Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/11/24
Update

地獄が呼んでいる3話ネタバレ結末感想とあらすじ評価解説。救世主チョン議長の正体はジョーカーなのか?

  • Writer :
  • 増田健

Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を各話完全紹介

新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)とその前日譚の長編アニメ映画、『ソウル・ステーション パンデミック』(2016)を公開し、韓国を代表するホラー映画作家となったヨン・サンホ。

『新感染』シリーズ待望の続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)も大ヒットを記録します。

その彼が手掛けるNetflixオリジナルドラマ、『地獄が呼んでいる』が2021年11月19日(金)より、全世界に配信されました。

第2話は死との宣告を受けたジョンジャに、地獄に行く姿を生中継したと持ち掛けた宗教団体・新真理会。相談されたミン弁護士は困惑しますが、結局ジョンジャは残される子供のために、報酬目当てに承諾します。

新真理会の議長ジンスは、神の裁きを世に知らしめようと”試演”を自演します。それはギョンフン刑事の妻の殺害犯を、生きたまま焼き殺す事でした。それに加担するギョンフンの娘、ヒジュン。

神の騒ぎが実現したと信じた新真理会の狂信者、通称”矢じり”たちは様々な暴挙に走ります。ギョンフンとミンは、かろうじて”矢じり”の追及を逃れてジョンジャの子供たちを、国外に脱出させることに成功します。

ついにジョンジャが地獄に行くと予言された時刻が訪れます。多くの人が固唾を飲み見守る中、一体何が起きるのでしょうか?

【連載コラム】「ある日、地獄行きを告げられた」Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を完全紹介の記事一覧はこちら

スポンサーリンク

ドラマ『地獄が呼んでいる』の作品情報


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

【配信】
2021年(韓国ドラマ)

【原題】
지옥 / Hellbound(英題)

【監督・脚本】
ヨン・サンホ

【キャスト】
ユ・アイン、キム・ヒョンジュ、パク・ジョンミン、ウォン・ジナ、ヤン・イクチュン、キム・ドユン、キム・シンロク、リュ・ギョンス、イ・レ

【作品概要】
「新感染」シリーズのヨン・サンホが手掛ける、世界に向け配信された全6話のホラードラマ。この作品は彼が2003年に発表した短編アニメーション映画を発展させた作品です。

彼はドラマ配信に併せ、1980年代の韓国民主化闘争を描いたグラフィック・ノベル『沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート』を描いたチェ・ギュソクと共作で、この作品の原作となるコミック『地獄』も発表しました。

主演の謎めいた人物に、ドラマ『トキメキ成均館スキャンダル』(2010~)や『チャン・オクチョン-張禧嬪-』(2013~)で人気を高め、映画『バーニング 劇場版』(2018)や『#生きている』(2020)に出演のユ・アイン。

彼を追う刑事役を『あゝ、荒野 完全版』(2017)のヤン・イクチュンが、その娘役を『新感染半島 ファイナル・ステージ』の演技が絶賛されたイ・レが演じました。

ドラマ『愛人がいます』(2015~)や『ウォッチャー 不正捜査官たちの真実』(2019~)のキム・ヒョンジュ、『それだけが、僕の世界』(2018)や『サバハ』(2019)、『スタートアップ!』(2019)のパク・ジョンミン、『英雄都市』(2019)のウォン・ジナらが共演しています。

ドラマ『地獄が呼んでいる』第3話のあらすじとネタバレ


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

パク・ジョンジャ(キム・シンロク)の”試演”の時が迫ります。サイレンが鳴り放送が流れます。

「パク・ジョンジャは4日前に”告知”を受けた、”試演”とは罪人が地獄で受ける永遠の苦痛を、皆に示す神の介入です。罪の重さを人類に知らしめる、神の意図です…」

カウントダウンが開始され、集まった人々もテレビの前の人々も、固唾を飲んで見守ります。

予言された時刻が訪れました。何事も起きないのかと思われた瞬間、轟音が響きました。

ジョンジャの前の扉が打ち壊されます。集まった群衆もミン・ヘジン弁護士(キム・ヒョンジュ)も、現れた黒い巨体の怪物を目撃します。

怪物はジョンジャを殴り飛ばしその首を掴み持ち上げ、体を壁に押し付けます。腕を鋭い尖端を持つ形に変型させると、ジョンジャの右手首に突き刺し壁に固定した怪物。

突然の出来事にSWAT隊員たちは射撃出来ず、集まったカメラマンたちは一斉に写真を撮り始めます。捜査班長の射撃命令を聞くと、狂喜するウンピョ刑事を残して怪物に向かい、拳銃を発砲するギョンフン刑事(ヤン・イクチュン)。

銃弾は命中しても効果は無く、ギョンフンは怪物に殴り倒されました。助けを求めはって逃げるジョンジャの前に現れた3匹の怪物は、彼女の体を凄まじい力で殴打します。

その光景は見るに耐えないものでした。3匹の怪物がジョンジャに手をかざすと、まぶしい光が放たれます。”試演”を終えると、最前列で見守るVIP客の方へ走り出す怪物たち。

怪物は彼らに衝突すること無く異界へ姿を消しました。周囲が静まった時には、無残に焼け焦げたジョンジャの遺骸だけが残されていました。

ギョンフンは意識を失ったままです。信じられぬ出来事に遭遇した人々はうろたえますが、ウンピョ刑事は正座すると、遺骸に向かって深々と拝礼します。

それを見たVIP客も、野次馬たちも警察・マスコミ関係者も、同じように土下座します。周囲の人々が皆土下座する光景を、立ち尽くして見つめるミン弁護士と同僚のパク弁護士…。

目覚めたギョンフンは病院にいました。周囲に誰もおらず、病院を抜け出した彼は自宅に戻ります。娘と連絡が取れぬままベットに横たわるギョンフン。

翌朝、ソウル市内は静まりかえっていました。ギョンフンは車を走らせソブク警察署に向かいますが、そこも人の気配がありません。

テレビは昨日、多くの人が信じられぬ光景を見たと報じています。いまや韓国一の重要人物になった者のメッセージを、皆が待っているだろうと伝えます。

その人物は火災現場から母子を救出し、大通りで人質を取り刃物を振り回す男を大人しくしさせた人物として、既に報道されていたと語るアナウンサー。

現在起きた事態を10年前から警告していたその人物。彼は新真理会議長、チョン・ジンス(ユ・アイン)と紹介します。テレビは自宅の彼とのインタビューを流し始めます。

昨日”試演”を目撃した人々が、神のメッセージを考えるには時間が必要だと話すジンス。しかし悪行を恐れ、何もしないのは解決にならぬと語りかけました。

ジンスが通常の生活に戻り善行に励むべきと話す声を聞きつつ、キム・チャンシク殺害事件の捜査資料の映像を確認するギョンフン刑事。

それは焼死体で発見された、ギョンフンの妻を殺したキムの体を運ぶ人物の映像です。顔は確認できませんが、その人物が着ている服の特徴に気付いたギョンフン。

アナウンサーに最初の”試演”で死んだチュ・ミョンフンと、昨日”試演”されたパク・ジョンジャの罪は何かと問われ、民間の我々の調査力には限界があると語るジンス。

特にジョンジャの罪の証人、つまり彼女の子供たちは海外に逃亡したと説明します。逃亡を助けた警官と弁護士は確認済と語ったジンスは、全ての市民、そして警察と検察と政府には、慣行にとらわれず積極的に動いて欲しいと訴えます。

なぜ今、”試演”が行われたのかとの問いに、神が人間の歴史に介入しメッセージを送る事は過去にもあった、今起きたでは無く、なぜ今まで注視しなかったと考えるべきだ、と話すジンス。

今日やっとインタビューが行われたのは、今まで皆が神の意図を無視していた証拠だ。だから神は明確な形で我々に意図を示した、彼はそう訴えます。

ギョンフンはテレビに映るジンスの自宅にある服が、防犯カメラ映像の人物の服の特徴と同じと気付きます。それは彼の娘ヒジョン(イ・レ)の着るジャージに似ていました。

アナウンサーがジンスの正義感を持って生きろとの言葉は、当然であり抽象的だと疑問を口にすると、強い口調でその当然の行為が史上一度も成されない、それが神の不満だと叫ぶジンス。

少し興奮したと詫びると、ジンスは新真理会は過去に調査した132件の”告知”と”試演”を元に、地獄に送られた者の罪を分析したと説明します。

その資料はホームページで確認できる。神が我々に何を望み、何を禁じたかが判るとジンスは言います。これは新時代の聖書になると語るアナウンサー。

しかし人間には善悪の判断は難しいと言葉を続け、強い口調で人間は何が正しいのか判るのだ、神はその能力を与えたと叫ぶジンス。

しかし善悪を選ぶ瞬間、人は悪の誘惑に勝てない。選択とは罰に過ぎない。私たちにもはや悪行を放置する権利は無く、善行を成す義務が残った。それが新時代の人間の成すべきことだとジンスは語りました。

最後にまたインタビューしたいと告げたアナウンサーに、自分は神の意図を伝える義務を果たした、今後は神に呼ばれるまで、その御業の痕跡を探すと語るジンス。

新しい世界に来た皆さん、歓迎します。ジンスは最後に視聴者にそう呼びかけました。

放送に反応して、配信番組で人間は神に愛されていると喜ぶ奇妙な扮装の男、”骸骨野郎”。しかし彼は、ジンスに対しやりきったと満足してる場合か、と問いかけます。

怒りが我々を駆り立てる。”試演”を見て神に従った人間もすぐ忘れる。有識者が意見を口にすれば世界は一瞬で過去に戻るのだ。

昨日の”試演”の後に皆がひれ伏す中、立っていた者がいるとミン弁護士とパク弁護士の姿を映す”骸骨野郎”。彼らの弁護士事務所は我々の邪魔をしてきたと主張します。

そして怪物、予言の実行者に発砲するギョンフン刑事の姿を示し、こんな人間がいる限り我々は休めない、我々はもっと苦労すべきと呼びかける”骸骨野郎”。

ミン弁護士はカナダ行きの航空券を手配し、ガンと闘病中の母と共に逃げようと慌ただしく準備しています。この家で死にたかった、とつぶやく母に私に従ってと訴えたミン。

荷物をまとめるミンは、昨日”試演”の直前に受け取った、キム・ジョンチルなる人物から送られた封書に気付きます。開封すると中には「未来宗教」と書かれた冊子が入っていました。

ギョンフンはジンスの家に向かいます。家の前には彼の言葉を求める信者たちが集まっています。彼らはギョンフンが、昨日予言の実行者に発砲した刑事と気付きます。

未来宗教の資料の付箋が貼られた箇所に、「天使の声を聞いたチョンさん」の体験談が乗っています。写真に写る男はチョン・ジンス議長でした。

資料の日付は2004年10月です。この冊子を発行した人物こそ、封書を送ったキム・ジョンチル牧師と知ったミン。

なぜ現れたと言い寄る信者たちをかき分け、ジンスの元に向かうギョンフン。同じ頃、母と共に車で弁護士事務所に向かうミンは、パク弁護士に電話しますがつながりません。

ミンは駐車場に止めた車に母を残し電話をかけます。電話に出たパクに未来宗教の資料から得た情報、ジンスは20年前に予言を受けていたと告げるミン。

彼女が弁護士事務所に入ると誰もいません。そこは新真理会の信者、”矢じり”たちの襲撃を受け荒らされていました。

壁には「神に逆らう者は死ぬ」など落書きが書かれていました。ミンに対しもう止めよう、と告げるパク弁護士。

パクは襲撃を受け、血を流し倒れていました。俺は怖い、お前は早く逃げろと告げたパク。彼の傍には”矢じり”のマークが描いてありました。

ミンの母が残った車を”矢じり”たちが襲います。ミンの母を引きずりだすと、凶器で殴打する”矢じり”たち。駆け付けたミンにも暴行を加えます。

“矢じり”たちは去っていきました。ミンは母に近寄りますが、頭部を殴られた母の意識はありません。

ギョンフンはジンスの家に押し入りますが、中にはジンスもヒジョンもいません。そしてミンは母と共に救急病院に到着していました。

待合室のミンは、皆が自分を見てささやいていると気付きます。ネットでは自分の名が検索1位になっており、先ほど受けた暴行の動画までネット上にアップされています。

治療室に入って母の死を確認するミン。彼女は固い表情で病院から出て行きました…。

以下、ドラマ『地獄が呼んでいる』第3話のネタバレ・結末の記載がございます。ドラマ『地獄が呼んでいる』第3話をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

新真理会のジンス議長の家から出たギョンフン刑事は、信者たちから袋叩きにされます。しかし彼のスマホに議長から電話がかかったと知り、暴行を止める信者たち。

ビデオ通話で連絡したジンスに、娘ヒジョンはどこだと叫ぶギョンフン。冷静な声で迷惑をかけたと言ったジンスは、スマホの画面を周囲の者に見せろと言いました。

議長の声を聞き、どこにいるのですかと叫ぶ信者たちに、ギョンフンに会いたいので彼の邪魔しないで下さい、と告げるジンス。

娘に会うために、ジンスが送信した住所に向かうギョンフン。一方母を殺されたミン弁護士は、未来宗教のキム・ジョンチル牧師の元に車を走らせます。

人里離れた地にある、ユルヘ養護施設に到着したギョンフン。そしてミンは高架下にある、未来宗教と書かれた粗末なプレハブ小屋の前に現れました。

笑顔でミンを迎え入れるジョンチル牧師。ジンスがこんなに有名になるとは、と語った牧師は、ジンスの録音ファイルを聞かせます。神か何か判らない恐ろしい者の声を聞いたと話すジンス。

廃墟と化した養護施設内で娘を探すギョンフン。突然ピアノの音が響きます。彼は音にする場所に向かいました。

そこにはジンス議長がいました。ヒジョンの居場所は話を終えたら伝える、と告げたジンスは20年前に予言を聞いたと告白します。

この養護施設で暮らしていたジンスは、施設の廊下で宙に浮かぶ巨大な顔に出会います。その時初めて”天使”を見たと語るジンス。

天使は僕に、20年後の10時30分に死ぬと告げたと話すジンス。同じ内容はミンの聞くる録音ファイルからも流れます。その天使はお前は地獄に行くと告げました。

ギョンフンにそれを聞いた当時、とても混乱したと話すジンス。時間と共にその記憶は鮮明になり、似た事例を必死に探したとジンスは言葉を続けます。

録音データが欲しいと頼んだミンの前で、ジョンチル牧師はデータを削除します。数日前にジンス議長が現れ、予言で聞かされた地獄に行く時は正確にはいつだ、と訊ねられたとミンに告げる牧師。

その時は10分後だと語るジンス。それを聞きギョンフンはなぜ娘を巻き込んだ、と叫びます。ジンスは彼が偽装した”試演”、キム・チャンシク殺しの犯人を、彼が見破ったと悟ります。興奮して迫る刑事に時間が無い、話を聞いて欲しいと頼むジンス。

お前に地獄に堕ちる罪は無かったろう、と言うギョンフン。確かに何も罪を犯していなかったと答えるジンス。幼い頃の彼は大人しくしていれば、きっと母が戻って来ると信じていました。

なぜこんな事が起きるのか。10年以上考えてもジンスに答えは判りません。理由が無ければ耐えられない。この奇矯な現象はより良い社会を生むため、正義のために起きたと信じなければ。

だから、明らかな悪人が地獄に行く姿を見せる必要があった。それは1人でも出来たと語ったジンスに、ならばなぜ娘を巻き込んだと叫ぶギョンフン。

それは、あなたが私に言った「神は人間の自律を信じないのか」の言葉(第1話のシーン)に感動したからだ、と答えるジンス。

娘の自律を利用したのかと問うギョンフンに、自分の身はあなたの自律に任せたい、ジンスはそう言いました。

予言を聞いてから今日まで苦しんだと告白するジンス。それは自分の死よりも、自分が地獄行きに値する罪を犯すかもしれない、他人の罪を見過ごすかもしれない、と怯え続ける恐怖でしす。

その苦しみの中で20年間生きたジンス。しかし自分は恐怖のおかげで、正しく生きられたと悟ります。

神がなぜこんな事をするのか判らないが、世界中の人にこの恐怖を感じて欲しい。恐怖は世界を以前より正しく導き、人々を罪から解放すると告げるジンス。

ジョンチル牧師はジンスから、自分の地獄に行きを隠してくれと頼まれたとミン弁護士に告げます。その代わりに素晴らしい提案をした、それは新真理会議長の座を私に譲るというものだ、と語る牧師。

この提案に同意するなら、あなたを殺せと言われた。逃げようとするミンに笑顔のジョンチルは、私は虫一匹殺せぬ人間だと告げました。

外には”矢じり”のメンバーが集まっていました。彼らに捕らえられたミンに、私は前の議長と異なる、より強力な議長になると告げ立ち去ります。そして”矢じり”たちから、激しい私刑を加えられるミン…。

まもなく”試演”の時を迎えるジンスは、ギョンフンに娘ヒジョンは家にいると伝えます。そしてあなたの選択肢は2つだと言いました。

1つは”試演”で地獄に送られるジンスの姿を撮影し、世間に公開すること。神の存在を信じ目覚めた人々は、信仰を失いパニックになる。あなたは家に帰り、殺人犯である娘を逮捕すれば良い。そうすればあなたの正義は果たされる。

それが嫌なら私の死は一切口外せず、僕の作った世界で仲良く自由に暮らして下さい。勝ち誇ったようにギョンフンに告げるチョン・ジンス。

彼は全てをギョンフンの決断、彼の”自律”に委ねます。どこからか響く轟音を聞いたジンスは、始まったとつぶやきます。

今後の世界は任せます。黙る事を選ぶなら、僕の死体は始末して下さいと告げるジンス。現れた怪物、3人の予言の実行者は彼に襲いかかります。

激しい責め苦を受けるジンスを、ギョンフンは力なく見つめていました。ジンスに手をかざした怪物たちは、彼の体を焼き払いました。

予言の実行者が虚空に姿を消すと、後には焼け焦げたジンスの骸が残っていました。それを黙って見つめるギョンフン。

彼が家に戻ると確かに娘がいました。何も語らぬ父をヒジョンが抱きしめると、ギョンフンは涙を流します。

そして未来協会の小屋の傍には、物言わぬミン弁護士がうち棄てられていました…。

この運命の日から、幾日過ぎたのでしょうか。多くの人が行き来する街の中に、予言の実行者の像が建っています。

それを見た車の中の男がつぶやきます。「新真理会の奴らめ…」。

スポンサーリンク

ドラマ『地獄が呼んでいる』第3話の感想と評価


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

第3話。”試演”を目の当たりにした人々は恐怖し、神にひれ伏します。狂信者は自分の正しさを確信し、傍若無人に振る舞い始めます。

人々が地獄を恐れ、罪を犯さぬ新世界が到来するのか。悪人が超自然的な裁きを恐れることで、凶悪犯罪が減った社会が到来する。将に『デスノート』(2006)で新世界の神として、主人公の夜神月が築こうとした、犯罪の無い世界が生まれるのでしょうか。

しかしドラマは、実は神の裁きはまやかしかもしれない、この現象を利用してチョン・ジンスが作った虚像だと示します。次のエピソードでどんな”新世界”の姿が描かれるのでしょうか。

罪が人知を越えた力、ノートに名を記す者によって裁かれた『デスノート』、しかしその物語は到来した新世界の姿より、ノートのルールを巡る頭脳戦として展開します。

ジェームズ・ワンの人気シリーズ『ソウSaw』(2004)シリーズも、殺人鬼ジグソウには命を軽んじる者に、その価値を命を懸けたゲームで学ばせる狙いがありました。

そんな設定を脇に置き、「ピタゴラスイッチ」的殺人マシーンの描写や、時系列を駆使して凝りに凝ったストーリーを提供し観客を喜ばせた『ソウSaw』シリーズ。

これらの作品を非難してはいません。物語に与えた設定やルールを駆使し、観客を驚嘆させる展開を目指すのは想像力とサービス精神の発揮で、それを成し遂げたジャンル映画やドラマは人気シリーズに成長します。

その結果、当初観客に示したフィクションならでの問い、もしそれが起きたら(そんな状況に遭遇したら)どうする、という思考実験の要素が薄れるのは確かです。

しかし『地獄が呼んでいる』は、罪に天罰が下る社会が現れればどうなるのか、その社会はどう実現するのか、そんな社会はいかなる状況を生むのか、そしてその社会はどう運営されるのかを正面から追及します。

そして、そもそもその社会を生んだ奇跡は信じて良いものか。それは偽りや集団幻想の類いに過ぎない可能性は無いのか。本作が観客に問う思考実験は、社会の様々な現実に応用できるものと誰もが気付くでしょう。

ホラー作家にして社会派映像作家、ヨン・サンホ監督。世界中の人々が思いを巡らせる、壮大なテーマを持つドラマに挑みました。

暴力がもたらす残酷な死が意味するもの


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

地獄に堕ちるなら、そこで充分に酷い目に遭うはず。ところが怪物=予言の実行者は、堕とす前に凄まじい暴力を振るいます。”試演”されたジョンジャは逃れようともがき、ジンスは苦痛を終わらせろと叫びます。

韓国映画、そしてヨン・サンホ作品のバイオレンス描写は過激。しかしキリスト教の価値観がストーリーに大きく関わる本作は、暴力描写にも様々な意味があると考えるべきでしょう。

荒野で苦行し、十字架に磔にされ、神の子として復活したイエスを信仰するキリスト教。正統派の教義は苦行を重視しませんが、自らの体に苦行を与えること意義を見い出す宗派もあります。

そこまで過激な教えを信仰せずとも、十字架にかけられたイエス像に礼拝するキリスト教徒。彼らにとり暴力と、その結果もたらされた死から復活の物語は、実に大きな意味を持っています。

今回のエピソードで冒頭に”試演”されたジョンジャ。彼女は手首を刺され壁にうちつけらます。これは磔にされたイエスと同じ目にあった、と解釈することができます。

イエスが釘を打たれたのは手のひら、と思った方もいるでしょう。しそれは医学的に無理との考証が広まると、その場所は手首だと考えられるようになりました。

キリスト教信者などの体に、イエスが磔刑にされた際に傷付けられた箇所に傷が現れる「聖痕現象」。これは『スティグマータ 聖痕』(1999)など、ホラー映画などに度々登場しています。

ドラマの中で罪を語らぬまま、罪人として”試演”されたジョンジャ。正確に磔にされた訳では無く深読みかもしれませんが、彼女の死にはイエスの姿が重ねられているのでしょう。

黒澤明の映画『用心棒』(1961)で主人公の三船敏郎は、敵の手に捕らえられ激しく拷問された後に、最後の戦いに挑み敵を倒します。

このシチュエーションはマカロニ・ウェスタン『荒野の用心棒』(1964)でも再現され、その後欧米のアクション映画に繰り返し登場します。

ヒーローが拷問され、疑似的な死から復活し、救世主として悪を倒す。この姿がイエスと重なり好んで採用されたと言われています。

予言の実行者の激しい暴力に晒された罪人は、本当に死んだのでしょうか。特にシングルマザーであるジョンジャの”試演”には、様々な神性が与えられていると思われます。

そして”試演”ではありませんが、”やじり”たちの暴力に晒され倒れたミン弁護士も、本当に死んだのでしょうか…。

重大な選択を強いるトリックスター、チョン・ジンス


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

物語の外にいる我々観客は、”試演”という神の裁きは偽りだと知っています。そして”試演”が人の罪の結果であるなら、その罪とは何なのかは明確ではありません。

ドラマの中の世界では、人々はジンス議長の描いた筋書きを信じ、神の意図だと”試演”を受け入れます。悩み抜いた末に悪魔的策略家となったジンスの計略で、新たな世界が誕生したのです。

ジンスの企みは人の”自律”を口にした、ギョンフン刑事に狙いを定めます。自らの手を汚すか否か、それは正しい判断なのか、と究極の2択を迫られたギョンフン。

キリスト教の説く7つの大罪を題材にした映画『セブン』(1995)は、ラストで主人公のブラット・ピットに究極の選択を迫ります。これと同様の状況をヨン・サンホ監督は描きました。

主人公を翻弄する悪魔的な犯罪者は、映画に度々登場する魅力的なキャラクターです。その中の1人に『ダークナイト』(2008)でヒース・レジャーが演じた、あのジョーカーがいます。

劇中でバットマンに恋人レイチェルか、地方検事ハービー・デント(後のトゥーフェイス)のどちらを救うのか、と迫るジョーカー。

ジョーカーはラストではゴッサムシティの市民たちに、善良な市民と囚人たちのどちらを救うべきか、その命をもて遊び愚弄しつつ、残酷な選択を強要します。

究極の選択をゲーム感覚で迫る、悪魔的トリックスターの姿こそ、ヒース・レジャー版ジョーカーの魅力です。ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』(2019)で演じた、社会への不満を爆発させるジョーカー像と異なっていた事実を思い出して下さい。

ユ・アインが演じたジンス議長は、ヒース・レジャー版ジョーカーと並べるべき、屈折した思いを抱くキャラクターです。

そう考えると彼は、歪んで危険な思想であっても理想の”新世界”を築こうとした『デスノート』の主人公・夜神月と異なり、善意から正義が果たされる”新たな世界”を築こうとしたとは考えられません。

後の世を権力欲にまみれた、ジョンチル牧師に託すジンス。さあ、お前たちはどんな世界を作るのだ、と彼が人類に対して仕掛けた、壮大なゲームの行方を見守るしかありません。

まとめ


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

怒涛の展開の『地獄が呼んでいる』第3話、この後世界はどのように変わったでしょうか。

我々観客には、”試演”が必ずしも神の企てと言えぬと明かされます。”試演”で地獄に送られた者がどんな罪を犯したのか、そもそも罪人であったのかすら判らなくなりました。

しかし人が共通して抱く信仰心、それは共通の幻想と呼ぶべきかもしれません。間違っていようが、共通の幻想を共有できる集団の恐ろしさは、世界のあらゆる人々が実感しているものです。

そんな危険な集団が自分たちは正しさを確信し、多数を占めた場合は。その集団に不安を覚えながらも迎合する者が増える状況とは。この状況を利用し権力を得ようとする者が現れれば。果たしてどんな世界が誕生するのでしょう。

ホラーを通じ社会問題を取り上げ、思考実験を巡らした果てに創作するヨン・サンホ監督。そして彼は複雑なキャラクター、チョン・ジンスを描いたことで、『ダークナイト』に登場した、ヒース・レジャー版ジョーカーの魅力を思い出させてくれました。

もし身近に社会に不満を抱き、ジョーカーの姿で現れた人物に気付いた場合、映画ファンなら「ほかの作品のジョーカーも見てね!」、と教えてあげてはいかがでしょうか。

Netflixオリジナルドラマ『地獄がよんでいる』は2021年11月19日(金)より配信開始

【連載コラム】「ある日、地獄行きを告げられた」Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を完全紹介の記事一覧はこちら






増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

関連記事

連載コラム

映画『東京バタフライ』あらすじ感想と考察評価。水石亜飛夢×白波多カミンで描く挫折から這い上がる若者の姿|映画という星空を知るひとよ17

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第17回 映画『東京バタフライ』は、大学時代にバンドを組み、同じ夢を追いかけた4人の若者たちの人生の再生を描いています。過去の後悔や挫折と向き合い、必死にもがき …

連載コラム

映画『いつくしみふかき』感想とレビュー評価。実話を基に渡辺いっけいと遠山雄が引きこもりの青年と父親の関係を演じた人間ドラマ|銀幕の月光遊戯62

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第59回 映画『いつくしみふかき』は2020年2月にロケ地となった長野県、主演の渡辺いっけいの出身地である愛知県で先行公開され、多くのリピーターを生み出しました。2020年 …

連載コラム

韓国映画『潔白』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。シンヘソン演じる弁護士が母を陥れた悪に挑む|未体験ゾーンの映画たち2021見破録18

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第18回 世界各国の様々な映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第18回で取り上げるのは『潔白』。 良質なミステリーを次々生み出す韓 …

連載コラム

【SF・ホラー】2020年映画ランキングベスト5|洋画・邦画人気作から感動と想像の力を描く作品まで《シネマダイバー:糸魚川悟選》

2020年の映画おすすめランキングベスト5 選者:シネマダイバー糸魚川悟 2020年は新型コロナウイルスの影響により、映画業界にとっても厳しい1年となりました。 『ムーラン』や『ソウルフル・ワールド』 …

連載コラム

韓国映画『野球少女』感想評価レビュー。イジュヨンは梨泰院クラスに続き“性別”の隔たりと向き合う|シニンは映画に生かされて27

連載コラム『シニンは映画に生かされて』第27回 2021年3月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開予定の映画『野球少女』。 大ヒット韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2020)で日本でも一躍 …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学