Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2020/05/20
Update

映画『HERO 2020』あらすじと感想レビュー。舞台版キャストの廣瀬智紀×北原里英が“厄介さと可笑しさ”を演じる

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『HERO 2020』は、2020年6月19日から、シネ・リーブル池袋他で、全国順次公開予定

「2年限定の交際」を条件に、恋人として付き合っていた広樹と浅美。

約束の2年目を迎え、広樹が浅美との別れを決意したことから始まる、さまざまな人を巻き込んだ騒動を描いた、ハートフルコメディ『HERO 2020』。

本作が長編デビュー作となる西条みつとし。自身の主宰する劇団「TAIYO MAGIC FILM」の旗揚げ公演で上演した舞台を、舞台版と同じキャストで映像化した、本作をご紹介します。

映画『HERO 2020』の作品情報


(C)「HERO 2020」製作委員会

【公開】
2020年公開(日本映画)

【監督・脚本】
西条みつとし

【キャスト】
廣瀬智紀、北原里英、小松準弥、前島亜美、小早川俊輔、小築舞衣、中村涼子、米千晴、小槙まこ、加藤玲大、後藤拓斗、双松桃子、飛鳥凛、伊藤裕一、根本正勝、今立進、松尾諭、斎藤工

【作品概要】
放送作家、コント作家として活躍し、齊藤工の監督作『blank13』の脚本でも知られる西条みつとしが、自身が主宰する劇団「TAIYO MAGIC FILM」の人気舞台を、自ら監督と脚本を担当し、舞台と同じキャストで映像化した意欲作。

舞台版のキャストが、映画でも同じ役を演じており、主人公の広樹を演じるのは、「弱虫ペダル」シリーズなどの舞台や、『刀剣乱舞-継承-』、『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』などの映像作品で活躍している廣瀬智紀。

広樹の恋人、浅美を演じる北原里英は、AKB48グループを卒業後、つかこうへいの舞台に出演し、映画『サニー/32』では主演を務めるなど、女優として活躍し高い評価を受けています。

舞台版のキャストの他に、松尾諭と斎藤工が参加し、作品を語るうえで欠かせない、重要な役どころで出演しています。

映画『HERO 2020』のあらすじ


(C)「HERO 2020」製作委員会
作業中の事故で足を怪我し、入院している飯塚広樹。

広樹の恋人である大崎浅美は、広樹の病室に見舞いへ訪れますが、交際して2年目が近づいており、お互いに重い空気が流れています。

そこへ、広樹の妹の真菜が病室を訪れ、広樹と浅美の重い空気を察知します。

広樹が煙草を吸う為に病室を出てしまい、浅美と2人になった真菜は、浅美から「広樹とは2年限定の交際である」ことを聞かされます。

浅美から語られる、2人が付き合う事になった過去。

浅美が、同じ会社で働く広樹に恋心を抱き告白しますが、広樹には断られてしまいます。

それでも諦めきれない浅美は、広樹に2度目の告白をし、広樹も浅美の気持ちを受け入れますが、その際に出された条件が「2年限定の交際」でした。

浅美は「付き合っているうちに、その条件も消えてゆく」と期待していましたが、広樹の決意は変わらず、交際2年目を迎えた日に、2人は別れることが決まっています。

広樹と浅美の幸せを願う真菜は、「2年限定の交際」に反対し、広樹に理由を問い詰めますが、広樹は頑なに答えません。

納得がいかない浅美は、広樹の秘密を聞き出す為に「あらゆるお悩み、トラブルを解決します」をモットーとする、凄腕の「レンタル人材代行派遣会社」に相談します。

「レンタル人材代行派遣会社」の松島は、真菜からの依頼を受け、あるプランを実行に移します。

やがて、松島が計画したプランは、広樹と同じ病室の患者や、その見舞いに来た友人を巻き込み、大騒動に発展していきます。

大騒動の果てに広樹が語る、「2年限定の交際」の真相とは?

映画『HERO 2020』感想と評価


(C)「HERO 2020」製作委員会
2年限定で恋人の浅美と交際している、広樹が抱える「ある秘密」を中心に、さまざまな人のエピソードが、やがて騒動に発展していく1日の出来事を描いた、ハートフルコメディ『HERO 2020』。

病院を舞台に、広樹と浅美の「2年限定の交際」エピソードを軸に、真菜の依頼を受けた松島が、広樹の秘密を聞き出す為に、死神に化けて病院内に潜入する「パターン31作戦」や、広樹と同じ病室に入院したポジティブ男、若草共武と友人たちとのエピソードなど、登場人物のすれ違いや勘違いが絡み合い、話がややこしくも可笑しな方向に転んでいきます。

本作は上記のようなコメディ要素と、広樹と浅美を巡る、シリアスなドラマ要素が組み合わさった、さまざまな人物が絡む群像劇となっています。

病院を舞台にした、本作の登場人物は、普通の人達なのですが、何故タイトルが『HERO』なのでしょうか?

この『HERO』は、超人的な能力で正義の為に戦う、ヒーローの意味です。

ヒーローとは「正義の味方」である事が多く、その対照的な存在が、人々を脅かす「悪の組織」でしょう。

映画や特撮ドラマでは、「正義の味方」も「悪の組織」も特殊な能力を持っている事が多く、正義と悪の戦いに挟まれるのが、いたって普通の人間達です。

しかし、普通の人間であっても「善人」と「悪人」に分けられてしまい、それは、ほんの些細な事で決まってしまいます。

良かれと思ってやった事が悪く受け取られてしまったり、その逆もあったりと「善人」と「悪人」の境界線は曖昧で、その真ん中にいるのが、普通の人達であるといえます。

本作で描かれている、勘違いやすれ違いの連続はまさにそれで、本人に悪意が無いのに、結果的に悪い影響を与えてしまうという展開もあり、自身の取った行動が「正義」とも「悪」とも受け取られてしまう、普通の人間の厄介さや、可笑しさを描いています。

本作に出てくる登場人物は、根っからの悪人は誰もいない為、前述した普通の人間の厄介さや、可笑しさが、さらに際立っています。

また、広樹が抱えている「ある秘密」がラストに明かされるのですが、それも「善人」と「悪人」の境界線にいる「普通の人」だからこその悩みです。

広樹は、多くの男の子がそうであるように、幼い頃からヒーローに憧れています。

「誰かを救うヒーローでありたい」と思うからこそ、そうはなれず苦しむ広樹の姿は、共感できる部分があり、広樹が憧れるヒーローとのエピソードも、非常に身近で感動的な場面となっています。

『HERO 2020』に出てくる普通の人達は、それぞれの行動が、他の人物に影響を与えており、無関係に見えたエピソードの全てが、クライマックスへと集約していきます。

普通の人間であっても、何かしら行動をすることで、人は誰かのヒーローになっているかもしれない、人と出会うこと、そして行動すること、それこそが大切であると感じた作品です。

まとめ


(C)「HERO 2020」製作委員会
お互いに影響を与える、普通の人達の物語を通して、誰もが憧れるヒーローの存在を描いた映画『HERO 2020』

本作は、広樹達が繰り広げる病院でのエピソードの他に、悪と戦う戦隊ヒーローのエピソードも織り込まれています。

戦隊ヒーローと言っても、特撮ドラマの撮影で、ヒーローを演じている俳優たちのやりとりが描かれており、この点においても「誰でもヒーローであり、普通の人間である」というメッセージを感じます。

また、本作のラストで松島が広樹に伝えるあるセリフは、西条監督のヒーロー像を感じることができる、面白い解釈なので、そちらも注目して下さい。

映画『HERO 2020』では、ヒーローになるのに必要なのは勇気で、勇気さえあれば、あとは誰かが背中を押してくれるという、優しいメッセージに溢れた作品となっています。

映画『HERO 2020』は、2020年6月19日から、シネ・リーブル池袋他で、全国順次公開予定



関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『空母いぶき』キャストの秋津竜太役は西島秀俊。演技力とプロフィール紹介

累計400万部を突破する人気コミック作品・かわぐちかいじ原作の『空母いぶき』を実写化した映画が、2019年5月24日より公開されます。 監督は、『ホワイトアウト』『沈まぬ太陽』などで知られる若松節朗。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレ感想。結末で火葬された宮沢りえ演じる母双葉の演技力とは

家族とは何かを問う物語 2017年開催の日本アカデミー賞を初めとし、さまざまな映画祭で数多くの賞を授かった、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。 難病を扱った本作ですが、それだけでは終わらない、深い感動と …

ヒューマンドラマ映画

松本穂香映画『おいしい家族』ネタバレ感想とレビュー評価。ふくだももこ監督が描く新たな家族のカタチ

個性的な出演者たちがつむぎ出す、おかしな家族を描いた佳作! 日本映画学校の卒業制作として、監督・脚本を務めた『グッバイ・マーザー』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭、下北沢映画祭などで入選したふく …

ヒューマンドラマ映画

映画『それでも夜は明ける』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

今回取り上げるのは第86回アカデミー賞作品賞をはじめ、数々の賞を受賞した衝撃の実録映画『それでも夜は明ける』です。 悲惨な歴史の真実を、名優たちが体当りで挑んで描いた本作について詳しくご紹介します。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『億男』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【佐藤健&高橋一生】

映画『億男』は2018年10月19日(金)よりロードショー! 『世界から猫が消えたなら』で知られる川村元気の小説を『ハゲタカ』『るろうに剣心』の大友啓史監督が映画化。大友監督は『ハゲタカ』以来の“お金 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学