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Entry 2021/11/22
Update

地獄が呼んでいる2話ネタバレあらすじ評価と結末の感想解説。キャストのパク・ジョンジャ(シングルマザー役)の正体とは!?

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  • 20231113

Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を各話完全紹介

新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)とその前日譚の長編アニメ映画、『ソウル・ステーション パンデミック』(2016)を公開し、一躍世界的ホラー映画作家となったヨン・サンホ。

『新感染』シリーズ待望の続編として製作された、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)も大ヒットを記録します。

その彼が手掛けたNetflixオリジナルドラマ、『地獄が呼んでいる』が2021年11月19日(金)より、全世界に配信されました。

第1話の冒頭、白昼ソウル市内で謎の怪物による襲撃殺害事件が発生。それは新興宗教団体「新真理会」のチョン・ジンスが語る、神による罪人への裁きでしょうか。

新真理会の教えを信奉する若者たちは、世界が変わると騒ぎ始めます。特に過激な行動に走る“矢じり”と称されるメンバーの言動が、徐々に社会を揺るがし始めます。

捜査のためにジンスに接近した刑事ギョンフンは、娘のヒジョンも新真理会に興味を持っていたと知り驚きます。そのギョンフンも、妻を殺害した犯人が重罪に問われず出所したことに疑問を感じていました。

そんな中、「新真理会」の被害者を支援する弁護士ミン・ヘジンの元に、ジョンジャと名乗る女が現れ訴えます。「私は地獄に行く時刻を告げられた」と…。

【連載コラム】「ある日、地獄行きを告げられた」Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を完全紹介の記事一覧はこちら

ドラマ『地獄が呼んでいる』の作品情報


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

【配信】
2021年(韓国ドラマ)

【原題】
지옥 / Hellbound(英題)

【監督・脚本】
ヨン・サンホ

【キャスト】
ユ・アイン、キム・ヒョンジュ、パク・ジョンミン、ウォン・ジナ、ヤン・イクチュン、キム・ドユン、キム・シンロク、リュ・ギョンス、イ・レ

【作品概要】
「新感染」シリーズのヨン・サンホが手掛ける、世界に向け配信された全6話のホラードラマ。この作品は彼が2003年に発表した短編アニメーション映画を発展させた作品です。

彼はドラマ配信に併せ、1980年代の韓国民主化闘争を描いたグラフィック・ノベル『沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート』を描いたチェ・ギュソクと共作で、この作品の原作となるコミック『地獄』も発表しました。

主演の謎めいた人物に、ドラマ『トキメキ成均館スキャンダル』(2010~)や『チャン・オクチョン-張禧嬪-』(2013~)で人気を高め、映画『バーニング 劇場版』(2018)や『#生きている』(2020)に出演のユ・アイン。

彼を追う刑事役を『あゝ、荒野 完全版』(2017)のヤン・イクチュンが、その娘役を『新感染半島 ファイナル・ステージ』の演技が絶賛されたイ・レが演じました。

ドラマ『愛人がいます』(2015~)や『ウォッチャー 不正捜査官たちの真実』(2019~)のキム・ヒョンジュ、『それだけが、僕の世界』(2018)や『サバハ』(2019)、『スタートアップ!』(2019)のパク・ジョンミン、『英雄都市』(2019)のウォン・ジナらが共演しています。

ドラマ『地獄が呼んでいる』第2話のあらすじとネタバレ


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

宙に現れた巨大な顔、「新真理会」が語る「天使」に死の時刻を告げられたパク・ジョンジャ(キム・シンロク)は、弁護士のミン・ヘジン(キム・ヒョンジュ)に語ります。

新真理会のチョン・ジンス(ユ・アイン)から、彼女が死に地獄に堕ちる姿を生放送で中継したいと言われた。その謝礼は30億ウォンだというのです。

ミンたちには馬鹿げた話に思え、ジョンジャ自身も死の告知が真実か図りかねていました。謝礼を確実に受け取れるか判らない。しかしもし自分が死んだら、残される幼い子供たちに確実に金が渡るよう図って欲しい、それが彼女の訴えでした。

中継を認めれば子供たちの個人情報も晒される、とミンは説明しますが、ジョンジャは自分の死の可能性を深刻に考えています。

新真理会による中継など許すべきでない、と口にするヘジン。しかし同僚のパク弁護士は、怪物が現れるはずがないと考えていました。

中継して何も起きなければ新真理会は世間に恥をさらす、ジョンジャにデメリットは無い。金は受け取るべきだと言う同僚に、もし怪物が現れたら、とつぶやくミン弁護士。

まず警察に連絡して子供たちの保護を手配する。その上で新真理会の依頼を受けることになりました。

帰宅したミンは、ベットで煙草を吸う母を見て驚きます。彼女の母は末期のガン患者でした。仕事について尋ねた母に、自分の知る世界の常識は崩れたと言い、事件のあらましを語るミン。

人の死を告げる何かが現れ、予言通り死んだ者は地獄に行くとの話を聞いた母は笑い出します。自分にも死を告げる者が現れた、それはガンを宣告した担当医だ。

人はいつか死ぬ。まともな精神状態を維持し、最期まで娘の顔を見て死ねるなら幸せだと話す母。

同じ夜、ジョンジャは息子と娘の寝顔を見て泣きました。新真理会のジンスはジョンジャの息子が撮影した、死を告げる天使の動画を見つめていました。

ギョンフン刑事(ヤン・イクチュン)が所属するソブク警察署は、事件以来多数寄せられる様々な電話に苦慮していました。そして怪物に殺され、”試演”で地獄に送られたとされる、犠牲者チュ・ミョンフンの遺体の鑑定書が届きます。

焼け焦げたミョンフンの遺体は、この世に存在しない物質に変貌していました、捜査チームの班長は上司にどう報告すればいいのか、と叫びますが、その時ギョンフンにミン弁護士から電話がかかりました。

ギョンフンがウンピョ刑事と共にジョンジャの家に向かうと、ジンス議長ら新真理会一行と出会いました。新真理会はずいぶん資金を持っているようだ、と問うギョンフン。

信徒の中には富豪もいると答えるジンス。彼はジョンジャの”試演”を、多くの人間に見て欲しいと願っているようでした。

警察はジョンジャの件は予告殺人と扱い動いていました。神の告知を捜査するとは、とつぶやいたジンス。

古代人は日食は神の怒りで、天の巨大な犬が太陽を噛んだと考えた、とジンスは語ります(漢民族の一部や朝鮮族など、世界の多くの民族に伝わる伝承)。

それを信じた古代人は、その犬を狩ろうと多くの狩人を動員した。ギョンフン刑事たちは、まるでその狩人みたいだと言い笑うジンス。

ちょうどその場に現れたミン弁護士は、日食の神の怒りと信じ人を捕らえ、生贄に捧げた祭司長より狩人たちの方がましだ、と告げました。

ジョンジャの家で”試演”の中継の契約を交わす、弁護士と新真理会メンバーたち。それにギョンフンは立ち会いますが、ウンピョは子供から証言を得ようとします。彼らも目撃者だと言う同僚に、この件に子供を巻き込むなと告げるギョンフン刑事。

契約は結ばれ、約束の金は弁護士立ち合いで振り込まれました。部屋に飾られた家族写真を見たジンスは、ジョンジャの13歳の息子と6歳の娘に会いたいと言います。

父はいない、子供たちの父親は別の人物だ話すジョンジャに、個人情報を語る必要は無いと告げるミン弁護士。ジンスは何故2度も父の無い子を産んだのか、父親はどんな人物か、相手は既婚者なのかと尋ねました。

なぜそんな質問をすると抗議するミンに対して、ジョンジャが地獄に行く理由を知る必要があると告げるジンス。

その言葉を聞いた息子ウンユルが現れ、母は悪くないと叫びます。娘ハユルも泣き出し、ジョンジャは子供たちをなだめに部屋を出ました。

戻ると地獄に行く理由はどうでも良い、子供たちには苦労せず生活させて欲しいと語るジョンジャ。涙を流しながら今回の事態は、子供に何もできない私にはチャンスだと話しました。

契約を終えた一同は家を出ます。ジンスはミン弁護士に先ほどの祭司長の件だが、人には生きる意味を与えるべきだ、人は意味を見い出せないと自滅すると主張します。新しく始まる世界で会いましょう、と言い残して去った新真理会のジンス議長。

ミンの同僚パク弁護士はジンスは狂信者と考え、”試演”を中継するテレビ局は現れず、せいぜい新真理会のメンバーの”矢じり”たちが騒ぐだけと考えていました。

子供たちの安全をどう確保すると尋ねたギョンフンに、ミンは自分のカナダの親戚の家に行かせると答えます。いらぬ心配だとパク弁護士は言いますが、ウンピョ刑事は何も語らず鼻で笑います。

ネット上ではあの奇妙な扮装の、刑事たちが”骸骨野郎”と呼ぶ男が現れ、新真理会が死を告知された者が現れ、その人物が地獄に行く姿を生中継すると発表した、と叫びます。

我々は世間から誤解され侮辱されてきたが、2日後に中継が実施されれば、全世界の者が我々の言葉に耳を傾けると狂喜します。この動画を多くの者が視聴していました。

その人物は何の罪で地獄に行くのか、なぜその罪は秘密にされているのかと、視聴者に問いかける男。

ある場所でパソコンの前に座った男は、”順応者38″の名でチャットルームに参加します。彼は地獄行きを中継されるのはパク・ジョンジャ、子供たちは異父兄妹だと個人情報を流します。

流れてきた情報を確認した”骸骨野郎”は喜び、”順応者38″は大した奴だと叫び、興奮して”矢じり”と連呼します。”順応者38″の正体はウンピョ刑事でした。

夜遅くギョンフンは帰宅しましたが、娘ヒジョン(イ・レ)の姿はありません。電話をすると友達の家で勉強していると答えるヒジョン。

友達の家に泊まりたいという娘に、ギョンフンは許可を与えます。しかし、実はヒジュンはジンスの前にいました。

よく決心したと告げるジンスに、6年前に決めていた。私のせいで母が死んだから、と答えるヒジュン。

あの日母は、警察署に行き父に着替えを渡すように言った。しかし私はそれを忘れ、そして母が届けに行った。

そして母は殺された、と涙を流し告白するヒジュン。君のせいではない、悪い奴は他にいると優しく語るジンス。

人の作った法律がいかに空しいか、君もお父さんも判っているはずだと言い聞かせるジンス。僕たちが、誰も罪を犯さぬ世界を創ろうと言葉を続けます…。

以下、ドラマ『地獄が呼んでいる』第2話のネタバレ・結末の記載がございます。ドラマ『地獄が呼んでいる』第2話をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

物思いにふけるギョンフン刑事に、ミン・ヘジン弁護士からのメールが届きます。それはネット上にジョンジャや家族の個人情報が流れたと知らせるものでした。

やはり新真理会を信用すべきでなかったと告げるミン。ジョンジャの子たちの安全を確保しようと、急いでカナダに送り届けようと動きます。自分も空港に向かうと応じるギョンフン。

車を走らせたギョンフンは、ウンピョ刑事にジョンジャの家を警護しろと伝えます。それを聞き、逃げれるものなら逃げてみろとつぶやくウンピョ。

ネット上ではあの奇妙な扮装の男、”骸骨野郎”が”試演”で地獄に送られるジョンジャの情報を晒し、彼女の罪を推測して叫びます。父がいない子供がいるだと!保険金目当てに夫を殺した?それとも児童虐待か?と”骸骨野郎”はわめきます。

彼の元にはSNS上の情報が次々と集まります。ジョンジャの罪の証人の子供たちは、我々の手で保護しろと扇動する”骸骨野郎”。

ミンはジョンジャ一家を車に乗せ空港に急ぎます。しかし街行く人々にはそれに気付き、その中に扇動に応じ情報をネットに流す者がいるかもしれません。

同じ頃、ジンスと同じ車に乗ったヒジュンは、酒を飲みながら夜道を歩く男を見ていました。彼女にあの男かと尋ねるジンス。

あんな顔だったのか、とつぶやくヒジュン。テレビも新聞も母の殺害犯の顔は報じていません。彼は人の定めた罪を償い、のうのうと生きているとジンスは言いました。

後悔しないか、と問うジンスに何も答えず、ヒジョンは男をスタンガンで襲います。

空港に着いたミン弁護士は車にジョンジャを残し、2人の子を連れ飛行機に乗せようとします。ミンは飛行機に搭乗するまでを係員に託しました。

周囲の目を気にしつつ、ウンユルとハユルの兄妹は旅客機に乗り込みます。妹に母はいつ来るのかと聞かれ、思わず泣き出す兄のウンユル。

空港に着いたギョンフン刑事がジョンジャと合流した時、ミンも姿を現します。3人は子供たちが無事出国したと喜びますが、不本意な別れになったとジョンジャは泣き出します。

証拠を何度見せても、人は死を告知されるまで信じない、とつぶやくジンス。人は罪を犯さねば生きられないのに、罰を受ければ文句を言う、と言葉を続けました。

ジンスはヒジョンと共に、拉致した男の前にいました。そこは使われていない火葬場で、ジンスは男の意識を薬で奪います。

母を殺した男が静かになると、その体を焼却炉に入れるヒジョン。ジンスは炉の扉を閉めスイッチを入れました。

火が放たれると目覚めた男は暴れ出し叫びます。悲鳴をあげ悶え苦しむ男の姿を、涙を流しながら笑顔で見つめるヒジュン。

早朝、朽ちたビニールハウスの中に焼け焦げた男の死骸がありました。警察より早く集まった記者たちが、その骸を写真に収めます。

ソブク警察署に出勤したギョンフンは、班長からテレビのニュースを見ろと告げられます。それは6年前に彼の妻を殺した、キム・チャンシクの焼死体が見つかったと報じるものでした。

犯行時は心神耗弱状態とされ、6年で出所したキムの焼け焦げた死体は、ネット上ではソウル市内で起きた”試演”と同じ事が起きた、と騒がれているとレポーターは伝えます。

死体の発見者は最初に警察に伝えず、先に記者が集まった結果、情報が表に出たと捜査班長は言いました。この件は知らなかったのかと確認する班長に、昨晩はジョンジャの子供たちを空港で見送ったとアリバイを話すギョンフン。

マスコミは明日の予告殺人の件で大騒ぎだが、事件が解決すれば騒ぎは収まると言う班長。しかしギョンフンは一人で考え込んでいました。

ネットでは”矢じり”たちの扇動者、”骸骨野郎”がキムの遺体発見を語っていました。あの殺人犯は罰されるどころか、人院し治療された。理由は麻薬中毒者だからだ。

人間は彼を罰さず、神が罰した。罪を犯せば裁かれる簡単なルールを守れぬ人間を、神は数千年間我慢した。そしてついに我慢を止めた。明日の”試演”に先立って神はメッセージを送った。パク・ジョンジャ、”試演”までに犯した罪を告白しろ…。

この言葉に扇動された若者たちがジョンジャの家に集まり、罪を告白しろと叫び声をあげます。その光景を窓から見つめるミン弁護士とパク弁護士。

家の中では新真理会の関係者が中継の準備を進めます。ミンはジョンジャに移動を勧め、新真理会の者は戻らねば契約違反と指摘しますが、娘の描いた絵を眺めていたジョンジャは、ここに居たいと答えます。

外で歓声が響きます。何事かと尋ねたミンに、”試演”が地上波の全テレビ局で生中継されると決まった、と教えるパク弁護士。

ギョンフン刑事はキムの事件の捜査状況を訊ねますが、野次馬が付きまとい証拠は集まらず、防犯カメラの映像は暗くて判別できないと教えられます。

娘ヒジョンとは連絡が取れず、やむなく担任教師に電話しようとした時、警察署に投げ込まれた石が窓ガラスを破りました。

次の瞬間、警察署にバットなど凶器を持った暴徒たちが、仲間を釈放しろと叫びなだれ込みました。ギョンフンが取り押さえた男は、神を捜査するなと叫びます…。

時間が過ぎ、ジョンジャの”試演”の時刻が近づいていました。彼女の家の壁は取り壊され、外からも見える様になっています。周囲には”試演”を見届けようとする人々が集まりました。

無数のカメラが設置され、”罪人”ジョンジャを非難する言葉を群衆が掲げ、VIPと呼ばれる人物が現れます。”試演”の場の最前列の席に座る、白い仮面を付けたVIPたち。

奴らが報酬の30億ウォンの出どころだ、とつぶやくパク弁護士。ミンは新真理会の財力は想像以上のものかも、と口にします。

その時キム・ジョンチルという人物から、ミン弁護士宛に送られた封書が彼女に渡されました。それを開けようとした時、ジョンシャが部屋に入ってきました。

ジョンジャは用意された椅子に座ります。警備のギョンフン刑事は、この場に新真理会のジンス議長がいないと気付きます。ウンピョ刑事は狙撃位置のSWAT隊員に無線連絡しますが、何が現れ、何を撃っていいのか困惑する隊員たち。

ギョンフンは部下たちに、何があってもジョンジャの命を守るよう命じて位置につかせます。時間が迫ったとジョンジャ以外の者は部屋から出るよう促す新真理会の関係者。

ミンはジョンジャに子供たちに電話しますか、と確認しますが涙ぐみ終わってからかけると答えるジョンジャ。

周囲に警告を知らせるサイレンが流れます。カウントダウンが始まりました。そして予言された時刻、午後3時がやって来ます。

そしてジョンジャは遠くから響いてくる、鈍い轟音を耳にしていました…。

ドラマ『地獄が呼んでいる』第2話の感想と評価


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

第2話にして裁かれぬ罪人どころか、物語そのものが”地獄”への疾走を開始したヨン・サンホ監督のドラマ『地獄が呼んでいる』。

怪しげな狂信者であっても、神に忠実な男にも思えた新真理会の議長ジンスは、新たな世界を実現のために自らの手を汚します。その行為に、ギョンフン刑事の娘ヒジュンも加担します。

そして第1話で”天使”に死と地獄行きを予言されたジョンジャを巡り、物語は急展開を遂げます。ギョンフンとミン弁護士が追う新真理会は手強く財力も想像以上、身近なところに彼らの信奉者が潜んでいました。

現実にはありえぬ荒唐無稽なフィクションが、説得力ある物語を徐々に形を作る。嫌な予感を覚えつつ先の展開が楽しみになるドラマです。

劇中に使われるBGMは少なめですが、エンドロールに流れる音楽がドラマの世界観を盛り上げます。特に今回のラストの音楽の入り方にはゾクっとしました。

本作の音楽を手掛けたのは『二度の結婚式と一度の葬式』(2012)や、『マリオネット 私が殺された日』(2017)のキム・ドンウク。

配信ドラマの常として、エンドロールを飛ばして次のエピソードを見る方も多いでしょうが、ぜひ一度この力強い楽曲を聞いてみて下さい。

過激な行為に走る風潮を描いてみせる


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

様々な人物が、後戻り出来ぬ行為に手を染めた今回のエピソード。サイバー空間からはエキセントリックな姿の”骸骨野郎”(Skull Mask)が、過激な言動で人々を煽り立てます。

そのパフォーマンスは今回も圧巻、楽しんで見ました。笑ってはいけないシーンですが、緊迫するドラマの中ではちょっとした清涼剤、いつ彼が登場するか待ち遠しい存在になりました。

この男の扇動で新真理会を信奉する”矢じり”たちは、一線を越え警察署を襲撃します。このシーンに、2021年に発生したアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件重ねたのは私だけでしょうか。

落選したトランプ元大統領の支持者が起こした事件、彼らはネット上で「Qアノン」と呼ばれる陰謀論信者が発した、過激な主張に呼応して行動を起こしました。

この襲撃の先頭に立った人物に「Qアノン」のシャーマンを自称する、顔に米国旗をあしらったメイクを施し、上半身は裸でバッファローの角の付いた帽子を被った奇妙な扮装の男、通称「バッファロー男」がいます。

彼は逮捕され2021年11月17日、禁錮3年5ヶ月の判決を言い渡されました。『地獄が呼んでいる』の”骸骨野郎”のモデルは、おそらくこの人物でしょう。

無論ドラマは事件より以前に企画され、撮影が進んでいたはず。しかし2019年頃には「バッファロー男」は、「Qアノン」支持者の間では既に有名な存在でした。

ネットを媒介とした人々の過激化を描くのに、本作はアメリカで起きた状況をモデルにしたのです。流石は全世界への配信を意識して製作されたドラマだと気付かされました。

議事堂襲撃事件後にこのシーンが生まれたのか、確認したいところです。それ以前に企画され撮影が済んでいたのなら、このドラマは事件を”予言”した事になるのでしょうか。

キム・シンロクが苦悩する母を演じる


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

世界の視聴者を意識して製作された本作は、一方で韓国の姿も鋭く描いています。その姿勢もまた、他国の視聴者に見応えを感じさせるのでしょう。

罪人として一歩的に非難され、人々の前で晒し物になる女性パク・ジョンジャ。第1話で”矢じり”に暴行された小説家が警告した、中世の魔女狩りのような状況に彼女は置かれたのです。

当然これは宗教的、歴史的背景を元に作られたシーンですが、同時に韓国の女性に与えられた状況をも描きました。

女性の社会進出が進み、女性大統領も誕生した韓国。その一方で年配者は従来の男尊女卑の価値観を持ち、徴兵制の義務を負い社会進出が遅れる若い男性は、女性は様々な面で優遇されていると感じる、複雑な女性嫌悪の感情を男性たちは抱いています。

これの状況は社会現象となったベストセラー小説、そして映画にもなった『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019)に描かれました。

そんな状況に縛られた多くの韓国女性が、性犯罪に対して声をあげにくい環境に置かれているといいます。その結果生まれた悲劇的事件も度々報じられています。

ジョンジャが直接そういった被害にあった描写はありませんが、シングルマザーゆえに好奇の目で見られ、そして過去が疑われました。神が罰したのだ、だから彼女は罪人なのだという確信が、人々の心の奥底に眠る差別意識を目覚めさせました。

この悲劇的な女性、ジョンジャを演じたのは『バーニング 劇場版』にも出演のキム・シンロク。彼女はドラマ『怪物』(2021~)の演技が絶賛され、ドラマ『ある日~真実のベール』(2021~)でも注目を集めています。

『ある日~真実のベール』は、アメリカで『ザ・ナイト・オブ(放送時の邦題は「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」)』(2016~)のタイトルでリメイクされた、イギリスの名作ドラマ『Criminal Justice』(2008~)の韓国版です。

今韓国で最も演技力が高く評価されている女優の1人、キム・シンロク。その実力は本作でも確認できるでしょう。

そして配偶者を持たない母親、という設定はキリスト教文化的には、実に様々な意味を持ちます。今回のエピソードでは、彼女はあれだけ責め立てられても、ついに自分の罪を告白しません。

これは確実に、この後の展開に大きくつながるはずです。『地獄が呼んでいる』には様々な伏線が張り巡らされているのです。

まとめ


Netflixオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』

2話にして凄い展開になった『地獄が呼んでいる』。神と人間、罪と罰について正面から描く姿勢に揺らぎはありません。

そして世界の、そして韓国の社会を揺るがす問題を取り込んだ物語が、見事にエンターテインメントとしてドラマ化されています。なるほど全世界で受け入れられる訳です。

意外な正体を見せたウンピョ刑事の、SNS上のハンドルネームは”順応者38″。南北に分かれた朝鮮半島を考えると、余りに意味深な名前です。

そういえば2010年に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件。衝突時の動画をネット上に流した海上保安官のハンドルネームは”sengoku38″でした。

まさかヨン・サンホ監督が、この日中間の事件を意識したとは思えませんが…。しかし様々な情報が込められたドラマを前に、つい想像を働かせてしまいます。

なんだか『地獄が呼んでいる』を深読みしていると、陰謀論めいた考えに取り付かれそうです。こんな状態でハイテンションな”骸骨野郎”の動画でも見たら、つい連中の仲間になりかねません。

知らぬ間に間にか私もあなたも、”矢じり”の一員になっているのかも。”矢じり”=『地獄が呼んでいる』のファンは、あなたの隣に潜んでいるのかもしれませんよ。

Netflixオリジナルドラマ『地獄がよんでいる』は2021年11月19日(金)より配信開始

【連載コラム】「ある日、地獄行きを告げられた」Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を完全紹介の記事一覧はこちら






増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

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