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Entry 2020/10/30
Update

『サイレントトーキョー』映画原作ネタバレ感想と犯人の正体。結末ラストの真相を解説

  • Writer :
  • 石井夏子

映画『サイレント・トーキョー』は 2020年12月4日(金)より公開。

「アンフェア」シリーズなど手がけた秦建日子が執筆した小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』。

本著を映画化した『サイレント・トーキョー』が、2020年12月4日(金)より公開されます。佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊らの豪華キャスト陣を、「SP」シリーズの波多野貴文監督がまとめあげます。
 
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲『Happy Xmas(War Is Over)」にインスパイアされて書いたという小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』を、ネタバレあらすじありでご紹介します。

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小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』の主な登場人物

朝比奈仁
訳ありな料理人。どんな料理も作ることができる器用な人物。
映画版では佐藤浩市が演じます。

ヤマグチアイコ
40代の小柄な主婦。夫へのクリスマスプレゼントを買いに恵比寿に出てきたところ、事件が起こります。
映画版のキャストは石田ゆり子。

来栖公太
大学生。テレビの情報番組で、雑用係のアルバイトをしています。
映画版は井之脇海が扮しました。

須永基樹
30歳にしてアプリ会社の社長を務める天才プログラマー。雑誌の表紙を飾ったことも。人間関係の構築は苦手。
映画では中村倫也が演じています。

世田志乃夫
渋谷書の交番勤務の警部補。経験から、事件への勘が働きます。
映画のキャストは西島秀俊です。

泉大輝
世田の相棒の巡査。警官になって4年目。
勝地涼が映画で泉役を努めます。

印南綾乃
食品会社の総務部で働く30歳の女性。3ヶ月前に恋人と別れたばかり。真奈美に連れ出された合コンで須永に出会います。
映画版では加弥乃が演じています。

高梨真奈美
綾乃の同期で営業部の華やかな女性。20歳年上の既婚者と不倫中。
映画のキャストは広瀬アリスです。

小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』のあらすじとネタバレ

小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』書影

公太とアイコ

2016年12月22日。

テレビの情報番組でアルバイトをしている来栖公太は、先輩ADの高沢とともに恵比寿ガーデンプレイスへ向かいます。

番組宛に、「恵比寿ガーデンプレイスに爆弾を仕掛けた」という電話があったからです。

電話で言われたベンチへ行くと、40歳前後の中年女性・ヤマグチアイコが座っており、ベンチに腰掛けるよう勧めてきました。

高沢が座った途端、アイコは立ち上がります。ベンチには爆弾が仕掛けられていて、30キロ以上の重さでスイッチが入り、30キロを下回ると爆発するそうです。

犯人に命令されているという彼女は、公太の手首に、爆弾が仕掛けられた腕時計を回します。アイコの腕にも同じ腕時計が巻かれていました。

そして、犯人の言葉を伝えます。「きちんとカメラを回すこと。テレビ局に電話して、その映像を情報番組で流すこと」。

スマホが鳴り、電話に出るアイコ。電話を切ると、彼女は公太を連れ、恵比寿三越の警備室へ向かいます。

命令を拒絶すると、遠隔操作で腕時計を爆破すると犯人に脅されたと言うんです。ベンチから動けない高沢にカメラを回すよう伝え、公太はアイコに同行します。

警備室についたふたり。15時30分になるとベンチが爆発するから避難指示アナウンスを流すよう頼んでも、警備員は信じてくれません。

15時30分。

高沢の座ったベンチではなく、近くのゴミ箱が爆発しました。慌てて警備員は館内アナウンスで避難を促しますが、居合わせた人々はパニックを起こしています。

アイコと公太は現場を離れ、歩き出しました。と、背後からさらに大きな爆発音が。高沢の身を案じ、恐怖で震えながらも、腕時計をつけられた公太はアイコと進むしかありませんでした。

五反田まで歩いたふたりは、住宅街のマンションの703号室に入ります。リビングのテレビには、犯人からと思わしき手紙が貼り付けられていました。

そこにはこう書かれていました。

・声明文を男が読め
・女はそれをビデオカメラで録画しろ
・録画したデータは情報番組にメールで送り、YouTubeにもアップロードすること
・終わったらこの紙をキッチンで燃やすこと
・今すぐに!

ふたりは渋々従います。声明文には、日本の首相とテレビの生放送で一対一で対話させよ、要求が受け入れられない場合は明日18時30分に渋谷のハチ公前で爆弾を爆発させるとあります。

最後には、「これは、戦争だ」とメッセージが。

一連の指示を済ませた公太とアイコは、安心感からかお腹が空いていたことに気づきます。冷蔵庫にあったケーキを食べながら、ふたりは互いの名前を名乗り、他愛もない会話をしました。

すると、アイコのスマホが鳴ります。犯人からの指示は、「クローゼットをあけろ」でした。開けると、そこにはプラスチック爆弾の入ったボストンバッグが。

公太は渋谷へ向かい、アイコはプラスチック爆弾とともに待機するよう指示が出ます。ふたりは事件が終わったらラーメンを食べに行く約束をし、ハグをして別れました。

世田と泉

12月22日17時。警視庁渋谷署に、爆発事件の対策本部が設置されました。

少年係の泉大輝は、警察官になって4年目。先輩の警部補・世田と組んで、捜査本部に参加することになりました。

世田は配られた資料を、「先入観が捜査の邪魔をする」からと目を通しません。

会議が始まろうとした時、犯人からの犯行声明が出て、明日の18時30分に渋谷ハチ公前が爆破されるとの情報が入ってきます。

騒然とする捜査本部でしたが、警視総監鈴木が一喝し、会議は開始。

まず、恵比寿ガーデンプレイスの警備室に警告しにきた、来栖公太の顔写真と、一緒にいた中年女性(アイコ)の似顔絵が配られ、犯人と接触している可能性が高いため、このふたりを早急に確保するよう指示が出ました。

会議はすぐに終了。世田たちの聞き込みの担当地域は、恵比寿ガーデンプレイス近くの高層マンション。

部屋を出ようとした世田に、警視総監の鈴木が声をかけました。鈴木が去った後、泉は世田と鈴木の関係を聞いてきます。

「別れた女房の父親だ」と、世田は正直に答えました。

綾乃と須永

11月末。印南綾乃は、友人の真奈美に誘われ、IT関係の男性たちと合コンしていました。

乗り気ではなかったため、食べて飲んだら適当に帰ろうと考えていた綾乃。合コン開始から1時間経った頃、アプリの会社の社長を務めている須永基樹が遅刻してやってきました。

綾乃と同じ30歳で、各界の著名人しか表紙を飾れないという週刊誌の表紙の顔になり、個人資産も10億円を超えるという噂。

須永はマイペースに数学的な話を進めたあと、メールの着信を見て席を立ち、そのまま戻ってきませんでした。

12月21日の夜、須永から綾乃に「今から焼き鳥食べない?」とLINEがきます。合コンのグループLINEが作られていたため、須永は彼女の連絡先を知っていたんです。

突然の誘いに驚いたものの、綾乃は乗ることにしました。向かった先は店ではなく、須永の自宅。

マイ焼き鳥器を買ったという須永は、美味しい店の再現をしたかったと語ります。

ふたりの会話はなかなか続かず、その度に会話のネタを探す綾乃は、須永が表紙を飾った雑誌を話題にあげ、「ご両親が喜んだでしょう」と聞きました。

須永の返答は相変わらずそっけなく、綾乃はさらに彼に家族のことを質問しますが、父親の話題になった途端、須永は静かに怒りを見せ、「また連絡する」と言い、綾乃を帰らせました。

翌日の12月22日。勤め先の社員食堂で昼食を取っていた綾乃と真奈美。綾乃は昨夜の出来事を打ち明けます。

自分から連絡してみたらと真奈美からアドバイスされるものの、綾乃はそんな気にはなれません。

17時ごろ、恵比寿で爆発事故があったことを、外出から戻ってきた上司が興奮気味に伝えました。

その直後、綾乃のスマホに須永からLINEが。「また、ご飯食べましょう」。

どう返事をしたら良いかわからず、返信をしないまま終業時間を迎えます。それを知った真奈美は、渋谷で人気のイタリアンレストランのクーポン券を綾乃にプレゼント。

家族ある男性と不倫している真奈美は、クリスマスシーズンは家族サービスのため、彼とは会えないんです。

真奈美はレストランに電話をかけ、明日の19時から席を予約します。爆発騒ぎでキャンセルが出たそう。

そこへ上司が割って入り、明日は18時30分にハチ公前が爆破されると犯行予告のことを教えますが、真奈美は取り合いません。

真奈美と職場を出た綾乃は、須永に電話をかけ、明日の食事に誘いますが、東京駅近くで接待があるからと断られてしまいます。

綾乃と真奈美は、ふたりでレストランに行くことにしました。

一方、須永は、恵比寿の住宅街にある喫茶店にて、探偵のような男性と会っていました。探偵から手渡された情報は、彼が期待していた内容ではなかったようです。

探偵と別れ、恵比寿ガーデンプレイスのすぐ脇にあるオフィスに戻る須永。そこでは、世田と泉という警察官が聞き込みをしており、須永の名前と部屋番号を質問してきました。

彼らの問いに答えていると、綾乃から電話が。明日の夕飯を一緒に食べないかと言う彼女に、東京駅近くで接待があるからと断ります。

電話を切った後も、エレベーターの中で世田たちに聞き込みをされる須永。一通り話を聞いた世田たちは、須永が14階で降りた後、再びエレベーターで下へ向かいました。

須永はオフィスのある1402号室のドアを開けます。今日は社員は在宅勤務のためオフィスには誰もいません。須永はパソコンに入っていた音声データを再生します。

爆発事件直後のガーデンプレイスを録音したもので、そこには不明瞭な男の声が。

「これはあいつだ」と、須永は確信。そこへ、インターフォンが鳴ります。モニターから玄関の外の様子を見ると、警察官の世田と泉が立っていました。

朝比奈仁

六本木、夜。

朝比奈仁は、ビストロ「KIRAKU」で調理の仕事をしていました。ホールの人手が足らず、レジを頼まれた仁。

レジの前には屈強な西洋人の男性が立っており、仁をじっと見つめています。

「それで隠しているつもりか?俺にはすぐにわかった」と男はニヤリと笑い、店のカードに電話番号を書き、仁のエプロンに突っ込みました。

「店が終わったら電話をくれ。くれなかったらまた店に来るが、それは困るだろう?」

仁は翌日、店を辞め、知り合いの誰もいない町へ引っ越しました。調理の腕に自信があった彼は、隠れ家的な洋食屋の調理の仕事につきます。

値段が手頃で、仁の作るご飯が美味しいため、店は大繁盛。その日も、お昼時は主婦層で満席になっていました。

奥のテーブル席に、大きな体躯をした4人の男性客がいることに気づいた仁。そのうちのひとりは、例の西洋人でした。

仁は小声で彼に抗議しますが、「俺の頼みを聞いてくれないか?聞いてくれたら店に押しかけたりはしない」と持ちかけます。

時は流れ、仁はまた仕事を探していました。ある店の前に、バイト募集の紙が貼られているのを見た彼は、その店に入ります。

ダイビングショップ兼カフェのその店の店主は、履歴書が無いと言う仁のことを即採用。仁はその店で働き始めました。

木造の古いアパートに帰ると、ドアの下にメッセージカードが挟まっています。

カードの表には「with love」、中を開くと「marry me」と書かれていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』ネタバレ・結末の記載がございます。『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』をまだお読みになっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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12月23日。渋谷爆発テロの当日。

爆発物処理班が渋谷を捜査していますが、いまだ爆発物は見つかっていません。

11時。須永は、日本橋のビジネスホテルのカフェで、親戚の結婚式のため茨城から上京してきた母と、その再婚相手である義理の父と会っていました。

須永は、事件を知らないふたりにさりげなく、渋谷へは近づかないよう言い、観光スポットとしてスカイツリーを勧め、カフェを後にしました。

18時すぎ。綾乃と真奈美は予定通りディナーのため渋谷で待ち合わせ。そこへ、今日の約束を断ったはずの須永の姿が。

真奈美は好奇心から、彼の後を付けようと綾乃に提案し、追跡することにしました。

世田と泉は渋谷の交差点の様子を見張っています。双眼鏡を覗いていた世田は、須永の姿を見つけました。

爆発物処理班の山根は、朝から爆弾を探し続けています。見つからないまま、爆発まであと3分と迫ってきました。

その時彼は、違和感を抱きます。ハチ公が首輪をしていたんです。部下が調べると、やはりハチ公は首輪をしておらず、それこそが爆弾だと気づきます。

爆発まであと1分。山根は退避命令を出し、野次馬たちにもハチ公から離れるよう声をかけました。

その2秒後に、首輪型の爆弾は爆発。

山根たち爆発物処理班も、家出をしてきた中学生も、仕事で通りかかった人も、動画のネタに撮影していたYouTuberも、婚活相手と出会ったばかりの女性も、みんな即死しました。

真奈美は運良く腕の怪我だけで済みましたが、綾乃は大怪我を負っています。

ハチ公を中心に渋谷駅周辺が消滅する様子を目の当たりにした世田は、犯人の手がかりを探そうと、街を見渡しました。

とあるビルの一室が光ったのを見逃さなかった世田は、そこへ向かいます。泉も背後から追いかけます。

銃を抜き、ドアを開けると、そこには来栖公太が泣きながら立っていました。

「だから言ったのに。これは戦争なんだって言ったのに!」と呻く公太。犯人から、警察が来たらそう言うよう言われたそうです。

公太は自分に巻かれた腕時計の爆弾のことを世田に話し、世田は爆発物処理班を要請。

爆発物処理班が到着するまでの5分間、世田は公太から恵比寿の爆発から今までの足取りを聞き出します。

五反田のマンションにヤマグチアイコと一緒にいたこと、アイコはまだマンションにいるらしいことを知った世田は、それを上層部へは報告せず、泉とともに五反田へ向かいました。

五反田のマンションの703号室に到着したふたり。ドアを開けた瞬間、爆発が起き、ドアが吹き飛びます。

世田はすれすれで助かり無傷でしたが、ドア板は泉の体ごと反対の壁にめり込んでいました。

泉は骨折はしているものの、命に別状はないようです。世田は部屋の中に入ります。

テーブルの上に置かれていたのは、ヤマグチアイコが書き記したであろうノート。部屋の中に人の気配はありませんでした。

綾乃と真奈美は病院に搬送されました。両手を怪我した程度の真奈美は、早くに手当てが終わりましが、重症を負った綾乃は何処かへ運ばれたきり、離れ離れに。

スマホは持っていたものの、現金も家の鍵も無くしてしまった真奈美。実家は地方にあり、恋人も既婚者のため、連絡するわけにはいきません。

自分の軽率な行動で綾乃をひどい目にあわせてしまったと悔いながら、須永が渋谷にいたせいだと八つ当たり。彼女は須永にLINEで電話をかけていました。

真奈美の容態や、渋谷で見かけたことを伝えても、須永はそっけない返事。誰も頼る人のいない真奈美は、須永のマンションへ向かい、お金を貸してもらうことにしました。

同じく渋谷にいたはずの須永は無傷で、真奈美はそれを疑問に感じて須永に問います。「ハチ公から爆発の殺傷圏内の、半径70メートル以内には入らないようにしてた」と答える須永。

そんな詳しい情報をなぜ知っていたのかと詰め寄られた彼は、怒って部屋を出ていきます。

真奈美はその後、彼のパソコンに、爆発直前から爆発後までを至近距離で捉えたハチ公周辺の動画があるのを見つけました。

その頃、犯人がインターネットに新たな犯行声明を発表。

「首相とのテレビ対談が実現しないなら、明日12月24日土曜日の18時に、東京のどこかを爆破する」。

自宅から出て行った須永は、車の中から実家の母に電話をかけます。母は無事に茨城に帰っており、渋谷のニュースを知って心配している様子。

母を安心させる言葉をかけ、電話を切った彼は、探偵からもらった情報にあったことを確かめるため、福生市の「例の店」に向かいます。

日付はかわり、12月24日。

「例の店」を見張る須永に、店の常連を名乗る見知らぬ男が声をかけ、早朝にもかかわらず店内に入って行きました。須永も後に続き、店内に入ります。

そこは、店の半分がダイビングショップのカフェ。注文したドーナツを食べた須永は、「これだ」と確信します。

ドーナツを作った料理人は、風邪をひいてここ数日休んでいるそう。

須永はカッターナイフを出し、その料理人のことを何か知っているんじゃないかと、常連の男を脅しますが、銃を出され、形勢逆転。

男は須永に、彼の探している料理人のことや今回のテロとの関係を話すよう凄みます。

須永は、「俺のお袋は再婚なんだ。20年近く、突然相手に逃げられたショックや現実に苦しみ、貧乏にも苦しんだ。それでも俺のために苦労して、やっと幸せをつかんだんだ。それをいまさら、昔の男が現れるのも、あんたらみたいなのに騒がられるのも困る」と激昂。

そこへ、奥に待機していた世田が現れ、須永にタックルし、銃口を向けます。真奈美がマンションで見つけた動画や探偵の報告書を、警察に通報していたんです。

常連の男は、元ヤクザでいまは世田の飲み仲間となった桑島という人物。桑島と世田のふたりに銃を向けられた須永は、取引を持ちかけます。

自分が探しているその料理人が犯人なら、問答無用で殺して欲しい。そして、そいつの本名やかつての家族の名前がマスコミに流れないよう操作して欲しい。

その料理人、朝比奈仁は、須永の父親だったんです。

世田は、取引は仁が見つかってからにしようと言い、店主から預かった従業員名簿から、仁の家へ向かいます。

そこにあったのは、須永が表紙を飾った雑誌。そして、メモが残されていました。

両国国技館
恵比寿ガーデンプレイス
渋谷ハチ公前広場
東京タワー
レインボーブリッジ

恵比寿の事件の前、両国でも爆弾騒ぎがありましたが、それはおもちゃの手榴弾で、ニュースにはなりませんでした。

世田は、次の爆破場所は東京タワーということを本部に連絡。須永と彼の母親のため、仁の過去のことは本部には伝えませんでした。

場所は変わり、六本木のビストロ「KIRAKU」。窓からは東京タワーが臨めます。

ヤマグチアイコは窓際の席に座り、ノートに手記のようなものを書き込んでいます。彼女の足元には、爆弾入りのボストンバッグ。

そこへ、朝比奈仁が現れ、アイコに声をかけました。「あんたが辿っている場所。それはすっと昔に俺がショーンに頼まれて考えたものだ」。

ショーンというのは、かつてこの「KIRAKU」で仁に声をかけた男。アメリカ軍の爆弾処理班として働いていました。

仁は、結婚して妻子もいましたが、ショーンと惹かれあい、妻子を捨てて彼と付き合っていたんです。

ショーンは、ロブという上官の元で働いてました。ロブが日本の女性と結婚するということから、仁が、日本の観光地を新婚旅行の地としてピックアップ。

仁はショーンから軍の訓練や爆弾について教えられていたため、恵比寿での空砲のプラスチック爆弾、渋谷での半径70メートル以内はせん滅する本物の時限爆弾、そしてこの東京タワーでの音声感知センサーつきの高度な遠隔操作爆弾という一連の犯行が、軍の訓練の流れそのものなことに気づいていました。

そして犯行現場が自分の考えた進行旅行の場所と一致し、ボストンバッグがロブのチームのトレードマークなことから、アイコこそが犯人だと察したんです。

仁はアイコに、「ずっとあんたと話したいと思っていた」と語りかけます。

ヤマグチアイコは、ロブの妻でした。ロブは結婚直後に、中東でのある任務でショーンを含む多くの部下を失い、心が壊れてしまいました。

愛する妻を守るにはこれしかないと、ロブはアイコに爆弾の作り方を伝授し、そして首を吊って亡くなります。

傷心で日本に帰国したアイコの目に入ってきたのは、首相の「日本も、戦争のできる国になるべきだ」という発言。

戦争に身を置いたロブ。彼のそばでそれを見て、そして亡くしてしまったアイコにとっても、戦争は続いています。

首相の発言で何かが切れてしまったアイコは、戦争とは何か教えるために爆弾をしかけたんです。

ショーンを失った仁には、アイコの気持ちが痛いほどわかります。

仁は、「KIRAKU」に駆けつけた警察たちに、まるで自分が犯人のように振る舞い、アイコを人質に見せかけ、車に乗り込んでレインボーブリッジへ向かいました。

仁は電話で、息子の須永に、東京タワーに仕掛けた爆弾の解除パスワードを伝えます。そして、新しい家族と幸せに、と付け加えました。

仁はアイコに思いを託し、彼女を逃す計画を実行。仁の運転する車は、そのままレインボーブリッジから海へ落下。そして車中で大きな爆発が起こります。

仁の遺体は見つかりましたが、アイコの遺体はどこを探しても見つかりませんでした。

12月31日。来栖公太は情報番組の制作スタッフとして働いています。

そこへ、アイコからのメールが。夫ロブとのことや、仁との車中でのやりとりが書かれています。

そしてこう付け加えました。

「公太くん。あなたはジャーナリスト志望だと言っていましたね。だから、あなたからみんなに、私のメッセージを伝えてください。「戦争がしたくなったら、いつでも私のことを呼ぶように」ロブ・フォックスから、今や世界で一番のエキスパートは君だと言われたこの私が、あなたたちの愛する人に、いつでも爆弾のプレゼントを贈ります。では、ちょっと遅いけれど、メリークリスマス。そして、ハッピーニューイヤー」。

印南綾乃は渋谷の爆発事故により失明し、いまも入院しています。そこへ須永が見舞いに訪れました。

復讐や怒りなど微塵も感じさせない、清く前向きな綾乃。須永は彼女を抱きしめます。

綾乃も須永の背中にそっと手を回しました。

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小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』の感想と評価

あらすじとして書き出してしまうと、真犯人や動機、その人に関わる人物が唐突に出てくる印象を受けるかもしれませんが、本著は細かな伏線が張り巡らされており、読んでいてそのミスリードの巧みさに引き込まれました。

目まぐるしいほどに語り手が入れ替わることで、読者を語り手に共感させていくんですが、その共感こそが「先入観」となって、真犯人が誰かを不透明にしてしまうんです。

中でも仁とアイコのふたりの立ち位置の描き方は見事です。

仁に関わる外国人男性・ショーンとのエピソードは、物語の合間に挿入されて行きます。ですがそれらは全て過去のエピソード。

彼が犯人だと思わせるような出会いと再会の場面は、真相を知ってしまってから読むと、強烈な一目惚れとまっすぐな愛の告白だったんだとハッとさせられます。

同性であり、どちらも筋肉質な体型であるという情報から、爆弾魔とその正体を知る怪しい家業の男、という構図を勝手に作り出してしまっていたんです。

また、他の人物たちに執拗なまでに「おばさん」扱いされるアイコ。プロローグも彼女の語りで始まり、その時点で読者は罠にかけられます。

ここでも、「おばさん」は無害で非力であろうという思い込みから、多くの読者が彼女を犯人の候補から外してしまうことでしょう。

仁とアイコ。どちらも愛する人を戦争で失ってしまい、10年以上経ったいまも喪失という戦争の渦中で戦っています。

そんな彼らにとって、平和ボケした日本と、首相の発言は、大きなトリガーとなりました。

秦建日子が本著を書くきっかけとなったのは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコによる楽曲『Happy Xmas(War Is Over)』

この曲が発表された1971年は、ベトナム戦争中。戦争の終結を平和を願って作り出されました。それから50年近く経ちましたが、戦争は常にどこかで起こっており、世界は分断されようとしています。

『Happy Xmas(War Is Over)』の曲も、『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』で書かれた出来事も、深く胸に突き刺さってきます。

映画『サイレント・トーキョー』の作品情報

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

【日本公開】
2020年(日本映画)

【原作】
秦建日子『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出書房新社)

【監督】
波多野貴文

【脚本】
山浦雅大

【キャスト】
佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼、毎熊克哉、加弥乃、白石聖、庄野崎謙、金井勇太、大場泰正、野間口徹、財前直見、鶴見辰吾

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まとめ


(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

映画『サイレント・トーキョー』の監督は、深夜帯ドラマとして異例の平均視聴率15%越えを記録した『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007)と、その劇場版『SP THE MOTION PICTURE 野望篇』(2010)・『SP THE MOTION PICTURE 革命篇』(2011)を手掛けた波多野貴文。本作でも、リアルでスリリングな演出力で引き込んでくれるでしょう。

キャストも、朝比奈仁役に佐藤浩市、アイコ役に石田ゆり子、世田役は西島秀俊と、芯のある実力派がピタリとはまります。

また、須永役は中村倫也、真奈美役に広瀬アリス、泉役に勝地涼と、若手俳優陣も抜かりないキャスティング。

小説だからこそミスリードさせられた部分も大きかった本著『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』を、どのように映像化するのか楽しみでなりません。

映画『サイレント・トーキョー』は 2020年12月4日(金)より全国ロードショーです。










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