拝者を描く|未体験ゾーンの映画たち2021見破録25

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第25回

世界の国の映画、まだ見ぬホラー映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第25回で紹介するのは『サタニックパニック』。

日本人には馴染みがない、でも海外で人気のホラー映画ジャンルと言えば悪魔崇拝です。

勝手に集まり何やらやるのはご自由にどうぞ。ピザの配達先で集会をしていようが、チップを頂戴できればお構いなし。

ところがチップはもらえず、処女だとバレて悪魔の生贄にされてはたまりません…というホラーコメディ映画の登場です。

ブラックユーモアとゴアシーン盛りだくさんの本作、それだけに終わりませんよ…。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

映画『サタニックパニック』の作品情報


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Satanic Panic

【監督】
チェルシー・スターダスト

【出演】
レベッカ・ローミン、ヘイリー・グリフィス、ジェリー・オコンネル、ルビー・モディーン、ジョーダン・ラッド、アーデン・マーリン、ウィットニー・ムーア

【作品概要】
配達先が悪魔崇拝者の集会で、命を狙われるハメになった娘が繰り広げる血みどろのドタバタ騒動を描く、ホラーコメディ映画。

監督はホラー映画の大ファンで、『パラノーマル・アクティビティ』(2007)製作のジェイソン・ブラムの製作会社、ブラムハウスで長らくアシスタントを務めたチェルシー・スターダスト。

主演のヘイリー・グリフィスを、『X-メン』(2000)のミスティーク役で有名なレベッカ・ローミン、『スタンド・バイ・ミー』(1986)出演のベテラン、ジェリー・オコンネルが支えます。

『マッドTV!』(1995~)で活躍したコメディエンヌ、アーデン・マーリンに『ハッピー・デス・デイ』(2017)のルビー・モディーンらが共演しています。

映画『サタニックパニック』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

アメリカの南部の高級住宅地。裕福な住民が住み、白い服の少女が路上でホップスコッチ(けんけんぱ)をして遊んでいます。

とある1軒の邸宅。その家の娘ジュディ(ルビー・モディーン)は男とベットで行為中でした。

母親が怒るのも当然ですがジュデイに暴力を振るい、自分に迫って来るその姿に、大声で悲鳴を上げた相手の男。

そんな人々に縁の無い下町のピザ屋。配達人の同僚にオーストラリアへの憧れを歌った、自作のダサいフォークソングの動画を見せるサマンサことサム(ヘイリー・グリフィス)。

失笑を買ってサムは動画を見せたことを後悔します。ピザのデリバリーの注文が入りました。

同僚2人はやっかいな地区の配達をサムに任せます。今日が初日の彼女は、何だか判らぬまま引き受けます。

店主から5ドル要求されたサム。配達用の保温バックの保証金、戻ってくれば返すとの事。ガソリン代も無いサムには厳しいルールでした。

何かとモーションをかけてくる同僚の勘違い男のダンカンから、配達する地区はチップ代の少ないケチな場所と教えられたサム。

しかも雨の中、ベスパのミニバイクでの配達です。「Two fuzzy bunnies(2羽のフワフワうさぎちゃん)」と繰り返し唱え、心を落ち着かせてサムは出発します。

最初に配達先では、同じサムという名の男が受取人。全米に700万人のサムがいる、サムは互いに助けあうのが「サムの掟」だと、荷物運びを手伝えと頼んできました。

断り切れず手伝うサム。運び終え渡されたチップは、アップルビーズ(ファミレスチェーン店)の期限切れのクーポン券。

他の家でオシッコをかけるプレイに協力すれば12ドル出すと言われ、偏屈そうな婆さんから親切にも、爺さんの遺品の加齢臭付きセーターを渡されます。

散々な目に遭い店に戻ったサム。そこにミルベイシン地区から注文が入ったと告げる店主。

そこは配達エリア外で、面倒な場所のようですがサムは引き受けました。

バイクを走らせミルベイシンに入ると、白いドレスの女の子が手を振ってくれました。目的の大邸宅に到着するサム。

豪華な屋敷にも関わらず、玄関で受け取った無愛想男はすぐドアを締めました。レシートを見るとチップ分が加算されていません。

おまけにミニバイクはガス欠で動きません。サムは半分キレてチップを頂こうと屋敷に戻ります。

ドアをノックしても反応は無く、入れる扉を探すサム。鍵の開いていた扉から中に入ると、どよめきと拍手が聞こえてきました。

広間に向かうと何やら集会が開かれていました。中央に立つ女、ダニカ(レベッカ・ローミン)の話を傾聴する男女だち。

集まった上流階級の男女の中から、ピザを受け取り代金を払った男を探すサム。場違いな存在ですが、彼女も必死でした。

男を探すのに夢中で、彼女はこれが悪魔を讃える集会と気付きません。

悪魔崇拝者のリーダーとして振る舞うダニカに、メンバーのジプシー(アーデン・マーリン)は悪魔バフォメットを召喚に、処女が必要だと訴えます。

今日は満月で、召喚の儀式を行う日ですが、何か問題があるようです。深刻な会話に割り込み、チップの支払いを求めたサム。

空気を読まない彼女の発言に悪魔崇拝者は戸惑いますが、好都合とサムに処女か尋ねるジプシー。

戸惑いぶりから彼女を処女と判断したダニカの指示で、悪魔崇拝者たちはサムを捕らえます。ダニカの吹きかけた粉末の力で、サムは意識を失います。

彼女が目をさますと、君はクソ女の自分の妻を怒らせた、と告げる男がいました。

状況が読めないサムに、危機を切り抜ける戦闘スキルを持っているかと尋ねる男。

そんなものある訳ありません。サムは自分は時給2.13ドルで働いている身で、何としてもチップが必要だと話します。

連中は悪魔バフォメットを崇拝し、召喚するのに忙しくチップを忘れたと説明する男。彼はダニカの夫サミュエル(ジェリー・オコンネル)でした。

バンドか何かと勘違いしたサムに、バフォメットは地獄の悪魔で、それを召喚する生贄に自分たちは殺されると告げたサミュエル。

自分の隣人の悪魔主義者はビーガン(菜食主義者)だと言うサム。しかしミルベイシン地区に住む悪魔崇拝者は違うようです。

逃げようとしても無駄、無残に殺されると語るサミュエルに、話の流れで自分は処女だと話すサム。

それを聞きサミュエルが反応します。悪魔バフォメット召喚には処女の子宮が必要。君が生かされている理由はそれだ。

連中は今夜君の体を引き裂き、悪魔を召喚すると聞いても、サムはヘビメタのジャケットしか思いつきません。

金持ちが金持ちであり続け、君は貧しいままの理由が判るか、と言うサミュエル。サムが指摘した健康保険の差ではありません。

上流階級の者は悪魔を崇拝し取引しているから、と聞いても早く戻らないとクビになる心配しか頭に無いサム。

逃げる術のないサムに、いきなり下着姿で迫るサミュエル。処女を捨てれば生贄にならないという理屈の、「サムの掟」の助け合いの精神でしょうか。

当然サムは拒絶します。抵抗したサムを殴り、フェミニストの自分に暴力をふるわせるなと叫ぶサミュエル。

サムのスマホに同僚の勘違い男ダンカンから電話がかかり、とった時にサミュエルはサムに拳銃を向けます。「サムの掟」で撃つなと訴えるサム。

ところが銃は不発、確認しようとしたサミュエルは、誤って自分の首を撃ちました。

儀式の準備を終え、衣装を身に付けた悪魔崇拝者は2人を監禁した部屋に来ます。そこで自分を撃った夫を見つけるダニカ。

ダニカは夫の傷口から手を突っ込み、魂の在りかの心臓を抜き出します。彼女はそれを水で洗いハーブをまぶし、古い鍋に入れ焼くよう指示します。

儀式が順調に進まない非難するジプシーに、今は処女を探せと命じるダニカ。

返り血を浴び豪邸から逃げたサムは近所の屋敷に助けを求め、その家の若い女に招き入れられました。

屋敷の絨毯に血がついたら怒られる、まず血の付いた服を脱ぎ体を拭けと告げたベビーシッターを名乗る女。

サムには今までの体験より、女が時給25ドルでベビーシッターしている方がショックです。

手のかかりそうな悪ガキ2人と顔を合した直後、2階からうめき声が聞こえてきました。

戻ってきた女はまだ警察に通報していません。それより糖分を取れとコーラを差し出す女。

飲もうとすると、またうめき声が聞こえます。コップを置き2階の部屋に注目するサム。

そこに彼女の胸の谷間目当てに悪ガキが現れ、その1人がコーラを飲みました。

ベビーシッターの女が上着を持ってくると、コーラを飲んだ悪ガキが突然倒れます。サムが飲ま無かったと気付き怒る女。

理由を問うサムに、もう1人の悪ガキがスタンガンを押し付けます。思わず力まかせにブン殴り、子供相手にマズいと謝ったサム。

サムのことを公立学校通いでガバメントチーズ(アメリカで社会保障を受ける人に配られる食品)を食べる、6年生で妊娠するような尻軽とののしる女。

ベビーシッターが上流階級の高飛車女の本性を現すと、例の2階の部屋から股間にドリルを付けた女(ウィットニー・ムーア)が現れます。

女とベビーシッターの姉妹で、正体はこの家の娘のようです。それよりもイカれた姿の女の登場に驚くサム。

股間から突き出たドリルを避けたサムを、ベビーシッター女が首を絞めます。サムに殴られよろめいた彼女はドリルに貫かれます。

怒ったドリル女はサムに突進しますが、ドリルは壁を破り電気配線に触れ感電死しました。

うめき声が聞こえます。サムが部屋に入ると、裸にされ縛られうつ伏せのジュディが助けを求めます。

サムが身に付けているのはKマートの安物ブラで、彼女はヤバイ姉妹の仲間ではないと見抜くジュディ。

何が何だか判らないサムに、敵の敵は味方だ、自分を解放しろとジュディは訴えます。

ジュディを解放し状況が掴めず、家の電話で警察に通報したサム。慌ててジュディが止めました。

電話は悪魔崇拝者たちにつながります。彼らは信者のキム(ジョーダン・ラッド)とスティーブン夫婦の、ラーソン家にいると告げるジプシー。

結果としてラーソン家の姉妹を始末したサムを、ジュディは”ナチュラル・ボーン・キラー”と呼びました。

2人が逃げようとすると、外には赤い衣装の悪魔信奉者たちがいます。裏口から外に出たサムが振り返ると、屋敷から白いドレスの少女が見つめています。

状況に驚くジプシーに、ラーソン家に娘ジュディを預からせたと説明するダニカ。

娘たちがジュディに殺された、と訴えるラーソン夫妻に、自分の指示通りに娘を殺したのか、とダニカは問い詰めます。

夫婦はジュディを殺しを望む娘たちに始末させようとします。しかし現れたサムに返り討ちにされました。

ジプシーはリーダーのダニカの不手際だと責め、逃げた2人の追跡を仕切ろうとします。

それを制し、サラの脱ぎ捨てたシャツを手に入れたダニカは、屋敷に戻りました。

鍋に入れオーブンで焼いたダニカの夫、サミュエルの心臓は怪しげな物体に変貌しています。

それをナイフで切ると、中にうごめく物がいました。魔術で生まれた物体に、指を切り血を与えるダニカ。

その鍋にサムのシャツを入れ、蓋を閉じるダニカ。外で蓋を開けると、彼女の指示で何かがサムを求め飛び出します。

魔術を使う能力こそ、自分がリーダーに相応しい証拠だとジプシーに告げるダニカ。

とある屋敷に逃げ込むジュディに、サラは自分のペスパに乗り逃げようと提案します。逃げでも無駄、イカれた連中はすぐに来ると言うジュディ。

様々な悪魔の使い魔は、塩の粒の数を数えないと部屋に入れないと言い、ジュディは部屋の周囲に塩で線を引きます。

悪魔は様々な儀式やルールに束縛され、行動は支配されていると説明しました。

屋敷の住人が帰って来る、一刻も早く逃げようと言うサラに、誰も夜明けまで戻らないと告げるジュディ。

窓の外に何かがいるようです。警察に電話しても無駄、街の住人は皆ダニカに従う悪魔崇拝者だとジュディは教えます。

連中がサラを見つければ殺さず捕らえ、悪魔バフォメットの召喚の儀式に捧げられ、裸で祭壇に縛り付けられる。

儀式で悪魔はサラの体に宿り、その体を引き裂いて誕生するのです。

身に付ける上着を探したサラは、部屋にあった写真や絵からこの家の住人が2人の子供の内、1人を生贄に捧げたと悟りました。

窓に引いた塩の線が風に吹き飛ばされます。ベットに座り、「2羽のフワフワうさぎちゃん」と繰り返し呟き心を静めるサラ。

いきなり彼女はシーツに襲われます。それは彼女に巻き付き、首を絞め口に入ります。

シーツを捕まえサラを解放すると、それを縛って濡らし冷蔵庫に入れ、大人しくさせたジュディ。

ダニカと共に悪魔崇拝者が行った、「魔女のマント」の術は破られました。

自分が術をかけようと、ジプシーはダニカが持つ娘ジュディの髪の毛を渡せと要求します。

そもそも今日の儀式に捧げるジュディが処女を失ったのが問題。日の出まで5時間しかないと、ダニカを責めるジプシー。

リーダーの交代を要求するジプシーに、ダニカは皆の意見を確認します。ドタバタ騒ぎにメンバーも困惑気味でした。

サラが残したスマホを差し出すジプシー。それを受け取ったダニカは新たな手を考えます。

その頃、ジュディはサラの前で酒をあおり、自分の境遇と母ダニカと悪魔崇拝者たちの狙いを語っていました。

以下、『サタニックパニック』のネタバレ・結末の記載がございます。『サタニックパニック』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2019 Dragged Into Sunlight LLC

自分に15歳で与えられたブラックカード(最上級のクレジットカード)やら何やらは、全て悪魔バフォメットの召喚の儀式まで自分をつなぎとめるエサだったと語るジュディ。

彼女はプロミスキーパーズ(キリスト教福音主義派の、男性のみの団体)の指輪を見せ、処女を守らさせられたと示します。

母ダニカの狙いを知り、儀式の前に処女を捨てたのでした。自分たちに富を与える儀式をやり遂げようと、悪魔信奉者は諦めていません。

富裕層である上流階級の、裏の顔を思い知らされたサラ。

その頃ダニカはサムの同僚、勘違い男のダンカンに電話をかけます。サムとはティンダー(マッチングアプリ)で出会ったが、失望したと告げるダニカ。

あなたなら自分の要求を満たしてくれると、ダンカンに告げ誘い出します。

一方ジプシーは自分に味方する悪魔信奉者と儀式を行っていました。弱者には死を、強者には富を、と祈る彼ら。

ジュディの話を聞いたサムは、自分が処女だと告白しました。なぜ早く捨てなかったと怒るジュディの目から、血が流れ出します。

彼女の体に、ジプシーの魔術で呪いがかけられます。術を防ぐ呪文を、マジックで全身に書くようサムに頼むジュディ。

ジプシーは呪いに使う人形をミミズの山の中に置きます。苦しむジュディは口からミミズを吐き出しました。

呪文を書き続けろと頼むジュディに、怯えたサムは帰りたいと訴えます。

サムに何か話せと言うジュデイ。恋人だったダニエルの話を始めるサム。

出会ったダニエルは、映画『マッドマックス』を効果音から何から再現できる、陽気な男でした。

2人が出会ったのはがん治療センターです。自分は化学療法を受けていた、と話しながら呪文を書きます。

サムの不安を鎮めるために、マントラを教えたのもダニエルです。彼女は「2羽のフワフワうさぎちゃん」と唱えることを覚えました。

サムはリンパ腫を、ダニエルは白血病を患っていました。『マッドマックス』を愛する彼に、オーストラリアは最高の国でした。

彼にオーストラリアの歌を作ったサム。それが仲間にスマホで見せた動画の歌です。

人形に針が刺されると、ジュディの爪の下や目の周りに針が現れます。苦痛に悲鳴を上げるジュディ。

2人の”cancerversary”(ガン治療の節目となる、自分にとって意味のある記念日)には、オーストラリアに行くとサムとダニエルは約束します。

しかしサムのガンは寛解し、ダニエルは闘病が続きます。ダニエルの姿に耐えられず、会うことを止め逃げ去ったサム。

誰も彼女を責めませんが、彼女自身が自分の行動を責めていました。

ジュディの口から出た髪の束を引きずり出し、サムは全身に呪文を書き終えます。

呪いの効力が消えました。ダニカが娘に魔術を教えたからだと怒り狂うジプシー。

勘違いして現れたダンカンを迎え入れるダニカ。彼女はダンカンにコカインを与え、カーペットを汚さぬようビニールを敷きます。

違和感を覚えたダンカンの口から、何かがはみ出します。娘とサラの行方を探す手助けをして欲しいと告げるダニカ。

彼女はダンカンの口から出た、はらわたを掴み全て引きずり出し床に広げます。

回復したジュディは母を恨んでいました。もう友達は置き去りにしないと言うサムに、ジュディも自分たちは友人だと告げます。

家に隠された拳銃を手に入れたジュディ。彼女は話の続き、今のサムについて尋ねました。

彼女は通りで演奏をして日銭を稼ぎ、ピザ配達の仕事を得ました。今日がその初日で、全てが良くなるはずだったと告げるサム。

敵は強力だが、あなたはブルーカラーのワル、自分は銃を持つ甘やかされた金持ちガキ、とジュディは2人で闘うことを誓います。

ダニカは内臓占いでサムとジュディの行方を掴もうとしていました。そこに現れたジプシーは仲間と共に、彼女の失態を責めます。

娘をサラに殺されたキム夫人が、金串をダニカの頭に突き刺します。その振る舞いをとがめたジプシー。彼女に内蔵占いを読み解く力はありません。

どうすべきか迷い取り乱したジプシーのスマホに、ジュディから連絡が入ります。自分は死にたくないので、処女のサムを差し出すと告げました。

2人が自分の家だと知り、残る2時間で儀式を行おうと仲間を引き連れて向かうジプシー。

その頃、倒れていたダニカは目を見開き、自らの頭に刺さった金串を引き抜き、生肉をかじり復活を遂げます。悪魔バフォメットに祈り、2人の行方を追うダニカ。

悪魔主義者を集めた隙に、逃げた2人は林の中を走りますが、サムを木の魔物が襲います。

それを射殺したジュディは、自分たちは今魔術が生んだ”影の谷”にいると警告します。

その2人の前に、車に乗ったダニカが現れました。自分の銃を向けた娘に、家に戻れとダニカは告げました。

ジュディに引き金を引いても世界は変わらない、あなたはサムと同じ境遇に落ち、ピザ屋で働くことになると告げるダニカ。

ダニカが娘に彼女のネックレスを見せると、魔術の力でジュディは倒れます。

銃を握ったサムに、お前が娘に与えられる物は、安物のシャワーカーテンにウォルマートのスウェットパンツだけと告げるダニカ。

サムは目の前にいる女はマーサ・スチュワートかぶれの白ワイン好きで、医療用大麻を吸う80年代音楽ハマリだと言い返します。

自分たちが世界を動かすと告げサムを侮辱したダニカが、彼女のシャツの切れ端を見せると魔術で倒され気を失ったサム。

ジュディの声でサムが目覚めた時、2人は祭壇に縛り付けられていました。祭壇の周りに塩で線が描かれ、儀式が始まろうとしていました。

ダニカは自分を裏切った者を許しましたが、ジプシーは許しません。彼女が声をかけると、ジプシーの肺は水で満たされ溺れます。

そして自分の脳天に金串を刺した、キム夫人を冷たくあしらうダニカ。

溺れ死に倒れたジプシーは、最期に祭壇を囲む塩の線を引っかき、途切れさせました。

ジュディは母に許しを乞います。サムにあと5分で処女を失い、出産を経験し偉大な悪魔バフォメットが降臨すると告げたダニカ。

最後まで悪態をつくサムをあざ笑い、命乞いするジュディにはお前は母の顔に唾を吐いたと告げました。

ダニカに従い、悪魔を讃えよ、バフォメットを讃えよ、と叫ぶ悪魔信奉者たち。弱者には死を、強者には富を、と叫びます。

信者たちは仮面を付け、マントを脱ぎ、祭壇の周りで交わり始めます。彼らの間から姿を現す醜い悪魔。

悪魔が迫り、いつの間にかサムのお腹は大きくなっています。そんな状態でピザを受け取った際、チップを払わなかった男を見つけ、罵声を浴びせるサム。

力任せに動いたおかげか、サムの拘束が解けました。ナイフを取り自分の腹に突き付け、ジュディを解放しろと叫びますが、ダニカは娘の喉を切り裂きます。

悪魔信奉者に捕らえられたサムを陣痛が襲います。「2羽のフワフワうさぎちゃん」と繰り返し唱えますが、やがて絶叫しました。

サムが産み落としたのは2羽のウサギです。キム夫人が剣を振った時、なぜか別の場所にいたサム。

我に返り立ち上がった彼女の前に2羽のウサギがおり、ブランコを漕ぐ音が聞こえます。

ブランコには白い服の少女が乗っていました。サムに飛びついてきた少女は、自分はサムジエルだと名乗りました。

それはバフォメットより上位の悪魔の名前でした。サムに途切れた塩の線をみせる大悪魔サムジエル。

少女の姿の大悪魔は、自分より下級の悪魔が崇拝されるのが面白くないようです。少女はサムの手を取り、もっと強くて意地悪な誰かさんがいる、と歌い踊ります。

ウサギを抱いたサムジエルは意地悪なウサギが望む通り、この場にいる者を皆殺しにすると言いました。それを聞き「サムの掟」を持ち出すサム。

彼女の名サマンサも、悪魔サムジエルも共にサム。サム同士は助け合うもの、と説明してもサムジエルは納得しません。

そんなルールは知らないと言う少女の姿の悪魔に、全世界のサムが知っていると言いくるめるサム。

納得したのか、大悪魔サムジエルは抱いたウサギを噛みちぎり、サムに走れと言いました。

気付くとあの瞬間に戻っています。キム夫人の振るった剣は悪魔信奉者のリーダー、ダニカの首を飛ばします。それを見て大笑いする少女姿の大悪魔サムジエル。

サムは残るウサギを抱えて逃げます。悪魔信奉者たちは次々倒れていきました。サムジエルはそれを見て手を叩き喜びます。

ウサギを懐に入れ、ベスパのミニバイクに乗ったサム。エンジンがかかり走り出すと、血まみれのサムジエルが手を振り見送りました。

翌朝。ダニカと夫サミュエルの写真が載った新聞を読んでいたピザ店の店主の前に、サムが現れました。

帰りが遅かった彼女に保温バックはどこだ、ネズミの類を店に持ちこむな、と言う店主に構わず保証金5ドルを取り返すサム。

ネズミの類ではない、このウサギはジュディJrだ、そう言ってサムは立ち去ります。

この仕事を捨て地獄にでも行くつもりか、と叫ぶ店主にサムは答えます。向かうのはオーストラリアだと。

懐にウサギのジュディJrを入れ、サムはベスパに乗り走り去って行きます。

映画『サタニックパニック』の感想と評価


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

冒頭『エルム街の悪夢』(1984)を思わせる少女が登場し、ジュディの元に母親が迫る映像は『ハロウィン』(1978)の再現でしょうか。

この部分のBGMはルチオ・フルチ映画でお馴染み、ファビオ・フリッツィの音楽風の旋律。オープニングだけで熱心なホラー映画ファンはゾクゾクしたでしょう。

レベッカ・ローミンが男の口から何やら引き出す、ルチオ・フルチの『地獄の門』(1980)みたいなシーンもあります。アレより汁気が少ない、ソフトな描写(?)なのでご安心を。

ルチオ・フルチなど、様々なホラー映画オマージュはあくまで映画の一部。実際に夫婦のレベッカ・ローミンとジェリー・オコンネルが、あの役で登場しただけで大爆笑です。

本作が初長編監督作となったチェルシー・スターダストは、映画好きの両親、特にホラー映画好きの父の影響を受けて育ちました。

彼女は自分は4人の監督のジョン、ジョン・ヒューズ、ジョン・カーペンター、ジョン・ウォーターズそしてジョン・キャメロン・ミッチェルに育てられたと語っています。

そして女性映画監督キャスリン・ビグローとカリン・クサマの大ファンと語っています。これらの監督の名前を聞けば、『サタニックパニック』の雰囲気が理解できるのではないでしょうか。

長年ファンのグレイディ・ヘンドリックスの、本作脚本を読む機会に恵まれ気に入った彼女。その5~6ヶ月後、映画化の話が持ち込まれます。製作者は女性監督起用を検討していました。

彼女は膨大なメールを関係者とやり取りし映画の映像や音楽、文献など参考資料を提示し自分のビジョンを説明します。こうして彼女の監督への起用が決定します。

立場の違う女性の友情を描いたガールズホラー


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

本作はテキサスで18日間で撮影されました。ハロウィンの時期で寒く、雨も降り、おまけに夜間撮影もあります。

クライマックスの悪魔信奉者の集会シーンは全てが参加者全てのエネルギーが爆発し、素晴らしいものになった。その時のレベッカ・ローミンの存在感は圧巻だと語る監督。

撮影現場の主要スタッフは、監督が学生時代から知る撮影監督マーク・エバンスを除き、全て女性で固められられました。

本作に多くの女性俳優も集結しています。ルビー・モディーンは提示された本作の脚本を読み終えた時、家の窓に鳥が衝突する奇妙な体験をした、と語っています。

自身も『死霊のはらわた』(1981)など、ホラー映画ファンの彼女はオーディションを受け監督と話します。この役は過酷で危険な面を持つとを説明され、了解した上で引き受けました。

ホラー映画オマージュやゴアシーン、多くのコメディ描写にあふれた作品ですが、メインテーマは立場の違う2人の女性が出会い、協力し、共に戦い友情を結ぶ物語です。

短い撮影時間でリハーサル時間も限られていました。短いスケジュールの中で悲鳴を上げ過ぎたヘイリー・グリフィスは、声がかすれます。それがリアルな雰囲気を生んだと語る監督。

ヘイリー・グリフィスとルビー・モディーンのシーンは時系列で撮影し、2人が感情の高ぶりを演じる姿は感動的でした、と監督は振り返っています。

さて、ゴアシーンにエロチックなシーンなど、悪趣味シーンが満載の本作ですが、意外にあっけらかんとした印象を受けます。

性的描写・出産など、男性目線なら刺激的にしつこく追求したくなる場面が、女性目線ではそれらのシーンは前後の状況を交え、達観した視点で描かれたのかもしれません。

従来のゴアシーン満載のホラー映画と異なる雰囲気は、女性製作陣が作るガールズホラーである事に起因しているようです。

上流階級は悪魔信奉者?格差社会を風刺したホラー


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

本作は接点の無い低所得層の女性と、上流階級のレールからはみ出した女性が友情を結ぶ物語です。

本作には格差を風刺して笑いにする、日本人に判りにくい様々な小ネタが多数あります。あらすじ・ネタバレ紹介では、できるだけ多くを紹介しました。

鼻もちならない上流階級は下層階級を犠牲にし、自分の子供すら犠牲にする悪魔みたいな連中と溜飲を下げるお話で、両者に越え難い壁があると風刺したお話でもあります。

悪魔主義者が富を目当てに暗躍する映画には、『ヘレディタリー 継承』(2018)もあります。映画の中の富裕層は、実に恐ろしい存在です。

良くも悪くもチップで生計をたてる人々が存在するアメリカ。是非はともかく、低賃金でチップすら手に入らぬ職種よりマシ、という考え方もあるようです。

日本人には判りにくい状況です。しかし2021年に、あるシアトルのウーバーイーツ配達員の投稿した動画が大きな反響を呼びました。

ある配達に45分かかり配達先に車を停められず、注文主に頼んでも家の外で受け取ってくれず、やむなく駐車代に3ドル払います。この配達の報酬は2.5ドル、注文主のチップは1.5ドル。

『サタニックパニック』が皮肉を込めて笑いにして描いた状況が、感染症のリスクを負って働く人々に現実に起きていると、多くの人が事実に気付き衝撃を受けました。

この構造的な問題に目を向けず、低所得に暮らす人々を自己責任と切り棄てるのは、本作の上流階級の悪魔信奉者と変わらぬ態度でしょう。

コメディ映画には社会を風刺する力があるが、現実は映画より残酷だと示す事例でしょう。

日本にチップ文化はありませんが一億総中流など昔話、アメリカ同様の格差社会が到来しました。

アメリカのチップを払わぬ奴に相当するのが、日本の「お客様は神様」ではなく、「お客様が神様」の屁理屈を振り回す輩でしょうか。

そういう連中の正体は、この映画に出てくる悪魔信奉者の類でしょう。

まとめ


(C)2019 Cinestate Sat Pan, LLC

ホラー映画ファン大満足、風刺コメディとして笑える『サタニックパニック』。女性たちが作ったガールズホラーとしても要注目です。

チェルシー・スターダスト監督の愛情に満ちたホラー映画リスペクトと、風刺ネタと女性の友情の物語としてお楽しみ下さい。

最後にこの映画は、「オズの魔法使い」をモチーフにした作品だと指摘しておきましょう。

赤いスニーカーを履いた主人公、サムが「お家」に帰ろうとオズの国ならぬ、悪魔信奉者の住むミルベイシン地区をさまようお話です。

その過程で友人を見つけ、「お家」の素晴らしさに気付いた主人公。ラストシーンの解放感は、このストーリーを経て産み出されたものでした。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C)2020 HOLLYWOOD INNOVATIONS GROUP, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

次回第26回は人間が狂暴化するウィルスが世界に蔓延! パンデミックサバイバルアクション映画『クレイジーズ42日後』を紹介します。お楽しみに。

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映画『17歳の瞳に映る世界』あらすじ感想と評価解説。エリザヒットマン監督の“大人になる旅路”の少女を追ったロードムービー|映画という星空を知るひとよ71

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第71回 ベルリン国際映画祭銀熊賞、サンダンス映画祭2020ネオリアリズム賞を獲得した『17歳の瞳に映る世界』が、2021年7月16日(金)より、TOHOシネマ …

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【ネタバレ】パラダイス人生の値段|あらすじ感想結末と評価解説。近未来では‟長生きの秘訣”が格差社会の乖離を大きくする|Netflix映画おすすめ138

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第138回 今回ご紹介するNetflix映画『パラダイス 人生の値段』は、そう遠くはない未来のドイツが舞台です。その世界では自分の人生(時間 …

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映画『コンタクト消滅領域』ネタバレ感想評価と結末あらすじ。見えない敵と戦うラストの兵士のアンハッピーのリアルさ|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー31

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第31回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

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【ネタバレ】ニキータ|結末考察とあらすじ感想。女性暗殺者が真に強くなり“愛と葛藤”のラストで出した“生きざま”|すべての映画はアクションから始まる33

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第33回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画は …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学