Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2022/05/25
Update

【ネタバレ】シンウルトラマン|ゾフィーが“敵ゾーフィ”となった意味は?ゼットン/ザラブとの関係が暴露する“ウルトラマン愛ゆえの疑心”【光の国からシンは来る?13】

  • Writer :
  • 河合のび

連載コラム『光の国からシンは来る?』第13回

2016年に公開され大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』(2016)を手がけた庵野秀明・樋口真嗣が再びタッグを組み制作した新たな「シン」映画。

それが、1966年に放送され2021年現在まで人々に愛され続けてきた特撮テレビドラマ『空想特撮シリーズ ウルトラマン』(以下『ウルトラマン』)を基に描いた「空想特撮映画」こと『シン・ウルトラマン』です。

本記事では、多くの特撮ファンがその登場自体は予想できていたものの、「宇宙の秩序を乱す可能性が生じた地球の存在を“廃棄”処分すべく、《天体制圧用最終兵器ゼットン》を起動させた光の星の使者」という予想外の形での登場となったゾフィー/ゾーフィをピックアップ。
「ゾーフィ」という呼称の元ネタ、テレビドラマ『ウルトラマン』でのゾフィーとザラブ星人の意外なつながりに触れた上で、本作でのゾフィーの設定・描写がどうしてあのような形になったのかの真意を考察・解説していきます。

【連載コラム】『光の国からシンは来る?』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『シン・ウルトラマン』の作品情報


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
【日本公開】
2022年(日本映画)
【監督】
樋口真嗣
【企画・脚本】
庵野秀明
【製作】
塚越隆行、市川南
【音楽】
鷺巣詩郎
【キャスト】
斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松了、長塚圭史、嶋田久作、益岡徹、山崎一、和田聰宏

映画『シン・ウルトラマン』ゾフィー/ゾーフィ考察・解説


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

ゾフィーの予想を大きく裏切った登場

テレビドラマ『ウルトラマン』の最終回「さらばウルトラマン」の終盤に登場したゾフィー。ゼットン星人の侵略用生体兵器・宇宙恐竜ゼットンに敗北し瀕死へ陥りながらも、自身の過ちにより融合せざるを得なかったハヤタの蘇生を優先してほしいというウルトラマンの願いを「自身が所有していた二つの“命”をそれぞれに分け与える」という予想外の荒業で解決し、ウルトラマンを連れ帰りました。
最終回ならびに『ウルトラマン』の物語のキーパーソンであることから、多くのファンが『シン・ウルトラマン』にも登場することを予想していたゾフィー。

しかし予想自体は的中したものの、シン・ウルトラマン』でのゾフィーは「ゾーフィ」と呼称され、「地球の新たな監視者にして裁定者」宇宙の秩序を乱す可能性が生じた地球の存在を“廃棄”処分すべく、《天体制圧用最終兵器ゼットン》を起動させた光の星の使者」というあまりに予想外な形での登場となりました。

「ゾーフィ」というウルトラマンと似て非なる者


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
マルチバース世界上に存在する先進国ならぬ“先進星”間での、地球人類という兵器転用可能な資源をめぐる戦争と混乱を避けるという目的のもと、未開の星である地球とそこに住まう人類を太陽系ごと“廃棄”しようとする「ゾーフィ」。

その秩序に基づく情け容赦ない厳格さは、光の国の使者が「正義の味方」でも「地球または人類の味方」でもなく、あくまでも「宇宙の秩序を守る者」として存在していることを痛感させられます。

コラム第12回のゼットン特集回でも触れた通り、「ゾーフィ」という呼称は「かつてゼットン星人が“宇宙人ゾーフィ”の名で紹介されてしまった児童誌での誤植」が元ネタとされています。

同じ光の国の使者にも関わらず、「他者のために自らの命を絶った神永を理解したい」という理由から光の星で禁じられている人類との融合へ至った“ウルトラマン”ことリピアと対比的に描かれるゾーフィ。それはゾフィーを誤植内における「ウルトラマンそっくりに変身する」という設定を基に、あえて「ウルトラマンと限りなく似て非なる者」として描いた結果といえます。

光の星の使者もまた、ザラブと同じ「外星人」


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

またテレビドラマ『ウルトラマン』最終回の撮影で用いられたゾフィーのスーツですが、その胴体部分には『シン・ウルトラマン』にも登場し、ウルトラマンの最初期スーツ「Aタイプ」を改造する形で作られた“にせウルトラマン”のスーツを再改造したものが使用されていました。
ザラブ星人が擬態したにせウルトラマンと、テレビドラマ『ウルトラマン』において「撮影用スーツの改造元」というメタ的なつながりがあったゾフィー。その関係性が『シン・ウルトラマン』でも踏襲された結果が、映画におけるザラブとゾーフィの「外星人」というつながりです。
ザラブは「地球人類の殲滅」を目論み地球で暗躍するのに対し、ゾーフィは「宇宙の秩序を守る」という目的のもと行動します。しかしその目的の果てにゾーフィがたどり着く行動は「地球とそこに住まう人類、周辺の太陽系の廃棄」であり、その行動がもたらすのはザラブが目指す「地球人類の殲滅」と同じ、あるいはそれ以上に恐ろしい結果です。
「その目的の性質は違えども、地球にもたらされる悲劇的な結果は同じ」……ウルトラマンことリピアと同じ光の星の民だが、結局はザラブと同じ「外星人」であることを伝えるために、『シン・ウルトラマン』製作陣はゾフィーと縁あるザラブ星人を映画にも登場させ、ゼットン星人の情報の誤植とはいえ“ウルトラマンそっくりに変身できる宇宙人”として紹介されたゾフィーの別側面……「ゾーフィ」の設定をあえて使用したのです。

スポンサーリンク

まとめ/「ウルトラマンのアンチテーゼ」に答える者


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

テレビドラマ『ウルトラマン』最終回の撮影におけるスーツ事情、そして児童誌での誤植という非常にメタ的な元ネタから、ゾフィーを「ウルトラマンと限りなく似て非なる外星人・ゾーフィ」として描き、人間と融合してまで地球とそこに住まう人類を理解しようとする“ウルトラマン”ことリピアの外星人としての特異性を強調した『シン・ウルトラマン』。

そもそもゾフィーが「ゾーフィ」として登場した理由には、これまで「ウルトラマン」というシリーズ作品が常に描き続けてきた、ウルトラマンを愛する人々が常に抱える「疑心」と、「ウルトラマン」という名を冠する作品として対峙しなくてはならなかったのが第一にあると言えます。

それが「もしウルトラマンが、“地球と人類の敵”だったら?」あるいは「もしウルトラマンが、地球と人類を見限ったら?」という、誰もが一度は抱いたことのある疑心です。

映画の作中エピソードの元ネタにあたる、テレビドラマ『ウルトラマン』のザラブ星人&にせウルトラマン登場回「遊星から来た兄弟」も、ウルトラマンに対し人類が常に抱えている疑心が、ウルトラマンと同じ「宇宙人」であるザラブ星人が悪用したことで白日のもとに晒されたエピソードと捉えられます。

また『シン・ウルトラマン』でその疑心をも描こうとしたのは、レヴィ=ストロース『野生の思考』に則れば「地球の人類の平和のために戦う地球外生命体」という象徴を担う記号であるウルトラマンの存在意義を改めて再解釈・再認識するにあたって、ウルトラマンを愛する人々の疑心が生み出す“イフ(If)”の世界=「ウルトラマンが地球の味方ではない場合の世界」という、ウルトラマンが担う象徴へのアンチテーゼを観客に改めて提示したかったためといえます。


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

そして特別ビジュアルの画像も示していた通り、「人間でありウルトラマン」「人間でもウルトラマンでもない」という境界線の狭間に立つ……何者よりも「人間とウルトラマンの自立した関係性」の当事者である神永新二/ウルトラマンが、アンチテーゼの先にあるジンテーゼを見出そうとするという物語

それが、『シン・ウルトラマン』の大きな側面の一つなのでしょう。

次回の『光の国からシンは来る?』もお楽しみに!

【連載コラム】『光の国からシンは来る?』記事一覧はこちら

編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。

2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。


photo by 田中舘裕介






関連記事

連載コラム

『Cosmetic DNA』“映倫先輩”に会いにいく【自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦1】

連載コラム『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』 第1回「『Cosmetic DNA』“映倫先輩”に会いにいく」 ほとんどの方、初めまして。一部の方、いつもお世話になっております。長編インディ …

連載コラム

台湾俳優ロイ・チウ映画『先に愛した人』あらすじと感想。オーサカ Asiaスター★アワード&トークリポート|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録10

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第10回 毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で第14回目となります。2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間に渡ってアジア全 …

連載コラム

映画『シークレット・ジョブ』ネタバレ感想と考察評価。韓国の動物園で人気キャストらがシロクマなどの着ぐるみで奇想天外なミッションを実行す!|映画という星空を知るひとよ18

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第18回 動物の中身は人間!動物園を舞台にした韓国発のハチャメチャ奮闘コメディ『シークレット・ジョブ』。 廃業寸前の動物園を舞台に、経営立て直しのためスタッフが …

連載コラム

映画『ランブル』考察と評価感想。インディアンたちはアメリカと音楽界を“大地の鼓動”で揺さぶる|だからドキュメンタリー映画は面白い52

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第52回 彼らを抜きにして、ポピュラー音楽界の発展はなかったかもしれない──。 今回取り上げるのは、2020年8月7日(金)より渋谷ホワイトシネクイント …

連載コラム

映画『ハッピー・オールド・イヤー』あらすじと感想レビュー。断捨離を通してモノに宿った思い出と家族の人生が浮ぶ|OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録2

第15回大阪アジアン映画祭上映作品『ハッピー・オールド・イヤー』 毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で15回目。2020年3月06日(金)から3月15日(日)までの10日間にわたってアジア全 …

U-NEXT
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学