Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/06/26
Update

『太平洋ひとりぼっち』に観る日本映画の特撮のあり方|邦画特撮大全1

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第1章

初めましての方が多いと思いますので、今一度ご挨拶を。この度、コラムを担当することになった森谷秀と申します。

今回私が担当することになったテーマは、ズバリ「特撮」です。

「特撮」という言葉を聞いて、皆さんは何を想像するでしょうか?

ウルトラマンや仮面ライダーといった変身ヒーローでしょうか?

それともゴジラやガメラといった巨大怪獣でしょうか?

まず第1回目は「特撮」という言葉の意味から、特撮というものをひも解いて行こうと思います。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

特撮の語源と始まり

「特撮」とは、“特殊撮影技術”を省略した言葉です。

ミニチュア撮影やコマ撮りアニメーション、合成処理や操演、そうした技術の総称の事です。つまり「特撮」とは映画のジャンルを指す言葉ではなく、本来は技術・手法のことを指す言葉なのです。

また皆さんは、SFXやVFXという言葉も聞いたことがありませんか?

SFX(special effects)は特撮を意味する英語で、撮影現場で行われる視覚効果を指します。

一方、VFX(visual effects)はポスプロ段階で施されるデジタル処理による視覚効果の事を指します。つまりコンピュータ・グラフィックスなどの事です。

『月世界旅行』&『メリエスの素晴らしき映画魔術』予告編

SFXの創始者と言われているのが、ジョルジュ・メリエスです。

マーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』(2011)にも重要人物として登場し、この作品では名優ベン・キングズレーが演じています。

彼の代表作が『月世界旅行』(1902)。この作品で当時の特撮がどのようなものか判ります。

しかし“特撮”という言葉が誕生したのはメリエスの時代ではありません。この頃、こうした撮影技術は“トリック撮影”と呼ばれていました。

特撮の神様と呼ばれた円谷英二

初代『ゴジラ』の予告編(1954)

“特撮”という言葉を使い始めたのは、特撮監督・円谷英二です。

説明不要かもしれませんが、初代『ゴジラ』(1954)の特撮監督です。1963年に円谷プロダクションを設立し、その後『ウルトラQ』『ウルトラマン』(1966年)に端を発するウルトラシリーズを製作しました。

しかし、円谷プロが設立して最初の仕事は1963年のある1本の映画です。

その映画なのですが、変身ヒーローも巨大怪獣も出てこない作品なのです。

スポンサーリンク

映画『太平洋ひとりぼっち』

造船所で働く一人の青年(石原裕次郎)は、周囲の反対を押し切ってヨットで出航。太平洋横断を目指します。

洋上で彼が思い出すのは孤独な日々、実父との不仲……。

『太平洋ひとりぼっち』は1963年公開の日本映画。石原プロモーションの第1回作品で、監督は翌々年『東京オリンピック』(1965)を発表する市川崑です。

この作品での特撮を円谷プロが請け負いました。但し裕次郎の古巣・日活の特殊技術部の金田啓治との共同です。

本作の円谷プロ側の特撮は川上景司が手掛けました。川上は東宝・松竹を経て円谷プロに参加した人物で、特撮を担当した作品に『君の名は』(1953)、日仏合作の『忘れえぬ慕情』(1956)、木下恵介監督の『野菊の如き君なりき』(1955年)、『喜びも悲しみも幾歳月』(1957)などに参加しています。

特撮パートの撮影は高野宏一氏。本作は彼のキャメラマンデビュー作でもあります。

数多くの円谷作品で特技監督を担当し、後に円谷プロの取締役となった以降は“監修”の立場で『ウルトラマンティガ』(1996)から『ウルトラマンコスモス』(2001)までの作品に参加します。

この作品の特撮場面は主人公が乗るヨットの部分なのです。そもそも原作は実際にヨットで太平洋横断に成功した堀江謙一のノンフィクションです。大ダコや巨大クジラが出てくることはありません。

ちなみに筆者は、特撮云々関係なく『太平洋ひとりぼっち』が映画として好きです。

まとめ

最初に言いましたが特撮は“特殊撮影技術”という手法を意味する言葉です。

『太平洋ひとりぼっち』のような一般映画にも、必要であればそうした技術は用いられます。

実際、現在制作・公開されている映画やTVドラマにはCGなどが何かしらの形で使用されています。

極端に言ってしまえば、ほとんどの映像作品には特撮が使われているのです。

我々が映像作品のジャンルとして“特撮”と呼ぶ場合、特撮技術の利用が主体になっている作品を指しているのです。

次回以降はゴジラやガメラ、ウルトラマンや仮面ライダーなどの具体的な作品に触れていきましょう。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

新海誠の全作品解説。世界観から倫理観へ|新海誠から考える令和の想像力2

連載コラム「新海誠から考える令和の想像力」第3回 「人間の感情という小さなものと、宇宙という極大なものがつながっていく物語」への強い関心。 これが新海誠監督自身の“セカイ”観であり、彼の作品群が「セカ …

連載コラム

映画『暁闇』感想と評価。阿部はりか監督が仕掛けた音楽と建築が結ぶ絶望感の刻限|銀幕の月光遊戯 37

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第37回 映像と音楽がコラボレーションした作品を送り出す若手作家の登竜門「MOOSIC LAB 2018」長編部門で準グランプリと男優賞を受賞した映画『暁闇』が、2019年 …

連載コラム

映画『i-新聞記者ドキュメント』感想とレビュー評価。森達也監督が望月衣塑子を多面的に見つめた眼差し|TIFF2019リポート33

第32回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ『i-新聞記者ドキュメント-』 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭が2019年10月28日(月)に開会され、11月5日(火) …

連載コラム

『仮面病棟』原作と映画の違いをネタバレ考察。永野芽郁と坂口健太郎の共演で木村ひさし監督どのように実写化したか⁈|永遠の未完成これ完成である11

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第11回 映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。 今回紹介するのは『仮面病棟』です。 原作は、作家・知念実希人の人気医療 …

連載コラム

映画『ふたりのJ・T・リロイ』あらすじと感想レビュー。ベストセラー作家の裏の裏や、海外の出版業界の様子が垣間見られる|銀幕の月光遊戯 53

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第53回 映画『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』が2020年2月14日(金)より新宿シネマカリテほかにて全国公開されます。 2000年代の半ば、アメリカ文 …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP