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『バカ塗りの娘』あらすじ感想と評価解説。堀田真由が青森の伝統工芸《津軽塗》の美に魅せられた漆器職人を演じる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『バカ塗りの娘』は2023年9月1日(金)より全国公開

塗っては研いでを繰り返す青森の伝統工芸・津軽塗を題材に、不器用な女性が津軽塗職人の父との暮らしの中で自身の進む道を見いだしていく姿を描く『バカ塗りの娘』が2023年9月1日(金)より全国公開されます。

ドラマ『大奥』や映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』(2022)などで活躍する堀田真由が主演を務め、小林薫が寡黙なその父を演じます。

監督は『まく子』(2019)の鶴岡慧子。

津軽塗が原因となって家族がバラバラになってしまいながらも、漆への情熱を抱き続けるヒロインの懸命な生きざまが描きだされます。

芳醇な余韻を味わえる心温まる本作の魅力についてご紹介します。

映画『バカ塗りの娘』の作品情報


(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
高森美由紀

【監督】
鶴岡慧子

【脚本】
鶴岡慧子、小嶋健作

【編集】
普嶋信一

【出演】
堀田真由、坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸、ジョナゴールド、王林、木野花、坂本長利、小林薫

【作品概要】
何度も塗っては研いでを繰り返す青森の伝統工芸・津軽塗を題材に、不器用なヒロインが新たな一歩を踏み出していくさまを描きだします。

高森美由紀の小説「ジャパン・ディグニティ」を原作に、『まく子』(2019)の鶴岡慧子監督が映画化しました。

タイトルの「バカ塗り」とは、「バカに塗って、バカに手間暇かけて、バカに丈夫」と言われるほど、塗っては研ぐ工程を繰り返す津軽塗を指す言葉です。

ドラマ『大奥』や映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』(2022)などで活躍中の若手俳優・堀田真由が主人公の美也子役を務め、『深夜食堂』(2015)の小林薫が寡黙な職人の父を演じています。

坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、坂本長利、青森出身の木野花、王林らが出演。

映画『バカ塗りの娘』のあらすじ


(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

青森県弘前市。青木美也子は高校卒業後もやりたいことが見つからず、家計を助けるためスーパーのパートをしています。

仕事でもミスをしてしまい、何をやってもうまくいかず自分に自信を持てない彼女でしたが、津軽塗職人である父の手伝いだけは夢中になれました。

しかし父は業界の斜陽とともに気力を失い、貧しい暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして母は出ていき、兄もまた家を継がず美容師になっていました。

いつしか家族もバラバラになりましたが、兄は家に残って苦労している妹を心配します。

そんな家族の中で、津軽塗の道に進みたいと言い出せない美也子でしたが、ある日とうとう彼女は父に自分の決心を伝え…。

映画『バカ塗りの娘』の感想と評価


(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

漆と同じく何度も塗り重ねていく家族の絆

美しい景色の中でゆっくり流れる時間が心地よい作品です。真冬のすさまじい雪吹雪など、青森ならではの冷たく厳しい世界も映し出されます。

何度も塗り重ねることで生まれる津軽塗の美しさ。同じことを繰り返しているように見えて、実は完成に向けて一歩一歩進んでいく行程は、不器用なヒロイン・美也子の生き方そのものにも見えます

黙々と丁寧に津軽塗の作業を進める父と娘。静かな空間の中にやさしく響く作業の音。単調な作業を繰り返しているかに見えますが、それらはすべて完成させるための大事な一歩となっていることが伝わってきます。最終的に素晴らしい美にたどりつく様を見て、大きな感動を覚えることでしょう

いぶし銀の演技を見せる名優・小林薫と清潔感ある堀田が紡ぐ、厳しくも温かな父娘関係が見事です。父の手元を熱心に見つめる娘の真剣な眼差しや、静かで豊かなふたりの時間に思わず引き込まれていきます。

斜陽産業の漆の仕事一本の頑固な父親と家族との断絶が、厳しい現実として描かれますが、そこには確かな絆が存在します。家を出ても妹を思いやる兄の優しさや、寡黙だけれど子どもたちを心から愛する父の思いに胸打たれるに違いありません。93歳の坂本長利演じる、津軽塗の名人だった祖父の存在にも注目です。

丁寧に塗り重ねられる漆が、層ごとに異なる色合いを見せるのと同じく、家族の姿もその時々で大きく色合いを変えていきます。それぞれが変化し、成長していくことで関係性が成熟していくことに、改めて気づかされる一作です。

厳しい伝統工芸の状況やジェンダーの問題も映し出され、物語そのものもさまざまな面を合わせ持つ一作となっています。

内気なヒロインが踏み出す未来への一歩


(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

堀田真由演じる美也子は内気で不器用な女性で、スーパーでの仕事もいまいちうまくいっていません。そんな彼女ですが、祖父の代から受け継いでいる津軽塗の仕事に強く魅せられていました。

しかし、仕事と父への反発から母も兄も家を出ていることもあり、素直に跡を継ぎたいと言えずにいます。父もまた、斜陽産業の漆の仕事を娘に継がせようとしません。

胸に思いを秘めたままだった美也子は、淡い恋心をきっかけに大きな一歩を踏み出します

彼女の決心は華々しく披露されることなく、静かにひとり行動を起こすという形で表面化します。静かにふつふつと燃える炎のような熱さで、一心に己の道に打ち込む美也子の姿は感動的です。

内向的だった美也子が自身の足で歩み出す姿から、大きな勇気をもらえることでしょう。

まとめ


(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

丁寧に塗り重ねることで目を見張るような美しさを生み出す伝統工芸の津軽塗の世界を舞台に、ひとりの女性の飛翔と家族の深い絆を描きだす作品『バカ塗りの娘』

堀田を始めとする若手俳優らの好演に加え、小林薫、木野花、坂本長利、酒向芳らベテラン陣の味わいある演技に心地よい温かみを感じる一作です。

主人公・美也子の懸命な生き方に刺激を受け、自分でもなにかに一歩を踏み出したくなるに違いありません。

映画『バカ塗りの娘』は2023年9月1日(金)より全国公開です。





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