不倫相手殺害の容疑をかけられたIT社長が告白する事件の真相とは…
不倫相手のキム・セヒが殺害され、第一容疑者となったのは同室にいたIT企業の社長であるユ・ミンホでした。
ユ・ミンホは、敏腕弁護士ヤン・シネを雇って事件の真相を探り始めます。
するとヤン・シネは、事件の数日前に起きた交通事故についてユ・ミンホが関わっているのではないかと聞きます。
ユ・ミンホは、事件について口を開き始め、交通事故と殺人事件の関連性について再検証し始め、事態は思わぬ方向に転じていきます。
『王になった男』(2012)や『神と共に 第一章:罪と罰』(2017)、『神と共に 第二章:因と縁』(2018)などを手掛けたリアライズピクチャーズがスペインのサスペンス映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2017)をリメイク。
『Be With You いま、会いにゆきます』(2019)のソ・ジソブがIT企業の社長・ユ・ミンホを務め、弁護士役には「LOST」シリーズのキム・ユンジン、不倫相手役には女性アイドルグループ「AFTERSCHOOL」のメンバーで女優としても活躍しているナナが務めました。
映画『告白、あるいは完璧な弁護』の作品情報
【公開】
2023年(韓国映画)
【原題】
Confession
【監督・脚本】
ユン・ジョンソク
【出演】
ソ・ジソブ、キム・ユンジン、ナナ、チェ・グァンイル
【作品概要】
不倫相手殺害の疑いがかけられたIT社長のユ・ミンホは、敏腕弁護士のヤン・シネを雇います。
ユ・ミンホの別荘にやってきたヤン・シネはとある交通事故と行方不明事件と今回の事件が関連しているのではとユ・ミンホに問いかけます。ユ・ミンホが話し始めた真実により事件は一転していきます。
『Be With You いま、会いにゆきます』(2019)のソ・ジソブと「LOST」シリーズのキム・ユンジンが、互いを探り合い騙し合いながら事件の展望を浮き彫りにしていきます。
スペインのサスペンス映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2017)を元にリメイクし、ラストの展開にオリジナル展開を用いて韓国映画らしいサスペンスに仕上げています。
映画『告白、あるいは完璧な弁護』のあらすじとネタバレ
あるホテルの一室で、キム・セヒが殺害されました。
第一容疑者として疑われたのは、同室にいた不倫相手でIT企業の社長であるユ・ミンホでした。一時釈放されたユ・ミンホは、郊外の別荘に移動します。
ユ・ミンホは、敏腕弁護士のヤン・シネを弁護士として雇います。雇われたヤン・シネは確認したいことがあると言って予定より早くユ・ミンホのいる別荘にやってきます。
話を聞いてから弁護を担当するか判断すると言ってヤン・シネは事件について再びユ・ミンホに供述させます。
ユ・ミンホは、別れていた不倫相手のキム・セヒに2人関係をバラされたくなかったらお金を用意しろと脅され、ホテルに向かったと言います。先にホテルについていたキム・セヒの元に訪れると、キム・セヒも同様の脅しを受けていたと言います。
待っても誰も現れず、パトカーの音が聞こえてきて何かおかしいと感じた2人は逃げようとします。すると突然何者かに鏡に叩きつけられ、ユ・ミンホは気を失います。
目が覚めると警察が扉をノックしています。そしてキム・セヒが倒れていてあたりにはお金が散らばっていた、というのです。
ユ・ミンホの供述に対し、ヤン・シネはホテルの部屋には内側から鍵がかかっており、窓も閉められ外に誰かが出た形跡もない、密室殺人というわけなのかと言うヤン・シネに、そんなことは分からない、私はやっていないとユ・ミンホは答えます。
ヤン・シネの携帯がなり検察の情報が入ったといいます。それは、目撃者が見つかったということです。
密室殺人であるキム・セヒ殺害事件には目撃者はいません。では何の事件の目撃者なのでしょうか。
ヤン・シネは一つのポスターをユ・ミンホの前に差し出します。それは行方不明になった息子を探しているというポスターでした。
知らない人のポスターならじっくり見るはずだが、あなたは目を逸らした、この人について知っているんですよねとヤン・シネは問い詰めます。
すると、この人になら全てを話しても構わないと言いユ・ミンホはとある交通事故について話し始めました。
不倫相手であるキム・セヒとこの別荘でよく過ごしていたユ・ミンホは、その日もこの別荘で過ごし帰ろうとするところでした。
キム・セヒが運転し、ユ・ミンホは監視カメラのない人気の少ない道が近道だとそこで右折するように言います。
更にユ・ミンホは嘘をつく生活をやめたい、別れたいと話していたといいます。
そこに突如鹿が飛び出し慌てて避けようとし、そこに反対車線からも車がやってきて衝突しそうになります。
衝突はしなかったものの反対車線に走っていた車は木に激突してしまいます。
慌てて様子を見に行くと運転手は死んでいました。ユ・ミンホは警察に電話しようとしますがキム・セヒが2人でいるところを知られたらまずいと制止します。
そこに一台のトラックがやってきて咄嗟にキム・セヒは私たちが事故を起こしたことにするのよと指示します。
何とかその場をやり過ごし、キム・セヒはユ・ミンホに死体を隠すように言い自分はユ・ミンホの車で帰るから後で落ち合おうと言います。
ユ・ミンホは車を湖に沈め、キム・セヒはエンジンがかからず困っているところを通りがかった男性に助けられます。
家に行けば整備できると連れて行かれ修理をしてもらったキム・セヒはその家の写真を見て言葉を失います。
そこに写っていた青年はまさに事故で亡くなった青年だったのです。キム・セヒが助けられたのは事故で亡くなった青年の両親でした。
更に息子と連絡がつかないと親が電話をかけています。その息子携帯はキム・セヒが持っていました。
咄嗟にソファの下に隠し、両親は携帯を忘れていくなんてと不思議がっています。
キム・セヒは動揺を悟られないように家をあとにし、ユ・ミンホと合流します。
しかし、両親が車のナンバーを覚えていたことで所持者であるユ・ミンホに疑いの目が向けられ、携帯の使用履歴から家に忘れて帰ったはずはないと思った両親はキム・セヒのことを探していました。
焦ったキム・セヒは息子の荷物から抜き取った通帳を使ってお金を引き出していたと見せかけるように操作してほしいとユ・ミンホに言います。
それによって青年は詐欺に関わり自ら失踪したと警察は判断します。
両親は納得していませんが警察は相手にしません。
映画『告白、あるいは完璧な弁護』の感想と評価
容疑者とされたIT企業の社長と弁護士の心理戦を描いたサスペンス映画『告白、あるいは完璧な弁護』。
序盤は、ホテルの一室で何者かに襲われ、目が覚めると不倫相手が殺され外には警察がやってきていたという密室殺人の真相を明らかにしていくかのようなストーリー展開になっています。
しかし、次第に事件について明かされていくうちにミステリー要素から心理戦となりサスペンス色が強くなっていきます。
弁護士が唐突に検察が証人を召喚したという情報を聞きつけ、殺人事件の他に失踪事件が絡んできます。信用して真実を話してくれなけば弁護はできないという弁護士の言葉にユ・ミンホが語り出したのは、とある交通事故でした。
不倫相手と別荘で過ごしたユ・ミンホは監視カメラのない近道を通り、飛び出した鹿を避けようとし事故を起こします。反対車線の車は木に突っ込み運転手は死んでしまったというのです。
不倫相手といることがバレたら終わりだと、2人は死体を隠すことを決め、疑いの目が自分たちに向かないように通帳に細工し何とかやり過ごそうとしました。しかし、何者かに脅されてあのホテルに向かったところ殺人事件が起きたというのです。
本作の面白いところはユ・ミンホが語った話では交通事故の隠蔽は全て不倫相手のキム・セヒが主導し自分は巻き込まれたかのような口ぶりでしたが、弁護士の言葉によってその印象が大きく覆されていくところです。
キム・セヒが深刻な不安障害に陥っていた診断書から、巻き込まれたのはユ・ミンホではなく、キム・セヒなのではないか、そうしたら全ての辻褄が合うというのです。事件の展望を映像として見せることで観客側も先入観で事件の印象が大きく変わることに気付かされるのです。
人は、客観的に判断しようと思っていても欲しい情報を得て自分が納得するようなストーリーを展開してしまうものなのです。
更に本作は、リメイク元のスペイン映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2017)とラストの展開が大きく異なっています。
オリジナルでは、主人公は母親が成りすましていた弁護士をすっかり信じきり、弁護士が部屋をあとにしてから偽の弁護士であったことに気づき、愕然とします。しかし本作では終盤でユ・ミンホが弁護士が偽物であることに気づきます。
会話の途中ですでに弁護士を怪しんでいたユ・ミンホでしたが、ふと契約書の署名を目にして署名がハングルと英語と違っていたことに気づくのです。運悪く別荘を去ろうとしていたヤン・シネ弁護士は雪にタイヤがはまってしまいユ・ミンホによって別荘に連れ戻されてしまいます。
そしてユ・ミンホは他人に罪をなすりつけて自らが生き残るためにわざとヤン・シネがユ・ミンホを撃ったように見せかけ負傷します。
オリジナルでは傲慢で自分勝手な人物であった主人公が、本作では更に狡猾で魅力的な悪役となっているのです。ユ・ミンホとヤン・シネは互いに自分の方が賢いと思って足元をすくわれてしまいます。
そんな2人の心理戦の果てに正義が勝つのも韓国映画らしいエンディングといえるでしょう。
また、オリジナルでは主人公との会話を記録したテープを証拠として事件の真相を警察に伝えるところで終わっていますが、本作では本当の弁護士が違法に録音されたものは証拠として認められない、とあっさり切り捨てられてしまいます。
それでも母親の信念の強さ、ユ・ミンホのおごりが、一番重要な証拠が露見するということに繋がるのです。
まとめ
二転三転する展開が観客を引き込む『告白、あるいは完璧な弁護』ですが、本作はユ・ミンホ演じるソ・ジソブの二面性も印象的です。
日本でもリメイクされたドラマ『ごめん、愛している』(2004)など影のある役を演じてきたソ・ジソブは、本作においてもその魅力が発揮されています。
前半は、追いつめられつつも仕方なく巻き込まれ、殺人犯に仕立て上げられてしまったように見えるユ・ミンホが次第に立場を利用して生き伸び平気で人を利用する狡猾な一面が浮き彫りになっていきます。
弁護士の正体を見破り勝ちを確信したユ・ミンホが密かにほくそ笑んでから自分の負けを悟るまでの表情の変化は見応えがある場面になっています。
またユ・ミンホの供述によって悪女のように見えたり、巻き込まれた側に見えたりするキム・セヒ演じるナナの演技も必見です。