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Entry 2022/10/04
Update

映画『ブロンド』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。女優マリリン・モンローと素顔のノーマ・ジーンを描く|Netflix映画おすすめ113

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第113回

今回ご紹介するNetflix映画『ブロンド』は、プライベートでの素顔と女優としての姿に、ギャップがあったと言われるマリリン・モンローの姿を描いたフィクションドラマです。

伝説的ハリウッド女優、マリリン・モンローは、その「死」も謎に包まれ、死後も多くの考察本や小説、彼女の魅力を伝える書籍が書かれました。

波乱万丈な生涯だったモンローをセンセーショナルに書き下ろしたのが、ジョイス・キャロル・オーツの同名小説でベストセラーとなりました。

伝説のハリウッド女優マリリン・モンローと、素顔のノーマ・ジーンを描くことで、彼女の苦悩とスターの座へと昇りつめるまでの、事実とフィクションが織り交ぜられます。

父親を知らずに心を病んだ母親に育てられ、内向的になったノーマ・ジーンは、養護施設や里親を転々として生きます。

そんなノーマ・ジーンはいつか父が迎えに来ると信じ、雑誌や広告のモデルを経て映画スターへの道を歩み始めます。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『ブロンド』の作品情報

(C)2022 Netflix

【公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
Blonde

【原作】
ジョイス・キャロル・オーツ

【監督・脚本】
アンドリュー・ドミニク

【キャスト】
アナ・デ・アルマス、エイドリアン・ブロディ、ボビー・カナベイル、ゼイビア・サミュエル、ジュリアン・ニコルソン、リリー・フィッシャー、エバン・ウィリアムズ、トビー・ハス、デビッド・ウォーショフスキー、キャスパー・フィリップソン、ダン・バトラー、サラ・パクストン、レベッカ・ウィソッキー

【作品概要】
ノーマ・ジーン(マリリン・モンロー)役には、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020)、『グレイマン』(2022)のアナ・デ・アルマスが勤め、本物のマリリン・モンローと見まがう熱演を披露します。

脚本家及び監督は『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007)の、アンドリュー・ドミニクが手掛け、第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された作品です。

共演には『アイリッシュマン』(2019)に出演した、ボビー・カナヴェイルがジョー・ディマジオ役、『戦場のピアニスト』(2002)で、アカデミー主演男優賞を受賞した、エイドリアン・ブロディがアーサー・ミラーを演じました。

映画『ブロンド』のあらすじとネタバレ

(C)2022 Netflix

1933年ロサンゼルス、ノーマ・ジーンが7歳の誕生日に母グラディスは、サプライズがあると額縁に入った紳士の写真をみせ、これがノーマの父親だと教えます。

母は熊のぬいぐるみとケーキを用意してくれ、ささやかな誕生日を祝います。グラディスはチェストの引き出しを開け、そこをベビーベッドの代わりにしたことを話しました。

その日の深夜、ローレル・キャニオンで火災が発生します。それにも関わらずグラディスは、眠っているノーマを無理矢理起こし、車でそこに向かいます。

炎と火の粉の中を車を走らせていると、交通を取り締まる警察官から停止させられ、引き返すよう言われます。

グラディスは屋敷に招待されていると主張しますが、警官は彼女がドラッグやアルコールの中毒者であると察し、幼いノーマを連れて帰るよう命令しました。

Uターンする車中でノーマは、母に「どうしてパパは会いに来ないの?」と聞きます。その一言がグラディスの苛だたせ、怒りがノーマに向かいます。

家に戻るとグラディスはノーマを風呂に入れようとしますが、湯の温度が高すぎてノーマは入れずにいると、怒り狂った母の命令でノーマが浴槽に足を入れます。

するとグラディスはノーマを浴槽の底に沈め、溺れさせようとしました。グラディスはノーマを愛し、大切に育てていましたが、自分の秘密を暴く存在でもありました。

ノーマの父親は彼女の誕生を望んでおらず、グラディスのことも遊びとしか思っていませんでした。彼は金を叩きつけ彼女の目の前から消えたのです。

グラディスは妊娠したことで愛を失ったと思い込み、精神的に不安定になっていきます。そんな母にノーマ・ジーンは育てられていました。

悲しみと惨めさにさいなまれたグラディスの力が抜けると、ノーマは逃げ出し隣人に助けをもとめ、夫人に安心するよう抱きしめられます。

数日後、夫人は母が面会できるまでに回復したとノーマに話します。面会しに行こうとノーマを連れ出しますが、行先は“ロサンゼルス養護施設協会”でした。

グラディスの症状は重く、子供を育てられないと診断され、夫人はノーマを預かりきれないと悟り、養護施設に連れていく決断をしました。

やがて成長したノーマ・ジーンは、雑誌の表紙やカレンダーのピンナップ・ガールとして、活動を開始しました。

そして、それに留まらず女優を目指し始めたノーマは、ミスターZと呼ばれる映画スタジオの社長との面接で彼にレイプされ、その代償は女優として契約を結ぶことでした。

女優マリリン・モンローとして、映画『ノックは無用』のネル役のオーディションを受けました。審査の評価は二分しましたが、監督は彼女の美貌だけで採用し女優デビューします。

俳優養成所でノーマはチャールズ・チャップリン・ジュニアの “キャス” 、エドワード・G・ロビンソン・ジュニアの”エディ” と出会います。

父親不在のノーマ、偉大過ぎる父親を持つキャスとエディも、父親不在と同じだと3人は意気投合し、ポリアモリーな関係を開始しました。

やがてノーマはスリラー映画『ナイアガラ』で、ヒロインを演じブレイクします。マリリン・モンローとして知名度が上がると、マスコミからの注目度も上がっていきます。

キャスとエディとの関係も取りざたされ、ノーマはエージェントから、彼らと公の場で会うことを控えるよう注意されます。

しかし、彼女はマリリン・モンローから、“ノーマ・ジーン”に戻れる彼らとの時間が、かけがえのないものになっていました。

以下、『ブロンド』ネタバレ・結末の記載がございます。『ブロンド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 Netflix

ノーマはキャスの子供を妊娠します。キャスとエディに報告し、3人は喜び合いますが、同時にノーマには新しい仕事も入ります。

ダブルキャストの映画『紳士は金髪がお好き』を一旦断りますが、ジェーン・ラッセルのギャラを聞くとライバル意識も芽生えます。

また同時にグラディスの精神障害が、遺伝性のあるものかと恐れはじめたノーマは主治医に聞きます。医師の回答は彼女に中絶することを決めさせます。

翌日ノーマはエージェントの予約した病院へ向かいますが、心は葛藤していました。そして、「気が変わった」中絶を拒否しますが、処置手術は粛々と行われます。

その後、ノーマは傷心したまま『紳士は金髪がお好き』の撮影所にいました。

そんな中、ノーマ・ジーンはメジャーリーグを引退したばかりの、ジョー・ディマジオと会う機会があり、会話の中で心の内を吐露します。

映画会社の宣伝に伴い、マスコミのフェイク記事などに気が休まらず、いまだに傷ついてしまうと話すと、ディマジオは映画界に入ったきっかけを聞きます。

その時、マスコミのカメラがフラッシュを焚き、ノーマはマスコミが怖いと訴えます。ディマジオはそんな彼女に共感し同情します。

彼はシンプルで平凡な生活を望んでいると思います。しかし、ノーマはハリウッドを離れて、一からやりなおしたいと話し、ニューヨークで演劇を学びたいと夢を語りました。

必死に舞台女優の願望を話しますが、的を外したディマジオは、とたんに無関心になります。ノーマは取り繕うように「本音は身を固めたい」と笑ってごまかします。

映画『紳士は金髪がお好き』の撮影が完成し、上映会のセレモニーがある晩、ノーマのもとに父親を語る者から手紙が届きます。

心臓発作を起こし人生を振り返る中、雑誌のインタビューなどから、マリリン・モンローが自分を探し続けていることに、心を傷めているという内容でした。

ノーマは手紙を父親からのものだと信じ疑いません。父が見守っていてくれたと、胸をときめかせながら、劇場へ向かいます。

そして、到着すると秘書が終了後、ホテルのスィートに“特別な人”が待っていると、必ず一人で行くよう伝えます。ノーマはそれが父であると思い込みました。

セレモニーが終わりホテルの部屋に戻ります。ノーマは部屋で待っていた男性を「パパ?」と呼びますが、それはジョー・ディマジオでした。

ノーマが戸惑っていると、彼は彼女を幸せにしたいとプロポーズします。ノーマは今までもずっと幸せだったと答えます。

ところがディマジオは「結婚してもいい頃」だと、指輪を差し出しノーマをみつめます。彼女は断る理由を見つけられず、しぶしぶそれを受け入れました。

マリリン・モンローとジョー・ディマジオは結婚しますが、2人の趣味と価値観は全くかみ合わず、彼の家族ともそりが合いませんでした。

そんなちぐはぐな生活の中、キャスとエディがディマジオとコンタクトを取り、無名時代のノーマのヌード写真を見せ、世間にばらすと恐喝をします。

ディマジオは激怒して、自宅に帰ると彼女を罵倒し暴力をふるいます。そして、契約した新しい仕事を破棄するよう迫りました。

しかし、ノーマは映画『七年目の浮気』の撮影を続行し、地下鉄の排気口の上に立ち、白いドレスのスカートがめくれ上がる、有名なシーンの公開撮影を行いました。

彼女が帰宅すると、酔ったディマジオが待ち構え、激しい暴力を振るいはじめます。それと同時に“父親を名乗る者”からも、ノーマを蔑む内容の手紙が届きます。

(C)2022 Netflix

大衆に向け股を広げる下品な姿を見て、映画のチケットを買う気になれなかった、有名アスリートとの醜聞な離婚劇・・・“子供がいたら泣く”とノーマの心をえぐりました。

1955 年ニューヨーク、ノーマ・ジーンは、劇作家アーサー ミラーの演劇『マグダ』のオーディションを受けました。

アーサーはノーマを見てすぐに、マリリン・モンローだと気づき、彼女が“マグダ役”を希望していることに、消極的な感情を抱きました。

ところがセリフの読み通しでノーマは、アーサー以外のすべての関係者から、高評価を得ました。アーサーだけは彼女を「マグダじゃない」と納得せず、スタジオを去ります。

ノーマはアーサーと直に会い、マグダの演出についてアイデアを持ち込みます。彼女はチェーホフの戯曲「三人姉妹」のナターシャ的な女性像を“マグダ”に感じたと話します。

ナターシャは淑女な面と策士的な面があります。しかし、マグダはアーサーの初恋の人で、常に誠実善良な人で、そのイメージにそぐわないと言います。

そこでノーマは続けます。マグダは善良な人ですが、文字を読むことができず、アイザックから詩を渡されても、読むふりをしていたのでは?と分析します。

すると彼はノーマの的確な洞察力に驚き、一気に彼女との距離が短くなりました。

マリリン・モンローはアーサー・ミラーと再婚して、海辺の家で穏やかに暮らし始めます。そして、アーサーの子を妊娠しました。

しかし、アーサーとの信頼関係もふとしたことでほころびました。ノーマは自分の事は書かないでほしいと頼んでいましたが、アーサーは2人の会話をタイピングしていたからです。

ノーマは“彼女”マリリン・モンローに戻ることを、拒んでいたためアーサーの動きに不信感を抱き始めてしまいます。

そしてある日、アーサーの知人夫妻が遊びに来て、オードブルの大皿を持って、ビーチを歩いているとき、彼女はつまずいて転び流産してしまいます。

映画『お熱いのがお好き』で現場復帰したノーマでしたが、精神状態は不安定でたびたび撮影は中断されました。

強いストレスにさいなまれたノーマは、アーサーの顔も認識できず、鳴りやまない電話の音に怯え、チェストの引き出しからは赤ん坊の泣き声を聞くようになります。

撮影の現場に主治医が待機し、安定剤を投与しながら仕事をするようになりました。

相変わらず父を名乗る者から、“近いうちに会いに行くよ”と手紙も届きますが、一向にその動きもなく、ノーマは現実と妄想の中で混乱し始めます。

唯一、長年ノーマのメイクを担当しているホワイティが、ノーマにメイクを施すと彼女はマリリン・モンローに戻ることができました。

それでも1962年、ノーマは薬物とアルコールに依存する身体になってしまいます。また、大統領との親交も始まっていました。

ニューヨークに到着したノーマは、薬とアルコールで自力で歩けず、シークレットサービスに抱きかかえられ移動しました。

大統領に会うためホテルに向かったノーマは、コルセットを巻き裸で横たわりながら、執務の電話に対応する大統領を見て戸惑います。

部屋には口紅の付いたグラスがいくつかあり、異様な空気に包まれていました。大統領はノーマを手招きし、側まで来てオーラルセックスをするよう要求します。

ノーマは性行為をしながら、“マリリン”はいったい何がしたいのか、自問自答し目的を見失い始めていました。

家に送り返されたノーマは受話器を取るとノイズ音が聞こえ、外の通りに怪しいワゴン車をみつけ怯え、深夜に目が覚めると家の内外で、物音や人の気配を感じ恐怖に陥ります。

それから何者かに連れ去られ、中絶をされるという悪夢を見ますが、“バカげた夢”と言い聞かせました。

父を名乗る者の手紙には、時が流れる度に距離が遠くなるが、近いうちに会いに行くと書かれていました。

そしてある晩、エディからの電話でキャスが亡くなったと聞きます。エディはノーマに残した形見があると告げますが、ノーマは辞退しようとします。

それでもエディは郵便で送ると言って電話を切ります。キャスの形見とは、3人が誓いを立てた夜にみつけた、トラのぬいぐるみでした。

箱の中にはメッセージカードもあり、それにはノーマが父親からの手紙だと思っていたのは、キャスが書いたものだと告白するものでした。

ノーマのわずかな希望は打ち砕かれ、精神状態は崩壊しました。アルコールで薬を過剰摂取し意識は朦朧となり、ベッドに倒れ込みました。

彼女は天窓から差し込む日の光の中に、写真で見た父親の幻影が現れ「ノーマ・ジーン見て、あれがパパよ」という幻聴を聞きます。

映画『ブロンド』の感想と評価

(C)2022 Netflix

映画『ブロンド』の“ブロンド”はいわゆる“金髪”のことです。金髪は“Dumb blonde(ダム・ブロンド)”という、「見た目はキレイでも、頭の中は空っぽ」という揶揄に使われていました

マリリン・モンローの無名時代の写真を見ると、もともとは美しいブルネット(黒髪)でした。それをわざわざ金髪にした理由には、女優として成功させる苦肉の策だったからです。

本作は女優マリリン・モンローと素顔のノーマ・ジーンを描いています。女優を目指したはずがその世界は暗黒で、映像もマリリン・モンローのシーンはモノクロで演出されています。

ノーマ・ジーンに戻ったときのシーンは、カラーで演出されているので、彼女の中の内向的と積極的な二面性、心の明と暗がリアルに伝わる表現となりました。

巧みに創り上げられた“セックスシンボル”

マリリン・モンローがブロンドになったのは、1948年に俳優としてコロムビアと契約した際に、外見をリタ・ヘイワースのようなブロンドにするよう指示があってからです。

リタ・ヘイワースは1940年代の“セックスシンボル”女優として人気でした。名作『ショーシャンクの空に』で、主人公が服役した監獄の壁に貼られたポスターの女優です。

“セックスシンボル”という、性的魅力によって人気があった、リタ・ヘイワースにあやかろうとした策でした。

しかし、飛ばず鳴かずの結果、コロムビアとの契約が切れました。それでも、俳優になることを諦めず、モデルをしながらプロダクションの副社長の愛人になり、チャンスをうかがっていました。

その甲斐あって数本のわき役で注目を集めたマリリン・モンローは、人気俳優の階段を上り始め、その後も売り込みのため、エージェントのパーティなどに足しげく通います。

執着は身を呈することで、人気女優の座を掴む結果となりました。ところが、“セックスシンボル”という肩書は、彼女に弊害を与えました。

演技やダンス、歌などのレッスンを人一倍努力した彼女は、“演技派女優”として認められたかったのが本音でした。

「見た目はキレイでも、頭の中は空っぽ」のダム・ブロンドではないことを証明するために、映画会社の契約を切り、自らプロダクションを立ち上げます。

当時の女性の社会的地位は低く、ましてやヌードモデルから転身した女優の彼女の風当たりは厳しいものでした。

男社会の中で契約金(出演料)の交渉をしたり、演出に注文をつけることは、いばらの道を歩むようなものでした。

そもそも、ノーマ・ジーンは内気な性格で、言いたいことも上手く話せないタイプだったと言われています。

そんな彼女が女優マリリン・モンローになると、人がかわりました。メイクアップ・アーティスト、ホワイティの手による、彼女の象徴となったアーチ型の眉、白い肌、赤い唇、ほくろのメイクです。

マリリン・モンローは素の自分を隠しながら、女優として戦い、晩年にはその反動が歪みとなり、薬物やアルコール中毒につながりました。

マリリン・モンローの父親の謎

長年マリリン・モンローの父親に関しては、謎に包まれていましたが、2022年初頭にその人物が明らかになりました。

噂レベルでその名が、チャールズ・スタンリー・ギフォードであるとささやかれましたが、彼の子孫のDNAとノーマ・ジーンのDNAが一致したといいます。

ノーマ・ジーンは生涯に3度の結婚をしますが、2度目と3度目の結婚は歳の離れた相手でした。しかもいずれも有名人で、この結婚は売名のためにも感じてしまいます。

しかし、本当の父親を知らずに育った彼女が、もし、この映画のように母親から写真を見せられ、名前を知っていたら、父親のような男性に惹かれても不思議はないでしょう。

実際にディマジオやアーサーを「パパ」と呼んでいたのかは不明ですが、ノーマ・ジーンが“ファザーコンプレックス”だという印象を強調しました。

母グラディスがノーマの父親のことで傷つき、うまくいかない人生で心が壊れていくように、ノーマが女優として理解されないことで心を壊したことは、遺伝性のものも感じさせます。

キャスが父親になりすまして手紙を送り、最後にネタばらしをしたのは非常に残酷なシーンです。

エドがキャスの死を伝えますが、本当に亡くなったのかは疑問です。なぜならノーマ・ジーンはキャスの子を中絶し、3人で契りを交わした“双子の誓い”を破ったからです。

ノーマは自分の裏切りが、どのくらい彼らを傷つけたか知りません。女優としてスターダムにのし上がり、有名アスリートと結婚し、知名度をあげる彼女を2人はどう見たでしょう。

有名俳優のジュニア2人の気持ちは、穏やかではなかったと察します。もしかしたら2人で考えた、復讐劇だったともいえないでしょうか。

まとめ

(C)2022 Netflix

映画『ブロンド』はジョイス・キャロル・オーツの同名小説が基になっていますが、彼女はあくまでフィクションで伝記ではないと語っています。

また、監督・脚本のアンドリュー・ドミニクも小説ベースではなく、独自で調査したことを脚色していると語っているので、この映画からはマリリン・モンローの真実はみえてきません。

しかし、ノーマ・ジーンの幼少時に母の精神疾患が発症し、里子としてたらい回しにされて育ったことは事実です。

また、性的虐待を受けていた疑いもあり、それを示したのではと思われるシーンもありました。それは溺死させられそうになり、逃げ込んだ隣人の家です。

ノーマの裸を見つめる家の主、その家ですごす間に彼からの性的虐待があり、男の妻はノーマを養護施設に預ける方が安全と考えたとも想像できます。

チャールズ・チャップリン・ジュニアとエドワード・G・ロビンソン・ジュニアとは、同世代というだけの親交はあったようです。

彼女の“死”がいまだに謎で議論されている中、2人をこういう形で登場させ、新たな仮説的なストーリーを作ったのでしょう。

このようにマリリン・モンローの生涯は、公言できないシークレットな部分も多く、それが作家たちの想像力を搔き立て、本作にも繋がったといえます。

映画『ブロンド』は親や夫からの虐待、性的搾取、男尊女卑などあらゆる差別を受けながら、それらを逆手にとって利用し、ハリウッド黄金時代の最も有名な映画スターの1人となった、マリリン・モンローと、知られざるノーマ・ジーンを描きました。

彼女の人生は波乱万丈で最期は寂しいものでしたが、今でも良くも悪くも好き嫌いの分かれる、忘れ得ぬ“永遠の女優”として輝いています

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