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Entry 2019/02/13
Update

Netflix映画『ベルベットバズソー 血塗られたギャラリー』ネタバレ感想。ラスト結末までのあらすじ紹介も|SF恐怖映画という名の観覧車36

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile036

様々な配信サービスが世の中に登場するとともに、生き残り競争も激化し始めた2019年。

配信サービスごとに、各々違った強みを持っているため、利用するサービスの検討にも一苦労。

そんな配信サービスの中でも、自社が資金提供をすることで配信を独占する「オリジナル作品」に力を入れた“Netflix”は、劇場公開作品では描けないような様々な「こだわり」を持った作品で利用者を楽しませてくれています。

そんな訳で今回は、いつもとは趣向を変えてNetflix独占配信の最新ホラー映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』の物語のネタバレあらすじと感想をご紹介していこうと思います。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』の作品情報


Netflix映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』

【原題】
Velvet Buzzsaw

【公開】
2019年(アメリカ映画・Netflix独占配信)

【監督】
ダン・ギルロイ

【キャスト】
ジェイク・ギレンホール、ゾウイ・アシュトン、レネ・ルッソ、トニ・コレット、トム・スターリッジ、ナタリア・ダイアー、ジョン・マルコヴィッチ

【作品概要】
『ナイトクローラー』(2014)のダン・ギルロイが同作品で主演を務めたジェイク・ギレンホールとレネ・ルッソを起用して製作したNetflix独占配信映画。

共演に名優ジョン・マルコヴィッチや、Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス』でメインキャストを務め人気上昇中のナタリア・ダイアーなど。

映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』のあらすじとネタバレ

著名なアート評論家のモーフは、恋人が浮気をしたことで失意に暮れるジョセフィーヌと関係を持ち恋人となります。

ある日、画商のロドラのもとで働くジョセフィーヌは、マンション内の廊下で老人が死亡しているのを発見しますが、そのことで画廊に遅刻し接客の仕事から外されてしまいます。

マンションに戻ったジョセフィーヌは老人が孤独死であったことを知り、部屋で目撃した猫を探すため、老人の部屋へと入ります。

そこで彼女は、老人が生前に絵を描いていて、その全ての作品を破棄しようとしていたことを知ります。

異様な迫力を持つ老人の絵に惹かれた彼女はその絵を持ち帰りモーフに見せると、モーフはその絵を高く評価し市場に出せば間違いなく高く売れると言いました。

モーフがその絵の主であるヴェトリル・ディーズのことを調べ始めると同時に、ロドラが絵の存在に気付きジョセフィーヌに詰め寄ります。

結局、ディーズの絵はロドラ主導のもと販売されることになり、ディーズの絵は捨てられていたものを拾ったことになりました。

モーフがディーズの過去を調べると、ディーズはかつて家族を不審火で失い、父親に異常な虐待を受けていたことや30年以上もの間を消息を断っていたことがわかります。

ロドラの手によってディーズの絵は展覧会に出されることになりました。

アルコール依存症の巨匠ピアースや新進気鋭の若手画家ダムリッシュも展覧されたディーズの絵に圧倒されます。

展覧会でモーフは、かつて自身がジョセフィーヌのために酷評したジョセフィーヌの元恋人の画家が事故に遭い昏睡状態だと知り動揺します。

その夜、ロドラの事務所で梱包や配達を行うブライソンがディーズの絵を持ち出し、運転をしていたところ絵がひとりでに燃え始めました。

すんでのところでトラックから抜け出し、誰もいないガソリンスタンドに逃げ込んだブライソンでしたが、壁にかかっていた絵から腕が伸び、彼の身体は完全にとらえてしまいました。

後日、ブライソンのトラックが見つかり、ジョセフィーヌとロドラに連絡が伝わりますが、絵の価値を高めるためディーズの一部の絵をブライソンに隠すように命じていた2人は、姿を消したブライソンが絵を盗んだと考えていました。

一方で、一部の絵を隠そうとしていることを知らないモーフは、ディーズの絵の一覧の些細な点から一部が抜けていることに気がつきますが、真実を知るジョセフィーヌはそのことをはぐらかします。

その後、退役軍人病院でディーズが働いていたことを知ったモーフは、かつて退役軍人病院でディーズと働いていた人間から話しを聞きます。

そこで退役軍人病院でディーズをいじめていた人間が何者かに殺されたことや、ディーズが実の父親を殺害した後に精神病院で拷問に近い処置を受け、狂気を発症していたことを知ります。

同時期、ロドラの商売敵の画商ジョンがディーズの真実を知り、価値を低めるために画策していました。

しかし、ジョンはその日、美術品の保管庫の中で天井から伸びた手にネクタイを捕まれてしまうのでした。

翌日、出勤した事務員のココがジョンが保管庫の中で首を吊っているのを見つけます。

ジョンに絵の販売委託をしていたピアースは自身の才能の枯渇を骨身に感じ、一線から退くことをロドラに提案され、それを受け入れます。

やがて、モーフはディーズの絵が動いているような錯覚に苦しみ始めます。

絵の調査をするギタに話しを聞くモーフは、ディーズの絵に使われる赤色がディーズ自身の血液であることを知りました。

一方、アートアドバイザーとして巨万の富を得るべくディーズの絵を使うグレッチェンが、自身のプロデュースしたオークション会場の下見中に、穴に手を入れることで様々な感覚を得られる球体展示物「スフィア」に腕をもぎ取られる形で惨殺されました。

翌日、グレッチェンの死体はジョンの死後グレッチェンのもとで働いていたココに見つかるまでアートとして展示され大盛況となり、緊急閉鎖までの時間にオークションに出されたディーズの絵は完売するほどの人気を集めました。

ここに至り、ジョセフィーヌとロドラはディーズの絵に関して何かが起き始めていることを理解します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』のネタバレ・結末の記載がございます。『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

グレッチェンの訃報を知り、ジョセフィーヌのもとへと駆けつけたモーフはジョセフィーヌがダムリッシュと浮気しているのを知り、彼女と別れます。

幻聴や錯覚が酷くなり精神の安定が乱れたモーフは、ロドラにディーズの絵が全ての元凶であることを告げ販売を辞めるよう詰め寄ります。

しかし、高騰したディーズの絵を手放そうとしないロドラに苛立ちを覚えたモーフは、ディーズの絵を酷評する記事を書くとロドラを脅します。

ロドラとジョセフィーヌはモーフの記事が出るよりも早くディーズの絵を売りさばくため行動を開始。

しかし、その夜、ダムリッシュと共にしていたジョセフィーヌはダムリッシュがディーズの絵が動いているように見えると言い始めます。

モーフはディーズの絵で利益を得た人間が死亡していることを電話でジョセフィーヌに告げると、いくつかの死を間近で見たココと協力しディーズの絵の排除のため行動しようとします。

ディーズの絵に魅せられたダムリッシュは、ロドラへの販売委託を辞めることをジョセフィーヌに告げると、ジョセフィーヌに別れを告げました。

1人となったジョセフィーヌは何者かの車に自身の車の進路を阻害され、立ち行かなくなります。

一方、ディーズの絵を倉庫から取り出そうとするモーフのもとに、かつて自身が酷評を下したアートロボットが現れ、首を折られてしまいました。

また、ジョセフィーヌにディーズの手を取り扱ったことを後悔する電話をかけたロドラも、自身の家のアート作品に押しつぶされそうになります。

そして、近くの無人の画廊に身を寄せたジョセフィーヌも絵から溶け出したインクに飲まれるのでした。

翌日、ココがモーフの遺体を発見、そして行方不明となっていたジョセフィーヌは落書きの一部となっていました。

モーフの末路とジョセフィーヌが行方不明になったことを知るロドラは、全ての絵を家から排除します。

しかし、クビに彫った「ベルベット・バズソー」と描かれた刺青から血が吹き出し、彼女の悲鳴が響き渡りました。

雇い主たちが死亡し、タクシーで街を去ろうとするココは、路上でブライソンのトラックから奪われたディーズの絵が路上販売されているのを見かけます。

絵に関わった画商が次々と怪死するなかで、田舎に越したピアースは波打ち際で嬉々として地面に棒で模様を描き続けるのでした。

映画『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』の感想と評価

事件を故意に起こすことでのし上がっていくパパラッチを描いた映画『ナイトクローラー』で世界的に絶賛を受けたダン・ギルロイ監督と主演のジェイク・ギレンホール。

マスコミに対する痛烈な風刺を描いた「サスペンス」のようでありながら、実のところは1人の「サイコパス」の暴走を描いた「サイコスリラー」と言う二面性を持った物語の構造とジェイク・ギレンホールの狂気の演技に魅了され、再びタッグを組んだ本作を情報公開時から楽しみにしていました。

そしてNetflixにて独占配信された『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』はその期待を外さない出来だったと言えます。

孤独死した「ヴェトリル・ディーズ」が描いた「絵」に関わる人間が次々と怪死していく…。

「ホラー」に分類され、多様な方法での死に様が期待されていた本作でしたが、ドッキリとさせる演出や「ホラー」的な描写は意外にも少なく、「怖さ」が際立つ作品ではありません。

しかし、誰が「絵」に殺され、誰が「絵」に関わっても生き延びたのか、に注目することでこの作品の二面性が見えてきます。

「絵」を描いた「ヴェトリル・ディーズ」は、自身に危害を加えたものを決して許さない性格だったことが物語の中盤で判明。

他人の「絵」を金のために使い、その「絵」の価値を意図的に下げたり上げたりする行為。

金目的ではない純粋な気持ちの製作者にとってその行為は「侮辱」そのものと言えます。

そう、本作は「ヴェトリル・ディーズ」による「彼の価値観による私刑映画」と言った側面を持ち、ダン・ギルロイ監督らしい単なる「ホラー」ではない楽しみ方もある作品。

我々ライターや映画の評論家には耳の痛い映画ながら、見方の側面を変えることで何回も楽しめる「Netflix」らしい挑戦的作品です。

まとめ

『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー』は何度も楽しめる映画。

劇中では「絵」が動くように見え始めたキャラクターが複数登場しますが、末路は人によって違います。

「絵」による危険な兆候が現れながらも難を逃れた人間とそうでなかった人間は、「絵」に対する姿勢がどう違ったんでしょうか。

様々な考察をすることが出来る本作は分類上「ホラー」と言う「ジャンル」ではありますが、「ホラー」描写は案外大人しめ。

「ホラー」映画が苦手でも「考察系」映画が大好きな方には、ぜひ一度鑑賞してみて欲しいオススメの1作です。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

 
(C)2015「歯まん」

いかがでしたか。

次回のprofile037では、身体の一部が変異してしまった少女の物語を描いた最新映画『歯まん』の魅力をご紹介させていただきます。

2月20日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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