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Entry 2017/09/07
Update

映画『ゲット・アウト』あらすじと感想レビュー!深掘り考察も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

2017年10月27日より劇場公開される『ゲット・アウト』。

新人監督には思えない本格派スリラーを低予算でありながら、本年度公開作のなかではズバ抜けた傑作と言い切れる作品です!!!!

アフリカ系アメリカ黒人男性と白人女性の仲良しカップルが目撃する恐怖の末路とは?

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1.映画『ゲット・アウト』の作品情報

【公開】
2017年(アメリカ映画)

【原題】
Get Out

【脚本・監督・製作】
ジョーダン・ピール

【キャスト】
ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー、スティーブン・ルート、ベッティ・ガブリエル、マーカス・ヘンダーソン、キース・スタンフィールド

【作品概要】
人気ホラー作品『インシディアス』『ザ・ギフト』『ヴィジット』などのプロデューサーで知られるジェイソン・ブラムが製作、アメリカのコメディアン「キー&ピール」のジョーダン・ピールが初監督をした本格スリラー映画。

2.ジョーダン・ピール監督のプロフィール

【監督・脚本・製作】
ジョーダン・ピールは、1979年にニューヨーク州ニューヨーク生まれます。

コメディアンとして頭角を現わし、コメディ番組「マッドTV!」(1995〜2009)では5シーズン連続でレギュラーを務めます。

番組内で製作した音楽ビデオ『Sad 50 Cent』で2008年プライムタイム・エミー賞にノミネート。

参考映像『Sad 50 Cent

相棒のキーガン=マイケル・キーとコンビを組んだコメディ番組「Key and Peele(原題)」(2012〜15)で人気が爆発。

2013年ピーボディ賞及び2014年アメリカン・コメディ・アワードなどを受賞。

また、キアヌ・リーヴスが猫の声で出演した『キアヌ』(2016)でキーと共に出演し、製作・脚本を担当。

今作『ゲット・アウト』が初監督デビュー作となり、新人離れした安定感ある演出力を見せました。

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2.映画『ゲット・アウト』のあらすじ


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、ある週末に白人の彼女ローズの実家で過ごすことになりました。

ただ、ローズは両親に彼氏が黒人であることを伝えておらず、「両親は差別主義者じゃないし、父は3期目があればオバマに投票するような人」だというが、クリスは若干の不安を払拭できずにいます。

それでもローズの実家に到着した2人を迎え入れてくれた彼女の両親は、クリスの不安とは裏腹に、過剰なまでの歓迎を受けます。

しかし、黒人の使用人がいることに気がついたクリスは妙な違和感を覚えます。

その夜中、どことなく落ち着かないクリスは、ローズと共にしていたベットを抜け出し、煙草を吸いに屋敷の外に出ます。

すると、庭を猛スピードで走り去る使用人や窓ガラスに映った自分の姿を見つめる家政婦を目撃し、その恐ろしさにクリスは動揺します。

翌日のローズの亡き祖父を讃えるパーティに多くの知人が集まるが、なぜか白人ばかりで気が滅入ってしまうクリス。

その中に、唯一のどこか古風な黒人の若者を見つけたクリスは、その彼に話しかけます。なぜか会話がかみ合いません。

なぜか見覚えのある黒人の若者の写真をスマフォでさりげなく撮影すると、フラッシュが光った瞬間、その黒人の若者は鼻から血を流しながら急に豹変。

「出ていけ!」とクリスに襲い掛かってきます。

“何かがおかしい”と感じたクリスは、ローズと一緒に実家から出ようするが…。

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3.映画『ゲット・アウト』の感想


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

黒人に対する差別意識を炙り出す演出

今作『ゲット・アウト』のオープニングシーンは、ある住宅街の夜道で黒人男性が道に迷い困る様子からはじまります。

前時代的かつ一般的映画でいえば、イントロに登場する最初の人物は、映画の記号としてお約束である“若い女性”か、“間抜けな白人男性”と相場が決まっています。

しかし、この作品では暗い夜道にいる黒人男性。

彼は住宅を物色しながら一人歩いている…。

どんなに人間であれ、差別や偏見は多かれ少なかれあるものです。

筆者もはじめに登場した黒人男性を見た際には、これから“この男は何をしでかすのか”と思ってしまったのです。明らかに偏ったものの見方です。

黒人男性が夜道にいるショットの映像の見方(読み方)どう捉えるかで変わってしまう意味があるのです。

・「黒人男性は夜道の暗い中を平穏な住宅街を一人歩いている」
・「黒人男性は暗い夜道に紛れて強盗に押し入る住宅を物色している」
・「黒人男性は見知らぬ土地で迷い、似たような住宅が並ぶなか友人宅を訪ねる」

スクリーンは大きいとはいえ、映し出された映像を初見の視覚情報を観ただけでは、正直、どれが正解かわかりません

このファースト・コンタクト分からないということが、防衛本能や身の保身としながらも、人の心の奥底にあるした偏見を呼び起こさせる事実があるです。

記号情報によって、夜道、黒人、男性、住宅街、挙動不審(知らない土地がら)、家を物色している(迷子)などにより、“怪しい”と色眼鏡で見てしまうのです。

もちろん、一例に挙げたオープニングシーンにいる黒人男性の印象は、ジョーダン・ピール監督の仕掛けたキーワードとなるリードです。
観客のあなたは自身の内側にある“モノ”に向き合うのです。ジョーダン監督の策にまんまとハマることでこの映画は楽しめることでしょう。

しかも、その差別や偏見は黒人・白人・黄色人種などの誰の心境もザワザワと搔き乱していくことになります。

ジョーダン監督と類似性のある監督は?

映画のお手本の参考書『裏窓』(1954)

今作『ゲット・アウト』を観ながらとっさに頭を過ぎったのは、北野武監督とアルフレッド・ヒッチコック監督です。

ジョーダン監督のオープニングシーンは、語り部として導入巧みさとキレ、そしてユーモアまで含めても北野監督作品と類似しています。

全く描いた内容と表現は異なりますが、社会性を取り込んだ冒頭の颯爽たる演出は、『その男、凶暴につき』のように新人離れした潔さを感じます。

また、イントロであったオープニングシーン続く、写真家であるクリス・ワシントンを紹介するシーンでは、明らかにアルフレド・ヒッチコック監督の名作『裏窓』の冒頭にリスペクトしたものです。

ヒッチコック監督は『裏窓』の冒頭で、地域住民たちと主人公の住居の配置関係や主人公の職業が著名な写真家、現状なぜこの部屋に留まっているかを巧みに見せることに成功しました。

これらは“フレーム内編集”とも呼べるもので、1つのショット内をカット割りすることなく見せています。

一方のジョーダン監督は、黒人俳優ダニエル・カルーヤ演じる主人公クリス・ワシントンのシャワーシーンからはじまり、主人公の住む部屋の壁に飾られた写真などによって、彼の情報を“フレームの内編集”で観客に伝えていきます。

初監督作品となるジョーダン監督ですが、ここまでしっかりと名作映画を引用する表現方法を使ったことで、今作『ゲット・アウト』がクオリティーとして安心して観賞できることはこの時点であると言い切れるでしょう。

また、映画の冒頭部で黒人男性の肌の色が美しいシャワーシーンではじまるなんて、ジョーダン監督はいかにユニークなのか?お分かりいただけるでしょう。

低予算映画ながら導入部の観客の掴みの巧みさは北野武監督と類似。

あらゆる日常にあるサスペンスとその技法はヒッチコック監督をお手本にしています。

北野武監督やヒッチコック監督との類似は偶然ではなく、コメディアンとして『マッドTV!』などで活躍したジョーダン監督だからこそです。

それは恐怖(狂気)とお笑いが同一の軸にあると知っているからです。

今作『ゲット・アウト』を観ながら、もう1人思い出していた監督がいます。それはチャールズ・チャップリン監督です。

褒めすぎと言われるかもしれませんが、この作品を同じくコメディアンであるチャップリンが見たら、どのように評価するのかワクワクしますね。

これがすべての『ゲット・アウト』の魅力ではありません。いくつもの映画にリスペクトしながら、お手本を研究して制作された作品なのです。

多分語り出したら止まらないので、今日のところはこの辺りで、ゲット・アウトしますね。笑

まとめ


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

この作品のなかで個人的にはアカデミー賞ものの演技力というか、素晴らしい怪演を見せてくれたのは家政婦役の女優さんに尽きます

笑いながらに泣く”この佇まいは、これは竹中直人の“笑いながら怒る人”以上に見応えのあると一言に尽きますね。

不思議とヒッチコック監督の名作『サイコ』のお母さんを彷彿させる恐ろしい演技です。ふふふ(絶対に髪型とか意識してるでしょう)

また、彼女だけではなくこの映画の中では、アフリカ系アメリカ人の写真家クリスに対して白人以上に黒人たちが恐ろしい奇妙な反応を見せています。

なぜだかは語りませんが、黒人の家政婦や使用人、また祖父のパーティに訪れた若い黒人男性には要注目(要注意?)です!

必ず映画を観終わった後に、彼らの恐怖(狂気)と笑いの意味を思い出して理解できるはずです。

さて、最後になりますが、この映画の『ゲット・アウト』というタイトルは、見事に映画全体の世界観を支配し、あなたの頭をぐーるぐるとかき回してくれることでしょう。

亡き祖父のパーティの参加者は、なぜか白人ばかりで気が滅入っていた主人公クリス。そんな中でやっと黒人の若者を見つけたクリスは思わず彼にスマホで写メを撮ります。

しかし、フラッシュがたかれたのと同時に若者は鼻から鮮血が流れる。(涙でなくね)

彼はそれまで穏やかだった態度を急変させて「出て行け!」とクリスに襲いかかるのです。

怖いですね〜、恐ろしいですね〜。

ちなみに、「get out」の意味を英和辞典 Weblio辞書で調べてみまました。

和訳だと、(外に)出る、外出する、(立ち)去る、(乗り物を)降りる、逃げ出す、漏れる、知れてしまう、俗語ではバカなだそうです。ふふふ…ですよね。

間違いなく!ジョーダン・ピール監督の代表作にして初監督作品は、今後はブレイクの予感大です!

この低予算映画はヒッチコック監督『サイコ』のサイコにも迫る傑作!

『ゲット・アウト』は2017年10月27日より全国ロードショー!

昨今は黒人ブームですから、ぜひ、お見逃しなく!今年オススメの1本です!

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