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『L.A.コールドケース』ネタバレ結末感想とあらすじ解説の評価。人気ラッパーの殺害された未解決事件を追う警官をジョニーデップが演じる

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

1990年代、人気ラッパーの2パックとノートリアス・B.I.G.が殺害された未解決事件を追う刑事と記者を描く

1997年に起きたノトーリアス・B.I.G.の殺人事件を担当したが、解決できず担当を外れた元ロサンゼルス市警察の刑事ラッセル・プール(ジョニー・デップ)。

事件から18年が過ぎた頃、プール刑事を記者・ジャック(フォレスト・ウィテカー)が訪ね、事件の真相を教えてくれと言います。

18年経っても未だ解決しない事件の裏にあるものとは……。

ランドール・サリバンが2002年に発表したノンフィクション小説をもとに、『リンカーン弁護士』(2012)のブラッド・ファーマンが監督を務めました。

パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズをはじめ、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)や『アリス・イン・ワンダーランド』シリーズなどで多彩な役をこなすほか、『MINAMATA―ミナマタ―』(2020)などの社会派にも出演し、多方面で活躍するジョニー・デップが、実在した刑事を演じました。

記者のジャックを演じたのは、『大統領の執事の涙』(2013)、『ブラックパンサー』(2018)などのフォレスト・ウィテカー。

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映画『L.A.コールドケース』の作品情報


(C)2018 Good Films Enterprises, LLC.

【公開】
2022年公開(アメリカ・イギリス合作映画)

【原題】
City of Lies

【監督】
ブラッド・ファーマン

【脚本】
クリスチャン・コントレラス

【原作】
ランドール・サリバン

【キャスト】
ジョニー・デップ、フォレスト・ウィテカー、トビー・ハス、デイトン・キャリー、シェー・ウィガム、ニール・ブラウン・Jr.、シャミア・アンダーソン、マイケル・パレ、ザンダー・バークレイ、ローレンス・メイソン、ルイス・ハーサム、ジャマール・ウーラード、アミン・ジョセフ

【作品概要】
アメリカ史上最も「悪名高い」未解決事件、HIPHOP界の大スター“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”の殺害事件を追う刑事と記者を描くクライムサスペンス。

実在した元刑事ラッセル・プールを演じたのは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジャック・スパロウ役などで知られるジョニー・デップ。記者役には、『ラストキング・オブ・スコットランド』(2006)でウガンダの元大統領アミンを演じたフォレスト・ウィテカー。

監督は『潜入者』(2015)、『リンカーン弁護士』(2012)のブラッド・ファーマンが監督を務めました。

映画『L.A.コールドケース』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Good Films Enterprises, LLC.

90年代、HIPHOP界では、ニューヨークを拠点とするノートリアス・B.I.G.と、ロサンゼルスを拠点とする2パックが活躍していました。しかし、2大ラッパーを巡ってレーベルを巻き込み東西戦争が繰り広げられ、マスコミもかき立てました。

1996年、2パックがラスベガスで射殺される事件が起き、97年にノートリアス・B.I.G.が射殺されました。

ロス市警の刑事ラッセル・プール(ジョニー・デップ)は、ノートリアス・B.I.G.殺害事件の数ヶ月後に起きた、白人警官が黒人警官を射殺するという事件の担当になり、事件現場へと赴きます。

正当防衛で黒人警官を撃ったという白人警官の証言に対し、何か裏があると感じたプールは、独自に捜査を始めます。亡くなった黒人警官の妻がレコード会社「デス・ロウ・レコード」に押しかけ、「夫を殺した」と叫んでいる姿を目撃します。

シュグ・ナイトが立ち上げた「デス・ロウ・レコード」は、ギャングらとも結びつき、悪名高いレーベルでした。「デス・ロウ・レコード」の警備をしていた1人が、こっそりプールのポケットにメモ用紙を忍ばせます。

メモの存在に気づいたプールはそこに書かれている場所に向かいます。そこにやってきた男は、実は自分はFBIで潜入捜査中だと明かします。

まだ下っ端で得られた情報は少ないが、ロス市警の警察官が非番の日に「デス・ロウ・レコード」の警備をしていることをやビギーをやったと話しているのを聞いたと言います。

捜査した情報を上司に報告するも、上司は聞かず、うまく立ち回れと事件を深掘りすることなく調査を終えてしまいます。その後パールは異動し、ノートリアス・B.I.G.殺害事件の担当になります。

異動した先でも、ロス市警と「デス・ロウ・レコード」の関係を疑い、証拠集めに奔走していたパールでしたが仮説を立て報告しますが、上層部は相手にしませんでした。

孤立したパールは担当を外れてしまいます。そして18年の月日が経ちますが、ノートリアス・B.I.G.殺害事件は未だに解決されていません。

新聞社に務めるジャック(フォレスト・ウィテカー)は過去の事件の特集としてノートリアス・B.I.G.殺害事件を取り扱うことになり、パールが住むアパートを訪ねます。ノックしても返事がなく、鍵が開いていたためジャックは部屋の中に足を踏み入れます。

壁中に関係者の相関図とメモが貼り付けられ、机の周りにも事件にまつわる資料がたくさん積み上げられています。事件の担当を外されてもなお、パールは1人で事件の真相を解明しようとし続けていたのです。

突然訪れたジャックにパールは銃を突きつけ、何しにきたと警戒しています。ジャックは、事件について聞きにきたと言いますが、記者に話すことはないと突っぱね、追い払われてしまいます。

しかし、ジャックは諦めずに次の日もパールの家に出向きます。するとパールは来ると思っていた、行動の読みやすい男だとパールに言います。

「ビギーをやった犯人は誰だ」とジャックはパールに訪ねます。するとパールは事件について話し始めます。すかさず録音しようとしたジャックに、ズルはするな頭で考えろ、と言います。

事件について順を追ってパールが話はじめ、犯人として名前が上がった人物について触れるとジャックは早合点し、話が途中であるにも関わらず会社に戻ろうとします。

そんなジャックの様子を見たパールは、フルネームが聞きたいか、とたずね、「スタンリー・カーク・バレルだ」と言います。会社に戻ったジャックは犯人の名前を聞いた、検索すると意気揚々と会社の皆に話します。

パールが言った名を検索して出てきたのは“MCハマー”でした。パールはわざと嘘の名前を教えたのです。そのことに気づいたジャックは事件の続きを聞きに再びパールを訪れます。

目撃情報などから浮かび上がってきた、ノートリアス・B.I.G.が殺害された日に現場で警備をしていた警官ら重要人物は皆警官であるという理由から捜査をすることができず、身内を疑うような発言をするパールはロス市警の中でも孤立し始め、捜査から外されることになった経緯を話します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『L.A.コールドケース』ネタバレ・結末の記載がございます。『L.A.コールドケース』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018 Good Films Enterprises, LLC.

自身も落ち目の記者であるジャックは、ノートリアス・B.I.G.事件により家族も仕事も失いながらも事件に執着し、真相を明らかにしようとするパールに触発されていきます。

上司と飲んでいるロス市警の上層部に、パールはロス市警が事件に関与している可能性が高いこと、捜査が妨害されていることについて問いただします。

すると、上層部はパールの言うことを信じているのか、あれは事件に取り憑かれた哀れな男だと言い、パールが事件に取り憑かれるあまり休職した事実を知らされます。

パールが語らなかった事実を突きつけられたジャックはパールになぜ黙っていたと詰め寄ります。パールはそれは関係のないこと、ジャックとそのことについて話す必要はないと言います。

パールの話を聞いたジャックは捜査の資料を集め、新たな事実はないかもう一度事件を調査し始めます。そしてジャックは以前パールと組んでいた刑事をたずね、パールについて聞きます。実直で有能な捜査、一流だと彼は言います。

パールと事件について調べていくうちに2人の間に絆のようなものが生まれていきます。事件の捜査に集中するあまり家族を失い、野球選手となった息子の試合を遠くで1人観覧するパールを見てジャックは今からでも遅くない、息子とちゃんと話せと言いますが、パールは聞き入れようとしません。

そんななか、パールが担当を外れた後に、捜査チームはパールの仮説をもとに捜査を進めていることがわかる資料を見つけます。

新たな情報をもとにパールは再び自身の仮説が正しいとロス市警に資料を提出し説明します。

しかし、20年近くも前の資料を今更出されても…と話を聞いた警官は取り合おうとしませんでした。その時、突然パールは発作で倒れてしまいそのまま帰らぬ人となりました。

ジャックはノートリアス・B.I.G.殺害事件ではなく、忘れ去られた英雄・ラッセル・プールの追悼の記事を書き、一面に乗ります。そしてロス市警と繋がりのある会社で働けないと辞表を提出したのでした。

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映画『L.A.コールドケース』感想と評価


(C)2018 Good Films Enterprises, LLC.

90年代の伝説的なヒップホップラッパー、2パックとノトーリアス・B.I.G.の殺人事件を追う刑事と記者を描いた映画『L.A.コールドケース』。

本作でジョニー・デップが演じたのは、実直で一般的な普通の人間である刑事ラッセル・プールです。

ジョニー・デップは、テレビドラマシリーズ「21ジャンプ・ストリート」で人気を博し、ティム・バートン監督作の『シザー・ハンズ』(1990)や『エド・ウッド』(1994)をはじめ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなど幅広い役を演じてきました。

クセのあるキャラクターを演じるカメレオン俳優として活躍してきたジョニー・デップですが、アル・パチーノと共演した『フェイク』(1997)では、マフィアに潜入するFBI捜査官を演じ、『パブリック・エネミーズ』(2009)では伝説の銀行強盗ジョン・デリンジャーを演じ、硬派な映画にも出演してきました。

更に、『ブラック・スキャンダル』(2016)では、実在の凶悪犯ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを見事に演じ、インパクトを与えました。

そのようななか、本作で演じたラッセル・プールはオーラのある役ではありませんが、事件に執着するあまり多くを失ってしまった孤独真相解明に全力を尽くす狂信的とも言える姿を見事に演じています。

劇中、プールは、実力で昇進したなんて珍しいと言われる場面があります。その言葉は、裏を返せば不正な方法で昇進することが珍しくないということになります。

そんな汚職が横行していたロス市警に対し、プールはロル市警に入る際、誓いを立てたからこそ身内に不正をするものがいるということをきちんと明らかにしたいという強い信念が言葉の節々から感じ取れます。

身内であるロス市警の裏を暴こうとするプールに対し、うまく立ち回れとアドバイスをする上司がいたり、捜査が妨害されるということが頻発します。

捜査中であれば捜査資料を開示しなくて済むという理由から事件を解決させずに未解決のまま放置しているという姿勢からも頑なにロス市警の関与の事実を明らかにしたくないという社会の闇が浮かび上がってきます。

日本は、国家機関である警察庁の下に都道府県警察が置かれていますが、連邦制度であるアメリカの場合は日本と異なり、連邦警察と地方警察に分かれている上に自治体警察も存在します。

ロサンゼルス市警は自治体警察にあたります。そのため、もしプールの仮説が正しいと明らかになった場合は遺族への違約金などで破産してしまうと劇中で語られる場面もあり、様々な理由からプールの仮説を上層部は受け入れなかったのです。

実際の映像なども使用し、殺害されたノトーリアス・B.I.G.のビギーの母親役は実際のビギーの母親を起用するなど、ドキュメンタリーのように展開されていく本作ですが、フォレスト・ウィテカー演じる記者は架空の人物になっています。

記者など聞き手の存在を登場させ、事件の展望について語っていくという手法は、さまざまな映画において使われてきました。

近年でいえば、『ギャング・オブ・アメリカ』(2022)がその手法でストーリーが展開されていました。

本作は、真相を明らかにすることではなく、真相を追う刑事ラッセル・プールをメインに描いています。

聞き手として記者を登場させることで「悪名高い」未解決事件の背後にある、アメリカ社会の闇、今なお問題視されているアフリ系アメリカ人を取り巻く貧困、犯罪などの問題を浮き彫りにしています。

最初に、プールは部屋に侵入したジャックに対し、白人が黒人を撃つ、どちらが悪いかという謎を問いかけます。答えがわからず聞き返したジャックにパールは「謎が謎を呼ぶ」と返します。

そのやりとりは、まさに今もなお未解決事件が多いというアフリ系アメリカ人を取り巻く問題を象徴していると言えるでしょう。

まとめ


(C)2018 Good Films Enterprises, LLC.

HIPHOP界の大スター“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”が殺害された未解決事件をもとに、今なお蔓延る問題を浮き彫りにした映画『L.A.コールドケース』。

“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”は、ヒップホップ界を切り拓き、今も楽曲が人気であるヒップホップ界のレジェンドです。

ドキュメンタリー映画『ギー&トゥパック』(2002)では、“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”の2人の半生や事件の真相を追ったドキュメンタリーとなっています。

“2パック”の伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』(2017)やノトーリアス・B.I.G.の伝記映画『ノトーリアス・B.I.G.』(2009)なども制作されており、若くして亡くなったHIPHOP界の大スターは今もなお伝説的な存在であり、彼らを取り扱った映像作品は多々あります。

しかし、この殺害事件を、真相を追う側にスポットをあてて描いたのは本作がはじめてでした。

HIPHOP界の大スター“2パック”と“ノトーリアス・B.I.G.”が殺害された事件を忘れはいけないと改めて気付かされると同時に、真相を追い続け闘った刑事ラッセル・パークの存在、彼の志を忘れてはいけないということも気づかせてくれるのです。

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