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Entry 2023/03/27
Update

【ネタバレ】沈黙のパレード|あらすじ結末感想とラスト考察。どんでん返しの“ガリレオ3”の伏線回収は極上ミステリー

  • Writer :
  • 谷川裕美子

観る者にフェアな戦いを挑む本格ミステリー

人気作家・東野圭吾のベストセラー小説を原作に、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が難事件に挑む大ヒット作「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作。前2作に続いて西谷弘が監督、福田靖が脚本を手がけました。

内海刑事役の柴咲コウ、草薙刑事役の北村一輝らおなじみのメンバーのほか、椎名桔平、檀れい、吉田羊、村上淳ら豪華キャストが顔を揃えます。

福山雅治と柴咲コウによるユニット≪KOH+≫が9年ぶりに復活し、主題歌を担当したことでも話題となりました。

町の人々から愛されていたひとりの女子高生の悲しい死をきっかけに、事件が動き始めます。

予想外の展開を見せながらも、推理のヒントをしっかり観る者に提示するフェアな本格ミステリー作品です。

映画『沈黙のパレード』の作品情報


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
東野圭吾

【監督】
西谷弘

【脚本】
福田靖

【編集】
山本正明

【出演】
福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、酒匂芳、岡山天音、川床明日香、出口夏希、村上淳、吉田羊、檀れい、椎名桔平

【作品概要】
ベストセラー作家・東野圭吾による、天才物理学者・湯川学が未解決事件を見事に解き明かしていく痛快ミステリー「ガリレオ」シリーズ。『容疑者Xの献身』(2008)『真夏の方程式』(2013)に続く劇場版第3弾。

西谷弘が監督を務める本作で、福山演じる湯川と、バディを組む内海薫刑事役の柴咲コウ、湯川の親友の草薙俊平役の北村一輝が、9年ぶりに再結集しました。

岡山天音、出口夏希、村上淳、吉田羊、檀れい、椎名桔平らが新たに参戦します。

映画『沈黙のパレード』のあらすじとネタバレ


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

歌の才能を認められた女子高生の並木佐織は、数年前から行方不明になった末、遺体となって発見されました。両親や彼女を育てていた音楽プロデューサー、恋人たちは悲しみにくれます。

彼女は後頭部を鈍器のようなもので殴られて殺された後に火を放たれたことがわかり、一緒に蓮沼芳恵という老婆の遺体も発見されます。

警視庁捜査一課の刑事の内海は、先輩刑事の草薙から、今回の容疑者・蓮沼寛一がかつて担当した少女殺害事件の容疑者であることを教えられます。蓮沼は完全黙秘を貫いた末、無罪を勝ち取っていました。

内海はこれまで捜査に協力してもらってきた天才物理学者の湯川学を呼び出し、事件について話します。蓮沼と佐織には接点があり、その後彼女は失踪していました。

佐織の父親の営む居酒屋を訪れた湯川は、夏祭りにパレードが行われることを聞きます。そんななか、店に当の蓮沼がやって来ました。彼は今回も黙秘を貫いて証拠不十分で釈放され、佐織が住んでいた町に戻って来ていました。佐織の父や町の人々が蓮沼と言い争う姿を、湯川はじっと見つめます。

憎悪の空気が町全体を覆う中、夏祭りのパレードは当日を迎えました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『沈黙のパレード』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『沈黙のパレード』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

佐織の妹の夏美と湯川は一緒にパレードを見ていましたが、店の客が倒れたと連絡を受けた夏美は店に戻ります。

町中が盛り上がるなか、蓮沼が自宅で殺害される事件が起こりました。内海と草薙は、蓮沼の元同僚で、現在同居中の第一発見者・増村から話を聞きます。

佐織の家族にもアリバイがあるなか、湯川は事件について聞くために、草薙と内海を呼び出しました。

並木の居酒屋にいた湯川は、蓮沼が死んだと知らされた瞬間の家族や町人らの反応を目の前で見ていました。変わった様子がなかったと言った上で、湯川は死亡現場を見せてほしいと草薙らに話します。

窒息死した蓮沼に絞殺痕がなかったと知った湯川は、室内の酸素を減らす方法について考えを巡らせます。大掛かりな実験を行った湯川は、部屋に液体窒素が送り込まれただろうことを突き止めました。

並木の親友の食品会社社長・戸島の工場の液体窒素が使われたとわかります。戸島にはアリバイがあったため、共犯がいると草薙は推理しました。

やがて、佐織の恋人・高垣がパレードの最中に液体窒素を運んだと認めましたが、蓮沼を懲らしめるだけのつもりだったと話します。

高垣に指示を出した戸島を草薙が取調べるなか、戸島は警察を信じられないと言って強く反発します。

湯川から、15年前の優奈ちゃん殺害事件も関係しているのではないかと言われた草薙は、蓮沼の同居人の増村が少女の母・由美子の腹違いの兄だと突き止めます。しかし、すべての証拠を消した増村は、その事実を認めようとはしませんでした。

湯川は並木を訪ねて問い詰めます。本当は蓮沼のもとに並木が駆けつけるはずでしたが、店で急病人が出たために計画を中止せざるを得ませんでした。しかし並木は、沈黙してくれている人々に顔向けできないからといって、真犯人の名を言おうとしません。

その後、湯川は新倉直紀が自首したことを、並木に告げました。

新倉は液体窒素をパレード神輿の宝箱に入れる役割を請け負っていましたが、計画中止を聞いて自身が駆けつけたことを告白しました。白状させる最後の機会だと思い計画を実行した結果、蓮沼は公園で佐織をさらって殺したと犯行を自供したと話します。

草薙にこれで本当に納得しているのかと問いただす湯川。草薙は湯川につかみかかり、もう喋るなと言い捨てて去っていきました。

湯川は内海に、新倉がはじめから公園の情報を知っていた可能性を示唆。その後湯川は新倉の妻・留美を訪ね、佐織を殺した真犯人がその場を離れた後に、蓮沼は遺体を静岡の実家に隠したという推理を話します。

蓮沼は死体遺棄罪の時効が成立するまでじっと身をひそめ、その後実家に火を放って佐織の死を白日のもとにさらしました。彼はわざと血痕のついた自分の服を残して真犯人へのメッセージに利用し、釈放後に真犯人である留美に接触していました。

デビューを前にして高垣の子を妊娠した佐織は、歌手になるのをやめると留美に告白していました。新倉の夢を叶えたいと必死に訴える留美に、佐織は残酷にも留美が自分に嫉妬していると叫び、それを聞いた留美は思わず佐織を突飛ばしてしまいます。資材にぶつかり動かなくなった佐織を見て動転した留美は、その場を逃げ出しました。

橋から電車に飛び込もうとしたものの、思いとどまって公園に戻ると、そこにはもう遺体はありませんでした。

数年後、蓮沼からの脅迫されるようになった留美は、パレードの日の計画を夫から聞かされ、とうとう夫に事実を告白しました。

新倉は妻のために自分の手で蓮沼を殺すことを決意します。並木の店で体調を崩したのは、新倉が雇った女性でした。

しかし、本当の真相がまだ眠っていました。車で佐織は意識を取り戻し、その後蓮沼に後頭部を殴られて殺されたと湯川は推理します。公園の現場で留美が拾って大切に持っていた佐織のバレッタから血痕は見つからず、その推理の正しさは裏付けられました。

湯川は草薙に事実を新倉に話すように言いながらも、新倉が沈黙する可能性があることを示唆し、15年間の苦しみに決着をつけられるのは当事者だけだと言って友の背中を押します。

草薙は新倉に、佐織を殺した真犯人は蓮沼である可能性が高いことを伝え、新倉が本当の殺しの理由を認めれば留美を苦しみから救えると話します。蓮沼の罪を必ず自分たちが立証すると草薙は約束し、新倉の沈黙を解こうとしました。新倉は大きく息を吐き出しました。

その後、罪を認めた新倉の罪名は殺人罪に切り替えられ、留美も送検されます。増村は幇助罪を検討中となりましたが、他の町人たちの送検は見送られました。

草薙は親友の湯川に感謝していると思う、と話す内海の言葉を聞いた湯川は、「そうか」と笑顔で呟いてから歩き出しました。

映画『沈黙のパレード』の感想と評価


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

二転三転する見事なストーリー展開

大人気ミステリードラマ「ガリレオ」シリーズの待望の劇場版第3作『沈黙のパレード』。相棒の内海役の柴咲コウが2008年公開の『容疑者xの献身』以来14年ぶりにスクリーンに戻ってきたことでも話題となりました

クールな天才物理学者・湯川学を、福山雅治が変わらぬ魅力で飄々と魅力的に演じています。「実に面白い」といって、何もかもを楽しむ湯川の姿が爽快です

9年ぶりに復活した福山と柴咲が組むユニット≪KOH+≫が歌う主題歌にも注目です。

町の人々から愛され、歌手デビューを目前にした期待の星だった女子高生・佐織が、数年前に行方不明となった末に、遺体となって発見されたところから物語は始まります。

容疑者の蓮沼は、15年前の少女殺害事件の容疑者でもありましたが、その時も今回も完全黙秘によって無罪を勝ち取っていました。彼が有罪であることを町の誰もが信じ憎悪するなか、蓮沼は佐織の住んでいた町に舞い戻って町人らを挑発します。

憎しみで燃え上がる町でお祭りのパレードが開かれた日。蓮沼は扼殺痕がない窒息死という不可解な死を遂げていました。この難事件に、湯川らが挑みます。

真犯人探しのスリルがたまりません。名優揃いで誰が犯人でもおかしくないため、まったく真犯人の目星をつけることができないままストーリーは進んでいき、期待に応えるかのように、実は全員が計画に加担していたという驚きの展開を迎えます

クリスティの有名小説『オリエント急行殺人事件』を彷彿とさせながらも、それで終わらないのがさすが東野圭吾です。その部分は序章に過ぎず、二転三転する見事な展開が用意されています

それでいて、湯川や警察らが知り得た情報は観る者に開示されており、フェアな本格ミステリーとなっています。

ぜひご覧になりながら、謎解きにも挑んでください。

心揺さぶられる人の絆と緻密な心理描写


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

本シリーズが愛されてきた一番の理由は、クールな湯川と少し抜けたところのある内海刑事、そして熱血刑事の草薙との味わいある掛け合いにあります

本作では特に、15年前の少女殺害事件をお蔵入りにしてしまったことで苦悩を抱き続けてきた草薙の心理と、彼を見守る親友の湯川の温かくも厳しいまなざしが大きな見どころとなっています。

当時の容疑者・蓮沼を捕らえられず、15年ぶりに起きた佐織の殺人事件でも立件できなかった悔しさを、北村一輝が見事に演じ切っています。とらえどころのない蓮沼を、憎々しく演じる村上淳からも目が離せません。

張りつめた空気を和ませてくれる内海の名バディぶりも健在です。湯川と繰り広げる「血も涙もない」をめぐる面倒くさい言い争いのシーンは、その真骨頂ともいえるでしょう。

本作の核となっているのは、町の人々が長い年月積み重ねる中で育ててきた深い絆です。生まれたときから大事に町全体で育ててきた被害少女・佐織への痛いほどの愛情が悲劇を招きます。

佐織の両親である並木夫妻、佐織が生まれたときからかわいがってきた並木の親友の戸島、佐織の恋人の高垣、商店街の仲間の宮沢、音楽プロデューサーの新倉夫妻。事件の謎解きとともに、緻密に描かれる人々の心の揺れ動き、葛藤に注目です。

ラスト近くの湯川と草薙、そして草薙と椎名桔平演じる新倉との対峙する様は圧巻です。魂のぶつかり合う姿に、心揺さぶられる名シーンとなっています。

まとめ


(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

福山雅治、柴咲コウ、北村一輝が9年ぶりに顔を揃えた大人気「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作『沈黙のパレード』。

タイトルにある「沈黙」が重要なキーワードを持つ本作では、容疑者をはじめ、登場人々の多くが秘密を抱え「沈黙」を守っています。悲しい死を遂げた女子高生の佐織もまたそのうちのひとりと言えるでしょう。

その沈黙を打ち破り、難事件を解決するために湯川博士らが正面から迫っていきます。そこで繰り広げられる人間愛と深い絆に感動させられる一作です。

人々が囚われてきた苦悩と悲しみに決着をつけようと立ち向かう姿から、勇気をもらえるに違いありません。






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