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Entry 2020/12/30
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【ヤバイが面白いB級映画】2020年ランキングベスト5:隠れた名作からトンデモホラーまで紹介《シネマダイバー:増田健選》

  • Writer :
  • 増田健

2020年の映画おすすめランキングベスト5
選者:シネマダイバー増田健

格差社会をテーマにした映画、『パラサイト 半地下の家族』と『ジョーカー』が世界を席巻した2019年。その一年後の2020年がこんな年になると、誰が予想できたでしょうか。

多くの映画の製作・公開が中止となる中、観客は「それでも、観たい」と思える作品のために映画館へ足を運び、それが『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の空前の大ヒットを生みました。

その現象は、B級映画・ジャンル映画と呼ばれる、公開・上映規模の小さな作品でも同じ傾向として表れました。『ミッドサマー』『アングスト/不安』など、観る者を強烈に刺激する映画が観客を集め、大きな話題にもなったのです。

そのような2020年に公開・上映されたB級映画・ジャンル映画の中から、自信を持ってお薦めするベスト5選を紹介します。

【連載コラム】「2020年映画ランキングベスト5」記事一覧はこちら

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第5位『デスマッチ 檻の中の拳闘』

【おすすめポイント】
その過激な言動が社会の分断を生んだとも言われ、問題多き人々と思われがちなアメリカの保守白人層。しかし貧困と絶望の中に生き、そこから抜け出そうとあがく人々もいます。

アメリカ社会の現実を寒々とした映像で、激しい暴力を交えて描いた本作は「ありふれたアクション映画」と油断して観たら、メンタルが削られること必至。

誰もが敬遠するテーマへ果敢に挑んだ監督ティム・サットンが、現代の寓話として描く「絶望」のサクセスストーリーであり、作中で闘うジェイミー・ベルとフランク・グリロの姿は『ジョーカー』の主人公アーサーよりも深い闇を感じさせます。

とことん気分を落ち込ませたい。そして怒りと共に、体内にアドレナリンを沸き立たせたい。そんな時には必見の問題作です。

第4位『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』

【おすすめポイント】
血しぶきとグロが大好き、ブラックな笑いも大歓迎。映画なら『死霊のはらわた』(1981)より、『死霊のはらわたⅡ』(1987)の方が好きだという方なら迷わず見るべき逸品。

前作『処刑山 デッド卐スノウ』(2009)を未見でも楽しめる本作は、ナチスにゾンビ、下ネタ・不謹慎ネタが飛び交う、悪趣味上等の大爆笑スプラッター映画。

ツッコミどころ満載の内容に笑いと呆れが止まらない、だからこそ面白い。どれだけ陰鬱な気分になっていても、どういう訳だかティーガー戦車が吹っ飛ばしてくれる痛快作です。

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第3位『フューリーズ 復讐の女神』

【おすすめポイント】
いわゆる「デス・ゲーム物」であり、本作で描かれる無茶な設定には誰もが呆れますが、それこそがB級映画を愛する者の心を鷲掴みにします。

本作の一番の売りは、70~80年代スラッシャー映画へのオマージュ。本作の監督であるトニー・ダキノをして「やり過ぎちゃったかも……」と評したゴアシーンの数々が登場します。

か弱き女性が被害者として消費される、かつての殺人鬼映画とは違います。彼女たちはデス・ゲームの中で駆け引きを繰り広げ、復讐に転じる姿は実に現代的。「これぞB級スプラッタームービー!」「これぞ低予算ソリッドシチュエーションスリラー!」と言える映画です。

第2位『ナンシー』

【おすすめポイント】
貧困と希望のない中で生きる孤独な女性の姿は、まさに『デスマッチ 檻の中の拳闘』と表裏一体。彼女の姿に多くの方が共感を覚えるでしょう。

社会の底辺で生きるが故に自らを偽らざるを得ない、そしてそれが日常化していた主人公は、最後に何処にたどり着くのでしょうか。

アメリカのワークショップ映画として作られた本作。そうした『ナンシー』が誕生した環境にも、映画を読み解く鍵が秘められています。

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第1位『Cosmetic DNA』

【おすすめポイント】
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020でにて「北海道知事賞」を獲得した新鋭・大久保健也監督の作品。男たちに喰い物にされた若い女性たちが反撃に転じる姿を、カラフルかつポップに描く、社会派テーマを見事エンターテインメントに昇華した快作です。

困難な題材を娯楽作にまとめ、高い完成度の映画に仕上げた手腕には脱帽せざるを得ません。間違いなく日本のインディーズ映画界に一石を投じる作品でしょう。

「まずは観てほしい!」と声を大にして言える映画です。

まとめ


(C)2017 Nancy the Film, LLC

コロナ禍が世界を、映画界を覆った2020年。しかし「B級映画」と一括りにされがちな公開規模の小さい作品が、持ち前の個性でその存在感をより示した1年でもありました。そんな作品の中から選んだ5作は、結果として様々な形で困難に立ち向かう映画となりました。

『ナンシー』のように主人公の境遇や行動に共感を覚える作品もあれば、『デスマッチ 檻の中の拳闘』『フューリーズ 復讐の女神』のように、暴力であがきながらも挑む作品もあります。一方、『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』の様な映画で、全てのモヤモヤを忘れて笑い飛ばすのも大アリでしょう。

そして1位に選んだ『Cosmetic DNA』は、それら全ての要素を兼ね備えた、時代の申し子のような映画でもありました。

今後も様々な形で、ユニークな作品が公開されます。そして過酷な時代を笑いで、過激な描写で、そして観客と分かち合う共感の力で、突き破ってくれる映画が次々と登場するはずです。

【連載コラム】「2020年映画ランキングベスト5」記事一覧はこちら



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