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Entry 2021/01/16
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【アカデミー作品賞の歴代一覧おすすめ】感動泣ける洋画の名作傑作を発表(2021年予想のために振り返る)|映画という星空を知るひとよ46

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第46回

映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が主催するアカデミー賞。2020年の映画から各賞のノミネート作品は、2021年3月15日に発表されます

2019年度作品賞受賞したのは、映画『パラサイト 半地下の家族』でした。映画界も新型コロナ感染症の影響で振るわなかった2020年ですが、泣けるドキュメンタリーや心に残るドラマは多々ありました。

2020年度に公開された映画の中で、今度はどの作品がノミネートされるのでしょう。予想もかねて、歴代作品賞を振り返ってみました。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

【2010年代】2019年度作品賞 映画『パラサイト 半地下の家族』

映画『パラサイト 半地下の家族』の作品情報

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

【公開】
2020年公開(韓国映画)

【原題】
기생충 (英題:Parasite)

【監督】
ポン・ジュノ

【キャスト】
ソン・ガンホ、チャン・ヘジン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、チョン・ジソ、パク・ソジュン、パク・ミョンフン

映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ

韓国のキム一家は、父、母、長男、長女の家族4人全員が失業中。その日暮らしの生活で、貧困層の多い区域の“半地下住宅”に住んでいました。

そんなある日、長男ギウは友人ミニョクに家庭教師の仕事を紹介され、IT企業のCEOであるパク氏の豪邸へと面接を受けに行くことになります。

面接はうまくいき、パク一家の心を掴んだギウ。次に、妹のギジョンを美術教師のジェシカ先生と紹介し、ギジョンもまんまとパク一家の幼い長男の家庭教師におさまります。こうして、キム兄妹は高台にある豪邸に足を踏み入れました。

正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していきます……。

映画『パラサイト 半地下の家族』の見どころ

2020年度のアカデミー賞で、最大のサプライズとして話題を集めたのが本作の作品賞受賞です。なにしろ、外国語映画が作品賞を受賞するのは史上初のことで、アジア圏からの受賞ももちろん初めてでしたから。

人種差別的な受賞背景も囁かれているアカデミー賞。多様性を求める声が映画『パラサイト 半地下の家族』への投票につながった可能性も大きいのでしょう。

韓国の格差社会を痛烈に描き出したブラックユーモアがあふれる本作。苦境に陥ってもお互いを思う家族愛と、未だに深く滞在する貧富の差に驚かされ、様々な面からも現代社会を見つめなおすきっかけとなる作品と思われます。

2010年代受賞作品

2010年 『英国王のスピーチ
2011年 『アーティスト』
2012年 『アルゴ
2013年 『それでも夜は明ける
2014年 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
2015年 『スポットライト 世紀のスクープ
2016年 『ムーンライト
2017年 『シェイプ・オブ・ウォーター
2018年 『グリーンブック
2019年 『パラサイト 半地下の家族

【1970年代】1977年度作品賞 映画『クレイマー、クレイマー』

映画『クレイマー、クレイマー』の作品情報

(C)1979 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
1980年公開(アメリカ映画)

【原題】
Kramer vs. Kramer

【監督】
ロバート・ベントン

【キャスト】
ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジョージ・コー、ジェーン・アレクサンダー

映画『クレイマー、クレイマー』のあらすじ

毎晩深夜に帰宅する仕事人間の夫テッドに愛想を尽かし、自分自身を取り戻すために妻のジョアンナは家出をします。

その翌日からテッドは7歳の息子を抱え、否応なしに仕事と育児の両立に励むことになりました。

子育ても、家事も、それまで全くしたことのなかったテッドは、失敗ばかりします。ですが、数々の失敗を乗り越えて父と子の間に深い絆も生まれてきました。

家出から1年後、ジョアンナが息子の養育権を主張し、テッドを提訴しました。

映画『クレイマー、クレイマー』の見どころ

1970年代という、当時の社会が抱える家族の問題をヒューマンな視点で描いた傑作ドラマです。

仕事の資料に息子からジュースをぶちまけられ、作ったご飯に手を付けずアイスクリームを食べる息子に呆然とする父。

慣れない家事と育児で、父子の絆はどうなるのかとハラハラします。

それでも最初は作れなかったフレンチトーストを、終盤では父と息子が協力して作れるようになりました。悪戦苦闘であった家事と育児の集大成の愛情あふれる名場面といえます。

離婚と養育権という家庭問題をリアルに表現し、健気に育児に励む“働きバチ”の父親の姿は、笑いと涙を誘いました。

家族、あるいは家庭のあるべき姿を考えさせられる作品で、ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープが夫婦役で共演しているのも話題を呼びました。アカデミー賞を5部門受賞

1970年代受賞作品

1970年 『パットン大戦車軍団』
1971年 『フレンチコネクション
1972年 『ゴッドファーザー
1973年 『スティング
1974年 『ゴッドファーザーPART Ⅱ
1975年 『カッコーの巣の上で』
1976年 『ロッキー
1977年 『アニー・ホール
1978年 『ディア・ハンター
1979年 『クレイマー、クレイマー

【1980年代】1987年度作品賞 映画『ラストエンペラー』

映画『ラストエンペラー』の作品情報

(C)Recorded Picture Company

【公開】
1988年公開(イタリア・イギリス・中国合作映画)

【原題】
The last emperor

【監督】
ベルナルド・ベルトルッチ

【キャスト】
ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、イン・ルオチェン

映画『ラストエンペラー』のあらすじ

1950年、共産主義国家として誕生した中華人民共和国のハルピン市中は中国人戦犯でごった返えしていました。

そんな駅の中で、自殺を試みようとする男の姿がありました。

彼こそは清朝最後の皇帝・溥儀。3歳で清王朝の皇帝に即位し、王朝最後の皇帝として革命にあったのです。

1950年中国人戦犯として護送される最中のことです。溥儀の意識が遠のいていくなか、幼き日の情景が脳裏によみがえって来ました……。

映画『ラストエンペラー』の見どころ

ベルナルド・ベルトルッチ監督が、清朝最後の皇帝・溥儀の人生を描いた歴史大作です。

外国人に初めて撮影許可が下りた紫禁城での即位式は、冠に押しつぶされそうな幼い溥儀に500人の家臣がかしずくという圧巻のシーンとなりました。

本作は、1987年アカデミー賞では作品、監督、撮影、脚色、編集、録音、衣装、美術、作曲とノミネートされた9部門すべてを受賞しました。

出演のほか音楽も担当した坂本龍一は、日本人として初めてアカデミー作曲賞を受賞しています。

1980年代受賞作品

1980年 『普通の人々
1981年 『炎のランナー
1982年 『ガンジー
1983年 『愛と追憶の日々
1984年 『アマデウス
1985年 『愛と哀しみの果て
1986年 『プラトーン
1987年 『ラストエンペラー
1988年 『レインマン
1989年 『ドライビング Miss デイジー

【1990年代】1997年度作品賞 映画『タイタニック』

映画『タイタニック』の作品情報

(C)Titanic1997

【公開】
1997年公開(アメリカ映画)

【原題】
Titanic

【監督】
ジェームズ・キャメロン

【キャスト】
レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼイン、キャシー・ベイツ、フランシス・フィッシャー、
ビル・パクストン、バーナード・ヒル、ジョナサン・ハイド、ビクター・ガーバー

映画『タイタニック』のあらすじ

1912年イギリスのサウザンプトン港からアメリカのニューヨークに向けて、豪華客船タイタニック号が処女航海に出発しました。

出発直前に乗車券を手に入れた画家志望の青年ジャックは、新天地アメリカでの活躍を夢見てタイタニック号に乗船しました。

そして、上流階級の娘ローズと運命的に出会い、2人は互いに惹かれ合います。

ローズの婚約者であるキャル、保守的なローズの母親の妨害など数々の障害を乗り超え、2人は航海中に強い絆で結ばれました。

しかし航海半ばの4月14日、タイタニック号は氷山と接触。大きな船は刻一刻と冷たい海の中へと沈められていきます……。

映画『タイタニック』の見どころ

北大西洋上で氷山に衝突し、20世紀最大の海難事故となった豪華客船タイタニック号の悲劇を、ラヴ・ストーリーの要素を交じえて描いたスペクタクル超大作。

『ターミネーター』のジェームズ・キャメロン監督が、当時史上最大規模の製作費2億ドルを投じて、この悲劇を映画化しました。

アカデミー賞では、作品賞ほか史上最多タイの11部門受賞という偉業を成し遂げた作品です。

主演のレオナルド・ディカプリオが甲板の最先端でケイト・ウィンスレットを支えるシーンは、美しく印象深いものでした。

巨大な豪華客船が情け容赦なく撃沈していく場面、逃げ惑う人々の錯乱状況など、パニックの様子もかなりのものですが、死ぬかもしれないという恐怖の中でお互いを思う主役2人の熱い思いが涙を誘います。

1990年代受賞作品

1990年 『ダンス・ウィズ・ウルブズ
1991年 『羊たちの沈黙
1992年 『許されざる者
1993年 『シンドラーのリスト
1994年 『フォレスト・ガンプ/一期一会
1995年 『ブレイブハート』
1996年 『イングリッシュ・ペイシェント
1997年 『タイタニック
1998年 『恋におちたシェイクスピア
1999年 『アメリカン・ビューティー

【2000年代】2009年度作品賞 映画『ハート・ロッカー』

映画『ハート・ロッカー』の作品情報

(C)2008 Hurt Locker, LLC. All Rights Reserved.

【公開】
2010年公開(アメリカ映画)

【原題】
The Hurt Locker

【脚本】
マーク・ボール

【監督】
キャスリン・ビグロー

【キャスト】
ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デビッド・モース、エバンジェリン・リリー、クリスチャン・カマルゴ

映画『ハート・ロッカー』のあらすじ

2004年夏。イラク・バグダッド郊外では、駐留する米軍爆発物処理班が任務に励んでいました。

米陸軍の爆発物処理班・ブラボー中隊に、これまでに870以上の爆発物を解体処理しているジェームズ2等軍曹が新たな班長として赴任してきました。

型破りなジェームズのやり方に戸惑う部下のサンボーンとエルドリッジ。2人はあと39日でEODの任務から外れる予定だったのですが、恐れ知らずのジェームズにより、これまで以上の危険にさらされることになり、戸惑いを隠せません。

しかし、任務は任務。ジェームズと三ボーンとエルドリッジの3人は時に対立しながらも、過酷な任務を切り抜けていきます。

映画『ハート・ロッカー』の見どころ

敵と敵とが争う戦争映画とは違い、本作はイラクに駐留する米軍爆発物処理班の過酷な任務をリアルに映し出した戦争映画です。

爆発物処理班とは地中に埋もれた爆破物を撤去する任務を持つ軍隊です。敵と対峙するのではありませんが、戦地に赴くのと同様の緊張感と危険を伴います。

安全対策もろくに行わず、まるで死を恐れないかのような作業指示を出す班長に、部下たちの不安と苛立ちが募るのは当然で、軍隊における人間関係の信頼性もさりげなく描かれています。

全編通して注意をひくのは、爆発物や人間関係に伴う緊迫感溢れる映像を貫いたキャスリン・ビグロー監督の演出手腕。

本作は、アカデミー作品賞ほか主要6部門(作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響効果賞、録音賞)を受賞。戦争アクションの最高峰といえます。

キャスリン・ビグローは、史上初のアカデミー監督賞を受賞した女性監督となりました。

2000年代受賞作品

2000年 『グラディエーター
2001年 『ビューティフル・マインド
2002年 『シカゴ
2003年 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
2004年 『ミリオンダラー・ベイビー
2005年 『クラッシュ
2006年 『ディパーテッド
2007年 『ノーカントリー
2008年 『スラムドッグ$ミリオネア
2009年 『ハート・ロッカー

まとめ

アカデミー作品賞をおさらいし、年代ごとに一つを選んでご紹介しましたが、どれもこれも名作ばかりで、選ぶのに苦労しました。

親子の愛とは何か?と問いかける『クレイマー、クレイマー』。坂本龍一が日本人として初めてアカデミー賞作曲賞を受賞した、大国の歴史モノ『ラストエンペラー』。20世紀最大の海難事故といわれる事故にラブロマンスを絡めた作品『タイタニック』。初めて女性監督が監督賞をとった『ハート・ロッカー』。そして、アジア発となるアカデミー賞作品賞受賞の『パラサイト 半地下の家族』。

社会問題、家族、恋愛、歴史、戦争。ジャンルは様々ですが、時代の流れと共に、女性監督やアジアの国の人々の映画界への進出が見られます。

映画の健全な発展を目的とし、キャストやスタッフを表彰し、その労と成果を讃えるためのアカデミー賞。

選ばれた作品にはそれなりに訴えかけるものがあり、深く感銘を受ける作品がほとんどです。

ですが、直近では、従来の慣例にしばられず、自由な発想と着眼点をもった新鮮味あふれる映画が作品賞を受賞するケースが増えているのではないでしょうか

そういった眼で今年度のアカデミー賞の行方を探ってみるのもの面白いでしょう。各賞のノミネート作品は、2021年3月15日に発表されます

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

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