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Entry 2020/12/30
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【音楽がおすすめの映画】2020年ランキングベスト5:印象的な音色でさらに作品の虜になるセレクション《シネマダイバー:西川ちょり選》

  • Writer :
  • 西川ちょり

2020年の映画おすすめランキングベスト5 
選者:シネマダイバー西川ちょり

新型コロナウイルスの感染拡大により、映画業界も大きな影響を受けた一年でした。

上映延期、中止、映画館の休業など混乱を極めましたが、配信による公開の模索やリモート制作など様々な動きが見られたのも印象的でした。

そんな中、映画に携わる多くの方々の尽力のもと、映画館での上映が再開され、2020年度も数多くの良作が公開されたことには感謝の気持ちしかありません。

まだまだ厳しい状況が続きますが、テレンス・マリックの『ソング・トゥ・ソング』での台詞「歌によって人は高揚し救われる」にあやかって、「作品の出来が素晴らしいのは勿論のこと、音楽が非常に印象的だった作品」というテーマでベスト5を選んでみました。

【連載コラム】「2020年度映画ランキングベスト5」記事一覧はこちら

第5位『君が世界のはじまり』

【おすすめポイント】
もしかしたらあれは私だったかもしれない。私の親しい友人だったかもしれないー。

監督のふくだももこの小説を向井康介が脚色。鬱屈した閉塞感に押しつぶされそうになる高校生たちの心の叫びがブルーハーツの楽曲と共に響き渡ります。

俳優たちによるネイティブ大阪弁と持て余す肉体のエネルギーがヒリヒリとした痛みを伴ってまるでマシンガンのように炸裂する、本年度屈指の青春映画です。

第4位『スパイの妻』

【おすすめポイント】
1940年代の日本という、映画にすれば面白いものになること請け合いなのに、予算がかかり過ぎるからと敬遠されがちな題材を黒沢清監督が見事に描ききった秀作。

スリリングな展開を堪能し、蒼井優が倒れる前に発する一言には、そのままその言葉を打ち返したくなりました。

劇中に流れる楽曲「かりそめの恋」は、映画『ショウボート』の主題歌に日本語の歌詞をのせた1936年〈昭和11年)のヒット曲です。映画の中で2度流れますが、非常に重要な役割を果たしています。

第3位『スウィング・キッズ』

【おすすめポイント】
1951年、朝鮮戦争最中の巨斉(コジェ)捕虜収容所を舞台に、タップダンスに情熱を注ぐ「スウィング・キッズ」のメンバーたちをカン・ヒョンチョル監督が、ダイナミックかつ繊細に描いたドラマ。

タップダンスということで、ベニー・グッドマンの「シングシングシング」など多くの楽曲が流れる中、とりわけ印象的なのが、主演のD.O.とパク・ヘスが別々の場所でタップを踏む姿が交互に映し出されるシーンにデヴィッド・ボウイの「Modern Love」が流れること。この時代にこの選曲でくるとは! そのセンスに脱帽です。

第2位『鵞鳥湖の夜』

【おすすめポイント】
『薄氷の殺人』(2014)のディアオ・イーナン監督の5年ぶりとなる作品。『薄氷の殺人』の静謐な緊張感とは打って変わって、ジョニー・トーばりの活劇が繰り広げられたりまるでゴダールのようなショットが現れたり、驚きのごった煮感が異様な魅力を醸し出している一編。

中国南部のリゾート地を舞台に窃盗団、警察、観光客が入り乱れる中、大勢の人間が同じ方向を向いて同じフリで黙々とダンスしている風景が強烈な印象を残します。彼らが合わせて踊っているのはボニーMのディスコ・ミュージック「怪盗ラスプーチン」です。

第1位『燃ゆる女の肖像』

【おすすめポイント】
18世紀のフランス・ブルターニュ地方を舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像画を描く女性画家に芽生えた親密な感情をセリーヌ・シアマ監督が鮮烈に描いた愛の物語です。

女性たちが身分を超えて連帯するわずか5日間の日々が儚くも愛おしく胸に迫ります。思い出の曲であるヴィバルディの「四季 夏」の演奏を聴きながらヒロインのひとりが泣き笑いの表情を見せるあの長いショットが忘れがたい余韻を残します。

これからはこの曲を耳にするたび、映画のこと、彼女たちのことを思い出すことになるでしょう。

2020年注目の監督とキャスト

(C) Blackfin(Beijing)Culture & MediaCo.,Ltd – Heaven Pictures(Beijing)The Movie Co., – LtdEdward DING – BI Gan / ReallyLikeFilms

監督賞:ビー・ガン
男優賞:細川岳
女優賞:片山友希

【コメント】
ビー・ガンの『ロングデイズ ・ジャーニー この夜の涯てへ』と『凱里ブルース』の2作がロードショーされたことは2020年映画界の特筆すべきことのひとつでしょう。

2作品ともビー・ガンの生まれ故郷、凱里を舞台に、現実と記憶が交錯し、驚異的なワンシークエンスショットが展開します。その独自の映像世界にすっかり魅了されてしまいました。

残念だったのは、コロナ禍で関西では『ロングデイズ・ジャーニー』の3D上映が中止になってしまったことです。いつか映画館で3D版を観てみたいものです。

男優賞、女優賞は2020年に公開された作品の中でもっとも記憶に残る人物を演じ、今後の活躍が楽しみでならない俳優として、『佐々木、イン、マイマイン』の細川岳、『君が世界の始まり』の片山友希を選出しました。

まとめ

(C)Lilies Films.

2020年も韓国映画は粒ぞろいの作品が揃いました。愉快なコメディーアクションの『エクストリーム・ジョブ』は、労働者賛歌ともいうべき熱い魂がみなぎり、俳優のキム・ユンソクの初監督作品『未成年』では親の不倫問題で揺れる少女たちの心が繊細に描かれ、ハン・ソッキュとソル・ギョングの共演作『悪の偶像』における異様な悪の姿に震撼し、『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』では、久しぶりにスクリーンに復帰したイ・ヨンエが、まるで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラピばりに一人怪しげな漁港に乗り込んでいき、キム・ボラ監督の『はちどり』は、一人の少女の成長が韓国社会の成熟への軌跡と重ねて描かれました。韓国映画だけでベストが組めるほど充実していました。

勿論、他にも多くの優れた作品が心に残っています。Netflixによるオリジナル映画も続々と話題作が飛び出し、アカデミー賞を大いに賑わすのではないかと予想しています。とりわけ、チャドウィック・ボーズマンが出演した『ザ・ファイブ・ブラッズ』、『マ・レイニーのブラックボトム』、チャーリー・カウフマンの『もう終わりにしよう』、エディー・マーフィーが溌溂とした演技を見せた『ルディ・レイ・ムーア』が印象に残っています。

【連載コラム】「2020年度映画ランキングベスト5」記事一覧はこちら





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