ディズニー初の長編アニメが半世紀以上の時を経て実写映画で再びスクリーンに
1937年にアメリカで公開され、1950年に日本で公開されたアニメ映画『白雪姫』を『(500)日のサマー』(2009)、『アメイジング・スパイダーマン』(2012)のマーク・ウェブ監督が実写映画化。
かつて優しさと光であふれていた王国が、邪悪な女王によって闇に支配されてしまいました。
純粋な心を持つ白雪姫は、光にあふれた王国を取り戻したいと願いますが、女王に命を狙われ森に逃げます。そこで7人の小人たちや、盗賊と出会い、少しずつ成長していくのでした。
『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)のレイチェル・ゼグラーが白雪姫を演じ、『ワンダーウーマン』(2017)のガル・ガドットが女王役を演じました。
日本語吹き替え版では、俳優の吉柳咲良が白雪姫、元宝塚歌劇団の月城かなとが女王、ボーイズグループ「JO1」の河野純喜がジョナサンの声を担当しました。
映画『白雪姫』の作品情報
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【日本公開】
2025年(アメリカ映画)
【原題】
Snow White
【監督】
マーク・ウェブ
【製作】
マーク・プラット
【脚本】
エリン・クレシダ・ウィルソン
【音楽】
ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール
【キャスト】
レイチェル・ゼグラー、ガル・ガドット、アンドリュー・バーナップ、パトリック・ペイジ
【吹き替えキャスト】
吉柳咲良、月城かなと、河野純喜、諏訪部順一、大塚明夫、津田篤宏、小島よしお、平川大輔、日野聡、浪川大輔、風間俊介
【作品概要】
『シンデレラ』(2015)に始まり、『美女と野獣』(2017)と長編アニメを実写化してきたディズニーが、初の長編アニメである『白雪姫』(2015)を実写映画化。
監督を務めたのは、『(500)日のサマー』(2009)、『アメイジング・スパイダーマン』(2012)のマーク・ウェブ監督。
『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)のレイチェル・ゼグラーが白雪姫を演じ、『ワンダーウーマン』(2017)のガル・ガドットが女王役を演じました。
映画『白雪姫』のあらすじとネタバレ
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かつてその王国は、優しさと光にあふれ、良き国王と女王が国を納めていました。そして大雪の日、2人の間に女の子が生まれ、白雪姫と名付けられました。
白雪姫は、優しい両親のもと、良きリーダーになるには分け合うことだと教えられ、皆と分け合いながら楽しく過ごしていました。
しかし、女王が亡くなり国王と白雪姫は悲しみに暮れます。そこに遠くの国から美しい謎の女性が現れます。その女性は国王と結婚し、女王になると邪悪な本性を表し始めます。
嘘の情報を流し、国王を南の国へ追いやると、白雪姫を召使にし、農夫をはじめとした町の男性たちを自分の兵隊にしました。
国は暗く闇に覆われ、人々から希望が消えていきました。白雪姫自身も自分が勇敢な女性であることを忘れかけていました。
そんな時、城にとある侵入者がやってきます。それは、国王の名のもとに盗みを働く盗賊の頭・ジョナサンでした。
ジョナサンを見つけた白雪姫は、「盗みはよくない。女王に頼めばいい」と言いますが、女王が聞き入れるとは思えず、民が飢えに苦しんでいるのだから盗んで構わないと言います。
民のことなど女王は考えていないというジョナサンに対し、プリンセスは違うと白雪姫は言います。
「プリンセスに思うだけじゃなく行動しろと伝えてくれ」と言い、ジョナサンはどこかに立ち去ります。
ジョナサンの言葉にハッとした白雪姫は初めて女王に対し、「民に食べ物を分け与えるべきでは」と意見を言います。
「優しさなど必要ない、思いやりなどの美しさは、花と同じでいつか枯れるが、宝石は変わらずずっと美しい」と女王は言い、白雪姫の言葉を聞き入れようとしません。
そこに兵に捕らえたれたジョナサンがやってきます。ジョナサンに慈悲を与えるべきだという白雪姫に対し、女王は頑なに態度を変えず、ジョナサンを門に縛り付けます。
白雪姫は様子を見てジョナサンを逃します。何もできずにいる自分を責める白雪姫にジョナサンは「君は女王に意見した、勇敢だよ」と言います。
その頃、女王は真実の鏡に誰が一番美しいか問いかけていました。すると、鏡は目覚め始めた白雪姫の美しさに、女王は叶わないと言います。
激怒した女王は、部下の兵に白雪姫を森に連れ出して、殺すよう命じます。命令の通りにすれば欲しいものは与えると言われ、断れなかった兵士は白雪姫を連れてりんごを取りにいきます。
何も知らず、心優しい白雪姫は、りんごをとって兵士に差し出します。兵士は、そんな白雪姫を殺すことができず、森に逃げるように言います。
女王が自分の命を狙っているショックと、初めて足を踏み入れた森に恐怖を感じる白雪姫。必死に逃げ疲れ切った白雪姫の前に現れたのは、鹿でした。
森の動物たちに囲まれながら白雪姫がたどり着いたのは、小さな家でした。疲れ切った白雪姫はそのまま眠ってしまいます。その家に住んでいたのは、7人の小人たちでした。
鉱山で宝石を掘る仕事を終えた小人たちが意気揚々と家に帰ると、ベッドに何者かがいます。怯える小人たち。一方、白雪姫も寝起きのところに現れた小人に驚き、叫び声を上げます。
しかし、すぐに落ち着き「怖がらないで」と言います。
7人の小人たちは人間より遥かに長く生きていますが、いつも皆、人の意見を聞かず、言い争いになってしまいます。
そして、おとぼけはうまく自分の気持ちを伝えることができず、他の小人に笑われたりしていました。
白雪姫は、そんなおとぼけに、「話すのが怖かったら口笛で気持ちを伝えればいい」とアドバイスをします。
おとぼけが口笛に乗せて自分の気持ちを表し、小人たちはそんなおとぼけの口笛に耳を澄ませます。
白雪姫は、「皆もっと人の意見を聞くべき」といい、歌いながら散らかり放題の家を楽しく掃除をし始めます。家がきれいになる頃にはすっかり小人たちと打ち解けていました。
しかし、小人の家にいても安全とはいえず、白雪姫は父親を探しに南の国に行こうと考えていました。
映画『白雪姫』の感想と評価
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王国が幸せで平和だった頃、白雪姫は父から良きリーダーになるように、分かち合う大切さを教わります。しかし、母が亡くなり、悲しみに暮れ謎の女が女王になったことで王国は闇に覆われます。
この導入の部分で、本作のテーマが提示されています。それは、リーダーとなるべきプリンセスの姿と、分かち合う大切さです。
ただ王子様に助けてもらうのではなく、自分の力で立ち向かっていくプリンセス像というのは、アニメ映画の実写化だけでなく、アニメのプリンセスにおいても描かれるようになって久しいでしょう。
時代に合わせてエンタメは変化するものです。それ自体は悪いことではなく良いことです。
しかし、そうしようとするあまり、制作者側の都合を映画の演出やストーリー展開に感じてしまうのは、成功しているとはいえないのではないでしょうか。
グリム童話を元にしたアニメ『白雪姫』(1950)の時点で、ディズニーはいくつか設定を変えています。
その一つが魔法のキスで白雪姫が毒りんごの眠りから目覚める場面です。眠ったように亡くなっている白雪姫を小人たちがガラスの棺に入れていたという、グリム童話の原作と本作は同じです。
白雪姫に魅了された王子が、白雪姫がいないと何も手につかないと言い、小人に頼み込み譲り受け、移動させようとした際にりんごのかけらが喉から出て、白雪姫が目覚めるというのが原作の展開です。
それを踏まえて、実写版『白雪姫』を見てみると、白雪姫とジョナサンの恋に主軸を置いた描き方をしていないため、その場面がやや浮いて見えてしまうのです。
それだけではありません。アニメ版にはなかった女王の兵士を入れたことで、女王が自ら変装して毒りんごで白雪姫を殺そうとするのも変に思えてしまうのです。
そのような整合性のなさゆえに、アニメ版を踏襲するために重要なシーンだけなぞったかのように見えてしまうのです。
要するに映画としての必然性が感じられないシーンがあまりにも多い作品になってしまっているのです。
ディズニーは映画を通して、長きにわたり子供たちに夢を与え続けてきました。METOO運動などの社会情勢も踏まえてエンタメ作品に落とし込み、アップデートし続けています。
過渡期に差し掛かっているといえるディズニーは、製作の意図以上に作り手の創造性、そして観客にもっと委ねてもいいのではないでしょうか。
音楽の素晴らしさ、CGを駆使したファンタジックな映像など、エンタメとしての質は十分にあります。
人種関係なくプリンセスになれる、正義と信念を貫くリーダー像など、まっすぐなメッセージは大人にも子供にも響くものです。
だからこそ、製作者の都合がノイズになってしまう部分はあるのでしょう。
まとめ
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マーク・ウェブ監督がディズニー初の長編アニメを実写映画化。オリジナルアニメと同様に、絵本を捲るように物語が始まり、胸踊る音楽が包み込みます。
アニメの世界のままの小人の家や、ハイホーの歌など、オリジナルを知っている世代にも、知らない世代にも、楽しめる映画になっています。
白雪姫だけでなく、女王のビジュアルや衣装、歌も楽しめるポイントです。
様々な点で、疑問や問題点も指摘される本作ですが、世代を超えて楽しめるという原点は変わっていません。
初めて白雪姫を知るという子供たちにとって、胸踊る作品であることには間違いないでしょう。