連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第104回
今回ご紹介するNetflix映画『グレイマン』は、『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ エンドゲーム』(2019)のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が手がけたアクションスリラー映画です。
CIAの雇われ工作員通称シックスは、重要機密を取引する“悪人”を暗殺する指令を請負ますが、標的から意外な事実を知らされ、組織の隠された闇を察知したことで、命が狙われ逃亡生活を余儀なくされます。
組織はシックスを抹殺するため、極悪非道な仕事請負人ロイド・ハンセンを使います。ロイドはシックスを暗殺するため懸賞金を懸け、国際的な暗殺集団を使って彼を追い込みます。
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映画『グレイマン』の作品情報
(C)2022 Netflix
【公開】
2022年(アメリカ映画)
【監督】
アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
【原作】
マーク・グリーニー
【脚本】
ジョー・ルッソ、クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリー
【原題】
The Gray Man
【キャスト】
ライアン・ゴズリング、クリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス、ジェシカ・ヘンウィック、ヴァグネル・モウラ、ダヌーシュ、ジュリア・バターズ、レジ=ジーン・ペイジ、ビリー・ボブ・ソーントン、アルフレ・ウッダード
【作品概要】
『きみに読む物語』(2005)、『ラ・ラ・ランド』(2016)のライアン・ゴズリングがCIAの工作員通称シックス(コートランド・ジェントリー)役を演じ、シックスの命を狙うロイド・ハンセン役には、マーベル・コミックの実写映画「ファンタスティック・フォー」シリーズ、「キャプテン・アメリカ」シリーズのクリス・エバンスが演じます。
共演には『ブレードランナー 2049』(2017)でブレイクし、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020)の出演も果たしたアナ・デ・アルマス、大ヒットTVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のナイメリア・サンド役で知名度をあげた、ジェシカ・ヘンウィック。
映画『グレイマン』は2009年に出版された、マーク・グリーニーの小説「暗殺者グレイマン」が原作で、Netflixオリジナル映画史上最も高額な制作費用、2億ドルが投資されました。
映画『グレイマン』のあらすじとネタバレ
(C)2022 Netflix
コートランド・ジェントリー は、1995年に殺人罪でフロリダの刑務所に収監されていましたが、D・フィッツロイという男が面会に来ます。
彼は悪党を抹殺する“見えない存在(グレイマン)”として、CIAに仕えることを条件に釈放するという取引をもちかけます。
フィッツ(フィッツロイ)はコートランドの罪状に関して、それに至った理由は妥当だったと彼を擁護し、彼の価値を活かすために、その報われなかった心の傷みや苦悩を、世の中のために役立てろと言います。
コートランドはCIAの精鋭部隊“シエラ”に属し、“シエラ・シックス”というコードネームでCIA工作員(暗殺者)となります。
18年後、バンコクにいたシックスは、ラングレーのCIA戦術作戦本部から、国家機密情報の売買をするため、パーティー会場に現れるダイニングカーという男を取引完了前に暗殺するよう指示されます。
シックスの相棒CIA捜査官のダニ・ミランダは、取引現場となる部屋の階下にある部屋の鍵を彼に渡し待機しました。
作戦本部の本部長D・カーマイケルは、部下のスーザン・ブリューワーに“信用していない”、シエラのシックスを起用した理由を聞くと、彼女は単純に暗殺者として腕のいい彼が、バンコクにいたからと答えます。
ところが階下から多くの民間人が行き交う様子を見ているシックスは、いざ引き金を引こうとした時、標的者の近くに子供がきてしまい、犠牲者が出てしまうと作戦を中断します。
監視カメラのモニターを見ていたカーマイケルは苛立ちます。しかし、シックスは作戦を変更し、命令を遂行します。
非常ボタンを押し電源を落としたシックスは、パーティー会場へ向かいます。ダイニングカーは何かを察したように「取引は中止だ」と撤収し始めました。
そこにシックスの影が忍び寄り護衛を次々と倒すと、ダイニングカーを追い詰めていきました。すると彼はシックスに「オレはお前のことを知っている、“シエラ・シックス”」と……。
ダイニングカーはシックスにCIAから自分のことを聞いていないか訊ねます。なんとダイニングカーもまた、シエラの工作員で“シエラ・フォー”だと言いました。
彼はシックスに“身内殺しの指令”だと見逃すように交渉しますが、信用しないシックスは命令の遂行を続けます。
シックスはダイニングカーに致命傷を負わせ、彼にスカウトは誰だったか聞くと“フィッツロイ”と答え、訓練を受けた場所もテルアビブの秘密基地だと、関係者しか知り得ないことを答えます。
ダイニングカーはCIAの上層部には真実がなく、特にカーマイケルは最悪だと罵ります。そして、機密情報の入ったペンダントを差し出し、シックスにカーマイケルを潰すよう託します。
そこにミランダが合流すると、ダイニングカーの暗殺に成功したことを本部に伝えます。シックスは彼女に彼は“シエラ”だと伝えると初耳だと答えます。
ミランダは(シエラの)機密を握っていたのかもというと、シックスはシエラにはないと答え、ミランダと他の捜査員に引継ぐと現場を去っていきました。
捜査員はダイニングカーの資産回収を行いますが、機密情報の回収には失敗をしました。カーマイケルは、“シエラ”を旧体制の遺物で抹消すべき存在だと言い捨てます。
1人になったカーマイケルは監視カメラの録画を観ながら、シックスに何のマネかと説明を求め、標的から回収した“ブツ”はないか聞きます。
シックスはロケットペンダントの中に、マイクロチップがあるのをみつけると、標的が何者でブツとは何なのか質問を返すと「悪党で非常にまずいもの」と答え、シックスに最後のチャンスだと告げます。
シックスはイースポーツカフェでマイクロチップの中身を確認します。いくつかのフォルアーファイルと、カーマイケルがサブネイルになった動画がありました。
いずれも閲覧するにはパスワードが必要でした。そこにミランダから撤退すると連絡が入りますが、シックスは離反すると告げマイクロチップはどこかに送ります。
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映画『グレイマン』の感想と評価
(C)2022 Netflix
映画『グレイマン』はNetflixオリジナル映画として、史上最高、2億ドル(約276億円)の製作費をかけたアクション超大作です。
2022年7月15日(金)より一部の劇場で公開されると、鑑賞者からはノンストップアクションの迫力に、お墨付きといった感想が寄せられました。
莫大な制作費もさることながら、アクション映画「アベンジャーズ」シリーズのアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が監督を務めた、というだけでもド迫力なアクションシーンに期待度が高まります。
したがって見どころはズバリ、迫力のアクションシーンです。『グレイマン』は現実の世界が舞台で、登場する武器も実在する物なので、現実味があるところに痛快さだけでなく怖さも潜みます。
ストーリーは不遇の人生だった男を組織がリクルートし、悪を倒していく……そして、組織の裏切りや黒幕の存在も見え隠れする、といった王道ストーリーです。
本作はCIAのエリートが不正の証拠を握られ、もみ消すために職権乱用するところから始まります。
しかし、不正を握った男、指名した暗殺者、暗殺者の命を狙う殺し屋、全て“相手が悪かった”・・・という、CIAの面目や威信など関係のない、“男の意地の張り合い”が国家レベルの大騒動になった話です。
本作はマーク・グリーニーの小説が原作で、“グレイマンシリーズ”になっています。続編、もしくは007のように、グレイマンシリーズが生まれても不思議ではないでしょう。
Netflixはそれを目論んでいているようですが、本作並み、もしくはそれ以上のスケール感に大きな期待が寄せられ、それには制作費という問題があるのも否めません。
虐待から体得した、暗殺者の素質
シックスの暗殺者の素質は、幼い頃に受けた父親からの虐待でした。父親自身も痛みや恐怖を消す方法として、彼に肉体や精神に虐待を与えました。
父親は一度、体得したら一生使えると教えた通り、ロイドからの執拗な攻撃にも耐え、2週間飲まず食わずで、睡眠も取らない強靱な精神力が培われました。
また、虐待が父親殺しの情状酌量にならず、社会の不条理も彼の心を傷つけ、たやすく信用しない用心深さも身につけました。
フィッツロイは理不尽な理由で服役している犯罪者の心理に共感し、CIAという社会的信用の高い組織の一員にすることで、彼らの自尊心を取り戻させ、忠誠心を植えつけました。
シエラ・フォーがCIAの闇を掴んだのは、フィッツロイをはじめとする“シエラ”への圧力から、独自調査をしたことからだと推測します。
しかし、フォーをはじめとする他のシエラの人材とシックスには、大きく違う点がありました。
守るべき者がいる真の強さ
シックスには父親の虐待から弟を守るという、強い意志がありました。そして、フィッツロイの姪クレアとの出会いで、再び守るべき家族ができたことです。
守るべき者がいることで、もともとある強い精神力は倍増するものです。シックスの超人的な意志はそこにあり、フィッツロイの意志もまたクレアの存在が大きかったといえます。
カーマイケルやスーザンは利己的で他人を犠牲にし、同僚すらも裏切り利用するほど、自己中心で下劣な人間です。ロイドも感情が抑えられない、病的なサイコパスでした。
CIAとはアメリカの国家情報機関です。国の安全保障政策のための組織に悪を企てる者がいる時点で、国を守るべき組織の真の強さが失われています。
そこに着目したフィクションではありますが、昨今の世界情勢を鑑みた時、アメリカの弱体化を垣間見た気持ちにもなりました。
「守るべき者は誰なのか?」それを忘れた時、巨大組織も音をたてて崩れていくのかもしれません。
まとめ
(C)2022 Netflix
映画『グレイマン』は、父親の殺人で服役中のコート・ジェントリーが、CIA監視官D・フィッツロイにスカウトされ、機密暗殺組織“シエラ”の6番目のメンバー“シックス”となり、CIAの不正を掴んだ男を仲間と知らずに暗殺してしまうことから、命を狙われる身となる話です。
本作はストーリー性よりも、ド派手なアクションシーンが見どころとなりますが、人間心理の根幹部分も問われる作品です。
人はいかに人を信じ人のために戦えるか。シンプルなことでありながら、その意志はたやすく崩されることも訴えていました。
もう1つ見どころとして抑えたいのは、“いかにも”といったキャスティングではないところです。
優男風なライアン・ゴズリングが超人的な暗殺者役で、守りたいヒロインタイプのアナ・デ・アルマスが、ロケットランチャーをぶっ放すCIA工作員を演じるなどが、さらに痛快さを倍増させています。
シリーズ化の動きもある映画『グレイマン』は、本作で明らかになっていない、黒幕の存在やその陰謀があるので、シリーズ化は間違いないとみることができるでしょう。
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