Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/09/06
Update

『マーティン/呪われた吸血少年』あらすじ感想と考察解説。ロメロ監督がホラー映画で描く“元祖ガチ怖描写”|SF恐怖映画という名の観覧車152

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile152

数々のホラー映画の基礎を作り出し、ホラー映画界の巨匠と呼ばれる監督ジョージ・A・ロメロ。

彼が「ルーテル教会」の依頼によって製作したにも関わらず、あまりの過激な描写に封印されてしまった映画『アミューズメント・パーク』(2021)が2021年に遂に日本で劇場公開されます。

それに伴い、ロメロ監督がホラー映画としてのキャリアを積み上げるきっかけとなった2作が同時に劇場公開されることとなりました。

今回は、その中でも特にファン人気の高い作品である映画『マーティン/呪われた吸血少年』(2021)をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『マーティン/呪われた吸血少年』の作品情報


(C)1977 MKR Group Inc.

【原題】
Martin

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【監督】
ジョージ・A・ロメロ

【キャスト】
ジョン・アンプラス、リンカーン・マーゼル、クリスティーン・フォレスト、エレイン・ナデュー、トム・サヴィーニ、マイケル・ゴーニック、ジョージ・A・ロメロ

【作品情報】
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)や『ゾンビ』(1979)で現在の「ゾンビ映画像」を作り上げた巨匠ジョージ・A・ロメロが監督を務めた作品。

『クリープショー』(1986)や『死霊のえじき』(1986)など、ロメロ作品に多く出演するジョン・アンプラスが主演を務めました。

映画『マーティン/呪われた吸血少年』のあらすじ


(C)1977 MKR Group Inc.

人の生き血を啜りたいという強い吸血衝動を持つマーティン(ジョン・アンプラス)は、睡眠薬で相手を眠らせ冷静に犯行を重ねてきました。

ある日、マーティンの吸血衝動を知る親戚のクーダ(リンカーン・マーゼル)に引き取られ、田舎町で過ごすことになったマーティンはクーダの家族や町の住民と知り合います。

自身を信用していないクーダの監視や町での仕事によってマーティンの吸血衝動を抑え込まれていましたが……。

残虐かつ官能的な吸血鬼伝説

ロメロ監督が自身の作品の中で最も気に入っている映画として挙げている映画『マーティン/呪われた吸血少年』。

本作はファンの中でも高い人気を保ち続けており、日本のファンによって新たに録音される吹替声優を豪華にするためのクラウドファンディングが実地されたほどでした。

しかし、その一方であまりに衝撃的な映像が問題となり、イギリスでは「1959年わいせつ出版物法」に抵触し押収されてしまいます。

本作の映像は映像技術が発展し、より残虐な映像が簡単に描けるようになった現代に観ても衝撃を覚えるほどであり、ロメロ監督の計算しつくされた「恐怖」へのこだわりを感じさせました。

性と血


(C)1977 MKR Group Inc.

性欲が生み出す興奮と人間の暴力性が満たされる際の興奮は脳内でリンクしていると言う研究が存在します。

その効果を知ってか知らずか、かつてより「ホラー」映画には性描写が付き物であり、本作もイギリスの法律に抵触するほどに性的シーンが描写されています。

しかし、本作での性描写は単なるベッドシーンには留まらず、残虐なシーンの中にも「性的」描写を取り入れていました。

主演のジョン・アンプラスの持つ青年吸血鬼としての美しさは吸血のシーンになるとより高まり、恐ろしいシーンでありながらもどこか性的な魅力を覚える背徳的な作品でした。

映像表現と特殊メイク


(C)1977 MKR Group Inc.

ロメロ監督の代表作である『ゾンビ』において特殊メイクを担当したトム・サヴィーニが、本作でも特殊メイクを担当しています。

トム・サヴィーニは『ゾンビ』以降、『13日の金曜日』(1980)や『死霊のえじき』と言った名作ホラーで特殊メイクを務めることとなり、その高い実力は当時から話題を集めていました。

もちろん、特殊メイクの技術は追随する技術が発展した現代の方が高く、特殊メイクの力だけで本作のクオリティの高い恐怖描写は成し得ません。

一方、全体的にセピア調の映像が映し出される本作は、町の映像からは静寂や平穏と言った印象を受けます。

しかし、主人公マーティンの重ねる凶行はその静寂を打ち破るように苛烈であり、昨年話題となった1980年の映画『アングスト』(1980)のような色による静寂を打ち破る「恐怖」がそこにはありました。

ロメロ監督の映像表現とトム・サヴィーニによる特殊メイクの技術が合わさり、本作の衝撃的な恐怖描写が生み出されたことが分かります。

マーティンは「人間」か「悪魔」か


(C)1977 MKR Group Inc.

さまざまな神話や伝承に登場する「吸血鬼」と言う存在。

その特徴や習性は諸説あるものの、現代の作品に登場する吸血鬼像は小説家のブラム・ストーカーによって1897年に執筆された「吸血鬼ドラキュラ」を下敷きとしたものが多いとされています。

しかし、本作では敬虔なキリスト教徒であるクーダがマーティンに吸血鬼の苦手なものとされる「にんにく」や「十字架」といったものでの対応を試みますが、マーティンには一切効果がありません。

マーティンは陽の光すらも気に留めてはおらず、吸血衝動は彼の言う通り「魔術なんかではない」と考えることもできます。

その一方で、マーティンは若い見た目から反した高齢であることも明言されており、「人間」であることも疑問視されます。

果たしてマーティンは「人間」なのか吸血鬼と言う名の「悪魔」なのか。

作中で明言されないこの問題に皆さんも挑んでみてはいかがでしょうか。

まとめ


(C)1977 MKR Group Inc.

静かな残虐性が描かれる「ホラー」でありながらも、そのシーンに美しさを覚える映画『マーティン/呪われた吸血少年』。

ゾンビ』と同様に不死の生物を描きつつも、理性を持っていることで苦悩する吸血鬼に共感も出来てしまう本作。

内に湧き出る衝動に抗うことの出来ない苦しみと、理性に身を任せることの快楽と後悔を描いた本作をぜひ劇場でご覧になってください。

本作は『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』(2010)と併せて10月15日(金)より新宿シネマカリテで上映予定です。




Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

連載コラム

【ネタバレ】ザ・シークレット・サービス|あらすじ結末と感想評価。名優クリント・イーストウッドが贈る大統領暗殺のサスペンス|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー102

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第102回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞 …

連載コラム

映画『POCA PON ポカポン』東京国際映画祭2025で公式上映!映画祭予告編×大塚信一監督コメントも到着|TIFF東京国際映画祭2025-2

映画『POCA PON ポカポン』は第38回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門にて公式上映が決定! 映画『POCA PON ポカポン』は、ある猟奇殺人事件を背景にして、温かさと不穏 …

連載コラム

『ゴーストランドの惨劇』感想と評価【トラウマ映画・どんでん返し】の鬼才パスカル・ロジェが描く新たなホラーの恐怖|SF恐怖映画という名の観覧車61

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile061 『マーターズ』(2009)で世界にトラウマを植え付けたホラー界の鬼才パスカル・ロジェ。 理不尽な暴力を描く作品が評価を集める一方で、前回 …

連載コラム

『ノスフェラトゥ(2025)』あらすじ感想と評価考察。ロバート・エガース監督の独自視点で誕生した吸血鬼VS美女のゴシック・ロマンスホラー|映画という星空を知るひとよ255

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第255回 『ウィッチ』(2015)、『ライトハウス』(2019)、『ノースマン 導かれし復讐者』(2022)などで知られる映画監督ロバート・エガースが、映画『 …

連載コラム

【劇場版BEM 妖怪人間ベム】感想と考察解説。ラスト完結作でテレビ金字塔ダークアニメ“BECOME HUMAN ”は真実となりうるか?|SF恐怖映画という名の観覧車121

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile121 1968年より放映された「早く人間になりたい」と言うセリフが有名な名作アニメ『妖怪人間ベム』。 わずか26話で打ち切られ、さまざまな倫理 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学