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Entry 2022/12/08
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『バーバリアン』ネタバレ結末あらすじと感想考察の評価。最強ホラー映画として“やばい見てはいけない”ラスト予測不能の展開|増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!13

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  • 20231113

連載コラム『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』第13回

変わった映画や掘り出し物の映画を見たいあなたに、独断と偏見で様々な映画を紹介する『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』。

第13回で紹介するのは、思わぬスマッシュヒットを記録し全米で絶賛されたホラー映画『バーバリアン』

批評家からもホラー映画ファンからも、観客の予想を裏切る展開が驚きを持って歓迎され 高い評価を得た作品です。

【連載コラム】『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』記事一覧はこちら

映画『バーバリアン』の作品情報


(C)2022 20th Century Studios.

【製作】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
Barbarian

【監督・脚本・出演】
ザック・クレッガー

【キャスト】
ジョージナ・キャンベル、ビル・スカルスガルド、ジャスティン・ロング、マシュー・パトリック・デイヴィス、リチャード・ブレイク、ジェームズ・バトラー、カート・ブローノーラー、ソフィー・ソレンソン

【作品概要】
宿泊のために借りた、デトロイトのバーバリー通りの家に到着した女性。その家には、すでに見知らぬ男が滞在しています。行く当てのない彼女はその家に泊まりますが……。意表をつく展開が話題のサスペンス・ホラー映画。

『お願い!プレイメイト』(2009)で主演と共同監督を務めたコメディアンで、近年はコメディ番組を手がけているザック・クレッガーが監督した作品です。

DCドラマ『クリプトン』(2018~)やAppleTV+オリジナルドラマ『サスピション』(2022~)のジョージナ・キャンベルが主演。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)で”ペニー・ワイズ”を演じたビル・スカルスガルドと、『ギャラクシー・クエスト』(1999)から『House of Darkness』(2022)まで様々なホラー・SF・コメディ系作品で活躍のジャスティン・ロング。

そしてロブ・ゾンビ監督の『31』(2016)や『スリー・フロム・ヘル』(2020)、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)に『フィードバック』(2020)のリチャード・ブレイクらが共演した作品です。

映画『バーバリアン』のあらすじとネタバレ


(C)2022 20th Century Studios.

激しい雨の降る夜遅く、テス(ジョージナ・キャンベル)の運転する車はデトロイト郊外のバーバリー通りにある家の前に到着します。

彼女は明日行われる仕事の面接に備え、Airbnb(民泊できる家や施設を探せる大手サイト)で選んだこの家に宿泊するつもりでした。

ところが指定されたキーボックスに家の鍵がありません。物件を管理する不動産会社に連絡がつかず、途方にくれるテス。

やむなく車に戻ったテスは、宿泊先の家に明かりが点いたと気付きます。家の呼び鈴を押すと若い男がドアを開けました。

テスがこの家は私の宿泊先だと訴えても、自分はHomeAway(同じく民泊施設を探すサイト運営会社)で借りたと言う男は怪訝な顔をします。

雨は激しく、不安を感じながらも男に勧められ家に入るテス。男のスマホには確かに家を借りた確認メールが届いています。

この物件の宿泊予約がダブルブッキングされていたと知り困惑する2人。

テスは車に戻り宿泊可能なホテルを探そうとしますが、キース(ビル・スカルスガルド)と名乗った男は外は危険な場所だ、良ければ家の中にいるよう提案しました。

疑念を抱きつつテスは言葉に甘え、家の中でホテルに電話しますが空き室はありません。この日デトロイトでは医療関係者の大きな学会が開催され、ホテルの部屋は埋まっていたのです。

キースは寝室のドアは鍵がかかる、自分は居間のソファで寝るからここに泊まるよう提案しました。不安を覚えながらも言葉に従うことにするテス。

キースは彼女が警戒心を抱いていることを理解しつつ、一緒にワインを飲もうと提案します。何かと気遣う態度を見せるキースにようやく心を許し、テスは明日ドキュメンタリー映画の監督のリサーチ職の面接を受けると話します。

その監督の映画をキースは見ていました。監督の次回作が、荒廃し不動産物件が安くなったデトロイトに集まったアーテストたちのコミュニティを描く作品と知り、自分も取材対象だと告げるキース。

彼はコミュニティの創設者の1人で、新たな活動拠点を求めてこのデトロイトのさびれた地域を物色していました。2人は意気投合して共にワインを飲み、会話は弾みプライベートまで語り合います。

夜遅くまで話した後、2人で寝室を準備しテスは寝室に鍵をかけベットで、キースは居間のソファで眠りにつきました。

ところが、テスは奇妙な物音に気付き目覚めます。何故かドアは開いており、居間からキースのうなされる声が聞こえてきます。恐る恐る近寄りキースに声をかけるテス。

飛び起きたキースは悪夢にうなされていただけでした。キースはドアは開けていないと否定し、疑問を感じながらも扉を閉めたテスは再び眠りにつきます。

翌朝彼女が目覚めた時、キースは先に家を出ていました。彼の残したメモを読んだテスは急いで準備し家を出ます。すると昨晩は夜の闇で見えなかった光景が露わになっていました。

周囲には廃屋が並び、キースが語ったように誰もが危険を覚える場所でした。彼女は荒廃した地区を車で走り抜けデトロイト中心部に向かいます。

仕事の面接は相手に好印象を与え順調でした。担当者は明日の返事を待つよう告げますが、テスが民泊した場所を聞き顔色を変えます。宿泊先を変えるよう言う担当者を笑顔ではぐらかすテス。

彼女が不安を覚えつつバーバリー通りの家に戻り、車から降りると黒人の大男が叫びながら駆け寄ってきます。慌ててテスが家に入り鍵をかけると、男は家からすぐ出ろと叫びました。

テスは荷物をまとめ警察に通報しますが、電話の相手は人手が無いと警官の派遣を断ります。気を取り直しトイレを使おうとしますが、トイレットペーパーがありません。

ストックは地下室にありました。彼女が階段を降りトイレットペーパーを手に戻った時、地下室に通じる扉が独りでに閉まりました。

扉は開かずテスは閉じ込められます。窓から覗きキースが戻っていないか探しますが、外に誰の姿もありません。

スマホを置いて入ったので誰とも連絡できません。扉の鍵をこじ開ける物が無いか探していると、壁の穴からロープが伸びていると気付いたテス。

ロープを引くと地下室の壁の隠し扉が開きます。その先に入る事を躊躇したテスも、好奇心にかられ鏡の反射で内部を照らし隠された通路に入ります。

通路の先の部屋は無人ですが汚れたベットの脇には、三脚に据えられた古いビデオカメラとバケツが置いてありました。

壁には血で付いたのか、人の手形が残っています。おぞましい目的で使用された部屋かもしれないと気付き、慌てて逃げ出したテス。

すると激しいノックの音がします。キースが帰って来たと気付いたテスは採光窓から彼に呼びかけます。彼女は気付いたキースに窓から家の鍵を渡します。

家に入ったキースが彼女を地下室から解放しました。隠された地下牢のような部屋がある、一刻も早く家から出ようと訴えるテスに、彼女の発言が理解できないキースは中を確認すると言いました。

怯えたテスは中に入る事を拒みますが、地下室に閉じ込められないよう外で見張って欲しいと頼むキースの言葉に従います。しかしすぐ戻ると言い地下室に入ったキースは、いつまで経っても戻りません。

彼女が呼びかけても返事はありません。やむなく地下室の扉を開けたまま固定し、階段を降り隠し通路の先にいるキースに呼びかけるテス。

地下牢のような部屋にもキースの姿はありません。テスは部屋の先に扉があり、開けるとさらに下に降りる階段と細い通路があると気付きます。

彼女が通路に呼びかけると、助けを求めるキースの声が返ってきました。彼の声は懇願するように変わり、テスは意を決し闇へと続く階段を降りました。

息を吞み暗く細い通路を進むテス。格子戸を開けた先には人間も入るような、大型動物用の檻がいくつもあります。彼女が叫んだ時に突然姿を現すキース。

なぜ下に降りたと責めるテスに、キースは何者かに噛まれたと訴えます。引き返そうとするテスにそっちに奴らがいる、と彼は逆方向に逃げろと主張します。

2人が言い争った時、恐ろしい姿をした全裸の女(マシュー・パトリック・デイヴィス)が叫びながら姿を現します。その女はキースの頭を掴むと人間離れした力で何度も殴り、壁に叩きつけました。

場面は突然変わり、海に面した道を陽気な音楽を流しながらオープンカーを走らせるAJ・ギルブライド(ジャスティン・ロング)の姿が映し出されます。

シットコム(シチュエーション・コメディドラマ)俳優のAJのご機嫌な気分は、かかってきた電話で打ち壊されます。番組の関係者から、共演の女優が彼をセクハラ行為で告訴したと知らされるAJ。

スキャンダルは大きく報道され、番組からの降板は確定的です。彼は裁判すれば勝てると主張し争う姿勢を見せますが、裁判費用を工面する当てはなく、資産管理者からは不動産物件を売るように勧められます7。

逮捕される可能性もある中、金を調達しようと不動産を処分しにAJはデトロイトに向かいます。不動産会社から鍵を受け取った
AJが向かったのは民泊用に手に入れた家でした。

その家の前には、今もテスの乗用車が停められたままになっていたのです。

以下、『バーバリアン』ネタバレ・結末の記載がございます。『バーバリアン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 20th Century Studios.

AJが民泊用に所有するデトロイト郊外のバーバリー通りにある家に入ると、地下室に向かうドアは開いており宿泊者の荷物がありました。誰かがいると思ったAJは不動産管理会社のボニー(ソフィー・ソレンソン)に電話します。

ボニーの話では最後の宿泊者は2週間前でした。AJは民泊の管理状態に不満を漏らしますが、ボニーは一方的に電話を切りました。

結局AJはこの家に泊まることにします。電話で話した母親には報道されたセクハラ疑惑を否定しますが、その後会った友人には共演女優と強引に関係を持ったと認めるAJ。

帰宅した彼は告訴した女優に電話をかけてセクハラ行為を詫び、何とか許してもらえないかと留守電にメッセージを残しました。

目覚めたAJは、改めてテスの残した荷物を探ります。不法占拠者がいると考えた彼は、キッチンのナイフと懐中電灯を持って地下室に降りていきます。

潜んでいる者に警告の言葉を発しつつ、怯えながら地下室に降りたAJは壁から伸びるロープに気付き、隠し部屋を発見しました。

AJは知らなかった地下室の面積を加えれば、この物件の資産価値が上がると大喜びします。念のため護身用のナイフを身に付け、地下に広がる空間をメジャーで測り始めたAJ。

彼はテスが地下牢と判断した不気味な部屋も気にせず夢中で測り、その先に地下に降りる階段があると気付きます。

潜んでいるかもしれない相手に声をかけつつ階段を降り、怪しげな檻が並ぶ部屋の広さも測るAJ。彼は明かりが点いた部屋を見つけました。

部屋にはテレビモニターが置かれ、画面に赤ん坊に授乳する母親が写っています。育児講習のビデオが流れていましたが、なぜこんな物があるのか理解に苦しむAJ。

突然、メジャーの先端が何者かに引っ張られます。メジャーは手を離れ闇の中に消えていきました。AJはその方向に懐中電灯を向けて叫びます。

何かの気配を察し逃げ出すAJ。彼は暗闇の中にこちらに向かって来る怪物じみた全裸の女を見つけます。大慌てで駆け出した彼は落とし穴のような空間に落ちました、

穴の上部で鉄柵で出来たふたが閉じます。閉じ込められたと知りパニックになるAJの目の前に現れ、静かにするように告げるテス。

またしても場面が突然変わります。バーバリー通りがまだ閑静な住宅街だった頃の光景です。まだ美しい姿のこの家から1人の男が姿を現します。

その男フランク(リチャード・ブレイク)は車に乗りスーパーへ向かいます。カーラジオはレーガン政権について話しており、1980年代初頭の頃でしょうか。

スーパーに到着したフランクは、自宅出産に必要な物を買おうとします。何が必要か判らぬ彼は店員に勧められた品々を購入します。その中には育児講習のビデオテープもありました。

購入した商品を車に積み込んだフランクは、1人の女性の後をつけます。彼女の自宅を突き止めると、水道電力局の職員の制服に着替えて女の家を訪問します。

家に招き入れられたフランクは、点検作業を装い窓の鍵に細工をします。後でここから侵入するのでしょうか、彼は女に異常は無いと告げ家を後にしました。

帰宅したフランクに隣人のダグ(カート・ブローノーラー)が声をかけます。デトロイトは不景気続きでこの住宅街も荒廃すると考え、家を売り引っ越すと告げるダグ。

ダグにここに残るのかと聞かれ、どこにも行かないと答えたフランク。購入した品々を持ったフランクは自宅に入ると、地下室に続く扉を開けました。

扉が開くと、地下室から女の悲鳴が響き渡ります…。

画面は現在に戻ります。AJに「彼女」の前では平静を保つよう告げるテス。何が起きているのか理解できないAJは怒鳴り声を上げると、「彼女」の唸り声が近づいてきました。

穴の上に現れた女は鋭く伸びた爪を持つ手で哺乳瓶を握り、AJの方に差し出してきました。彼にそれを飲むよう告げるテス。

しかし怯えたAJは飲むことが出来ません。テスの方に哺乳瓶が向けられると彼女はそれを吸います。満足した女は改めて哺乳瓶をAJに差し出しますが、彼は気味悪がって身動きすらできません。

すると「彼女」は穴の底に飛び降りてきます。テスを抱きしめ「ベイビー」と呼びかける怪物じみた女。思わずAJが悲鳴を上げると、女は彼の方に向かってきました。

女はAJをあやすと、わめく彼を怪力でテレビモニターのある部屋まで引きずっていきます。そして育児講習のビデオのように、自分の乳房をAJに含ませようとする「彼女」。

その隙に穴から逃れたテスは地下室から脱出を試みます。しかし彼女の立てた物音に怪物じみた女は気付きました。

必死に逃げたテスは階段を駆け上がりますが、地下室の入り口の扉はまたも閉じて開きません。やむなく採光窓のガラスを破り逃れ出ようとするテス。

テスは怪物じみた女に捕まりそうになりますが、ホームレスの男に引っ張り出され逃れる事ができました。その男は彼女がこの家に入ろうとした時に、駆け寄って出て来いと叫んだアンドレ(ジェームズ・バトラー)でした。

まだ中に人がいる、助けようと叫ぶテスに、アンドレは自分の身の安全だけを考えろ、給水塔の所なら彼女は追ってこない。夜になるとあの女は外に出てお前を探すぞと警告するアンドレ。

警察に通報しようとアンドレと別れたテスは、ようやくガソリンスタンドを見つけました。一方「彼女」がテスを追った隙に逃げたAJは、地下通路の奥へと進みます。

AJは奥の1室で、ベットに横たわる衰弱した老人を見つけます。それはかつてのこの家の主人ブレイクの年老いた姿でした。

テスは警察に通報しましたが、現れたパトカーの警官の態度は冷たいものです。身分証も持たず信じがたい事を口にするテスに、冷たい視線を向ける警官。

一方AJは老人に間もなく警官が来る、一緒に逃げようと呼びかけます。その言葉を聞いたブレイクは、彼に棚を自分の脇に持ってくるよう頼みました。

警官と問題の家の前に来たテスは中で人が殺され、助けを待つ者は1人いると説明しますが、警官は許可なく他人の家には入れないと告げます。彼女を酔っ払いか何かと考えた警官は、無線が告げた他の事件現場に向かいます。

ブレイク老人の部屋にいるAJは、いかがわしいタイトルが付いたビデオテープが大量に並んでいる事に気付きます。その1本を再生してブレイクが過去に行った行為を目撃し、衝撃を受けるAJ。

残されたテスは家の窓ガラスを破って中に入ると、自分の車の鍵を手に入れます。そして車に乗り込み辺りが暗くなるのを待ちました。

AJの前で棚の引き出しを開けた老人は、その中から拳銃を取り出します。自分の命運が尽きたと判断したのか、ブレイク老人はその拳銃を自分の頭に当てAJの目の前で発砲しました。

暗くなると家からあの怪物じみた女が飛び出してきました。テスは車を急発進させ女に衝突させ、怪物を車と家の壁の間に挟みます。怪力をふるい暴れる女もやがて動かなくなります。

それを確認したテスは、AJを救い出そうと家の中に入りました。一方死んだ老人の拳銃を手にして脱出を試みるAJ。

ところが怯えたAJは、誤って地下の通路に現れたテスを撃ちました。負傷したテスに謝るとその体を抱えてAJは家の外に出ます。

そこに車をぶつけて殺したはずの女の姿はありません。テスの車は壊れ、AJの車の鍵は地下室です。そこでテスはホームレスのアンドレから聞いた安全な場所、給水塔にAJを向かわせます。

給水塔の敷地に着くとアンドレが迎え入れてくれました。2人に怪物じみた女は、あの家で40年前に生まれたと教えるアンドレ。

あの家の所有者は自分だとAJは叫びますが、それは書類上の話であの女とその父親ブレイクの2人は、今もあの家に住んでいるとアンドレは説明しました。

父親はあの家で拉致した女に子供を産ませ、その子供にも子供を産ませ、やがて誕生したのがあの女だと語るアンドレ。AJは彼に自分が誤って撃ち負傷させたテスを病院に連れて行きたいと告げます。

過去は変えられないがせめて修復したい、と訴えるAJに外に出たら殺される、明るくなるのを待てと告げるアンドレ。ここに15年以上住んでいるが「彼女」に襲われた事はないと説明しました。

その直後に「彼女」が現れ、怪力でアンドレの腕を引きちぎり叩きのめします。AJとテスは逃げますが敷地から出られず、やむなく給水塔に登ります。

一目散に駆け上がるAJですが、負傷したテスは早く階段を登れません。気付いた女も給水塔に駆け上がって来ました。

テスに指摘されAJは拳銃を取り出そうとしますが、慌てて落としてしまいます。もはや逃げ場は無いと叫ぶAJ。

俺は逃げる、君は時間を稼いでくれと言い放つと、AJは「彼女」の前でテスを給水塔から落としました。落下するテスを追って給水塔から飛び降りた女。

AJが見下ろすと、テスと「彼女」は折り重なって地面に倒れていました。AJは給水塔から降り、拳銃を拾い上げ2人に近づきます。

テスは先に落ちた女がクッションになり生きていました。自分は動揺してパニックになっただけで君を落としてはいない、勝手に君が滑って落ちたと言い訳を並べるAJ。

そのAJの首を息を吹き返した「彼女」が締め上げます。両手の指を目に突き立てた女は怪力でAJの顔面を破壊します。

女はテスを抱きかかえよう近寄り、地下室に戻ろうと訴えます。テスはAJが落とした拳銃を掴みます。「ベイビー」と呼びかける「彼女」の顔に拳銃を突き付けるテス。

銃声が鳴り響きました。テスは傷口を押さえながら1人で歩き出します。やがて夜が明けようとしていました…。

映画『バーバリアン』の感想と評価


(C)2022 20th Century Studios.

アメリカでスマッシュヒットを記録し、「恐るべき映画」と絶賛された話題のホラー映画はいかがだったでしょうか?

悪趣味で「センシティブな内容」を含みながらもユーモラスで、しかも社会風刺の要素がある点が高く評価された作品です。それらについて解説しましょう。

本作監督のザック・クレッガーはコメディアン、コメディ作家として活躍している人物です。大学在学中にコメディ劇団を結成、ニューヨークを中心に活躍しテレビやハリウッドへの進出を成し遂げました。

コメディアンがホラー映画、それもコメディホラーではなく社会派要素のある映画を手掛ける?、と疑問に思う方もいるかもしれません。

しかし『ゲット・アウト』(2017)のジョーダン・ピール監督もコメディアン出身の人物。観客を不快にさせかねない題材を巧みに処理し、社会風刺要素をウィットに富む描写で見せるのは、コメディ畑の人物ならではの能力でしょう。

インタビューに対し「ギャヴィン・ディー=ベッカーの著作『暴力から逃れるための15章』を読み、本作のアイデアを思い付いた」と答えたクレッガー監督。

アメリカの防犯コンサルタントである著者が記したこの本は、暴力犯罪の前には必ず前触れや危険信号がある。それを察知すれば犠牲者にならずに済む、と説いた著作です。

「この本は女性は男性が発するサインに対し、潜在意識の中で働く警報システムを尊重するよう勧めています。男性と女性では見知らぬ人と接した時の反応が異なる事は理解していましたが、この本を読むまで深く考えていませんでした」

「映画『バーバリアン』では男性なら気にも留めない、でも女性なら誰でも気付く”危険信号”を、できるだけ多く描きたかったのです

この監督の言葉を聞けば、本作が男性目線寄りの多くのホラー映画…登場する女性は犠牲者という名の獲物…とは異なる、賢明で勇敢な女性主人公が登場する意味が理解できると思います。

このように鋭い視点や社会風刺に富んだ本作。しかし決して堅苦しい作品ではありません。

女性の脅威となる存在とは何者か


(C)2022 20th Century Studios.

クレッガー監督が女性が”脅威”を感じ”危険信号”が鳴り響く舞台に選んだのが、民泊の一軒家での男性宿泊客とのダブルブッキングでした。

主人公テスを演じたジョージナ・キャンベルは極めて慎重に振る舞います。その姿には女性だけでなく男性も共感を覚えるのではないでしょうか。

一方先客のキースを演じたビル・スカルスガルドも彼女の立場を理解しつつ、自分が危険人物では無いと証明しようとします。

もっとも彼は『IT/イット 』(2017)で”ペニー・ワイズ”を演じた人物。ホラー映画ファンなら脳内の警報システムが働き”危険信号”が鳴り響きます。

しかし最善を尽くしたテスは予想外の脅威に遭遇します。それはこの家を宿泊先に選んだ結果ですが、そもそもデトロイトのこの場所を選んだのが大間違い…これも社会風刺でしょう

予想外の展開に驚いた観客は、次に場面転換に遭遇して戸惑います。ジャスティン・ロング演じるAJが登場し、映画のテイストは変わりコメディ色が漂い始めます。

AJはキースと全く異なる人物、自己中心的な”天然モノの女性の脅威”です。ちなみに彼はシットコム番組の
共演女優にセクハラを行いますが、クレッガー監督もシットコム番組で活躍した人物、ちょっとしたお遊び設定でしょう。

最初AJの役を「そんな役柄を演じる事が多い」、ザック・エフロンにオファーしたが断られたと話す監督。しかしこの役に対し間違った考え方をしていたと気付きます。

私たちが想像できるようなレイプ犯は怖くない。怖いのは魅力的な性犯罪者のイメージです。大柄で攻撃的な男ではなく”トム・ハンクスのような男”です」

「では、”トム・ハンクスのような男”って誰だろう。ジャスティン・ロングだ、そうしよう。そんな感じで彼を起用しました」と監督はインタビューで語りました。

ジャスティン・ロングは『ギャラクシー・クエスト』(1999)で映画デビューして以来、様々なコメディ系作品に出演していますが、ホラー映画ファンなら『ジーパーズ・クリーパーズ』(2001)、そして『Mr.タスク』(2014)でトンデモない目に遭ったのはご存じでしょう。

彼の過去作を知る者なら、本作で見せたコミカルな姿はより増幅されて感じられたでしょう。ジャスティン・ロングが登場し作品のテイストが変わるのは観客には予想外の展開です。その狙いは何でしょうか。

「テスのような自分の周囲の出来事に過敏な女性の反対の存在は、自分が周囲にもたらす影響への自覚が全くない男性です。性犯罪者でありながら、周囲に与えた被害を全く考えていない男性=AJを登場させれば、テスの試練と同じものを経験させられると思いました」

「それが面白かったんです、2人は同じ”針の穴”をくぐるわけですからね。これは道徳的なテストです。テスはこの試験に合格し、AJは不合格だった」と監督はインタビューで説明しています。

さて、劇中でAJがテスと出会うとまた場面が転換します。この第3幕で、映画『バーバリアン』の物語に潜む恐ろしい設定が露わになるのです。

観客が共感する怪物こそ魅力的


(C)2022 20th Century Studios.

突然映画は1980年代のデトロイトを映し出します。デトロイトはかつて自動車産業の中心地として繁栄し。人口で全米第5位を誇る大都市でした。

繁栄を支えた要因の一つが南部から流入した黒人労働者たちですが、1940年代末に黒人居住地が拡大し始めると白人住民の流出、自動車工場の移転が始まります。

公民権運動の時代である1967年、黒人住民による暴動が発生。この事件は映画『デトロイト』(2017)で描かれました。

1970年代になると日本車がアメリカ市場を席捲し始め、デトロイトの自動車産業は衰退の一途をたどります。ダウンタウンは荒廃し浮浪者があふれ、治安は悪化します。

80年代にこの傾向はさらに進みます。当時のデトロイトを背景に作られた映画がロボコップ』(1987)。その後もデトロイトの苦境は続き、富裕層と貧困層が異なる地区で異なる生活を営む都市となります。これを題材にした映画が、エミネム主演の『8 Mile』(2002)でした。

ともかく80年代に多くの白人住人がデトロイトから転居しますが、映画の舞台となる家の住人、リチャード・ブレイク演じるフランクはある理由からこの地に住み続ける事を選びます。

彼の選択には恐ろしい理由がありました。この件の直接的描写はありませんのでご安心を。しかしフランクのおぞましい行為が「彼女」を生んだのです。

クレジットで”The Mother”と呼ばれるこの女性を演じたのは、男優のマシュー・パトリック・デイヴィスです。彼が演じた理由はお判りでしょう。

マシュー・パトリック・デイヴィスはインタビューで撮影の舞台裏を語っています。「トンネルの暗闇から現れた(特殊メイクを終えた)私を見たジャスティン・ロングは動揺していました」

「そして彼は”別の映画の現場に戻ろうかな、この映画はもう嫌だ”と言うと私の胸を見て笑い、股間を見てまた笑いました」…確かに撮影現場で「彼女」に遭遇したら、そう反応するしかないでしょう。

「彼女」とAJのシーンに私は大いに笑いました。しかし「彼女」は父であるフランクが犯した行為の産物です。

「私にとって彼女(The Mother)は、映画全体の中で最も共感できるキャラクターです」とインタビューで話した監督。「誰かが彼女の事を、レザーフェイスとキングコングを合わせたような存在と言いましたが、その通りだと思います」

映画に登場する怪物で一番面白いのは、観客が共感を覚える怪物だと思います。彼女を一人の人間として見せる事が重要でした」

地下空間に人々に恐怖をもたらす異形の怪物が潜んでいる。それは怪物自身は知らない、背徳的な行為が生んだものかもしれません。

しかし怪物は、孤独で哀れな存在でした。H・P・ラヴクラフトの傑作短編ホラー小説「アウトサイダー」のあらすじです。

「アウトサイダー」に登場した怪物は、映画など後のホラー作品に大きな影響を与えます。直接インスパイアを受けた作品にスチュアート・ゴードン監督の『キャッスル・フリーク』(1995)があります。

『キャッスル・フリーク』に登場する怪物は、『バーバリアン』の「彼女(The Mother)」の男性版だと呼べるでしょう。

まとめ


(C)2022 20th Century Studios.

予想を超えた展開に驚き、恐怖とユーモアに溢れた展開が評判を呼び、思わぬヒット作となった『バーバリアン』。その物語の背景には人間や社会に対する鋭い風刺が潜んでいます。

舞台となった家、そしてデトロイトという場所にもメッセージが存在しています。産業の衰退や都市の空洞化で栄えていた居住地区が荒廃する。これはアメリカの各地で起きている現象です。

一方で人気の高い都市部の不動産物件は高騰し、それが理由で居住者が去るケースもあります。家族と過ごし幸せを築いた思い出深い家も、このような外的要因で手放さざるを得なくなる例も多数あります。

そんな誰かの思い出に満ちた物件を、単なる投資の対象としか考えない人間も存在します。本作のAJは手に入れた物件を危険な地区にあるのに民泊用に使用し、ろくに点検もせず地下空間にもそこに住む住人にも気付かずにいました。

このような風潮…今現実にアメリカで身近に存在する悲劇を、巧みに本作を構成する恐怖の要因として取り入れています。監督も「この映画がそんな話題のきっかけになれば嬉しいです」と語っています。

その後、こんな言葉を続けました。「それは私の意図ではありません。本作のストーリーの表面下で様々なことが起き、観客はそれを話題にすることもできます。

しかし私の唯一の狙いは、観客が映画館で叫んで笑い、楽しい時を過ごすことです。それ以外の要素は全ておまけです

『バーバリアン』というタイトルも、書いた脚本のデータを保存する際名前を付ける必要があり、その時”バーバリ通りにある家”と書いたと思い出して「バーバリ通りの住民だから”バーバリアン”だ」と名付け、それがタイトルになったと監督は説明しています。

「予告編を見た人のコメントの1つに、”バーバリアン(Barbarian)のタイトルはAirbnbのアナグラムですね”と書いてありました。その発想は全くありませんが、素晴らしい発見で大好きな指摘です」とインタビューで語る監督。

この映画に登場した人物で、”バーバリアン(野蛮人)”は誰でしょうか。女性にとって全ての男性はそんな一面を持っているのかもしれません。

鬼畜な所業を行ったフランクは当然ですが、AJもフランクと別のタイプの無自覚な”バーバリアン”と呼べるでしょう。

見た目と行動は「彼女(The Mother)」こそが”バーバリアン”ですが、そう呼ぶには純粋な母性と持つ無垢な怪物です。そう考えると命がけで自分を救ってくれた「彼女」に銃を向け、発砲したテスこそ冷酷な”バーバリアン”かもしれません。

こんな考察もクレッガー監督が語った「おまけ」要素の産物です。しかし、現代のアメリカを風刺する様々な要素が巧みに織り込まれたストーリーが、観客を楽しませる様々な「おまけ」を提供してくれるのです。

【連載コラム】『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』記事一覧はこちら





増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

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連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第7回 日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアク …

連載コラム

映画『血筋』感想とレビュー評価。消息不明の父親と再会した息子の愛憎の先にあるもの|だからドキュメンタリー映画は面白い36

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第36回 音信不通だった父親と18年ぶりに再会した青年が知る、切っても切れない親子の血筋。 今回取り上げるのは、2020年3月14日(土)より新潟シネ・ …

連載コラム

中国映画『人魚姫』ネタバレあらすじと結末の感想解説。シンチー節で描くギャグとヒューマニズム満載のエンターテインメント|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー26

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第26回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

【東京国際映画祭2019 受賞作品一覧】東京グランプリは『わたしの叔父さん』に決定|TIFF2019リポート11

2019年10月28日から11月5日まで開催された、第32回東京国際映画祭(TIFF)の「コンペティション部門」をはじめ、各部門の受賞作品と受賞者が発表されました。 2019年のTIFFの各受賞結果を …

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【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学