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『ノッティングヒルの恋人』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。魅力ある恋愛映画をヒューグラント×ジュリアロバーツで紡いだ“おしゃれで最高の楽しさ”

  • Writer :
  • 谷川裕美子

ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラントを迎えて名手リチャード・カーティスが紡ぐ珠玉のラブコメ

プリティ・ウーマン』(1990)のジュリア・ロバーツと『ラブ・アクチュアリー』(2004)のヒュー・グラントが紡ぐロマンティック・コメディ『ノッティングヒルの恋人』

ロンドンの一角にあるノッティングヒルのごく平凡な書店主とハリウッドスター女優の恋が爽やかにユーモラスに描かれます。

監督をロジャー・ミッシェル、脚本を『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)の監督を務めたラブコメの名手リチャード・カーティスが務めます。
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ときめきたっぷりなのに思わず笑ってしまう楽しい王道の恋愛コメディの魅力をご紹介します。

映画『ノッティングヒルの恋人』の作品情報


(C)1999 Universal Studios – All Rights Reserved

【公開】
1999年(アメリカ映画)

【脚本】
リチャード・カーティス

【監督】
ロジャー・ミッシェル

【編集】
ニック・ムーア

【出演】
ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、リス・エヴァンス、ジーナ・マッキー、ティム・マキナニー、エマ・チャンバース、アレック・ボールドウィン

【作品概要】

ロンドンに立ち寄ったアメリカの大スター女優と、ノッティングヒルの小さな売れない旅行本屋の店主が偶然出会い、愛を育んでいくさまを描くラブコメディ。

プリティ・ウーマン』(1990)『ペリカン文書』(1994)のジュリア・ロバーツと、『ラブ・アクチュアリー』(2004)のヒュー・グラントが共演。

ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)の監督でロマンティック・コメディの名手リチャード・カーティスが脚本を務めた珠玉の一作です。

リス・エヴァンス、ジーナ・マッキー、ティム・マキナニー、エマ・チャンバース、アレック・ボールドウィンらが共演。

映画『ノッティングヒルの恋人』のあらすじとネタバレ


(C)1999 Universal Studios – All Rights Reserved

ロンドンの一角にあるノッティングヒルで旅行書専門書店を営む平凡なバツイチ男のウィリアム。

赤字に悩むその店にハリウッドの大スター、アナ・スコットが訪れ、ウィリアムは驚きます。一冊の本を買って笑顔で去って行くアナ。

その後ジュースを買ったウィリアムは、街角でアナにぶつかって彼女の服を汚してしまいます。彼は自宅に彼女を連れて行き、バスルームを貸すことに。着替えたアナに、ウィリアムは不器用に紅茶やあんずなどいろいろ勧めますが、彼女は面白そうに笑顔で断ります。

帰り際、アナはウィリアムにキスし、「今日のことは内緒に」と言って立ち去りました。

数日後。ウィリアムの変わり者のルームメイト・スパイクが、何日か経ってからアナの伝言をウィリアムに伝えます。

慌ててホテル・リッツに向かったウィリアムは、アナの新作映画キャンペーンにもぐりこみ、記者のふりをして彼女と再会します。

夜の予定を空けたアナは、ウィリアムの妹の誕生パーティに一緒に行くことになります。

妹のハニーや友人たちはアナに気づいて驚くものの、パーティーは楽しく和やかなものでした。にぎやかな時間にアナはリラックスし、彼らと同じように自分の辛い経験も話します。

ウィリアムとアナは、帰り道によその庭に入り込みます。「この庭を愛したジューンへ いつも隣に座っていたジョセフより」と彫られたベンチをみつけ、「一生を共にする人もいるのね 一緒に座って」と言いながらアナは座ります。

翌日もデートするふたり。レストランでアナの陰口を言う客に、ウィリアムは思わず立ち上がって注意します。アナもまた彼らに皮肉を言いますが、その後後悔します。

アナは必死の表情でウィリアムをホテルの彼女の部屋に誘います。うなずくウィリアム。

彼女と5分ずらして彼が部屋を訪ねると、アメリカにいるはずのアナの恋人、ハリウッドスターのジェフ・キングが来ていました。ルームサービスだとごまかしたウィリアムに、キングは皿を片付けるように言ってチップを渡します。目の前で熱いキスをする恋人たち。

住む世界の違いを痛感したウィリアムは身を引きます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『ノッティングヒルの恋人』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『ノッティングヒルの恋人』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

元気のないウィリアムを慰めようとするスパイク。ウィリアムは決して手に入らない女性を思う気持ちを打ち明けます。

友人たちはウィリアムに色々な風変りな女性を紹介しますが、彼は「愛し合える相手を見つけられるのは奇跡に近いこと」と言い、受け入れませんでした。

その後、成功する前のアナのヌード写真が流出して大騒ぎとなります。疲れ果てウィリアムの家を訪れたアナ。行くところがないと言って泣く彼女にウィリアムはここは安心だと言って慰めます。

そこにスパイクが帰宅し、風呂にアナがいると気付かずにバスルームに入ってしまいます。笑顔で挨拶するアナ。

アナが、以前ウィリアムを恋人と鉢合わせさせたことを謝り、普通の人と普通に付き合おうとすると必ず悲惨なことになると辛そうに言います。その晩、ふたりは熱い一夜を過ごしました。

翌朝、ベッドでブランチをとりながら、「しばらくいていいか」と聞く彼女に、ウィリアムは「ずっといて」とこたえます。

するとそこに鳴り響く玄関のベル。ウィリアムがパンツ姿でドアを開けると、大勢のマスコミが来ていました。アナはスパイクが自分を売ったと言って激怒します。ウィリアムは彼女を必死で落ち着かせようとしますが、関係は壊れたままアナは迎えの車に乗って去って行きました。

スパイクがパブで話してしまったために、マスコミに情報が漏れていました。

半年が経ち、ウィリアムは友人に落ち込んだ態度をとっていたことを謝り、どん底は過ぎたと話します。そんな彼に、友人はオスカーを手にしたアナがロンドンにいることを教えました。

撮影現場に駆け付けたウィリアムは、アナと再会。彼女に待っていてほしいと言われ待っていましたが、彼女が共演者に「彼は過去の人。何しに来たんだか。」と言うのを聞いて傷つき帰ってしまいます。

翌日本屋を訪れたアナは、彼女のアパートにあったふたりの好きなシャガールの絵を持ってきていました。2度も失礼なことをしたから電話しづらかったと言うアナ。それからこう言いました。

「帰国予定だけど、残ったらまた会ってくれる?できるなら何度でも。」

しかし、傷つくことが怖いウィリアムの返事は「ノー」でした。

「正しいわ。でも忘れないで。私もひとりの女よ。好きな男の人に愛してほしいと願っている」アナはそう言って立ち去ります。

友人たちに経過を話し、意見を聞くウィリアム。誰もが「別れたのは正しい」と言う中、スパイクだけは「お前はマヌケだ」と言います。

たとえ有名でもひとりの女として男に愛してほしいと願っていると言った彼女の言葉を思い出したウィリアムは自分の間違いに気づき、友人たちと車に乗り込んでアナを探し回ります。

会見場を探し当て、飛び込んでいくウィリアム。大勢の記者の中で手をあげて、アナに質問します。

「友人とそれ以上の仲になる可能性は?もしかしてその男が今になって自分がバカだと気づいて、もう一度やり直したいと言ったらチャンスを与えますか?」

アナが満面の笑みで答えます。「ええ、そうするわ。」

いつまでもイギリスにいると話すアナとウィリアムに向かって記者たちが一斉にフラッシュをたきます。ふたりは笑顔でみつめあいました。

やがてふたりは結婚。お腹が大きくなったアナは、いつかの愛のベンチでウィリアムに膝まくらしてもらい幸福そうに寝そべっています。

映画『ノッティングヒルの恋人』の感想と評価


(C)1999 Universal Studios – All Rights Reserved

ごく普通で常識的な男の魅力

ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)で知られるロマンティック・コメディの名手リチャード・カーティスが脚本を手掛けた本作『ノッティングヒルの恋人』。

逆シンデレラストーリー、あるいは『ローマの休日』の男女逆転ハッピーエンド編ともいえる、観ていて幸せになるラブコメディです。

主演を務めるのは大きな口の明るい笑顔が印象的なジュリア・ロバーツと、『ラブ・アクチュアリー』(2004)『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)などでロマンティック・コメディの帝王と呼ばれるヒュー・グラント。

カーティス同様ラブコメの職人ともいえるロバーツとグラントが最高におしゃれでハッピーなおとぎ話を演じます。

特にヒュー・グラントのラブコメの才能は素晴らしいものです。劇中で、昔のあだ名は「へなちょこ」だったというシーンがありますが、すかした風情のイケメンなのに笑われることを全くいとわないグラントそのものにもぴったりな呼び名です。ハンサムなのになんともへなちょこで、突っ込みどころ満載なのが彼の強みです。

今作ではスターに心奪われる「乙女」な表情をみせています。彼が演じるウィリアムはバツイチの中年男性ですが、大好きなアナを前にすると少年のような顔になってしまいます。キスはいつも彼女から。彼女から誘ってくれない限り、自分からすることなんてとてもできません。

それでも彼女の前でかっこつけたい気持ちや、彼女を守る騎士(ナイト)であろうとする思いも見え隠れします。

アナがこれまで付き合ってきたのは、ギラギラしたハリウッドスターたち。ウィリアムがアナのホテルで鉢合わせしたジェフ・キングが象徴的です。この役にアレックス・ボールドウィンをキャスティングしたセンスは絶妙!ちょっと小太りだけど生命力にあふれてセクシーなキングは、ひ弱なウィリアムを簡単にはねのけてしまいます。

けれどアナはほどなくして彼とは別れ、最後には平凡だけど誠実なウィリアムを選んで彼の子供を生んで穏やかに生きる道を選びます。彼女は心底から、庭のベンチに刻まれた愛のことばのような生き方に憧れていたのでした

そんなアナが、ちょっと変わり者だけれどごく普通で常識的な男性・ウィリアムに心奪われる気持ちに共感できます。

幸せな笑いを届けてくれるコメディ

本作『ノッティングヒルの恋人』はおしゃれな胸キュンシーンがたまりませんが、コメディ部分も素晴らしい一作です。

ウィリアムがインタビュアーとしてアナの部屋に潜り込むシーン。彼は、目についた「馬と猟犬」という雑誌の記者だと思わず身分を偽ります。このセンスはウィリアムならでは。このインパクトある雑誌名は、実はアナもお気に入りだったらしく、ラストシーンで「馬と猟犬の読者も喜びます」と口にしています。

それはさておき、この偽インタビューシーンは最高です。どうしてもアナに映画の質問をしなければならなくなったウィリアムが四苦八苦しながら「映画の中で馬が出てくるシーンは?」と聞くと、アナはしごくまじめな顔でこたえます。「いいえ。宇宙船の映画だから」。

その後、「次回作には馬を出したい?」と聞くのですが、次回作の舞台は潜水艦なので…と王道のオチが続きます。これが独特の空気感でたまらなくおかしいのです。

アナと別れた後も、ウィリアムはほかの出演者にも延々とインタビューを続けざるを得なくなり、冷や汗をかきながらとんちんかんな質問を繰り返して私たちを笑わせてくれます。

よその庭に忍び込むシーンのへなちょこぶりもさすがです。なんどトライしても彼が登れなかった門を、するりと乗り越えてみせるアナ。あたふたと後を追うウィリアムのおかしさは天下一品です。
 
メガネをみつけられず、度の入ったゴーグルをつけて映画館に入ったウィリアムの姿は爆笑もの。

笑いの強めのスパイスとなっているのが、ウィリアムのルームメートの変わり者・スパイクです。前半はポンコツぶりをみせて笑わせますが、後半みせる彼の直情的なやさしさには何度もホロッとさせられます。彼を友だちに選んだウィリアム、そして彼との結婚を決めたウィリアムの妹・ハニーに拍手を送りたくなるほどのナイスガイです。

車にぎゅう詰めになって乗って、ウィリアムとともにアナの会見会場に乗り込んでいく悪友たちも最高にチャーミングですよ。こんな友人を持っているウィリアムだからこそ、アナは魅力を感じたに違いありません。

まとめ


(C)1999 Universal Studios – All Rights Reserved

「こんなことがあったら素敵なのに」と少女が夢見るようなシチュエーションを、バツイチ男のウィリアムを主人公にして叶えた珠玉の一作『ノッティングヒルの恋人』。

振り回されると心が壊れてしまうから、という理由でラスト近くに彼女をふってしまうところまで含めて、へなちょこウィリアムの気持ちが痛いほどわかるという方、きっとたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。。

ウィリアムは住む世界が違うことに打ちのめされて身を引こうとしますが、アナは普通の人が自分と付き合うと悲惨な目に合わせてしまうといって苦しんできました。

しかし、お互いの辛さを理解した上で、苦しみをしのぐ大きな愛と相手の存在の大切さを自覚したふたりは、ステキなハッピーエンドを迎えます。

夢のようなストーリーの中に描かれる、普遍的な愛の物語をどうぞたっぷり楽しんでください。




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