Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2021/09/22
Update

映画『エンプティマン』ネタバレあらすじ考察と感想解説。都市伝説ホラーで日常が壊れていく恐怖を描き出す|SF恐怖映画という名の観覧車153

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile153

平和な町を都市伝説が襲うオカルトホラー映画の数々。

多くの作品は町にかけられた呪いに対抗すべく主人公が奮闘し、時に成功し時に失敗するハラハラ感を楽しむ作品構造になっています。

今回はそんな都市伝説系オカルトホラーの王道展開を辿らない独自の展開で事件の根源へと迫っていく様子を描いた宗教系ホラー映画『エンプティ・マン』(2020)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『エンプティ・マン』の作品情報


(C)2021 20th Century Studios.

【原題】
The Empty Man

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【監督】
デヴィッド・プライアー

【脚本】
デヴィッド・プライアー

【キャスト】
ジェームズ・バッジ・デール、サシャ・フロロヴァ、サマンサ・ローガン、スティーヴン・ルート、ジョエル・コートニー、マリン・アイアランド

【作品概要】
カレン・バンとヴァネッサ・R・デル・レイによって発表された同名グラフィックノベルを映像化した作品。

ワールド・ウォーZ』(2013)に出演し、Netflix映画『スペクトル』(2016)で主人公を演じたジェームズ・バッジ・デールが本作の主演を務めました。

映画『エンプティ・マン』のあらすじとネタバレ


(C)2021 20th Century Studios.

【1日目】

1995年、4人の男女はブータンのウラ谷をトレッキングしていました。

岩の裂け目に落ちたポールはいくつもの骨を継ぎ足したような不気味な白骨体を目にします。

その白骨体の前に放心状態で座るポールは「僕に触れたら死ぬ」と繰り返していましたが、3人は無理矢理彼を背負うと無人の山小屋に身を寄せました。

【2日目】

目を覚さないポールを背負い山を降りることが困難だと判断したグレッグは、ポールとルーシーを残し外を探索します。

山小屋に取り残されたルーシーは、山小屋の外に不審な男性を目撃しました。

【3日目】

目を覚ますとポールは山小屋の外に座禅を組んでいました。

朝、何物かの声を聞いたルーシーはポールを問い詰める2人をナイフで殺害すると、自身も谷底へと身を投げます。

その様子を「だから触れるなと言ったのに」と呟くポールが見つめていました。

2018年、ミズーリ州ウェブスターミルズ。

防犯用品店を経営する元覆面捜査官のジェイムズは妻と息子と死別してからは抗うつ剤を飲み、悪夢にうなされる毎日を過ごしていました。

【1日目】

隣人クウェイルの娘アマンダが「エンプディマンがさせた」と言う血文字を残し姿を消しました。

近所付き合いが深く、クウェイルも早くに夫を失っていることからジェイムズは警察の捜査に立ち合いますが、警察はアマンダの家出を疑うばかりで詳しい捜査をするつもりはありませんでした。

アマンダが父を亡くして以降、不思議な考えをしている事を聞いていたジェイムズはアマンダの学校の友人ダヴァラから学校で「エンプティマン」と呼ばれる都市伝説が流行っていると聞きます。

その噂は夜の橋の上で拾った空き瓶を吹き「エンプティマン」と唱えると3日後に連れ去られるというものであり、2日前にアマンダはダヴァラを含めた7人の男女でその都市伝説を実行していました。

ジェイムズは都市伝説を実行したとされるダヴァラを除く5人の家を訪ねますが、総じて行方不明となっていました。

ジェイムズはアマンダたちが都市伝説を実行したとされる橋で空き瓶を見つけ試しに吹いた後、開けっ放しにされているマンホールから橋の下へと入ります。

そこには行方不明の5人が首を吊った死体があり、鉄骨には「エンプティマンがさせた」と書かれていました。

夜、ダヴァラはスパに入浴中、「エンプティマン」に襲われ顔を滅多刺しにされ死亡。

首吊り死体の件で警察に取り調べを受けるジェイムズは、ダヴァラの死を聞き驚愕します。

5人の家やアマンダの部屋にもあった「ポンティフェックス研究所」と言う単語を怪しむジェイムズは、インターネットにおける調査で「ポンティフェックス研究所」が終末思想を持ったカルト教団の名称だと知ります。

【2日目】

「ポンティフェックス研究所」を訪れたジェイムズは演説の中で「エンプティマン」と言う単語が出て来たことに気づき、演説した男を問い詰めます。

男は「エンプティマン」とは精神圏のウイルスのような存在であると言い、その意味をジェイムズに説きますが専門用語が飛び交う男の説明をジェイムズは理解できませんでした。

ジェイムズは立ち入り禁止となっている施設の地下まで降りると、複数の集団が「エンプティマン」を呼ぶ儀式を行っていました。

係員に見つかり追い出されると、研究所を疑う男ニールからアマンダは研究所内で昇進し、州南部のキャンプにいると教えて貰います。

ニールから聞いたキャンプの場所であるマークトウェイン国有林へと向かい、キャンプ内の誰もいない事務所の中で研究所の名簿を見つけたジェイムズはアマンダを含めた7人と、何故か自分の名前のファイルがある事を発見。

夜、研究所の信者たちの儀式を目撃したジェイムズは信者たちに見つかり、多数の信者に追跡を受けます。

警察に駆け込み研究所と事件のつながりを訴えるジェイムズでしたが、キャンプへの不法侵入もありまともに対応してもらうことが出来ませんでした。

クウェイルに事情を話し避難を促したジェイムズ。

実はジェイムズにはクウェイルと浮気していた日に妻と子を失った過去があり、その日以降悪夢を見続けていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『エンプティ・マン』のネタバレ・結末の記載がございます。『エンプティ・マン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021 20th Century Studios.

【3日目】

研究所の車を尾行するジェイムズは、ニールを含めた複数人が病院の一室にいる植物状態の男に祈りを捧げている様子を目撃。

ジェイムズはニールが1人になると彼を拉致し、本当の目的を聞き出します。

ニールは実は研究所を疑ってなどいない純粋な信者であり、研究所からジェイムズにキャンプの場所を教えるようにと指示されていたのでした。

植物状態の男は「エンプティマン」を引き寄せるためのアンテナのような存在であり、他世界の存在である「エンプティマン」によってこの世界を混沌に落とすことが研究所の目的でした。

夜、研究所に侵入したジェイムズは自身の行動や経歴が詳しく記された資料を発見し、そこには身に覚えのない信者としての自分の写真がありました。

混乱するジェイムズは病院に行き当直の女性に植物状態の男が長い年月各地の病院を転々としていることや、誰が入院費を払っているのかさえ分からない事を聞きます。

植物状態の男の部屋に行くとアマンダがおり、ジェイムズがそのことをクウェイルに報告すると、クウェイルは自分のことが分からず間違い電話として電話を切られてしまいます。

アマンダは次なるアンテナが見つからないことから新たに作り出す計画だったとジェイムズに話します。

アマンダは知るはずのないジェイムズの過去を全て言い当て、ジェイムズの人生と言う台本を自分が作ったと言い、ジェイムズこそが「エンプティマン」であると言います。

気がつくとジェイムズは研究所の地下におり、目の前に「エンプティマン」が現れます。

ジェイムズは必死の抵抗を試みますが、「エンプティマン」に体内に入られてしまいます。

その後、妻と子やクウェイルの思い出が揺らぎつつ車を急ぎ走らせるジェイムズは自身が家族と過ごしたはずの家へとたどり着きますが、そこは空き家であり生活感は欠片も存在しませんでした。

ジェイムズは混乱する頭で病院へと辿り着くと植物状態の男を射殺。

すると病院内でその様子を目撃した人間たちはジェイムズに跪き「あなたが発信し、私たちが受信する」と言いました。

映画『エンプティ・マン』の感想と評価


(C)2021 20th Century Studios.

全米で大ヒットを記録したオカルトホラー映画

2020年10月16日に全米劇場で公開され、週末興行収入ランキング初登場で3位を記録した映画『エンプティ・マン』。

本作はチベット仏教の宗教色を感じさせるブータンの山奥で不気味な白骨体を発見する、画的に引き込まれる導入から始まります。

その後、物語はアメリカの静かな町へと移り、心に深い傷を抱える男が町で起きる異変の調査にのめり込んでいく様子が描かれます。

町で発生する異変を追うと言う構図はオカルトホラーでは定番であり、大ヒットを記録した「IT-イット」シリーズなどのように、徐々に怪異の核心へと迫っていくミステリ要素も人気の理由のひとつになっています。

しかし、本作はその定番に逆らい、核心に近づけば近づくほど理解が困難になっていきます。

静かにそして淡々としながらも日常が崩壊していく、理解の及ばない恐怖に支配された作品でした。

若者と終末思想


(C)2021 20th Century Studios.

物語の中で「エンプティ・マン」の存在は、徐々にある新興宗教へと繋がっていきます。

世界の終わりを救いとする「終末思想」はキリスト教を始め数多く存在しますが、本作に登場する「ポンティフェックス研究所」は積極的に世界の終わりのために行動するかなり過激な組織。

しかし、そんな「ポンティフェックス研究所」には若者が多く集まっている様子が描写されています。

現実の社会でも「終末思想」を持つカルト的宗教に若者が傾倒するケースは年々増加しており、「未来への希望」よりも「終わりによる救い」が求められている社会情勢なのだと言えます。

本作では、中盤より都市伝説ホラーから一転して宗教系ホラーへと様相が急変。

真綿で首を締められるような静かに自身が脅かされていく様子を、宗教と若者と言う現実と照らし合わせて鑑賞することをオススメします。

まとめ


(C)2021 20th Century Studios.

「言葉は繰り返されることで意味や理解を失っていく」。

哲学的、宗教的に全てを把握しきることは難しい本作ですが、それゆえに人によってさまざまな解釈が可能な映画とも言えます。

実行することで確実に関係者の命を絶つ都市伝説「エンプティ・マン」。

その存在は人類にとって救いなのか、それとも恐怖の対象なのか。

アメリカで大ヒットを記録したホラー映画『エンプティ・マン』でぜひその正体を確かめてみてください。

関連記事

ホラー映画

映画『ディストピア パンドラの少女』あらすじとキャスト!試写会情報も

人類がハングリーズ化した世界に現れた、二番目の子供たち。彼女は人類の希望か、絶望か…。 「カズオ・イシグロ meets ウォーキング・デッド」と絶賛された小説を映像化した『ディストピア パンドラの少女 …

ホラー映画

聖ゾンビ女学院あらすじ!虹コンメンバー映画舞台挨拶は?上映館一覧も

新型ウィルスにより人肉を喰らう通称“ギンプ”がという死者が大量発生!文明の99%が絶滅した世界で、未来のために学園いる7人の少女たちが戦いを挑む! 少女たちを演じるのは、声優、イラスト、コスプレなど、 …

ホラー映画

【ネタバレ】オカルトの森へようこそ|結末あらすじ感想と評価解説。白石晃士監督で描く実録ホラー撮影隊が遭遇する“不可解な現象”

祟りの森へ足を踏み入れた映画監督と助監督の運命は? 傑作を撮影する為、助監督の市川と「祟りの森」に足を踏み入れた、映画監督の黒石を不可解な現象の数々が襲う、ホラー映画『オカルトの森へようこそ THE …

ホラー映画

『ウォーハント 魔界戦線』ネタバレあらすじ結末と感想解説の評価。ホラーに戦争映画の要素をプラスさせて“極秘任務”を遂行しようとするアメリカ軍に迫る恐怖

人を狂わせる「魔女の森」で、極秘任務は遂行できるのか!? 第2次世界大戦末期の時代を舞台に、森に墜落した輸送機と極秘書類の捜索に向かった、アメリカ軍が遭遇する恐怖を描いた映画『ウォーハント 魔界戦線』 …

ホラー映画

実話映画『事故物件 恐い間取り』ネタバレ感想と考察。芸人松原タニシの原作をもとにガチ怖のホラーが誕生

実話でもある『事故物件 恐い間取り』がついに解禁 殺人や自殺など、何かしらの死亡事故が起きた、いわくつきの部屋を現わす言葉「事故物件」。 この事故物件に住み、自身の体験を書籍にしている「事故物件住みま …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学