Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2024/10/15
Update

【ネタバレ】チャチャ|あらすじ結末と感想評価。伊藤万理華(乃木坂46の元メンバー)で贈る“風変わりな”ラブストーリー

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

自由奔放で野良猫のようなチャチャの風変わりなラブストーリー

“へたくそだけど私らしく生きる”等身大の女性のリアルをつむぐ(not) HEROINE moviesとして、『わたし達はおとな』(2022)、『よだかの片想い』(2022)、『そばかす』(2022)に次いで制作された映画『チャチャ』。

人目を気にせず、好きのように生きる自由奔放なチャチャ。ある日、喫煙所でであった樂に興味を持ったチャチャは、樂に惹かれ、樂の家で共に暮らすようになりますが、自分の恋心は片思いであると気づいています。

そんなある日、チャチャは家で思わぬものを見て、樂の秘密を知ってしまいます。予測不可能なチャチャの恋路の向かう先とは。

サマーフィルムにのって』(2021)の伊藤万理華が主演を務め、『夏目アラタの結婚』(2024)の中川大志が樂を演じました。

監督を務めたのは、『劇場版 美しい彼~eternal~』(2023)、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(2023)、『恋を知らない僕たちは』(2024)の酒井麻衣。

映画『チャチャ』の作品情報


(C)2024「チャチャ」製作委員会

【公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本】
酒井麻衣

【脚本協力】
大江崇允

【キャスト】
伊藤万理華、中川大志、落合モトキ、福山翔大、中島侑香、佐々木史帆、小林亮太、原菜乃華、檀鼓太郎、梶裕貴、川瀬陽太、松井玲奈、池田大、藤間爽子、塩野瑛久、ステファニー・アリアン、藤井隆

【作品概要】
(not) HEROINE moviesの第四弾として、『劇場版 美しい彼~eternal~』(2023)の酒井麻衣監督が手がけました。

脚本協力として携わったのは、『ドライブ・マイ・カー』(2021)で、濱口竜介監督と共同脚本を務めた大江崇允。

周りを気にせず自由に生きるヒロイン・チャチャを演じたのは、『サマーフィルムにのって』(2021)の伊藤万理華。

主題歌の『おはようの唄』は、酒井麻衣監督と伊藤万理華が共同で作詞し、伊藤万理華が歌い、チャチャの不思議な世界観を創り上げています。


映画『チャチャ』のあらすじとネタバレ


(C)2024「チャチャ」製作委員会

イラストレーターのチャチャ。周りを気にせず、好きな服を着て自由に生きるチャチャは、社長に気に入られデザイン事務所に勤めています。

女性の先輩2人は、何かにつけ「可愛いと思ってやっているんでしょう」と陰口を言っています。しかし、チャチャは聞こえていても気にしません。

そんなチャチャは、社長とできているのではないかと囁かれています。密かに社長に想いを寄せている凛は、チャチャと社長をこっそり観察しています。

チャチャは屋上にある喫煙場で喫煙していると、下の階の飲食店の従業員が喫煙所にやってきます。そこに従業員の上司らしき人がやってきて「樂いつまで休憩してるんだ、そんなん吸ってるから味覚がおかしくなるんだ」と怒鳴り、連れていきます。

その姿を見てチャチャは樂に興味を抱きます。そして鍵が落ちていることに気づくと鍵を届けに行きます。その夜、チャチャは仕事が終わった後も、屋上の喫煙場で樂を待ちます。

樂の姿を見つけると「鍵、見つけたの私なんです」とチャチャは声をかけます。「ありがとうございます」と答えた樂に、チャチャは「お礼は?」と聞きます。

樂はチャチャの言動を見てあざといと感じ、「そんなふうにしていると嫌われるよ」と言います。すると、チャチャは「気にするのやめた、自分に素直に生きる方がいい」と答えます。

樂が飲んでいるものは何かと聞くチャチャに樂は、「りんごのサイダー」と答えます。

「お礼、それがいい。明日ちょうだい」と言います。「これから食事でも奢ろうかと思っていたのに」と言う樂に、チャチャは「そういうのはいい」と答えます。

樂はしばらく歩いた後、「俺も自分に素直に生きてみようと思う」とチャチャに言います。

翌日、樂が自分にりんごのサイダーを届けに来てくれた時に、その感想を言おうと楽しみに会社にやってきたチャチャは、机の上に置かれたりんごのサイダーを見てがっかりします。樂は、チャチャが来る前に事務所にやってきて、凛にりんごのサイダーを預けたのです。

チャチャは、また仕事終わりの樂を捕まえて「食事を奢ってよ」と言います。しかし、仕事終わりの遅い時間ではどの店もラストオーダーが終わってしまったなどと言われて、断られてしまいます。

「お腹すいた……」と呟くチャチャを樂は自宅に招待します。「料理している時に動かれるの嫌だからじっとしてて」と言って料理を振る舞います。

料理を食べワインを飲んだ2人。しばらくしてチャチャは、「そろそろ帰る」と言い立ち上がります。そんなチャチャの手を樂は掴み「なんで」と言います。

そのまま朝まで共にしたチャチャと樂。その日からチャチャは樂の家で過ごすようになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『チャチャ』ネタバレ・結末の記載がございます。『チャチャ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2024「チャチャ」製作委員会

チャチャの様子の変化に同僚の凛は気づき、「やはり社長と……?」とチャチャを尾行した凛は、チャチャがどうやら樂と住んでいるということを突き止めます。しかし、社長との関係を決定づけるものはありませんでした。

妻子ある身の社長との関係は阻止しなければと燃える凛は再び、チャチャが帰っていった家に偵察にいきます。

すると樂が洗濯物を干した後、目隠しをされ両手を縛られた男性を連れてきて体を洗っているところを目撃します。

その姿を見て樂とその男性が恋人関係にあるのではと凛は勘違いします。勘違いしたまま凛は、おすすめのBL漫画をチャチャにおすすめします。チャチャはその漫画を樂の家で読みます。

「俺はこういう漫画苦手だな」という樂にチャチャは、「互いに違う2人が2人で一つだっていうのがいい」と言います。「違うところで生きている2人が1つになれると思う」と更に樂は聞きます。

チャチャは少し考えて「そうなれるといいなと思う」と答えます。

後日、チャチャは凛をご飯に誘います。そして小声で「恋愛相談をしても良いですか」と言うチャチャに、凛は驚きつつも話を聞きます。

チャチャは、凛の漫画を読んで自分の好きな人は女の人に興味がないのではないかと感じたと言います。

そんなチャチャに、凛は以前見た樂と男性のことは言えず、「今のままで十分ならそれでも良いのではないでしょうか」とアドバイスします。

チャチャはもやもやを抱えたまま、樂の元で生活をしていました。ある日、樂の帰りを待ちながら漫画を読んでいると、どこかで物音がします。不思議に思ったチャチャは物音のする方へと向かいます。

すると隠された扉の奥に、手足を縛られた男性がいます。状況がわからず互いに混乱します。チャチャは樂がなぜ男性を監禁しているのかわからず、現状のまま男性を逃がそうとはせず、「ここに私がきたことは内緒ね」と言って、その場を去ります。

その後チャチャは樂のいない隙を狙って護という男性にご飯をあげたりして交流をします。そんな時、事務所に向かう途中で、樂が事務所の上の階にある英会話教室で教師として働くピオニーと話している姿を見かけます。

「珍しいね、人と会話しているの」とチャチャが喫煙所で話しかけると「たまには営業しないと」と樂は答えます。

そして、そのピオニーが持ってきた英会話教室で行われる交流祭のチラシを見たチャチャは、ピオニーの横に写っている男性が樂の家に監禁されている護だと気づきます。

同時に樂が護を監禁している理由も分かってしまいます。樂はピオニーに想いを寄せ、邪魔であった護を監禁したのです。そのことを知ったチャチャは、「君の彼女はそんなにいい女なのかい」と言いながら護を逃がそうとします。

すると背後に樂が現れ、チャチャは護と共に腕を縛られ車の荷台に詰め込まれました。車はどこかに向かっていきます。

道中で何とか口を縛っていた紐を外したチャチャは、「これ絶対殺されるやつじゃーん」と呟きます。そんなチャチャに「見る目ないよ」と護は言います。

「でも自分と似てるって思ったんだよ、可哀想で」と言うチャチャに、「そういう独りよがりは良くないよ、楽しく生きて自分を大切にしなきゃ」と護は返します。そんな会話をしていると森の中で車が止まります。

樂は持ってきた包丁をもち、護を殺そうとします。そんな樂に「私がやるよ。樂の目的はこの人が消えることでしょ。私がやる。私の方はもっと綺麗に殺せるよ」とチャチャは言い、樂は振り返ってチャチャの手を縛っていた紐を切ります。

包丁を持ったチャチャは「意外と重いんだね」と無邪気に言い、煙草を吸う樂に「私にもちょうだい」と言って近づきます。

煙草を吸い樂のほおに顔をすり寄せたチャチャは、そのままゆっくり包丁を振り下ろし樂の耳の当たりを切りつけます。

樂が痛みに苦しんでいる間に護を解放し、「このまま右に行くと公道が見えたから逃げて」と言います。「一緒に逃げよう」と言う護に、チャチャは「することがある」と言って残ります。

チャチャはゆっくり樂に近づくと耳に触れて樂の血を拭ってそのまま口に含みます。それは以前チャチャが樂に話していたいつか自分がしてみたいことでもありました。「おいしくない」

車を運転するチャチャ。助手席には樂の姿があります。「これからどうするの。また殺すの」と聞くチャチャに、樂は「飽きた。あんな男を待つ女にも。それに痛いし。フランスに行ってオムレツ食べようかな。チャチャも来る?」と答えます。

チャチャはそれには答えず、「樂はどうして私といるの。私のこと好きなの」と聞きます。「寂しかったし、未来はわからないから好きになるかもしれない」と樂は答えます。

場面は移り変わり、凛の誕生日を祝うチャチャの姿が映し出されます。「恥ずかしくないの」と言う凛に「一度やってみたかったの」とチャチャは言います。

その後、チャチャは事務所に「しばらく休むね」というメモを残して姿を消します。その行方は誰にも分かりませんが、野良猫のようにまたふらっと戻ってくるだろうということは皆分かっていました。

そんな中、事務所のあるビルは取り壊しになり、皆散り散りになっていくのでした。

映画『チャチャ』の感想と評価


(C)2024「チャチャ」製作委員会

“へたくそだけど私らしく生きる”等身大の女性のリアルをつむぐ(not) HEROINE moviesの第四弾として制作された映画『チャチャ』。

チャチャは独特のファッションセンスでふわふわした言動と世間の目など全く気にせず生きています。そんなチャチャの自由さに対して憧れを感じつつも空気を読んだ“普通”の振る舞いをするのが大人だと認識している大多数はチャチャに対し反感も感じています

そんなチャチャはミステリアスな樂に興味を抱きます。自分と似ていると感じ、興味が恋心へと変わっていきます。一方で、樂は野良猫が自分だけに懐くのも悪くないとチャチャを家に招き入れます。

チャチャの恋は、樂の秘密を知ったことにより思わぬ方向へと進んでいきます。樂の狂気的な一面と、チャチャの危うさが共鳴しているようで、2人は決定的に違う人間です。チャチャは違う人間でも一つになれるかもしれないと希望を抱いていますが、樂は希望を抱いていません

樂は、ピオネーに想いを寄せながらもそれは一方的なもので、狂気的な行動に出るものの、ピオネーに対して積極的な行動は起こしません。

どこか諦めているのです。それでいて、寂しさも感じている樂は、自分に擦り寄ってきた野良猫のようなチャチャを受け入れます。

予想できぬ展開や、チャチャと樂それぞれの視点で描き出したり、ラストには電柱の視点が登場したりと、かなり変化球で一つのジャンルの枠に収まらない映画になっています。

しかし、主軸として描かれているのは、恋愛を通して成長するチャチャの姿だと言えるでしょう。

チャチャは樂との恋愛を通し、一方的であることの虚しさや、自分の好きな人が違う人を向いている辛さも目の当たりにし、まさに恋の辛さを体感します。

それだけでなく、恋を経験したことで、チャチャは初めて凛という友達ができるということにもつながっています。凛はチャチャが自分の好きな人と付き合っているかもしれないという複雑な気持ちを抱きながらも、チャチャのことを憎んではいません。どこか憧れすら抱いています。

チャチャは意識して凛と友達になろうと考えていたわけではないでしょうが、凛に恋愛の相談をし、凛に対して無意識に信頼している様子が伺えます。それは凛が他の先輩らのように、チャチャの陰口を言っていなかったというのも関係しているのかもしれません。

変幻自在で読めない映画であると共に、チャチャや樂の人物像も掴みやすい人物像ではなく、共感しやすい映画とはまた違うかもしれません。

しかし、その独特な世界観が今までにない恋愛映画としての魅力にもつながっています

一方で、天真爛漫で優しく包容力のあるピオニーや、仕事は続かないダメな人で、良い人でも悪い人でもないけれど何故か愛される護や、ずれているけれどそれが可愛さでもある社長など、不思議さはあるけれどステレオタイプに近い登場人物も数多く出てきます。

シュールなファンタジー感と相反するような狂気的なバイオレンス。今まで味わったことのない恋愛映画は、どこかクセになる魅力があるといえるでしょう。

まとめ


(C)2024「チャチャ」製作委員会

自由奔放で野良猫のようなチャチャの風変わりなラブストーリーを描いた映画『チャチャ』。

独特の世界観を形作るのは、何といっても伊藤万理華演じるチャチャの魅力です。初主演作『サマーフィルムにのって』(2021)においても自分の好きなことに対してまっすぐなハダシを魅力的に演じていました。

チャチャは自由に生きていますが、他者からの非難に気づいていないというわけではなく、気づいていてそれによって傷ついていない訳でもないでしょう。それでも気にしないと自分に素直に生きています

それが誰しもができることではないということは、現代を生きる私たちには分かっていることです。自由に生きることが難しいと苦しんでいる人もいれば、うまく順応することが当然だ、その方が楽だという人もいるかもしれません。

しかし、今まで描かれてきたタイプとは違うヒロインを打ち出すことで、息苦しさを感じていた人がこの映画を見ることで少し呼吸をしやすくなる、そんなこともあるでしょう。それこそが新たなヒロインを打ち出していく(not) HEROINE moviesなのです。



関連記事

ラブストーリー映画

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』あらすじと感想評価。ボーイズラブにジャニーズ大倉忠義と、成田凌が熱演!

『窮鼠はチーズの夢を見る』は2020年9月11日(金)公開。大倉忠義と成田凌がボーイズラブを熱演 映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の監督は、『劇場』『リバース・エッジ』などを手掛けた行定勲監督。水城せと …

ラブストーリー映画

【ネタバレ】パラレルワールド・ラブストーリーの原作と映画の違いを解説!小説との三角関係を徹底比較

パラレルワールドは存在するのか? 今の自分が生きている世界が本物だと自信を持って言えますか? これまで数多くの作品が映画化されてきた人気小説家・東野圭吾の1995年刊行の小説『パラレルワールド・ラブス …

ラブストーリー映画

【ネタバレ】帰らない日曜日|あらすじ感想考察と結末の評価解説。ラスト“記憶の競争馬”で官能ラブストーリーが描く“人生の本質”

人生をかけて綴った永遠の一日 ブッカー賞作家グレアム・スウィフトの小説『マザリング・サンデー』を『バハールの涙』(2019)のエバ・ユッソン監督が映画化。 第一次世界大戦後のイギリスを舞台に、名家の子 …

ラブストーリー映画

『ビクター/ビクトリア』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ミュージカルでジュリー・アンドリュースとブレイク・エドワーズが魅せるゲイの恋の行方

ジュリー・アンドリュース主演の『ビクター/ビクトリア』 『ティファニーで朝食を』(1961)や「ピンク・パンサー」シリーズの監督ブレイク・エドワーズのミュージカル映画、『ビクター/ビクトリア』。 ビク …

ラブストーリー映画

二階堂ふみ映画『ばるぼら』結末までのネタバレ解説。大人のラブストーリーを幻想的世界観を織り混ぜて描く

稲垣吾郎、二階堂ふみがW主演を果たして描く映画『ばるぼら』 1973年から1974年まで、漫画雑誌「ビッグコミック」で連載されていた、手塚治虫の漫画『ばるぼら』。 複雑で独特の作風である事から、長年「 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学