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Entry 2021/02/10
Update

韓国映画『食われる家族』ネタバレ感想と結末考察のあらすじ。本屋大賞小説1位の作家が監督・脚本を務めた本格ミステリーサスペンス“家族乗っ取り”|未体験ゾーンの映画たち2021見破録9

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第9回

世界中から埋もれかけた、様々な魅力を持つ映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第9回で紹介するのは、じんわりと怖いサスペンス映画『食われる家族』。

一番身近な存在が家族であり、一番安心できる場所が家庭。それが何かによって壊される。平和な家族を壊したものの正体は何者か。それともおかしいのは、自分なのか。

ホラーやミステリー映画、不条理映画でも度々題材にされるテーマです。そんな作品が『パラサイト 半地下の家族』(2019)を生んだ韓国映画界から登場しました。

幽霊や怪物、殺人鬼より身近に存在する、神経をすり減らす恐怖があなたを襲います。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

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映画『食われる家族』の作品情報


(C)2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & B.A. ENTERTAINMENT. All Rights Reserved.

【日本公開】
2021年(韓国映画)

【原題】
침입자 / Intruder

【監督・脚本】
ソン・ウォンピョン

【キャスト】
ソン・ジヒョ、キム・ムヨル、イェ・スジョン

【作品概要】
ある家族に25年間行方不明の娘が帰ってきました。しかし彼女の兄は、何か違和感を覚えます。幸せな一家を侵食する恐怖を描く、サスペンススリラー映画。

2020年本屋大賞・翻訳小説部門で第1位を獲得した小説、「アーモンド」を著した女流小説家・シナリオライターのソン・ウォンピョンが、監督と脚本を務めた作品です。

映画『無双の鉄拳』(2018)や、日本のドラマを韓国でリメイクしたドラマ『今週、妻が浮気します』(2016)のソン・ジヒョ。

そして『悪人伝』(2019)のキム・ムヨル、『82年生まれ、キム・ジヨン』で主人公の祖母を演じたベテラン女優、イェ・スジョンらが出演した作品です。

映画『食われる家族』のあらすじとネタバレ


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建築家として起業した会社の代表として働くソジン(キム・ムヨル)。ミーティングで家や家族について意見を求められた彼は、動揺を隠せません。

半年前の雨の日、車から降りた彼を追うように路上に出た妻は車に轢かれました。その記憶は途切れ、ソジンは遊園地にいます。

遊園地のソジンは、赤い服を着た幼い少女に近寄ります。彼女に手を伸ばした時に目覚めたソジン。

ソジンは医師の部屋にいました。半年前のひき逃げで妻スジョンを亡くした後、彼はそのショックから立ち直れずにいました。

犯人は捕まっていません。当時の記憶を呼び覚まし手がかりを得ることも兼ねて、彼は催眠療法を受けていました。医師はこの療法に頼らず、薬も服用しろと勧めます。

現在彼はマンションの自宅を離れ、一人娘のイェナと共に両親の家に住んでいました。

車椅子暮らしの母ユン(イェ・スジョン)は帰宅したソジンを優しく迎えますが、仕事に没頭する息子にもっと娘に気にかけろと告げる父のソンチョル。

イェナは25年前に行方不明になった、ソジンの妹ユジンの部屋にいました。部屋は当時のままで、彼女を探す目的で作られたビラも残されています。

ソジンは娘に母の死を伝えられず、今はカナダにいると嘘をついています。イェナに乞われ、ぬいぐるみを取りに戻った自宅で妻の思い出にふけるソジン。

そんなソジンの元に電話がかかってきます。児童保護団体の職員を名乗る男は、1996年に行方不明になったユジンを見つけたと伝えます。

指定された喫茶店に向かうソジン。そこにユジン(ソン・ジヒョ)を名乗る女性が座っていました。

両親からは養女だと聞かされ育ったが、最近両親が事故で亡くなり、遺品を整理して真相に気付いたと説明するユジン。

ソジンは彼女に対し、想像していた印象と異なると話します。過去にも妹と名乗り出た人物がおり、まず疑ってかかる慎重な態度を見せました。

控え目な態度のユジンも、その姿勢を当然と受け取ったようです。DNA鑑定を受けて欲しいとの依頼に、素直に応じます。

25年前のあの日、ソジンは遊園地で母から妹の手を離さないよう言いつけられていました。

しかし手を離した隙に、妹は姿を消しました。その時、ソジンの手を離れ飛んで行く1つの風船。

悪夢から目覚めたソジンの前に、当時の妹と同じ年頃のイェナがいました。娘は祖母が泣いていると告げます。

母の元に向かうとユンは泣いていました。偽りであった場合に備え、ユジンと名乗る女に会った件を内密にしていたソジン。

母は郵送されたDNA鑑定結果を開いていました。99.99%の確立でユジンとの血縁関係を証明するものでした。

ホテルで両親とユジンが対面する場に、ソジンは娘を連れ現れます。

今まで出来なかった親孝行をしたい、足の悪い実母の世話をすると看護師の仕事を辞め、同居したいと申し出るユジン。両親は心から娘との再会を喜んでいました。

一家はユジンの職場の病院を訪れ引っ越しを手伝います。彼女の後輩の看護師が現れ、優秀な先輩の退職は残念です、と別れの言葉を伝えました。

同居を始めたユジンは、ボランティア活動をしたとの言葉に違わぬ姿勢で母を献身的に世話します。

妹が行方不明になった当時、言い争う両親の声を聞き1人苦しんでいた昔を思い出すソジン。

彼は両親や帰ってきたユジンと暮らせる大きな家を設計し、建築していました。その望みがかなったのですが、何故か違和感がぬぐえません。

仕事の都合で娘を保育園に迎えに行けないソジンでしたが、既にユジンが保育園にいました。母を亡くし傷付いていたイェナも叔母に心を開きます。

一家の家政婦・ヒジョンに負けない料理を作り食卓に並べるユジン。ヒジョンは夜も熱心に母を世話するユジンの孝行ぶりを褒めました。

苦手なパプリカも、ユジンの世話で食べれるようになったイェナ。全てが良い方向に進み、改めて妹に礼をのべるソジン。

しかし家庭の全てを自分に任せ、仕事に専念するよう告げるユジンの言葉に、彼は不安を覚えます。

信頼する精神科医に自分が感じる違和感を訴えますが、20数年の空白を埋めるのは難しくて当然と、無理をせず薬を服用しろと勧められました。

家に母のリハビリにユジンが手配した物理療養士が現れます。口の効けないその男は、ユジンと手話で会話します。

ユジンは男を住み込みで母の世話をさせる手配をしていました。両親は許しますが、自分に相談なく決めた事を不審に思うソジン。

以前ほど教会に通わなくなった母に、ソジンは家族以外の人間とも交流するよう勧めます。

母はユジンとの再会を神に感謝していました。神はソジンの妻を奪ったが、代わりに実娘を帰してくれたと口にする母。

その夜、眠れず目覚めたソジンは、階段を上るユジンの背に奇妙なタトゥーを目撃します。

翌朝、家政婦のヒジョンにユジンの行動を気にして欲しいと頼むソジン。

ハヨンという友達ができたと話すイェナを、ユジンがバレエ教室に連れて行こうと申し出ます。彼は妹ではなく家政婦に依頼しました。

ソジンは妻のひき逃げ事件の捜査の確認に、警察のチェ刑事を尋ねます。刑事は事件現場を映したドライブレコーダーの映像を入手したが、復元に時間がかかると説明します。

ユジンとヒジョンがイェナを連れ、教室にあるビルに入ると男が走り寄って来ます。ユジンの顔を見て、お前はペク・ヨンソンだろうと迫る男。

動揺した様子のユジンは、なぜかヒジョンに別行動をとらせませした。男はヒジョンに詰め寄り、あの女はペクかと問いますが彼女には訳が判りません。

男はユジンを見つけると、彼女を追って駐車場に向かいます。

その後、ヒジョンと稽古の終わったイェナにユジンが合流します。自分たちの車は移動しており、その駐車場では男が亡くなる事件が発生していました。

男の側に、ユジンのコートのボタンが落ちていると気付くヒジョン。

それを悟ったユジンは、家に向かう車の進路を変えます。

ヒジョンは書置きを残し、家から姿を消しました。両親は男と駆け落ちした言います。ソジンには家政婦として5年も働いていた、信用できる彼女の行動に思えません。

ソジンは警察のチェ刑事に家政婦の失踪を相談しますが、取り合ってもらえません。そして修復された妻のひき逃げ事件の映像を見せてもらいます。

映像に映る歩道を歩く女が、誰かに似ていると思えるソジン。

精神科医の元を訪ねたソジンは、記憶を探ろうと催眠療法を行ってもらいました。

ひき逃げ事故の記憶は、以前と同じく妹失踪時の光景に変わります。やがて事故直後の光景が鮮明に映し出されます。

妻をひき殺した男の顔が浮かびます。歩道にはユジンの姿がありました。

自宅にはユジンの手配した若い女の家政婦が来ていました。物理療養士と結婚する中なので、2人とも家に住み込んでもらうと語る両親。

ユジンが手際よく人を手配した結果、次々と家庭に他人が入り込む状況に疑念を深めるソジン。

ソジンは会社の仕事を二の次にして調べます。ユジンを見つけた、と連絡してきた児童保護団体の男と話してもはぐらかされます。

ホームページにあった保護団体の住所を訪ねても、それらしき施設は見つかりません。

街で見かけた広告の写真の顔を見て、ユジンが務めていた病院で会った看護師は役者と気付いたソジン。本人に会うと、報酬と引き換えに芝居を打ったと認めます。

家に帰ったソジンは、妹ユジンを名乗る女に尋ねます。「お前は、何者なんだ」。

以下、『食われる家族』のネタバレ・結末の記載がございます。『食われる家族』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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事実を突き付けられたユジンは涙を流して土下座し、良い印象を与え受け入れてもらえるように、人を雇い芝居を打ったと認めます。

ソジンが行方不明以前の記憶が無いのも怪しいと追及すると、父はユジンをかばい、児童保護団体も移転しただけかもしれないと言いました。

それでも追及を続けると、父ソンチョルは妻を亡くして以来、薬に頼っているだらしない男とソジンを責めます。

言い争いにショックを受けた母ユンは、鼻血を流し倒れました。病院に運ばれた母は心労で血圧が上がったと診察されました。

家族にもめごとを起こしたと詫びるユジンに、疑って悪かったと謝るソジン。

しかし彼は、妹を名乗る女の髪の毛を手に入れます。ソジンはもう一度DNA鑑定を行おうと試みます。

ソジンが夜遅く帰宅すると、娘イェナが不眠を訴えます。一晩入院する母はお前の話は心地よい、話を聞かせて欲しいとユジンに求めました。

中々眠れなず、寝かしつける父の前で「ハヨンが呼んでいる」と呟くイェナ。

翌日、イェナを保育園に送ったソジンは、保母からハヨンという園児はいないと聞かされました。

チェ刑事に相談に行ったソジンは、家政婦のヒジョンが行方不明になった日、イェナのバレエ教室があるビルの駐車場で殺人があったと聞かされます。

殺されたパク・サンムンという男と、ヒジョン失踪に関連がないか警察は調べていました。パクは経営していた会社を失い、家族も離散し1人ビルの一室で暮らしていました。

その時ユジンも同行していたと思い出すソジン。

ビルの防犯カメラの映像に犯行の証拠はありませんが、ソジンは妹は偽者かもしれないと刑事に打ち明けます。

チェ刑事は家を訪問しパクについてユジンに質問します。彼女は刑事の疑問を納得させ、兄ソジンは妻の死以来精神的に不安定で、通院していると教えます。

父からは家政婦に男がいたと聞かされ、ヒジョン失踪も事件性は無いと判断し引き上げたチェ刑事。

保育園に娘を迎えに行った際、自宅マンションの売買に関する電話が入りそれどころでは無いソジンは、人前で物に当たります。

イェナは迎えが来て帰宅していました。家ではソジンの両親も、娘もうつろな表情をしていました。

兄妹で財産争いにならないよう、遺産は全てイェナに継がせろとのユジンの提案に、無気力に従う両親。

帰ってきた父に、母は死んだのに嘘をついたと責めるイェナ。パパが死ねばいいのに、と言われショックを受けるソジン。

娘に母の死を教えたユジンに、思わず手を上げるソジン。すると母が怒りお前に財産は一銭も残さない、あの日妹の手を離したお前を恨んでいると叫びます。

父は何の反応もしめしません。イェナと家を出ようとして、手を振り払われ噛まれたソジンは、思わず娘を突き飛ばしました。

動揺する彼をユジンは挑発します。彼はその首を絞めますが手を離します。目的が何であれ家族を守ると言うソジンに、不敵な笑顔を見せるユジン。

その夜眠っていた時、何者かの声で目覚めたソジンは部屋の中に人影を見ます。動揺して家の中を逃げ回り、包丁を持ち出すソジン。

そこに家政婦の女が現れます。彼女の背中にもユジンと同じタトゥーがありました。

翌日、ソジンは娘を通院している精神科医に預けます。彼はイェナが言う友人のハヨンは、イマジナリーフレンドだろうと告げました。

医師はそれより処方した薬を服用しろと警告します。混乱した状態で、いつの間にか鼻血を流しているソジン。

チェ刑事の言葉を思い出し、駐車場で殺されたパクの部屋を調べるソジン。そこにはパクが行方不明の、自分の娘を探すビラが残されていました。

その娘の名がハヨンでした。その時不動産屋から電話が入ります。

相手はソジンの自宅マンションに明かりが付いているのを見て、在宅していると思い電話してきました。

留守にしていた自宅に誰かいると知り、彼は急ぎマンションに戻ります。

部屋を調べると、浴槽に行方不明の家政婦・ヒジョンが横たわっていました。その直後に殴られ、意識を失うソジン。

意識を取り戻した時、彼はイスに縛られていました。目の前には妻をひき殺した男がいます。

その男の声は、ユジンを見つけたと連絡した児童保護団体の職員のものでした。

鼻血を流したソジンに、薬の副作用だと注射器を見せて告げる男。この薬で催眠状態にして話を聞かせると、それを信じてしまうと説明します。

ソジンの両親も娘も、食事などに混ぜられた薬の力でユジンに洗脳されていました。

財産が目的かと叫ぶソジンに、男は否定します。狙いは「選ばれた少女」だと告げる男。

男もユジンも、完全な存在である「選ばれた少女」を神としてあがめるカルト教団の一員でした。

殺されたパクの娘ヨンスは、教団に「選ばれた少女」としてさらわれ、彼らに神に祭り上げられます。

しかし彼女は逃げ出し、自らを傷付け「選ばれた少女」でなくなります。そこで新たに狙われたのが、ソジンの娘イェナ。

パクはバレエ教室のあるビルで娘を奪ったユジンに気付きますが、彼女の手で殺害されました。

ソジンは叫びますが、男は彼にナイフで襲いかかります。イスが壊れたおかげで自由になったソジンは、相手の体に例の薬の注射器を突き刺します。

男を殴り倒し、チェ刑事に連絡し娘を助けてくれと頼み、自らも両親宅に向かうソジン。

帰宅するとそこには家族一同と、チェ刑事と警官がいました。ユジンはカルト宗教団体の一員だと説明しますが、彼を怒鳴りつけるチェ刑事。

刑事は彼が娘イェナやユジンに暴行を加える映像を見せます。警察は妻の死と自分の出現で兄は精神が錯乱したと言う、ユジンの説明を信じていました。

映像を密かに撮影した事実こそ怪しいとソジンは訴えますが、かかりつけの精神科医が現れます。

家族から相談を受け、患者に暴力的傾向があったので、隠しカメラで行動を撮影するようアドバイスしたと説明する医師。

医師もカルト教団の一員だと悟ったソジン。自分のマンションを調べてくれ、ユジンには教団のタトゥーがあると叫びますが、逮捕され連行されました。

チェ刑事に頼み、ソジンと2人きりになったユジンは、お前が守ろうとしている家庭は既に壊れていたと語ります。

イェナが生まれてからも家庭を顧みず、仕事に没頭していたソジンの態度に、妻スジョンは追い詰められていました。

そんな彼女にカルト教団は声をかけます。心の支えを失っていたスジョンは、簡単に入信したと話すユジン。

しかし我が子イェナが次の「選ばれた少女」に指名されると、スジョンは教団から逃げようとします。

ソジンは妻の苦悩に気付いていません。あの日、意を決してスジョンは全てを打ち明けようとしますが、仕事を理由に話を聞かなかったソジン。

その直後、彼女は教団の手により事故を装い殺害されました。

嘘をつくな、お前は悪魔だ、地獄に堕ちろと叫ぶソジンに、お前は誰からも、家族からも信用されていない。お前は既に地獄にいると告げるユジン。

車で連行されるソジンに、チェ刑事はマンションに何も無かったと告げます。必死になったソジンが暴れた結果、車は事故を起こし横転します。

警察車両から抜け出し、手錠を外したソジンは通りかかった車に助けを求め、乗せてもらいます。しかし車に乗っていたのは教団のメンバーでした。

襲われながらも反撃し、車を奪うことに成功するソジン。彼は記憶の中の妻に詫び、信者の車のナビで教団の集会場を目指します。

集会場のある山の中で、停車したユジンの車を見つけたソジン。名を呼ぶ父の声に反応したイェナの手を引いて進むユジン。

2人の姿を見つけたソジンは追いつきました。イェナは父の元に戻ります。

「選ばれた少女」になることは栄誉だ、と叫ぶユジンはナイフを出し襲いかかりました。

娘を返し手を引けば訴えない、というソジンに対し、私にはこうするしかない、と叫ぶユジン。

ソジンがナイフを奪いユジンに突き付けると、彼女は25年前のあの日、遊園地で兄が持っていたのは水色の風船だと叫びます。

兄が手を離さなければ、私の人生はこうは成らなかったと言葉を続けます。

妹は教団にさらわれ、神に祭り上げられ、歳を取ると神の座から降ろされたのでしょうか。

動揺したソジンからナイフを奪い返すユジン。しかしイェナは崖に立っていました。

「選ばれた少女」を失う訳にはいかないユジンは手を伸ばします。しかしその手を掴まないイェナ。

駆け寄ったソジンが娘を抱きしめます。奪われまいと襲い掛かるユジンは崖から転落、ソジンはその手を掴みます。

兄にまた手を離すのか、訴えるユジンに、あの時持っていた風船は黄色だ、と告げるソジン。

血がつながっていたとしてもお前とは兄妹になれない、というソジンに、涙を流しまた手を離せば、一生後悔することになると告げるユジン。

2人の手は離れ、ユジンの体は落ちて行きます。ソジンは我が娘を抱きしめます。

カルト教団の犯行と実体は明るみとなり、回復した娘や両親との平穏な日々を取り戻したソジン。

彼の元に、ユジンのDNA鑑定の結果を伝える書類が届きます。

彼はその封を開くこと無く、そのままシュレッダーにかけました…。

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映画『食われる家族』の感想と評価


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『パラサイト 半地下の家族』のようなコメディ描写は無い、最後まで怖い家族乗っ取り映画でした。

本作を監督したソン・ウォンピョンは、小説「アーモンド」の作者として一躍脚光を浴びますが、彼女は大学卒業後に韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻した人物です。

子供の頃から小説好きだった彼女は、2001年韓国の映画雑誌「シネ21」の映画評論賞優秀賞を受賞、映画評論家としてデビューしました。

韓国映画アカデミーの卒業作品として製作した短編映画、『 인간적으로 정이 안 가는 인간(Ooh, You Make Me Sick) 』(2005)はソウル国際女性映画祭で受賞します。

当時の自分は何でも出来ると感じていた、しかしその後10年間何も成し遂げられず、自分を信じられなくなる時期が続いたと振り返っています。

2013年に出産を経験し、この子を失った後にもう一度気付けるのか、この子が自分の期待と全く違う姿に成長しても愛せるのか、という疑問が沸いたと語る監督。

その疑問を出発として著した小説が2016年韓国で出版された「アーモンド」であり、同時期にシナリオを構想したのが『食われる家族』です。

映画に対する知識に裏付けられた作品


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本作に漂う不安感の正体は監督の体験に根差すものでした。苦難の時期を越え発表した「アーモンド」が第10回チャンビ青少年文学賞を受賞を聞き、数日間泣いたと振り返っています。

そのおかげか、自身初の長編映画には冷静に取り組めたと語る監督。小説と違い映画では、登場人物の思考や感情は、演者のセリフや行動で表現する必要があると理解していました。

本作はマインドコントロールを題材にした、ハリウッド映画的な題材のミステリー。「アーモンド」に似たテーマを持ちつつ、異なるジャンルにしようと意識して生んだ作品です。

トラウマを持つ神経衰弱的な人物を主人公に据え、観客が物語の展開に謎を抱くよう意識して脚本を書き、演出された本作。

劇場映画初監督作ながら、優れたミステリー・サスペンスに仕上がった本作。監督の映画に対する知識と理解の成せる技です。

手を離れ飛んで行く風船が意味するもの


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監督の言葉通り、本作は主人公を蝕む不安の正体が判らぬまま展開し、先の読めない物語として進行します。

敵の正体とその狙いが判明すると、展開はやや駆け足ぎみになります。少々強引、ご都合主義の感もありますが、ジャンル映画を時間内に収めるにはやむを得ません。

注目すべきはラスト。25年ぶりに現れた妹の正体は明かされません。主人公が何か結論を出しても、それはマインドコントロールの産物かもしれず、真相は闇の中です。

観客に想像と解釈の余地を与えるラストが印象深い本作。過去を追求するより、過去と決別する方が未来に進めるということでしょうか。

ここで質問です。25年前、主人公が遊園地で妹の手を離した時の風船の色は、映画の冒頭では何色だったでしょうか。

記憶も思い出も、人は自分に都合よく染めてしまうもの。残酷な真実であると同時に、そうせねば生きていけない人間の悲しさを、本作は描いています。

まとめ


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サスペンスの良作であり、同時に人間の弱さ、もろさと悲しさを描いた映画『食われる家族』。

こういった題材の映画は多数ありますが、カルト宗教や催眠商法のやり口を知っている人には、特に気味悪く感じられる作品です。

しかしこの映画の怖さは、カルト集団やその手口にある訳ではありません。

25年前、妹の手を離した結果、距離的にも時間的にも遠く離れてしまった主人公。

彼は後に、自分の妻と身近に暮らしながら、心の距離が大きく離れてしまいます。

彼自身が社会、家族、そして我が娘と切り離されて初めて、その恐ろしさに気付くのです。

一番恐ろしいのは人とのつながりを失うこと。優れた女性作家でもある、映画監督が持つ視点で描かれた作品です。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C)2018 BY LITTLE BITER LLC. ALL RIGHTS RESERVED

次回、第10回は現代社会に現れた野生児の少女を軸に、人間の本性をあぶり出す異色のサスペンスドラマ『ダーリン』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら





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