連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第56回
日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅して、ピックアップする連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』。
第56回は、2025年12月12日(金)より丸の内ピカデリー、新宿バルト9ほか全国公開の『シャドウズ・エッジ』。
ジャッキー・チェンとレオン・カーフェイが共演の、中国で4週連続興行収入ランキング1位を記録した、決死のクライムアクションです。
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映画『シャドウズ・エッジ』の作品情報
(C)2025 IQIYI PICTURES (BEIJING) CO., LTD. BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD. BEIJING HAIRUN PICTURES CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
【日本公開】
2025年(香港・中国合作映画)
【原題】
捕風追影(英題:The Shadow’s Edge)
【監督・脚本】
ラリー・ヤン
【キャスト】
ジャッキー・チェン、チャン・ツィフォン、レオン・カーフェイ、ツーシャー、ジュン
【作品概要】
ジャッキー・チェンが、『ライド・オン』(2024)に続きラリー・ヤン監督とタッグを組んだクライムドラマ。追跡のエキスパートが率いる警察と元暗殺者が従えるサイバー犯罪集団の対決を描きます。
犯罪集団のボスを、ジャッキーとは『THE MYTH/神話」(2005)以来約20年ぶりの共演となるレオン・カーフェイが演じます。
その他のキャストに、『シスター 夏のわかれ道』(2021)、岩井俊二監督作『チィファの手紙』(2018)のチャン・ツィフォン、K-POPグループ「SEVENTEEN」のメンバーでもあるジュン、テレビドラマ『山河之影 錦衣衛と謀りの王朝』(2023)のツーシャー。
中国では4週連続興行収入ランキング1位を記録し、公開から約1か月で12億元(日本円で約250億円)突破のヒットとなりました。
映画『シャドウズ・エッジ』のあらすじとネタバレ

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ネオンに彩られたマカオで、神出鬼没のサイバー犯罪集団が横行していました。
“影”と呼ばれる主犯の指揮の元、身体能力の高い熙旺(シーワン)と双子の弟でハッカーの熙蒙(シーモン)、格闘術に長けた胡楓(フーフォン)、変装の達人の仔仔(ザイザイ)、俊敏な動きが得意な小辛(シャオシン)、力持ちの阿威(アウェイ)らメンバーは、マカオタワーのデジタル資産運用会社を襲撃。
目的はとある実業家の通貨口座のパスキーが入ったノートを奪うこと。シーモンが監視映像をハッキングさせてメンバーの姿を消去したことで、警察の追手をくらまします。しかし、同じ仮想金庫に15億香港ドル相当の暗号通貨を見つけたシーモンは、影の反対を押し切りシーワンを通して強奪。
追ってきた捜査官のウーに捕まりそうになるも、影の助言で監視カメラをかいくぐって変装を繰り返し、逃走に成功します。逮捕に失敗したマカオ警察は、現在は一線を退いた追跡のエキスパート、黄徳忠(ホワン・ダージョン)を復帰させることに。
数多くの監視映像を一瞥して変装した犯人たちの目星をつけたホワンは、現在では時代遅れとして不要とされていた追跡班チームの編成を提案。デジタルに頼らない人海戦術ならば、犯人たちに気づかれずに近づけると踏んだのです。
メンバー入りを希望する警官たちを選ぶホワンは、女性司法警官の何秋果(ホー・チウグオ)も加えます。彼女の父は若き頃のホワンの先輩刑事でしたが、ホワンと組んでの捜査中に殉職していました。
ホワンに対し複雑な思いを抱えるも、ホーは格闘術を磨くも捜査の前線に行けずじまいという忸怩たる思いを晴らしたいという思いから、一緒に車に乗ってホワンのサポートする任務に着くことに。
一方、閉鎖された孤児院をアジトとしていた強盗団。影はそこで勝手な行動を取ったシーワンとシーモンに制裁を加えます。納得のいかないシーモンに対し、シーワンは孤児だった自分たちを育ててくれた恩があるとして、影への変わらぬ忠誠を誓います。
かたや追跡班は、ホーの同僚リウを含めたメンバーたちが店員や作業員などに扮し、行動パターンの注意点や、警官であることがバレない仕草をするよう、ホワンの指導を兼ねた捜査が連日行われていました。しかしホーは食事の買い出しぐらいしかする事がなく、不満を募らせます。
そんな中、夜の見張り中に女性を暴漢から助けようとしたホーを、ホワンが制止。警察としての仕事をさせないのは自分が女だからかと詰るホーに、ホワンは「一緒に帯同させているのは、追跡班の中で犯人たちに素性が割れていない者を作るため」と明かします。
さらにホーの父親が殉職したのは、一緒に麻薬密売の潜入捜査をしていた際、ホワンが任務外だった幼児売買の容疑者を捕まえようと独断で動いたのが原因でした。
ホワンは、ホーに自分と同じ過ちをさせたくないとして、いかなる不測の事態が起きても、自分が与えられた任務遂行に専念するよう諭すのでした。
捜査が15日目に入り、ホワンは市場でついに影と思われる男の存在を確認。顔が割れていないホーの追跡により、影が暮らすアパートを突き止めます。
ホワンとホーは親子を装って影に近づき、食卓を囲んで交流を深めます。その際、ホーはホワンが父親の死以来、密かに彼女の成長を見守っていたことを知り、涙するのでした。
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食事後、部屋に戻った影を監視していた警察は、彼がひたすら緩衝材(プチプチ)を潰している様を捉えます。
ホーがコピーした影のスマホのデータをウーに渡しに部屋を出た直後、自分たちの素性がバレることを恐れたシーモンの手筈でシーワンがホワンを襲うも失敗。そこでシーモンは賞金稼ぎの傭兵たちを雇って警察本部を、同じく愚連隊を使って孤児院に呼び寄せた影を襲わせます。
負傷を追いながらも、スペツナズナイフ1本で愚連隊たちを殲滅した影の前にシーワンが姿を現します。兄の予定外の行動に戸惑うシーモン。弟を守るために影と対峙したシーワンの息の根を止め、影は嗚咽します。
一方、壊滅寸前にまで追い込まれる警察でしたが、ホワンやホーの活躍で傭兵たちの制圧に成功。しかし、警官隊に扮していたフーフォンやザイザイたちに、本部が押収していた実業家の通貨口座データを盗まれてしまいます。
スマホのデータから、影の正体が外国籍の元偵察兵で伝説の暗殺者と言われていたフー・ロンション(傅隆生)と判明。シーワンが仕掛けていた爆弾で孤児院は爆破されるも、辛くも生き残ったフーですが、駆けつけたウーたち追跡班に捕らえられます。
テクノロジーとアナログの対決と融合

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本作『シャドウズ・エッジ』は、厳密に言うと2007年製作の香港映画『天使の眼、野獣の街』のリメイクにあたり、韓国でも『監視者たち』(2013)として映画化されています。
香港ノワールとして評価が高いオリジナル版のファンだったという監督のラリー・ヤンは、アレンジされた韓国版から新しい可能性を感じたとして、独自のリメイクを企画。基本設定はそのままですが、監視システム、顔認識、ナンバープレート認識といったテクノロジーが進化した現代社会に合わせた要素を盛り込んでいます。
そして何といっても、ジャッキー・チェンを主演に据えたことが、前2作との違いを明確にしています。
主人公となる元ベテラン刑事のホワンは、『天使の眼~』でのサイモン・ヤム、『監視者たち』でのソル・ギョングが演じたキャラクターに相当しますが、ジャッキーが演じる以上、アクションシーンは前2作をはるかに凌駕しています。
ジャッキーは当初こそ、数多く警察官役を演じてきたからという理由で本作のオファーを固辞。しかし、『ライド・オン』(2024)でのヤン監督の手腕もさることながら、最新テクノロジーを駆使する犯罪集団とオールドタイプと見なされがちなアナログな捜査手法との闘いというシチュエーションに惹かれ、出演を決めたそう。
ジャッキーがメンター(指導者、上司)となって若手を支えるといった役どころは、50代に主演した『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(2005)あたりから増えてきましたが、70代で主演の本作では、さらにそのメンターとしての重みが増しているといえましょう。
また注目したいのは、テクノロジーとアナログの対決と同時に、融合も描いている点。
監視能力が格段に進化したテクノロジーをサイバー犯罪集団に逆利用されてきた警察。打開策として、長年培ってきた“足を使う”アナログ追跡スキルを持つホワンが加入します。
最初こそホワンのやり方に戸惑いを覚える若手警官たち。中でもホワンとは浅からぬ因縁を持つホーの不満は高まりますが、やがて警察としての職務に立ち返ることで信頼感を築いていきます。
テクノロジーとアナログ双方にある利点。それらを融合して活かすか、もしくは相殺してしまうかは、要するに扱う人間次第なのです。
老獪さを感じさせぬジャッキーとレオン・カーフェイの存在感
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かたや、サイバー犯罪集団の主犯となる“影”ことフー・ロンション。孤児たちを引き取って犯罪スキルを植え込み、怖さで彼らを従順させる一方で、父としての慈しみも持つという多面性を持ちます。
いわゆる疑似親子関係にある面々ですが、養子の1人でフーへの不満が鬱屈していたシーモンの反発により、強固な信頼を築けぬままついには崩壊していきます。ホワンとホー、そしてフーとシーモンは、ある意味で合わせ鏡の存在といえましょう。
実はフー役のレオン・カーフェイは、オリジナル版の『天使の眼~』でも犯人のチャン・チョンサン役で出演しており、言うなればフーは「パラレルワールドでのチャン・チョンサン」的扱いとなっています。オリジナル版を観ている方なら、「もしチャンに子どもがいたら…」というif視点で本作を楽しめるはず。
そして、71歳(2025年時点)のジャッキーと、『風林火山』(2025)や2026年日本公開の『射鵰英雄伝』でも円熟した演技を見せている67歳(2025年時点)のカーフェイによるラストバトルは、年齢を感じさせないほどスリリングで危険極まりない内容です。
ほかにも、小道具を使ったジャッキーならではのアイデア満載バトルはもちろんのこと、カーフェイがスペツナズナイフ1本で数十名もの敵と狂ったように闘うシチュエーションも筆舌に尽くしがたいものがあります。

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近年のジャッキー主演映画に必ずと言っていいほど付いてくる感想が、「ジャッキーはどの若手俳優よりも動き回っている」。確かに現実的に考えれば、70代の人間が最前線に立って闘うのは難しいものがあるでしょう。
でも、主演がジャッキー・チェンである以上、やっぱり観客はジャッキーの活躍を観たくて劇場に足を運ぶのです(このあたりはトム・クルーズ主演作にもいえることですが)。
個人的には、ジャッキーがメンターとなった数ある作品の中でもトップクラスの出来映え。
オリジナルの『天使の眼~』や最初のリメイク『監視者たち』を未見の方は、これを機に見比べしてみるのも一興かもしれません。
次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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松平光冬プロフィール
テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。
ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)


































