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Entry 2023/03/29
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【ネタバレ】シン仮面ライダー|滝/斎藤工と立花/竹野内豊の“名前”元ネタは?偽名説×庵野秀明“子ども向け”観が生み出す“未知なる世界”の拡大|仮面の男の名はシン11

  • Writer :
  • 河合のび

連載コラム『仮面の男の名はシン』第11回

シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・ウルトラマン』に続く新たな“シン”映画『シン・仮面ライダー』。

原作・石ノ森章太郎の特撮テレビドラマ『仮面ライダー』(1971〜1973)及び関連作品群を基に、庵野秀明が監督・脚本を手がけた作品です。

本記事では、映画作中にて本郷猛/仮面ライダーと緑川ルリ子と接触し「アンチショッカー同盟」の契約を結んだ“政府の男”こと立花(演:竹野内豊)、“情報機関の男”こと滝(演:斎藤工)についてクローズアップ。

二人が映画結末にて名乗った「立花」「滝」という名の“元ネタ”解説をはじめ、立花がテレビドラマ『仮面ライダー』の“元ネタ”と大きく異なる設定で描かれた理由、「アンチショッカー同盟」の“元ネタ”から想像する立花・滝の“素性”などを考察していきます。

【連載コラム】『仮面の男の名はシン』記事一覧はこちら

映画『シン・仮面ライダー』の作品情報


(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
石ノ森章太郎

【脚本・監督】
庵野秀明

【キャスト】
池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、西野七瀬、本郷奏多、塚本晋也、手塚とおる、松尾スズキ、仲村トオル、安田顕、市川実日子、松坂桃李、大森南朋、竹野内豊、斎藤工、森山未來

【作品概要】
1971年4月に第1作目『仮面ライダー』の放送が開始され、今年2021年で50周年を迎える「仮面ライダー」シリーズの生誕50周年作品として企画された映画作品。

脚本・監督は『シン・ゴジラ』(2016)と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)にて総監督を、『シン・ウルトラマン』(2022)にて脚本・総監修を務めた庵野秀明。

主人公の本郷猛/仮面ライダーを池松壮亮、ヒロイン・緑川ルリ子を浜辺美波、一文字隼人/仮面ライダー第2号を柄本佑が演じる。


“政府の男”立花ד情報機関の男”滝を考察・解説!

映画『シン・仮面ライダー』追告

元ネタは「仮面ライダーの協力者」の“あの二人”

本郷猛/仮面ライダーと緑川ルリ子に「アンチショッカー同盟」という名の下「SHOCKERに関する情報提供と引き換えの、オーグメントの排除ならびに組織壊滅への協力」を依頼し、映画終盤でついにその名を明かした““政府の男”こと立花と“情報機関の男”こと滝。

両者の「立花」「滝」の名はいずれも、テレビドラマ『仮面ライダー』にて本郷、一文字隼人ら“仮面ライダー”を助ける協力者として活躍した立花藤兵衛、滝和也(石ノ森漫画版では「滝二郎」)から由来していると考えられています。

テレビドラマ『仮面ライダー』における滝和也は「本郷のライバルの一人として知られるオートバイレーサーにして、ショッカーを追っていたFBIの特命捜査官」として描かれています。『シン・仮面ライダー』に登場した滝の「情報機関の男」という肩書きも、「FBIの特命捜査官」なる設定が“元ネタ”の一つであるのは明らかでしょう。

また『シン・仮面ライダー』の滝を演じたのが、シン・シリーズ前作『シン・ウルトラマン』にて「警察庁公安部から禍特対に出向した人間」を演じた斎藤工とはいえ、テレビドラマ版・石ノ森漫画版に共通する「FBI捜査官」という設定からも、映画作中での立花・滝のSHOCKERの壊滅活動は“日米合同”の作戦だったのかもしれません

一方のテレビドラマ『仮面ライダー』での立花藤兵衛は「本郷のバイク乗りとしての師」という設定は残り続けていたものの、テレビドラマ『仮面ライダー』第1話〜第13話では「『スナックアミーゴ』のマスター兼『立花オートレーシングチーム』のオーナー」で登場。

テレビドラマ『仮面ライダー』第1話「怪奇蜘蛛男」

しかし、その後は「オートバイ用品店『立花オートコーナー』を創業し、正式に立ち上げた『立花レーシングクラブ』の会長も務める(中期)」「クラブも継続させつつ、少年少女で構成された仮面ライダーの私設支援組織『少年仮面ライダー隊』を創設し会長を務める(後期)」など、多くの設定の変遷が存在します。

ちなみに、石ノ森漫画版では「富豪であった本郷の父の代から本郷家に勤めてきた執事」という『バットマン』の執事・アルフレッド(漫画では1943年に初登場)をどこか彷彿させる設定で登場。

また、テレビドラマ『仮面ライダー』以降もシリーズ第5作『仮面ライダーストロンガー』まで各シリーズ作品に登場した中でも、『仮面ライダーV3』での「スポーツ用品店の経営者」、『仮面ライダーX』での「コーヒーショップのマスター」など多彩な経歴を作り続けていきました。

仮面ライダーたちが乗るバイクのメカニック担当はもちろん、ライダーたちの新必殺技の特訓を担うなどの優秀なトレーナーでもある」という一面以上に、「おやっさん/親父さん」の愛称で孤独な戦いに身を投じるライダーたちの精神的支えを務めてきた立花藤兵衛

そんな立花藤兵衛の“役目”は『シン・仮面ライダー』登場の立花にも少なからず反映されており、自身らの「SHOCKER壊滅」という目的を優先する反面、ルリ子亡き後の“優しすぎる男”本郷/仮面ライダー、そして本郷亡き後の一文字/仮面ライダー第2号に精神面でも助言をするなど「おやっさん」の姿が垣間見えるのです。

“未知の世界”を描くための設定変更


(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

「FBI捜査官」という設定が反映された“情報機関の男”滝はともかく、“政府の男”というテレビドラマ『仮面ライダー』の立花藤兵衛とは全く異なる設定へと変更された『シン・仮面ライダー』の立花

無論「シン・シリーズの各作品で展開され続ける“マルチバース”を橋渡しするキャラクターとして描くため」も理由の一つとは思われますが、そうした設定変更の“別の理由”は、牧村康正著『「仮面」に魅せられた男たち』(2023、講談社)に掲載された監督・庵野秀明のインタビューから窺うことができます。

同インタビューにて庵野秀明は、テレビドラマ『仮面ライダー』を途中から観なくなった時期について、少年仮面ライダー隊など“作品のメイン視聴者となる子どもの目線”を確保するための子どもの登場人物が大きく取り上げられ始めた時期であったと述懐。

そして「子供も自分が全部わかるものって、やっぱり面白くないと思うんですよ。未知のものが混じっていて、大人っぽい部分がないとね」と、“子ども向け”作品だからこそ必要な“大人っぽい、子どもにとって未知の世界”を子どもたちに見せることの意味を語っています。

不朽の名作たちが持つ魅力を、現代の状況に即した形で次世代にも伝える」というテーマも持つシン・シリーズ。その「次世代」には子どもも含まれているのは明白ですが、『シン・仮面ライダー』含むシン・シリーズ作品がいずれも“子ども向け”を感じさせない作りとなっているのは「自身がかつて目にした“未知の世界”への衝撃を現在の子どもたちにも味わってほしい」という庵野秀明の願いが込められているといえます。

だからこそ、「少年仮面ライダー隊=子ども向け作品が避けるべき“あざとさ”を生み出してしまった人間としての立花藤兵衛」から脱却するため、そしてその肩書きや暗躍ぶりなど、子どもたちにとっての“未知の世界”を描くために「“政府の男”立花」が形作られたのでしょう。

「アンチショッカー同盟」から想像する“戦う動機”


(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

シン・仮面ライダー』作中、立花は本郷/仮面ライダーとルリ子との“契約”を「アンチショッカー同盟」と評しましたが、その名称にも無論“元ネタ”が存在します。

テレビドラマ『仮面ライダー』におけるアンチショッカー同盟は、「ショッカー」及び後継組織「ゲルショッカー」の犠牲者の遺族で主に構成された組織の名称であり、「仮面ライダーとして戦う本郷、一文字とは異なる手段でゲルショッカーを壊滅させんと秘密裏に活動する組織」として登場します。

初登場回であるテレビドラマ第92話「兇悪!にせ仮面ライダー」では、組織が独自に見つけ出した「ゲルショッカー首領の正体」に関する情報が記録されたテープを仮面ライダーに託そうと計画するなど、仮面ライダーへの情報提供者として描かれています。

しかし第93話「8人の仮面ライダー」では、ショッカーライダーNo.2と怪人エイドクガーに誘拐され、人質にとられた少年仮面ライダー隊の隊員たちと引き換えにテープの渡すよう要求された際には「全世界の同盟員たちの復讐心の成果であるテープは、確認した同盟員たちの総意にも則った上で、渡すことはできない」と拒否してしまいます。

そうした“非情さ”も描かれたアンチショッカー同盟の名を、その設定自体は異なるとはいえ『シン・仮面ライダー』の立花が口にした描写からは、映画作中では描かれることのなかった「立花と滝が、SHOCKER壊滅の活動を続ける動機」をつい想像してしまいます。

もちろん、シンプルに「“政府の男”と“情報機関の男”としての職務を冷徹に全うしているだけ」と捉えることも十分に可能です。しかしながら「もしかしたら、スピンオフ漫画では彼らの“素性”の一部が描かれるかもしれない」という可能性への期待も含めて、個々人の人間性を象徴し得る立花・滝それぞれの“戦う動機”に想いを馳せたくなってしまうのです。

まとめ/「偽名説」と“未知なる世界”の拡大


(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

“政府の男”が映画結末にて名乗った「立花」という名について、彼を演じた竹野内豊は映画パンフレット内のインタビューにてたしかに最後『立花』と明かされていますが、果たして彼が実名を名乗っているのかは謎です」と語っています。

映画結末にて、名を尋ねてきた一文字/仮面ライダー第2号に当初は「名乗るほどの者ではない」と返したものの、「『仮面ライダー』を名乗る者」として戦い続けることを決意した一文字に対する誠意として告げた「立花」という名

しかし“立花=偽名”説は、決して「竹野内豊の一個人としての解釈」として片付けられるような仮説ではないのは、“公式”である映画パンフレットに掲載されている点からも察せます。

『立花』と名乗った男の、『滝』と名乗った男の本当の名前は?」……その考察を試みるだけでも、シン・シリーズが展開し続けてきた「シン・マルチバース」という“未知なる世界”のさらなる拡大を感じられるはずです。

【連載コラム】『仮面の男の名はシン』記事一覧はこちら

ライター:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。

2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。


photo by 田中舘裕介











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