Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『ルーLOU』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。アリソン・ジャネイ念願のアクション映画で初老の元女スパイを演じる|Netflix映画おすすめ112

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第112回

今回ご紹介するNetflix映画『LOU ルー』は、ローランド・エメリッヒ監督の『インデペンデンス・デイ』(1996)、『デイ アフター トゥモロー』(2004)をはじめ多くの作品で撮影監督を務めている、アンナ・フォスター監督のアクション・スリラー映画です。

誰にも話せない極秘情報を抱え、人との関係を断つため辺境の土地で、愛犬ジャックと静かに暮らす初老の女性ルー・アデル。

隣人のハンナ・ドーソンと娘のヴィーは、ルーから家を借りて住んでいます。ヴィーは父は“冒険”に出ていると信じますが、実は死亡していることをハンナは話せずにいました。

そんなある日、死んだはずの夫フィリップが娘のヴィーを誘拐し、謎のメッセージを残して逃走します。

娘を取り戻そうとハンナはルーの元へ助けを求めます。通信手段を失った2人はヴィーを救出するため、フィリップを追い嵐の夜を森の中へ向かいますが・・・。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『LOU ルー』の作品情報

(C)2022 Netflix

【公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
Lou

【監督】
アンナ・フォースター

【脚本】
マギー・コーン、ジャック・スタンレー

【キャスト】
アリソン・ジャネイ、ジャーニー・スモレット、ローガン・マーシャル=グリーン、リドリー・ベイトマン、マット・クレイヴン、グレイストン・ホルト、ダニエル・ベルナール、RJ・フェザーストンハウ

【作品概要】
元CIAのルー・アデル役は、伝記映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)の主人公の母親役で、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にて助演女優賞を受賞した、アリソン・ジャネイが演じます。

ハンナ役にはNetflix映画『スパイダーヘッド』(2022)、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)の、ジャーニー・スモレットが務めます。

アリソンとジャーニーは制作総指揮としてもクレジットされ、本作への意気込みの強さを感じ、2人が演じた役の水と油のような関係が、ストーリーの“要”に通じるイメージにリンクします。

また、ハンナの夫フィリップ役は『アップグレード』(2019)のローガン・マーシャル=グリーンが演じます。

映画『LOU ルー』のあらすじとネタバレ

(C)2022 Netflix

雲行きが怪しくなった空を仰ぎ、スコップを手にした初老の女性。やがて彼女の顔に雨粒が落ち、何かに想いを馳せると意を決したようにどこかへ向かいます。

女性の名前はルー・アデル。彼女が向かったのは近くの林の入口、雨が降りしきる中、彼女は目的の場所を掘り起こし、異国を思わせる模様の入った箱を持ち帰ります。

狩った獲物の肉をさばき終わると、多額の札束を封筒に分け、ラップでラッピングして、冷凍庫の奥へと隠すように仕舞いました。

作業を終えたルーは掘り出した箱の中から、黒く塗りつぶされた部分もある古い資料を取り出して、彼女はそれを暖炉にくべて燃やします。

そして、猟銃の手入れをし、誰かに宛てた短い手紙を書きます。ウィスキーを飲み干し、黒いシートで壁を覆った部屋の角で、椅子に座ったルーは猟銃の銃口を喉元にあてました。

その日の日中、ルーは森で鹿を狩りましたが、急所をわずかに外していました。左手に古傷があり、それをみつめながら何かを思い出して、悲しそうな眼をします。

小さな島々からなる海辺の町では住民たちが、やがて来る嵐に慌ただしく備えを進めていました。ルーは資材屋で黒いタープをいくつかと、ガムテープを購入して銀行へ向かいます。

銀行のテレビでは、1953年に起きたイランのクーデターに、CIAが関与していないことを説明するレーガン大統領が映し出され、ルーはそれを虚ろな目でみつめます。

ルーは預金を全額出金すると窓口で言い、テレビではペルシャ湾での戦争終結には、イランの協力が必要だと報道しています。

ルーはその報道を気にしながら、出金した全財産を紙袋に入れて、車に戻るとランキン保安官がジャックスと戯れていました。

猟期でもないのに、荷台に積んであった鹿を見たランキンは「鹿が飛び出してきたのか?」と尋ねると、ルーは適当に返事して運転席に乗り込みます。

ランキンはルーの左手の古傷を見て、銅製のブレスレットが痛みを和らげると勧めますが、ルーはスルーして車を発進させます。そして、車を公衆電話から見つめる男の姿が…。

カーラジオからは暴風雨の予報が流れていました。島々からなる地域の足であるフェリーは、運航が停止になると伝えていました。

ルーの家は森に沿った土地にあり、少し離れた隣りの家にハンナと彼女の娘のヴィーが暮らしていました。

ハンナは洗濯物を取り入れ、嵐に備えて畑の作物を保護している最中でしたが、ヴィーはハンナに遊びをせがみ、かくれんぼをしていました。

ハンナは隠れそうな場所から、ヴィーを見つけ出しハグし、ヴィーはハンナの手伝いを始めますが、“宝探し”に出かけたという父がいつ帰るのか聞きます。

“もうじき”と適当に答えながらハンナは、はぐらかすためにかくれんぼを再開し、数を数え始めました。

そこにルーが通りかかりクラクションを鳴らすと、ルーはハンナに明日必ず、家賃を持ってくるよう言い、家の机の上に置いておくよう指示します。

ルーは少し乗り出し、しばらくハンナに向かうと何かを言いたげにしますが、何も言わずに去っていきました。

しかし、発進した車の前にヴィーが飛び出し、急ブレーキを掛けると、ヴィーは転んだだけで無事でした。ハンナは駆け寄ってルーに激怒します。

「ここは遊び場じゃない、ちゃんと注意させて」とルーは言って去りますが、バックミラーで母娘の姿を確認し、家の前に駐車すると緊張が解けたように笑います。

入れ違いに嵐の到来にハンナ親子を心配した、知人男性のクリスが訪ねてきました。ルーとの様子を見ていた彼は「またルーと何かあったの」と聞きます。

ハンナは酔った勢いで、ルーの愚痴をクリスに話していました。2人は良い関係になり、父親のことをヴィーに話したかクリスは訊ねますが、ハンナは決心できていません。

ルーはクリスの車が離れていくのを確認します。真っ黒な雲間から陽の光は射しこみますが、やがて雨が降り出し、ルーはスコップを手にして天を仰ぎます。

以下、『LOU ルー』ネタバレ・結末の記載がございます。『LOU ルー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 Netflix

雨が激しくなる中、路肩でヒッチハイクする男をクリスは乗せてあげます。男はレンタカーが故障し困っていたと話します。

男は車内で1冊の本を見つけると、クリスは3カ月前に夫を亡くした、“彼女”を慰めるために買ったと話します。男は良い仲になるためか?とからかいました。

そして、カセットテープをみつけ自分も好きだと、大音量でかけると突然、男はクリスに殴りかかり、工具で彼を刺殺します。

その晩、ハンナはヴィーに父親が亡くなったことを話すため、“パパは・・・”と言いかけ「あなたを愛している・・・」と、言うだけでした。

ルーは掘り出した箱から中東で撮ったと思しき、古い写真を見ています。若い頃の自分の写真と“塔”を撮った写真です。それを暖炉の火の中に投げ入れます。

古い8mmフィルムにはイランの指導者、軍、子供が走り回る姿などが記録されています。それらを処分して、手紙を書き始めます。

家を譲渡するから売ること、冷凍庫にジャックスの餌肉と、“あなた”への現金があること……。

ルーの決断には昔のできごとも絡み、自分の特技が裏目に出て、良い影響を残せず、世界を危険にさらす結果にもなったなどと綴ります。

一方、ヴィーを寝かしつけようとしていると、停電がおこります。ハンナはブレーカーを確認するため、屋外にでますがブレーカーを上げても、復旧しませんでした。

寝室にいるヴィーは物音で驚き、窓から外を見ます。ハンナの姿を見ると不安になり、籐のチェストに隠れます。しかし、何者かがドアノブを外して、ガスを送り込みます。

ハンナは通りの送電器を確認しますが、やはり故障していました。ふと視線の先にクリスの車をみつけ、駆け寄りますが車内に殺害された遺体を発見します。

とっさに危険を察知したハンナは家に走って戻りますが、どこにもヴィーの姿はなく、裏に“ママ、俺の番だ”と書かれたヴィーを抱く夫フィリップの写真が残されていました。

その頃、ルーはジャックスを洗面所に隔離し、自分の喉元に銃口をあてていました。そこにパニックになったハンナが来て、保安官を呼んでと電話をかけにきます。

何事かとルーが尋ねると、死んだはずの父親が現れ、ヴィーを連れ去ったと訴え、写真を見せます。

電話は使えなくなり、車で保安官のいる町にいこうとしますが、エンジンがかかりません。ルーがボンネットをあけると、時限爆弾が仕掛けられていて、車は爆破されます。

その様子を暗視スコープで見ていたフィリップは、ヴィーを載せたカートを曳いて森の中へ進んでいきます。

ルーには何が起きているのか、理解できたかのように、ハンナに街へ行っている間に、ヴィーが遠ざかってしまうと、追いかけると言います。

乾電池を探してあるだけ持つよう指示し、鍵をかけた戸棚から拳銃を何丁か取り出します。ハンナはフィリップが特殊部隊にいたこと、中米で事件を起こし指名手配されていました。

戦争で人質に拷問した記録が、戦争裁判の記録に残っていて、逮捕される前に爆弾テロで爆死し、死亡診断書も届いていたと話します。

身支度を終えたルーの姿と、黒のタープで壁を覆った部屋を見てハンナは驚きます。外で手がかりを探していると、催眠ガスのボンベと轍を見つけます。

ルーは山を越えた海岸まで行き、民間船で脱出するのだろうと推測します。そして、ハンナに嵐が去ったら、町へ行き保安官に連絡するよう告げ、ヴィーを探しに向かおうとします。

ところがハンナも一緒にヴィーを探すと食い下がり、その姿にルーは「足手まといになったら置いてく」と言い放ち、2人で出発します。

ルー達は小屋で待機する怪しい2人組の男を発見します。一見して悪い奴とルーは判断し、ハンナがスコープを覗くと、フィリップの軍仲間だと言います。

ルーは武器をハンナに渡し、護身方法も教えて小屋に向かいます。そして、道に迷った老女のふりをして、助けを求めて小屋に侵入します。

ルーは油断した2人を攻撃し、フィリップの行方が“イーグル・ベイ”であると聞き出し、2人を殺害します。

そして、小屋の壁に“長年の習慣は消えない。楽しんでる?”と書かれたカードを見つけます。

小屋の惨状を見たハンナは、ルーがただ者ではないと感じ、接近戦や心理操作はどこで習得したのか聞くと、26年間CIAに従事していたと話します。

目の覚めたヴィーにフィリップは、危害を加えることはありませんでした。最終的な目的は別にあったからです。

ハンナは無線機を持ち出し、保安官に連絡を取ろうとして、フィリップに気づかれてしまいます。

ハンナはフィリップから酷いDVを受けていました。出会った頃の彼はやさしかったが、次第に愛に飢え傷ついていると知り、彼を救おうとしたと話します。

フィリップを暴力に駆り立てた原因は定かでないが、尋常ではなかった彼からヴィーを守るため、彼の機嫌が悪くなると“ゲーム”をしようと合図し、かくれんぼをしたと話します。

2人は難所に遭遇しながらも、イーグル・ベイまで辿り着きました。浜に放置された難破船に行くと、首が切られた状態のぬいぐるみが置いてあり、カードもみつけました。

取り乱したハンナは叫びながら外に出ます。ルーは岬の方にのろしをみつけ、ハンナに無線機を渡して、丘に登ってランキンに連絡するよう指示します。

ハンナがいなくなり、ポストカードを見ると“いつも一緒”というメッセージが書かれています。写真の灯台に「私があなたを照らす」とデザインされていました。

ハンナはヴィーを救出しに岬へ向かいます。岬の洞窟に潜んでいたフィリップとルーはそこで対峙し、2人が親子だったことが明かされます。

フィリップが幼い頃、ルーはイランに駐在しており、任務遂行中に彼は武装した集団に連れ去られ、酷い扱いを受ける経験をしていました。

フィリップは母親の助けをひたすら待ちますが、彼女が現れないままフィリップはイランからの脱出を果たしますが、母から裏切られたと思う彼は、心が歪んで成長していました。

ルーは犯罪を重ねるフィリップに、今度こそ彼を守ると説得しますが、彼は「一族を苦しみから救う」と威嚇して、ルーはナイフで彼の肩を刺し2人は格闘します。

しかし、反撃されたルーは同じように肩を刺され、深い傷を負ってしまいます。フィリップはヴィーを再び連れて「灯台で待つ」と言い残し去ります。

ハンナはランキンと通信できますが、電波が不安定で詳細は伝えられず、子供が誘拐され追跡中であるヒントは送ることができます。

ランキンはハンナ親子の捜索を指示しますが、連邦保安局からイーグル・ベイへの制圧が施行されるため、通行禁止にするよう通達が入ります。

連邦保安局は重犯罪で指名手配中のフィリップと、CIAにとって重要な標的であるルーの捜査を引き継ぎ、攻撃許可がおりていると手を引くよう一方的に通達します。

難破船に戻ったハンナは、大けがをしているルーの手当てをしますが、荷物の中からポストカードのメッセージをみつけます。

ハンナはメッセージの文脈から、自分宛でないことを察します。ルーはフィリップが作戦遂行のために、イランで生き別れてしまった息子だと話します。

当時の極秘任務の資料を使ってCIAを脅し、フィリップの素性を調べていたルーは、ハンナ親子を守るため、隠れ家的なこの島に来るよう仕向けたのです。

ハンナはフィリップの怒りの矛先が自分に向いたのは、ルーのせいだと責めますが、ルーは母親に向いてなかったと返し、ハンナは自分と重ね口ごもります。

ただ、血のつながった家族であれば、自分達への接し方にもっと人間らしさがあったはずと、ルーに詰め寄りました。

ルーは答えられずにいると、ハンナはルーを置いて灯台へ向かうと1人で歩き始め、ルーは傷のせいで気を失います。

夜が明けハンナは灯台をみつけだし、ジャックスはルーをみつけ寄り添い、単独でハンナ親子を捜索しはじめたランキンが、ジャックスの吠える声で難破船にいるルーをみつけます。

ランキンはルーから話を聞きながら、古傷のある左手首に銅のブレスレットをつけてあげます。しかし、ルーはランキンが乗ってきたバギーで、ハンナの後を追いかけます。

灯台に到着したアンナはヴィーと再会します。フィリップはルーが一緒でないことを問い、全員揃わないと意味がないと、起爆スイッチのような物を握りしめて言います。

ヴィーはフィリップにママとハグさせてほしいと頼みます。ハンナはヴィーを抱きしめ「ゲーム開始」と小さな声でささやきます。

ヴィーはトイレに行きたいと灯台を降りると、ハンナは銃をフィリップに向けます。そしてどうせ撃てないと、銃を渡すよう迫る彼の肩と足に発砲します。

ハンナはフィリップを負傷させると、隠れたヴィーを捜しに灯台の地下へいきます。そこには爆発物がしかけられていました。

2人は地下へ降りてくる足音が聞こえて、隠れますがそれは灯台に駆けつけたルーでした。ヴィーは外に続く扉から抜け出し逃げます。

ルーは爆発物の周波数を変え、時間稼ぎに成功します。フィリップは灯台にルーが来ていることを確認すると、全員揃ったと満足し起爆装置のスイッチを押します。

フィリップは家族全員で心中するつもりでしたが、それも失敗に終わり逆上します。

その頃、CIAのヘリコプターがルーとフィリップの捜索を開始します。足を負傷したハンナはルーにヴィーを捜すよう託します。

ヴィーをみつけたルーに抱きついたヴィーに、ルーは孫という感覚を覚えます。ルーはヴィーに長い棒をさがしてくるよう頼みました。

ルーは棒の先端にランキンがくれたブレスレットを括り付け、無線機で遠隔操作すると灯台を爆破し、ヘリコプターに居場所を知らせます。

そして、ルーは自分の子の面倒を見るといい、ハンナにヴィーとジャックスをつれて町に帰るよういいます。

家に残した手紙を読むように告げると、ハンナは大事なものが今、ここにある「死なないで」と言って去りました。

フィリップは鉄パイプを振り上げルーに襲いかかりますが、それが彼女のベルト通しにひっかかり、ルーはパイプを握りしめ彼をみつめます。

ルーはフィリップを引き寄せると抱きしめ、「ごめんね」と謝ります。ルーの視線の先には、CIAのヘリコプターが迫り、エージェントは彼らに発砲しました。

フィリップは背中を撃たれ、ルーは彼をしっかり抱きしめたまま、海の中へと沈み波が2人の姿を消し去ります。

しばらくして、ハンナとヴィーの親子はルーの家で、CIAの職員から彼女のことについて事情聴取されます。

家の中は片づけられ、引越しの荷物がまとめられていました。ハンナは手紙で一方的に、家と冷凍の鹿肉を譲渡すると言われたと話します。

ハンナとヴィーはジャックスを連れて、シアトル行きのフェリーに乗り、新しい生活へと出発をしました。

ジャックスはフェリーの後方デッキを気にして見ています。そこには双眼鏡を覗く女性が立っていました。双眼鏡を持つ左手には、傷の後と銅のブレスレットがあります。

映画『LOU ルー』の感想と評価

(C)2022 Netflix

最強の“祖母”ルー・アデルを演じたアリソン・ジャネイ

映画『LOU ルー』は国のために働いた元CIAの女スパイが、任務遂行のため息子を利用した結果、息子の性格を歪め、嫁や孫に危害が及ぶことになり、不器用ながら2人を守ろうとした話です。

元CIAの子供が誘拐され、取り戻すために戦う映画に『98時間』がありますが、本作はすでに初老になった元女スパイが主人公で、何の因果か嫁と孫を非道な息子から救おうとし、悪い方に転換してしまう設定でした。

圧巻なのは初老の元女スパイがかつてのスキルを維持し、特殊部隊に所属していた息子と体当たりの親子喧嘩を展開する・・・という斬新なストーリーで、この映画の見どころでもあります。

ルー・アデル役のアリソン・ジャーニーは、アクション映画に挑戦したいという憧れがあり、60代になってオファーがあったことに、「このような役に出会える幸運があるとは思いませんでした」と率直に喜びを語ります

作中ではか弱い“おばあちゃん”という姿で強面の男を騙して倒すなど、諜報部員としての強かな悪い面も演じ、とてもやりがいを感じたであろうと推察できます。

また、主人公のルー・アデルがハンナに、「母親に向かない女もいる」と言います。アリソン自身も結婚や子供への願望がなかったと語り、ルーに投影しやすかったのではと、感じさせるドライな女性を演じきりました。

“イランのクーデター”が招いた、悲劇の歴史

作中で語られる“イランのクーデター”は実際に起きたできごとで、アメリカのCIAがクーデターに関与していました。

このクーデターをきっかけに、後に“イラン革命”などにも発展し、イランという国を分断しただけでなく、周辺のアラブ諸国との確執を助長する結果を生みました。

作中でレーガン大統領が会見するシーンが出ます。1980年代のイランとイラクの“湾岸戦争”にアメリカは介入し、アメリカ兵がテロリスト集団に捕らえられます。

レーガン大統領がアメリカ兵を解放するため、イランと裏取引した事件(イラン・コントラ事件)の釈明会見です。この事件はアメリカ国内のみならず、世界を巻き込む政治スキャンダルに発展しました。

こうした歴史が中東諸国のアメリカに対する強い敵対意識を生み、2001年のアメリカ同時多発テロへと繋がるとみることもできるので、ルーは「世界を悪い方へ導いた」と言ったのです。

まとめ

(C)2022 Netflix

映画『LOU ルー』はCIAが自国の利益のために働いた因が、他国を分断し世界を揺るがす結果を生み、一人息子の人生も狂わし、嫁や孫にも影響を及ばせたことへの後始末を描いた物語でした。

ラストシーンに出てくる女性はルーであるとわかります。彼女は死をもって決着させようとしますが、ハンナに「大切な者のために生きて」といわれ、自らの存在を抹消し、希望を育む家族を見守る生き方を選びます。

シングルマザー、夫によるDV、DVを生むネグレクト・・・本作には、家族問題には因果関係があるように、歴史的なできごとにも因果が関係することを描いていました。

しかし「再挑戦は難しくても、再出発はできる」とルーはハンナに伝えます。それはルーにもいえることでした。大切な者を2度も失わないと思えた時、彼女は再出発することを選んだのです。

ルーを演じたアリソン・ジャネイにとっては、念願のアクション映画の挑戦でした。やりたいことを求め続ければ、チャンスは巡ってくると思わせてくれる作品でもあります。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら




関連記事

連載コラム

映画『エイリアン3』ネタバレあらすじと感想。ラストまでゼノモーフに立ち向かうリプリーの表情はデビッドフィンチャーならでは!|SFホラーの伝説エイリアン・シリーズを探る 第3回

連載コラム「SFホラーの伝説『エイリアン』を探る」第3回 未知の完全生命体の悪夢が再び!?ヒロイン・リプリーの、三度目の戦いを描いたシリーズ第三弾、『エイリアン3』。 『エイリアン3』は前作『エイリア …

連載コラム

【大泉洋×小池栄子】太宰原作の映画『グッドバイ』感想レビューと考察。タイトルに隠された意味を深掘り!|映画道シカミミ見聞録46

連載コラム「映画道シカミミ見聞録」第46回 こんにちは、森田です。 今回は2020年2月14日より全国公開された映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』を紹介いたします。 “人生喜劇”と称されるド …

連載コラム

映画『狂猿』感想評価とレビュー解説。“デスマッチのカリスマ”葛西純の最強の人生の作り方|映画道シカミミ見聞録56

連載コラム「映画道シカミミ見聞録」第56回 こんにちは、森田です。 今回は、2021年5月28日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて公開されるドキュメンタリー映画『狂猿』を紹介いたします …

連載コラム

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー|あらすじ感想と評価解説。クローネンバーグが20年を費やし“人類の進化についての黙想”をした問題作|映画という星空を知るひとよ164

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第164回 独特のボディ・ホラー作品を生み出すデヴィッド・クローネンバーグ監督が手がけた『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』。 ヴィゴ・モーテンセンが自身の体 …

連載コラム

『コーマン帝国』感想レビューと内容解説。“B級映画の帝王”ロジャー・コーマンのスゴさに迫る!|だからドキュメンタリー映画は面白い5

低予算ながら奇抜なアイデアの数々で長年映画界を牽引してきた、映画プロデューサーの“インサイド・ヘッド”をのぞき見してみよう── 『だからドキュメンタリー映画は面白い』第5回は、2012年公開の『コーマ …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学