Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2020/12/10
Update

サイレントトーキョーのラストどんでん返し解説!伏線は須永役の中村倫也とサンドウィッチ⁈

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『サイレント・トーキョー』は2020年12月4日(金)より公開。

秦建日子の著作『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』が、佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らの豪華キャストによって『サイレント・トーキョー』として映画化しました。

映画『サイレント・トーキョー』は、2020年12月4日(金)よりロードショーされています。

渋谷を中心とした東京都心で起きた爆発テロ事件と、それに関わる人々を描く、緊迫感あふれるサスペンス作品となりました。

多くの方が気になるのが、爆弾テロの真犯人はだれかという点でしょう。

本記事では、爆弾事件に深く関わっている、中村倫也が演じた須永基樹について、原作と映画の描写を比較しながらネタバレありで解説していきます。

これを読めば、ラストの怒涛の展開についていけるはず!?

映画『サイレント・トーキョー』の作品情報

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

【日本公開】
2020年(日本映画)

【原作】
秦建日子『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出書房新社)

【監督】
波多野貴文

【脚本】
山浦雅大

【キャスト】
佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼、毎熊克哉、加弥乃、白石聖、庄野崎謙、金井勇太、大場泰正、野間口徹、財前直見、鶴見辰吾

【作品概要】
「アンフェア」シリーズなど手がけた秦建日子がジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲『Happy Xmas(War Is Over)』にインスパイアされて執筆した小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』が原作。

佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らをキャストに迎え、「SP」シリーズの波多野貴文監督が映像化しました。


映画『サイレント・トーキョー』のあらすじ

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

クリスマスの数日前。会社員の印南綾乃は、同僚で友人の真奈美とともに、東京タワーの見えるレストランで合コンに参加していました。綾乃が気になる相手は、大ヒットアプリの開発者・須永基樹。

須永は感情の起伏が少なく、乗り気ではなさそう。ですが後日、綾乃は須永と二人きりで彼の家で会うことに。

マイ焼き鳥器を買ったという須永は、黙々と焼き鳥を焼きます。会話のネタを探す綾乃は、須永が表紙を飾った雑誌を話題にあげ「ご両親が喜んだでしょう」と言いました。

須永の返答は相変わらずそっけなく、綾乃はさらに家族のことを質問すると、須永は怒って気まずい空気になってしまいました。

12月24日、午前。中年女性・ヤマグチアイコは、恵比寿のショッピングモールで、夫へのクリスマスプレゼントと、夫の好きなサンドイッチを買いました。そして、ショッピングモールのベンチに腰をかけます。

その様子を謎の男(朝比奈仁)が見つめています。

午前11時すぎ、テレビの情報番組で契約社員として働いている来栖公太は、先輩ADの高沢とともに恵比寿のショッピングモールへ向かいます。

番組宛に「爆弾を仕掛けた」という電話があったからです。電話で言われた場所へ行くと、ヤマグチアイコが座っており、ベンチに腰掛けるよう勧めてきました。

高沢が座った途端、アイコは立ち上がります。ベンチには爆弾が仕掛けられていて、30キロ以上の重さでスイッチが入り、30キロを下回ると爆発するそうです。

犯人に命令されているという彼女は、公太の手首に、爆弾が仕掛けられた腕時計を回します。アイコの腕にも同じ腕時計が巻かれていました。命令を拒絶すると、遠隔操作で腕時計を爆破すると犯人に脅されたと言うんです。

アイコは高沢に、カメラを回し続けるよう伝え、公太を連れ、ショッピングモールの警備室へ向かいます。

警備室についたふたり。爆発が起きるから避難指示アナウンスを流すよう頼んでも、警備員は信じてくれません。

直後、高沢の座ったベンチではなく、近くのゴミ箱が爆発しました。慌てて警備員は館内アナウンスで避難を促しますが、居合わせた人々はパニックを起こしています。

爆弾処理班が到着し、ベンチの爆弾を冷却処理しようとした瞬間、大きな爆発音が鳴り響きました。

アイコと公太は現場を離れ、住宅街のマンションに入ります。リビングのテレビには、犯人からと思わしき手紙が貼り付けられていました。

恵比寿での爆発は音だけの空砲でしたが、警視庁渋谷署には、爆発事件の対策本部が設置されました。若手警官の泉大輝は、先輩の警部補・世田と組んで、捜査本部に参加することになりました。

世田は「先入観が捜査の邪魔をする」からと配られた資料に目を通しません。会議が始まろうとした時、犯人からの犯行声明が出ます。

そこに映っていたのは来栖公太。公太が、犯人の声明文を代読していました。

「日本の首相とテレビの生放送で一対一で対話させよ、要求が受け入れられない場合は今日18時00分に渋谷のハチ公前を爆破する」。

最後には「これは、戦争だ」とメッセージが。

声明文を読み上げ、録画し、ネットにアップするという一連の指示を済ませた公太とアイコ。

公太は、今はテレビ局の契約社員だけれど、正社員になって、ジャーナリストになる夢を追いたかったと、自分の今後を思って涙を流します。

アイコは公太に「大丈夫よ」と声をかけ、ハグをして別れました。ふたりにはそれぞれ、別の指示が出されていたからです。

犯行声明が出ても、磯山首相は「テロには屈しない」と、犯人との対話を拒否。

同じ頃、須永の逆鱗に触れてしまったことを思い悩んでいた綾乃は、真奈美に相談しました。真奈美は、渋谷で人気のレストランの予約が取れたら、それを口実にデートに誘ってみるようけしかけます。

爆破騒ぎのことでレストランはキャンセルが出て、空きがありました。綾乃は須永に電話して、今夜の予定を聞きますが、横浜で仕事があるから行けないと断られてしまいました。

そんな須永は、恵比寿からほど近いオフィス兼自宅へ戻る途中で、聞き込み捜査をしている世田と泉に声をかけられます。

あまりに冷静な須永を、世田は怪しみます。

世田たちから解放された須永は自宅に入り、セットしていた留守電を解除。そこに録音された声を聞き、須永の顔色が変わりました。

その後彼は、都内のビジネスホテルのカフェで、親戚の結婚式のために上京してきた母と、その再婚相手である中年男性と会います。

須永は、これから東京観光をするというふたりに、渋谷へは近づかないよう言い、カフェを後にしました。

須永基樹のプロフィール

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

映画はやや駆け足感があり、それぞれの経歴や関係性がわかりにくいと感じられた方も多かったんじゃないでしょうか。

特に、須永については、なぜ朝比奈を追い、彼の足取りをつかめたのか。そして、意味深なサンドウィッチの存在はなんだったのか、モヤモヤしてしまうポイントがいくつもありました。

まずは、映画版の須永のプロフィールを整理していくことにします。

須永基樹(すながもとき)はIT企業家で、有名なアプリを開発したことで一躍時の人となり、雑誌『AERA』の表紙を飾ったことがあります。

年齢は明かされていませんが、原作では30歳に設定されています。演じた中村倫也の年齢が2020年現在33歳ですから、おそらく30代前半と見て間違い無いでしょう。

彼の父は、自衛隊で働いていましたが、ある日突然姿を消しました。

以来、母(財前直見)は女手ひとつで須永を育て上げました。ずっと苦労してきた母ですが、再婚が決まり、やっと自分の人生を歩み始めようとしています。

父のことで苦しんできた母を見てきたからか「愛」という感情には懐疑的なようで、自分に好意を向けている綾乃(加弥乃)に対してもつれない態度。

ですが、その中には、家族への深い愛情が隠れていたんです。

事件の犯人は須永?

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

須永は、物語の冒頭から、爆破現場となる恵比寿に訪れています。探偵(野間口徹)に何かの調査を依頼しており、調査結果も受け取っていました。

渋谷の爆破事件では、殺傷圏内の半径50メートル以内には入らないようにしながら、爆破の様子を撮影するなど、怪しい行動が続く須永。

警察官の世田(西島秀俊)や、綾乃の友人・真奈美(広瀬アリス)は、須永こそ犯人だと思って行動していきます。

しかし、須永は犯人では無く、ある人物を追っていたんです。その人物とは、朝比奈仁(佐藤浩市)でした。

須永と朝比奈の関係

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

須永がなぜ朝比奈を追っていたのかというと「自分と母を捨てた父だから」。朝比奈仁こそ、須永の実の父親だったんです。

自衛官として働いていた父・朝比奈は、26年前、カンボジアPKOに参加。帰国後、派遣時のトラウマから、家の中で暴れ出すようになります。

暴れる父と、宥める母。それを幼い須永は見ていました。そして朝比奈は突然姿を消します。

それから二十数年経ち、母の再婚が決まりました。

須永は探偵を雇って、朝比奈の現在を調べることにします。もしいきなり帰ってきて、母の幸せを壊されたら困ると考えたからでしょう。

須永も自分で朝比奈の居場所を探します。手がかりとなるのは「サンドウィッチ」でした。

キーアイテムはサンドウィッチ

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

「サンドウィッチ」に関しては、映画では本当に説明が少ないため、原作の設定から補完していきます。

原作では朝比奈は自衛官ではなく、腕の立つ料理人という設定でした。須永の幼少時、おやつとして作ってくれた「ドーナツ」の味が、父との数少ない思い出。大人になった須永は、あらゆる飲食店のドーナツを食べ、父の居場所を探そうと努めます。

映画版では朝比奈の設定がかなり変わってしまいましたが、冒頭で、ヤマグチアイコ(石田ゆり子)が「夫の好きなサンドウィッチ」をカフェで買い、入れ違いで朝比奈が訪れ、須永も同じ店でサンドウィッチを食べていました。

アイコの夫は朝比奈の元上司でしたから、任務中に朝比奈がサンドウィッチを振る舞っていたと考えられます。朝比奈はカフェではもう働いていないようですが、彼が考案したサンドウィッチのレシピは今も受け継がれているんでしょう。

そして、後半で須永が訪れた古い佇まいの喫茶店。そこは、朝比奈が現在働いている場所。喫茶店のサンドウィッチを食べた須永は、父がここにいたことを確信したんです。

まとめ

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

映画はテンポが良い分、展開が駆け足だったため、真犯人が明かされる前後の関係性がわかりづらかったと感じました。須永と朝比奈の関係性がわかると、ラストのどんでん返しに納得がいくはず。

原作ですと、須永は朝比奈が犯人だと勘違いしたままなんですが、映画版では、来栖公太(井之脇海)から真相を聞き、父が犯人ではないと知りました。彼は、二度と会えない父を思いながら、自分の「愛」を見つけるために一歩踏み出します。

中村倫也が、複雑な過去から、感情を殺すようになってしまった須永を好演

無表情で淡々としたしゃべり口の中に、ふと孤独が漂う、魅力的なキャラクターとして組み立てていました。彼が感情を爆発させる場面は必見です。
 
本作は、手に汗握る展開はもちろんのこと、多様な登場人物たちにも引き込まれまれる群像劇となっています。

映画『サイレント・トーキョー』は 2020年12月4日(金)より全国ロードショーです。






関連記事

サスペンス映画

ギャスパーノエ映画『クライマックスClimax』あらすじネタバレと感想。狂気に誘うロングテイクのダンスシーンは圧巻

日本公開は2019年11月1日! 今回ご紹介するのは稀代の鬼才ギャスパー・ノエ監督の待望の映画『クライマックス(原題:Climax)』。 予告編ですでにただ事ではない香りがプンプン漂う『クライマックス …

サスペンス映画

『よこがお』映画結末までのネタバレ解説。加害者と被害者の二面性【深田晃司×筒井真理子】

彼女の“よこがお”に何を見るか? 唐突に人生を壊された女のささやかな復讐を通し、この世の不条理さ、それでも生きていく人間の強さを描く一作。 2019年7月26日より公開の『よこがお』は世界が認めた深田 …

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』キャストとあらすじ。4番と13人目詳細も

ベストセラー作家・冲方丁(うぶかた・とう)のミステリー小説を原作とした実写映画『十二人の死にたい子どもたち』の公開日が、2019年1月25日に決定しました。 『イニシエーション・ラブ』『トリック』など …

サスペンス映画

『怪物の木こり』映画原作ネタバレあらすじと結末の感想評価。‟サイコパス対殺人鬼の対決”を三池崇史監督がスクリーンに描く

第17回「このミス」大賞受賞作の『怪物の木こり』が映画化決定! 2019年に「このミステリーがすごい! 」大賞を受賞した倉井眉介の『怪物の木こり』。 サイコパスの主人公が猟奇的な殺人鬼に狙われるサスペ …

サスペンス映画

韓国映画『記憶の夜』ネタバレ結末感想と最後まであらすじ解説。怖いサスペンスに描かれた“家族にまつわる2つの行動”

チャン・ハンジュン監督による韓国サイコスリラー映画『記憶の夜』。 1997年のある春の日、一家4人は新しい家に引っ越してきます。引っ越し先の家に見覚えのある違和感を抱く弟。新しい家で温かい家族生活が始 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学