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Entry 2021/09/02
Update

映画『ショーシャンクの空に』ネタバレあらすじ感想と結末のラスト考察。名言が多い原作スティーヴン・キングの‟人生のバイブル”的なドラマ

  • Writer :
  • からさわゆみこ

無実の罪で終身刑になった男の失わなかった“希望”の物語

今回はスティーヴン・キングの中編小説、『刑務所のリタ・ヘイワース』が原作のヒューマンドラマ『ショーシャンクの空』をご紹介します。

物語は有望な銀行副頭取アンディ・デュフレーンが、妻とその愛人を射殺したとういう罪で、“ショーシャンク刑務所”に投獄され、守衛や刑務所内の古株など受刑者との人間関係を通し、刑務所の不正や冤罪が暴かれていくヒューマンストーリーです。

フランク・ダラボン監督はスティーヴン・キング原作の小説、『グリーンマイル』(1999年)と『ミスト』(2007年)でも監督を務めています。

原作者のスティーヴン・キングはインタビューで、映画化された自作の中でも『スタンド・バイ・ミー』と並んで、『ショーシャンクの空に』がTOP2、3相当で好きだと語っています。

映画『ショーシャンクの空に』の作品情報


(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

【公開】
1995年(アメリカ映画)

【監督/脚本】
フランク・ダラボン

【原作】
スティーヴン・キング

【原題】
The Shawshank Redemption

【キャスト】
ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、ボブ・ガントン、ウィリアム・サドラー、クランシー・ブラウン、ギル・ベローズ、ジェームズ・ホイットモア、ラリーブランデンバーグ、 ニール・ジュントリ、 ブライアン・リビー、 デビッドプロヴァル、 ジョセフ・ラグノ、ジュード・チコレッラ、ポール・マクレーン

【作品概要】
物語は長期服役囚レッドの目線で語られていきます。そのレッド役には『許されざる者』(1992)、『セブン』(1995)などの名作に出演のモーガン・フリーマン、エリート銀行員でありながら、無実の罪で収監され、無力さに嘆きながらも希望を捨てず、チャンスをうかがうアンディ役には、『ミスティック・リバー』(2004)でアカデミー助演男優賞を受賞したティム・ロビンスが務めます。

映画『ショーシャンクの空に』のあらすじとネタバレ


(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

自動車内で酒をあおりながら、深刻な面持ちで一丁の拳銃を見つめる男がいます。彼はプロゴルファーの男と浮気をする妻から、離婚を迫られていました。

若く優秀な銀行マンとして副頭取をしていた、アンドリュー(アンディ)・デュフレーンは、その妻と愛人を射殺した罪で裁判にかけられました。

アンディは無実を訴えますが、当時酩酊状態だったうえに、拳銃は川に投げ捨てたという供述は発見に至らず、状況的に彼の犯行と決定づけられ、終身刑を言い渡されます。

1947年、“ショーシャンク刑務所”では、終身刑のレッドが服役20年を経過し、仮釈放の審問会で面談を受け、面接官に模範解答をするも、“不可”を言い渡されます。

同じ日、アンディは刑に服すため護送されてきました。護送されてきた犯罪者の中でも、アンディは背ばかり高くて、弱々しい印象をレッドに与えました。

“新入り”が入所してくると囚人達は、誰が一番に初日の晩、泣き出すかの“賭け”をします。レッドは他の新入りとは風貌の違う、アンディに賭けました。

レッドは刑務所内で“調達屋”と呼ばれ、あらゆる手を使い、タバコやマリファナから女優のポスターまで、囚人から要望があれば取引に応じていました。

刑務所に入ると所長のノートンが、「規律と聖書を重んじている。肝に銘じておけ」と囚人達に圧をかけます。

続いて放水で体を洗浄され、全身に消毒粉をかけられ、全裸で独房へと移動し他の囚人はそれを見物するのです。

消灯すると囚人は“新入り”たちをからかい始め、誰かが泣きだすまでそれが続きます。ターゲットは小太りの男で、彼は怯えながら牢から出して欲しいと騒ぎ、泣き出します。

監視官が騒ぎを聞きつけ、泣き叫ぶ男のところへ行きます。彼は何かの間違いで自分は無実だと訴えると、ハドレー刑務主任は彼を引きずり出し、警棒で何度も殴打し失神させます。

ハドレー刑務主任は騒ぎをおこせば、同じ目に合わせると警告し、男を診療室へと運ばせますが、朝食時に彼は死亡したと知らされます。

レッドと彼の朋友達はグループで食事をとり、アンディは少し離れたテーブルで食べます。オートミールに芋虫が混ざっていて、初日から最悪な状態でした。

老いた囚人がその芋虫をくれないかと、アンディに声をかけます。老人は上着の内ポケットに鳥のヒナを隠し持っていて、その芋虫を与えました。

アンディは“小太りの男”に賭けた囚人に、死亡した男の名前を訊ねますが、“知ってどうする?意味がない”と、人の死に無関心なことを示します。

アンディはある囚人に気に入られますが、しばらく寡黙に単独行動をしました。1ヶ月が経ち刑務所での生活が慣れてきたころ、アンディはレッドに接触します。

アンディはレッドを“調達屋”だと知って、“ロックハンマー(ミニつるはし)”が欲しいと依頼します。レッドは殺人か脱走に使うのかと危惧しますが、趣味の“鉱物収集”に使うと言います。

レッドは抜き打ち検査でみつかれば没収されること、自分の名を出したら2度と面倒は見ないと約束させました。

そして、アンディにホモセクシャルの“ボグズ”に狙われていると忠告します。そして、狙った人間を力づくで犯すと教えます。礼を言って立ち去るアンディにレッドは、物腰の柔らかい彼の人柄に好意的でした。

レッドは外部と精通している、洗濯係を使って“ロックハンマー”を調達しました。手の平サイズのそれでは脱走もできないと笑い、図書係の老人に託してアンディに届けました。

しばらくすると、アンディに最悪な事態がおきます。レッドが心配していた、“ボグズ”と仲間たちがアンディを力づくで犯し、そのことが刑務所内に知れ渡ります。

それからの2年間、アンディには生傷が絶えず、それ以上その状況が続いたら、廃人になってしまうほど、精神的に追い詰められていました。

ところが1949年の春、ノートン所長が工場の屋根を修理するにあたり、12名の囚人を招集すると告げます。

気候の良い季節の野外作業には、100人の志願者がいましたが、レッドは刑務官をタバコで買収し、レッドの仲間とアンディをその12名に選ばせました。

作業が始まったある日、ハドレー刑務主任が他の所員に兄が亡くなり、数万ドルの遺産を相続するが、相続税などで手元にはあまり残らないと愚痴を言います。

それを聞いていたアンディは銀行でのスキルを使い、節税の方法をハドレーに持ちかけます。

アンディは彼の妻に贈与することで、“非課税”になると教え、手続きに必要な書類も無償で作成すると提案し、その代りに“仲間”にビールを振舞ってほしいと頼みます。

ハドレーは冷えたビールを支給すると、別人のように優しい物腰になります。レッドはアンディに仲間になりたいのか、刑務官に媚びているのか考えますが、彼の表情からただ安らぎが欲しかったのだろうと思います。

以下、『ショーシャンクの空に』ネタバレ・結末の記載がございます。『ショーシャンクの空に』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

レッドとアンディの仲が縮まってきた頃、アンディは“教養と戦略”が会得できるチェスをレッドに手ほどきすると言います。

アンディはチェス盤だけをレッドに頼み、駒は自分で彫って作りたいと話します。しかし、それには広場の石では難しく、大理石や石けん石が好ましいと言います。

レッドはアンディに何か考えがあると察し、彼の犯した罪について聞きます。刑務所では誰もが自分は無実だというが、アンディは本当の無実だと伝えたかったのです。

独房で駒を彫るアンディは壁に彫った、“ピーター”と“ベニー”という名前を見ると、その下に“A”と彫ります。

映写レクレーションの日、アンディは映画に出ている女優のリタ・ヘイワースを見て、レッドに「リタ・ヘイワースを送ってくれ」と依頼します。レッドは戸惑いながらも数週間くれと言います。

映写室を出たアンディはボグズ達に捕まり、辱めを受けそうになりますが、彼は仲間の鼻の骨を折り脅しで抵抗したことで、激しい暴行を受け1ヶ月の重傷を負います。

ボグズは懲罰房に入れられますが、期間が明け独房に戻るとそこには、ハドレーが待ち受けていました。

ボグズはハドレーからリンチをうけ、半身不随となり刑務所病院に移送されて行きました。逆にアンディは安全に守られる立場となります。

レッドは仲間達に「アンディを温かく迎えよう」と声をかけ、開墾作業をしている時には、駒用の石を収集し、リタ・ヘイワースのポスターが手に入ると、退院する日のアンディの部屋に届けます。

ある日、ノートン所長による、抜き打ち検査が行われました。所長たちはアンディの部屋にやってくると、容赦なく不審なものがないかチェックします。

ノートンはアンディの持っていた聖書を取り、どの一節が好きか聞きます。「起きていなさい。いつ主が戻るかわからない」と答えます。

ノートンは「我は世の光」という一節を引き、自分に逆らわなければ、光りを得るだろうという趣旨のことを言い、独房に貼られたリタ・ヘイワースのポスターは、大目に見ると言って去っていきます。

ところが抜き打ち検査というのは口実で、本当はノートンによるアンディに対する値踏みが目的でした。アンディとの聖書の掛け合いから、ノートン所長は彼に一定の評価をし、所長室に呼びだします。

所長室には“主の裁きは下る、いずれ間もなく”と書かれた額が飾られ、ノートンは学のあるアンディに新しい仕事を与えると、“図書係”を命じました。

図書係にはすでに老いたブルックスが就いていましたが、補佐で一緒に担当することになりました。長年、1人でこなしてこれた仕事と聞き、アンディは疑問に思います。

するとそこに1人の刑務官がやってきて、アンディに子供のために、学資預金がしたいと相談にきます。

食事の時間、ブルックスがその話をすると、アンディは図書館に本を増やすため、予算を交渉すると言い出します。仲間の誰もがそんなことは無理だと笑います。

アンディはノートンに相談しますが、やはり予算はないと言い切られます。そおれでもアンディは週一で州議会に手紙を書いて、上申すると言いその許可を得ました。

図書館は刑務官たちの所得申告書を作成する場となり、アンディは彼らの信頼を得ていきます。やがて周辺の刑務所からも、申告書の作成を依頼する場も設けられ、刑務官たちから人気になります。

繁忙期にはレッドが事務員として手伝うようになりました。そして、その間もずっとアンディは州議会に手紙を書き送り続けました。

ある日、図書館でブルックスが、仲間の首にナイフをあて騒ぎをおこします。理由は仮釈放が決って、刑務所から出ることへの不安からでした。

50年間も刑務所で暮らしたブルックスにとって、塀の外は元囚人の差別もあり、恐怖でしかありません。レッドは“終身刑”を施設慣れにさせて、人を廃人にする、最も陰湿な刑罰だと仲間にいいます。

やがてブルックスは刑務所を出ますが、50年前とは明らかに違う街の光景に戸惑います。更正するために行政が用意した宿と仕事、しばらくは慣れるためがんばりますが、次第に孤独感から不安に襲われ、首を吊って自死してしまいます。

一方、州議に手紙を送り続け6年が経ったある日、大量の中古図書と200ドルの小切手が、アンディの元に届きます。アンディの粘り勝ちでした。そして彼は、ならば週に2通書くと意気込みます。

アンディは服役して10年が経ち、レッドは30年目の仮釈放の審問面談がありました。彼は今回も“更正でき真人間になった”と、答えますが仮釈放は不可となります。

アンディは公言通り週2通の手紙を州議会に送り、500ドルの予算が計上され、ボロボロだった図書館を修繕し、新古品の図書やレコードを購入して、囚人たちの教育や憩いの場にしました。

そのことが社会的にも注目を浴び、ショーシャンク刑務所はメディアの取材も受け、ノートンは囚人たちを公共事業に携わらせ、社会貢献させると発表します。

しかし、それにはノートンの思惑が関与していました。人件費や経費のピンハネ、及び一般事業主からの収賄などの不正取引です。その会計をアンディにさせていました。

アンディは“ランドール・スティーブンス”という、架空の人物を作って口座を開き、手に入れた現金を株や証券に変え、不正蓄財するのを手伝っていました。

その代りにアンディは囚人たちに、高卒の資格を取らせることを黙認させていました。

(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

新入りが収監されるサイレンが鳴ります。その中にアンディの運命を変える、コソ泥で捕まったトミーという若造がいました。

物怖じしないトミーはレッド達とすぐに馴染みます。そして、アンディから、「泥棒には向いてない。すぐに捕まるのだから。」とたしなめられ、高卒資格に目覚め勉強の特訓を受けます。

ところがトミーは自信のなさから、試験の出来栄えは悪いと感じて、答案をゴミ箱に投げ捨てて、図書館を出て行ってしまいました。

トミーはレッドに、アンディの厚意を無駄にしたと後悔し、何気なくアンディの犯した罪について聞くと、トミーは顔色を変え彼の所に行き、冤罪が証明できるかもしれないと言います。

それは別の刑務所での話で、“エルモ”という囚人が、カントリークラブ近くの家に忍び込んだ時、家主が騒いだため殺害し、一緒にいた女も殺したという内容です。

被害者はプロゴルファーで、一緒にいた女は銀行員の人妻だったと語り、その夫が犯人として捕まったと笑って話したと教えます。

アンディはさっそく、ノートン所長に再審の申し出をしますが、無償で仕える優秀な会計士であり、不正蓄財の存在を知る彼を手放すわけがありませんでした。

ノートンはトミーの話は作り話だと聞き入れようとせず、アンディが裏金のことは黙っていると口走ると、彼を懲罰房に1カ月間監禁してしまいます。

トミーは自分のせいだと嘆きますが、そこに高校卒業資格の合否が届き、アンディは懲罰房の中で、彼が合格できたことを知り微笑みました。

しかし、トミーはノートンに呼びだされ、アンディの再審があった場合、宣誓の下で証言できるかと確認させられ、できると答えたトミーは、脱走という虚偽の理由でハドリーに射殺されます。

懲罰房でそのことを知ったアンディは希望を失い、刑務所内での自由や図書館の存続を盾にされ、会計係を続けるようノートンから脅されます。

外に出たアンディは、自分の不甲斐なさのせいで妻は死に、不運のせいで投獄されたと言い、太平洋に面したメキシコの小さな町、“ジワタネホ”のことや太平洋の別名を“記憶のない海”だとレッドに話します。

アンディはその記憶のない海の近くに住み、ホテルを開きたいと夢を語り、レッドを調達屋にしたいと言います。レッドは外の世界では生きられないと言い、アンディの話を夢のまた夢だと諭します。

アンディは選択肢は2つ「必死に生きるか、必死に死ぬかだ」といって立ち上がると、レッドに仮釈放になったら、“バクストンの牧草地”にある石垣と1本のカシの木を探し、石垣の根元に黒の御影石をみつけたら、その下を掘り起こしてほしいと頼みます。

レッドはアンディの様子がおかしいと、仲間に注視するよう伝えます。アンディはノートンの会計係に戻ったふりをして、帳簿を偽物とすり替えます。

ノートンはスーツをクリーニングへ出し、靴をピカピカに磨いておけと命令し、部屋を出て行きアンディは、磨いた靴を履き本物の帳簿と書類を持って、独房へと戻っていきます。

レッドは日中のアンディの様子が気がかりで、眠れぬ夜を過ごしましたが、翌朝の点呼でアンディが部屋から出てこず、不安が的中したと思いますが、刑務官がアンディの独房を確認すると、その中はもぬけの殻になっています。

所長室で靴を履き替えようとしたノートンが、靴箱を開けると中にはアンディの履き古した靴があります。

ノートンは忽然と消えたアンディに苛立ち、転がっていた石ころを投げつけると、壁に貼ってあったポスターに当り、ぽっかり穴が空きます。

石が貫通したポスターの向こうには、人が一人通り抜けられる穴が通っていました。アンディは夜な夜な“ロックハンマー”で穴を掘っては、ポスターで隠し作業をしていました。

鉱物の発掘に使おうとしたロックハンマーでしたが、壁に自分の名を彫ろうとしたとき、壁はもろく崩れます。アンディはそれを見て穴を掘ることを決め、痕跡を隠すためのレッドにポスターの調達を依頼したのです。

そして、トミーが殺害されたこと、冤罪が晴らせないとわかった“その時”、彼は脱獄を決心しました。

アンディは“ランドール・スティーブンス”名義の口座や資料、不正を隠した帳簿を持ち出し、“ランドール・スティーブンス”になりすましたアンディは、ノートンのスーツを着て、数件の銀行を回り解約をして大金を手に入れます。

そして、ショーシャンク刑務所の不正を暴くため、帳簿をマスコミに送ります。ハドリーは逮捕され、ノートン所長はなぜ不正がバレたのかわからないまま、銃で自殺をします。

アンディが去ってしばらくしてレッド宛てに、1枚の絵ハガキが届きます。差出人もメッセージもありませんが、消印は“ジワタネホ”だったので、アンディからだとわかります。

レッドは40年目の仮釈放の面談を受け、「更正したか?そんな質問をするのは無意味だ。後悔なら罪を犯したその日からしない日はない」と発言し、仮釈放の許可を得ます。

出所したレッドはしばらくブルックスと同じ宿に住み、同じ仕事をしましたが、ふと“バクストンの牧草地”の話しを思い出して、石垣とカシの木を探します。

アンディが言った通り、石垣の根元に黒御影石があり、その下を掘るとお菓子の缶がみつかって、中には手紙と現金がありました。

レッドはブルックスと同じ、恐怖と不安に陥りそうになっていましたが、アンディの「必死に生きるか、必死に死ぬか」の2拓なら必死に生きる方を選ぶと、仮釈放の掟を破り、アンディのいる“ジワタネホ”を目指します。

“記憶のない海”の浜辺で、古いボートを修繕しているアンディがいます。アンディがレッドに気がつくと、満面の笑みで彼を迎え抱擁をします。

映画『ショーシャンクの空に』の感想と評価

(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

エリートとして、社会的地位を確立しながらも、愛する妻に対しては不器用で、上手な愛情表現を示せないアンディが、妻の裏切りにあい、“不運”から殺人の濡れ衣を着せられながらも、自力で自由を手に入れる物語でした。

最悪の事態に見舞われても、小さなチャンスを見逃さず、自分のスキルを最大限に活かしながら、好機が巡ってくるのを忍耐強く待てば、報われる・・・そんな、勇気を与えるような解釈が多くの人に希望を与えました。

但し、疑問が残ったのは、アンディは本当に妻と愛人に発砲しなかったのか?ということです。トミーが証言した通り実際に2人を殺害したのは、エルモという犯罪者だったと思われます。

しかし、6発しか撃てない拳銃で、8発撃ち込まれていたという、プラス2発はアンディが撃ったのではないかとも連想できます。そうであればアンディは、確かに殺害はしていません。

酔って愛人の家に入った時に、抱き合って横たわる2人を見て、亡くなっていると知りながら、アンディは冷静さを失い、怒りに任せて頭部に撃ったと考えられないでしょうか?

アンディは怖ろしくなって、川に拳銃を捨てます。ショックと酔いで記憶があいまいになり、自分は“殺してはいない”と言い聞かせながらも、それでは真犯人は?と考えた時、状況的にはどうにもならなかった、そう考えるのが自然です。

「もう罪は充分に償った」と、アンディの言ったセリフは、亡骸に追い打ちをかけて撃ってしまったことと解釈ができます。

独房の中でそのことを思い出し、壁に自分の名前を刻もうとしてもろく崩れた時、許しを得るチャンスを感じたのではないでしょうか。

単純に脱獄するために掘るのではなく、抜け穴が貫通した時が、自分の背負った罪が許される日と定めていたとしたら、トミーの登場はアンディに希望を与えたでしょう。

しかし、正当に再審しようとしたアンディは、私利私欲でトミーを殺害したノートンこそが、裁かれるべき人間だと、脱獄することを決心させたと思います。

“記憶のない海”とはアンディの心でもあり、自分のことを誰も知らない土地の意味でもあります。彼はそこで全てを忘れ、心穏やかに暮らすことを“希望”しました。

まとめ

『ショーシャンクの空に』は、映画賞レースで多数のノミネートがされたものの、“無冠”に終わりますが、評論家の批評とは裏腹に、鑑賞した者の心を強くつかみ、“人生のバイブル”とも称され、長年にわたり不動の人気を得ている名作です。

解釈は観た人の心にゆだねると監督は話しますが、聖書の内容と酷似したシーンが多いことでも認知されており、“善と悪”とは常に紙一重で、善きにつけ悪しきにつけ、人への報いは自分に返ってくることも示唆した作品でした。

仮釈放の面談で「更正」という言葉がでてきますが、レッドのいう通り、これは役人に与えられた仕事のことで、レッドの心はすでに新しく生き返る方の「更生」を果たし、アンディと精一杯生きる道を選びました。

社会に慣らされた生活から、自分で希望を追い求める生き方が、今は求められています。『ショーシャンクの空』は、同調圧力に負けず、正しい目を養い豊かな生き方をしたいと思わせてくれた作品でした。

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