連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第300回
『湯を沸かすほどの熱い愛』(2019)の中野量太監督が、坂口健太郎を主演に迎えて撮りあげた、日仏共同製作によるヒューマンサスペンス『私はあなたを知らない、』。
狂おしいまでに“家族”という幸せの形を追い求め、その結果重い罪を犯してしまった孤独な青年・西山夕平。
あの日一体何があったのか? 何を思っていたのか? 彼の封印した記憶と真実に触れた時、心が揺らぎはじめます。
中野量太監督が10年ぶりに本作のオリジナル脚本も手がけ、「人を愛すること」「罪と贖罪、赦し」をテーマに、「家族」という幸せの形を追い求めた末に愛する人を殺めてしまった孤独な青年の姿を描き出します。
映画『私はあなたを知らない、』は、2026年8月28日(金)新宿ピカデリー他全国公開!
映画『私はあなたを知らない、』の作品情報

(C) DKYPs./Pyramide Productions
【日本公開】
2026年(日本、フランス合作映画)
【原案・脚本・監督】
中野量太
【出演】
坂口健太郎、早瀬憩、堀田真由、倉田瑛茉、滝藤賢一、原田美枝子
【作品概要】
『私はあなたを知らない、』は、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2019)『兄を持ち運べるサイズに』(2026)の中野量太監督が撮りあげた、日仏共同製作によるヒューマンサスペンスです。
主役の夕平に坂口健太郎、夕平と心を通わす紗月役で堀田真由、紗月の娘で夕平の運命を大きく動かす朝子に早瀬憩、幼少期の朝子役で倉田瑛茉がそれぞれ演じています。
映画『私はあなたを知らない、』のあらすじ

(C) DKYPs./Pyramide Productions
西山夕平(28)は天涯孤独の身。粛々と働き、自分の中で決められたルーティンで生活をし、たった一人のその環境を寂しいとも感じずに生きてきました。
ある日、職場にやってきた新しいパート職員・東浜紗月と出会うまでは……。
紗月と出会い、生きる喜びを得て夕平の毎日は輝いていきました。
そしてある日、紗月から自分の5歳の娘・朝子を紹介されます。彼女は実はシングルマザーだったのです。
紗月と朝子との生活が、これまで知らなかった“家族”という幸せの形を知り、夕平の心を開放していくのですが……。
映画『私はあなたを知らない、』の感想と評価

(C) DKYPs./Pyramide Productions
“家族”をテーマに作品を撮り続ける中野量太監督が新たに脚本を手がけて作り上げた映画『私はあなたを知らない、』。
7時の目覚まし時計の合図で飛び起き、コーンフレークの朝食を黙々と食べ、慌ただしく出勤する西山夕平。
会社では粛々と仕事をこなし、お昼はポツネンと一人でコンビニ弁当や菓子パンを食べ、退社後は自宅で一人カップラーメンをすするという毎日を過ごしています。
休日でも7時に起き、朝食後は掃除機をかけて部屋の掃除。
それから近くのコインランドリーで洗濯をし、ベーカリーショップで焼きたての高級生食パンを買って、お昼に食べます。夕平は、いつもこの同じルーティンを過ごしていました。
やがて新人パート職員の東浜紗月と出会い、その単調すぎる日々に変化が訪れます。
紗月との交流が深まり、彼女の娘・5歳の朝子ともよい関係が築けてきた夕平は、自分が今まで味わえなかった家族のぬくもりを感じるようになりました。
血の繋がりはなくても、夕平が朝子を愛おしむ気持ちは実の父親にも負けないものと思われます。
ですが、血が繋がらないがためにその後に悲劇が起こりました。
不運としかいいようがない出来事に人生を狂わされる西山夕平を、坂口健太郎が熱演。
5歳の朝子は人気子役の倉田瑛茉、13年後の朝子は早瀬憩が演じ、複雑な過去の出来事において心の葛藤がある中で、多くの愛をもらった朝子という一人の少女を表現しています。
一つの愛の行方をサボテンに託した中野量太監督の手腕も‟流石”、です。
作中登場人物が発する「私はあなたを知らない、」の言葉に込められた万感の思いが、観る人の心を揺さぶることは間違いないありません。

(C) DKYPs./Pyramide Productions
まとめ

(C) DKYPs./Pyramide Productions
『私はあなたを知らない、』は、 “家族”をテーマに作品を撮り続ける中野量太監督が『湯を沸かすほどの熱い愛』以来10年ぶりに完全オリジナル脚本で挑んだ作品です。
天涯孤独な日々を送っていた夕平は、心を寄せるシングルマザー・紗月の娘・朝子を実の娘のように愛しました。
紗月と朝子のおかげで、孤独な青年が初めて家族という温かなコミュニティを味わうことができたのです。ですが、その先に待ってたのは悲しい運命でした。
成長した朝子と40歳を迎えた夕平の切ないやり取りに心は揺さぶられ、「私はあなたを知らない、」という言葉の裏に隠された深い愛と悲しみを感じることでしょう。
“家族”とは一体何なのでしょう。改めて考えたくなるのに違いありません。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




































