『クリード チャンプを継ぐ男』のライアン・クーグラー監督が放つマーベル待望の最新作。
3月1日(木)より公開中の『ブラックパンサー』をご紹介します。
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1.『ブラックパンサー』の作品情報
(C)Marvel Studios 2017
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
Black Panther
【脚本・監督・】
ライアン・クーグラー
【キャスト】
チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキス
【作品概要】
マーベル初の黒人ヒーロー単独作が遂に日本上陸!
監督は『フルートベール駅で』(2014)と『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)が世界的に高い評価を受けるライアン・クーグラー。
『42 ~世界を変えた男~』(2013)や『ジェームス・ブラウン ~最高の魂を持つ男~』(2014)のチャドウィック・ボーズマンが主演を務めます。
2018年4月27日(金)より公開の超大作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に繋がる話でもあるため、アメコミファンは決して見逃せない作品です。
2.『ブラックパンサー』のあらすじとネタバレ
(C)Marvel Studios 2017
何世紀も前、ヴィブラニウムの隕石が地球のアフリカの地に墜落。
ハート形のハーブを摂取して超能力を得た人物が初代のブラックパンサーとなり、部族を統一してワカンダ王国を立国。
ワカンダはヴィブラニウムの恩恵を得て科学技術を急速に発展させ、世界一の文明を持つハイテク国家に成長しました。
しかし、彼らは他国から自分たちの国を切り離し、表向きはただの農業国として振る舞ってきました。
<1992年、オークランド>
極秘任務中のエヌジョブ王子の元を、現国王であり実の兄であるティ・チャカが訪れます。
エヌジョブには、武器商人のユリシーズ・クロウをワカンダに入国させてヴィブラニウムを流失させた疑惑がかかっていました。
追い詰められたエヌジョブは、監視役としてティ・チャカの命で彼についていたズリを人質にとりますが、それを見たティ・チャカはエヌジョブの命を奪いました。
ティ・チャカが実の弟に手を下した事実は二人だけの秘密として封印され、エヌジョブとアメリカ人女性から生まれた息子エリックはオークランドに置き去りにされます。
時は現在。ティ・チャカが死んだ後、彼の息子であるティ・チャラはワカンダに王となるために戻りました。
王の親衛隊ドーラ・ミラージュのリーダーである最強の戦士オコエ、ティ・チャラの元恋人でありスパイとして世界中を飛び回るナキア、ティ・チャラの母ラモンダと天才科学者の妹シュリはティ・チャラの戴冠式に出席。
戴冠式では伝統的な儀式として王に挑戦する権利が各部族に認められていますが、ほとんどの部族がその挑戦権を放棄します。
しかし、ジャバリ族のリーダーであるエムバクだけはティ・チャラへの挑戦を希望しました。
平等にするためティ・チャラはハーブによるパワーを失い、エムバクとの決闘に臨みます。
決闘はどちらかが死ぬか、降参するまで続きます。
苦戦しながらもティ・チャラはエムバクの挑戦を退け、真の王としてみんなの信頼を勝ち取りました。
クロウはキルモンガーと呼ばれる暗殺者の男と手を組み、博物館からヴィブラニウム製の斧を盗み出します。
(C)Marvel Studios 2017
そのクロウが韓国の釜山で売買を行うという情報を得たティ・チャラは、オコエとナキアを連れて現場に向かいます。
ティ・チャラはそこでCIAのエージェントであるエヴェレット・ロスに遭遇。ロスこそがクロウの取引相手でした。
クロウに正体を勘付かれたため地下カジノはあっという間に戦場に、クロウは車に乗って逃げ出します。
ティ・チャラ、ナキア、オコエは彼を遂に追い詰めましたが、身柄を拘束したのはCIAのロスでした。
拘留室でクロウに尋問を行なっている最中に、キルモンガーが壁面を爆破し、クロウを逃がします。
キルモンガーの銃撃からナキアを庇って重症を負ったロス。彼が命を落とすのは時間の問題でした。
ティ・チャラは王として、ロスの命を救うことを決断し、最先端医療を受けさせるために彼をワカンダへ連れて帰ります。
シュリの技術によってロスはすぐに回復しました。
ワカンダの王族の指輪をキルモンガーが身につけていたことに疑問を持ったティ・チャラがズリを問い詰めると、彼はティ・チャカとエムジョブの過去を話し始めます。
あの事件の後に残されたエムジョブの子どもがキルモンガー、つまりティ・チャラのいとこでした。
(C)Marvel Studios 2017
キルモンガーはクロウの命を奪うと、それを手土産にワカンダを訪れます。ワカンダ人である印を持った彼は入国を認められました。
そして、自分には王族の血が流れていることを明かして王へ挑戦する権利の正当性を訴えます。
その訴えが認められ、再び決闘の儀式が執り行われました。
キルモンガーはズリを殺し、さらに、ティ・チャラを負かすと彼を滝の底へと投げ落としました。
ハート形のハーブを摂取してパワーを得たキルモンガーは、ハーブの畑を焼き払うように命じます。
ナキアはその前に忍び込み、最後の一つを摘み取っていました。
キルモンガーは亡き父が計画していた通り、ワカンダの技術力で作り上げた強力な武器を世界中の抑圧された人々に配り、力によって世界の構造を変えようと考えています。
国境を守るボーダー族のリーダーであるウカビはキルモンガーの考えを支持し、王の親衛隊であるオコエもまた不本意ながら彼のために忠誠を誓うしかありませんでした。
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3.『ブラックパンサー』の感想と評価
(C)Marvel Studios 2017
現在世界中、特にアメリカで特大ヒットを記録している『ブラックパンサー』。
本作はマーベル映画として初の黒人ヒーロー単独作であり、キャストのほとんどがアフリカ系の人々で構成されています。
この成功を見れば、アメリカはどれだけ長い間こういう作品の出現を待ち望んできたのかがよくわかります。
どちらも本当に面白く素晴らしい作品ですが決して大作とは言えない『ドリーム』や『ゲット・アウト』が昨年大ヒットしたアメリカ国内でその下地はすでにできていました。
MCUにはその成功や方向性を決定づけてきた大切な作品がいくつか存在しますが、この作品は『アイアンマン』や『アベンジャーズ』に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』といった重要作に早くも肩を並べています。
本作は未見性に溢れた娯楽作でありながら、今の時代に語りかける社会的なメッセージも併せ持っています。
これほどいろんな側面からその面白さを語ることのできるスーパーヒーロー映画は観たことがありません。
(C)Marvel Studios 2017
アフリカの民族衣装や伝統に超先進的なSF要素が混ざり、ビジュアル面だけでも新鮮さに満ち満ちているため全く退屈しません。
さらにそこにヒップホップをメインとしたクールな音楽と、スタイリッシュさを強調したアクションまで入ってきます。
そして、トニー・スターク/アイアンマンも顔負けの天才科学者シュリによる「007」シリーズのQを思わせるガジェットの数々が融合。このあたりはライアン・クーグラー監督が実際に「007」シリーズを意識して制作したそうです。
アメリカ国内の音楽業界は今ブラックミュージックが絶大な支持を集めています。アメリカ中の若者が憧れるラッパーのケンドリック・ラマーがこの映画からインスパイアされて「Black Panther」というサウンドトラックを発表したのもこのブームの広がりに一役を買っています。
(C)Marvel Studios 2017
魅力の塊みたいな本作の中で一際その活躍を印象づけたのが、ヴィランのキルモンガーを演じたマイケル・B・ジョーダンでした。
クーグラー監督の盟友である彼は、本作においてもその存在感と格好良さで圧倒的な魅力を放っており、役どころのおいしさも相まって正直ブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンを上回っていました。
MCU内のヴィランとしても1、2を争う程に人気が出るのではないでしょうか。
それと合わせてルピタ・ニョンゴ演じるナキア、ダナイ・グリラ演じるオコエ、レティーシャ・ライト演じるシュリといった女性キャラクターの活躍が目を光ります。
良いとこなしに見えたティ・チャラ/ブラックパンサーにも最後には演説という大切な仕事が残されていました。
賢者は橋を架け、愚者は壁を造る。
分断が叫ばれる今の時代こそ、国や人種という概念を飛び越えて世界の人々が支え合うべきである。
ただただ正しすぎるメッセージが今世界中にこの映画を通して届けられています。その意義の大きさはチャップリンの不朽の名作『独裁者』に近いものを感じます。
おそらくこの映画の登場はアメリカ映画史に永遠に刻まれるでしょう。
それくらい時代を反映した作品であり、この作品を境にして前の時代と後の時代が語られる程重要な一作です。
まとめ
(C)Marvel Studios 2017
ライアン・クーグラー監督はいずれ黒人として初めてアカデミー賞の監督賞を取る器であると確信しました。
その際はおそらく盟友のマイケル・B・ジョーダンもオスカーを獲得するでしょう。
たった3本の映画でクーグラー監督は圧倒的な才能を見せつけました。
長編デビュー作の『フルートベール駅で』は白人に射殺された22歳の黒人青年はオスカー・グラントという名前を持つ一人のれっきとした人間であることを映し出してみせました。
2作目の『クリード チャンプを継ぐ男』は伝説的なボクサーである父の影に覆われてきたアドニスが、遂に自分の名前としてクリードの姓を手に入れる物語を熱く語り尽くしました。
そして3作目の本作『ブラックパンサー』は鏡像関係となった存在と対峙することで王として成長し、世界の行く末を考えて自らがブラックパンサーを名乗る意味を問い直した希望の物語でした。
次回は再びマイケル・B・ジョーダンと手を組み、アメリカ最大のカンニング事件を題材にした『Wrong Answer(原題)』を撮影予定。
手掛けたそのいずれもが傑作のクーグラー監督は今最も注目するべき映画人の一人です。