連載コラム「邦画特撮大全」第104章
今回の邦画特撮大全は2022年3月6日(日)から放送開始される、スーパー戦隊シリーズ最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を紹介します。
2022年2月9日(水)に行われた製作発表会見にて、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のメインキャストと主題歌アーティストが発表されました。
そこで明らかにされた『ドンブラザーズ』の情報から、過去のスーパー戦隊との違いや共通点を探っていきます。
特撮ドラマ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の作品情報
【放送】
2022年(日本ドラマ)
【原作】
八手三郎
【監督】
田﨑竜太ほか
【脚本】
井上敏樹ほか
【主題歌】
MORISAKI WIN
【キャスト】
樋口幸平、別府由来、志田こはく、柊太朗、鈴木浩文、駒木根葵汰、和田聡宏、富永勇也、宮崎あみさ、タカハシシンノスケ
特撮ドラマ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のスタッフとキャスト
スーパー戦隊シリーズ第46作目となる『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』。2022年度放送の『機界戦隊ゼンカイジャー』の第42話に主人公のドンモモタロウが一足先にサプライズ出演していました。
まず『ドンブラザーズ』のメインスタッフを見て行きましょう。
プロデューサーは平成仮面ライダーシリーズを多数手掛け、『仮面ライダーディケイド』(2009)や『仮面ライダージオウ』(2018)など、平成ライダーのアニバーサリー作品を手がけた白倉伸一郎と武部直美が、『機界戦隊ゼンカイジャー』から引き続き担当します。
『鳥人戦隊ジェットマン』(1991~1992)以来およそ30年ぶりに井上敏樹が、スーパー戦隊シリーズのメインライターを担当。さらに本作のパイロット(第1話・第2話)を演出するのは田﨑竜太監督。
白倉・井上・田﨑の3者はこれまで『仮面ライダーアギト』(2001)『仮面ライダー555』(2003)などでタッグを組んできました。
井上敏樹の代表作『鳥人戦隊ジェットマン』は男女の恋愛要素を取り込み、当時低迷していたスーパー戦隊シリーズに活を入れた作品です。この起用からも『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』はシリーズにカンフル剤を打ち込むような作品になることを予感させます。
そして主題歌アーティストはスティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018)に出演したことで脚光を浴びた森崎ウィン(アーティスト名義は“MORISAKI WIN”)。
ちなみに森崎ウィンはかつて『仮面ライダーW』(2009)の第7・8話にゲスト出演しており、その回は田﨑監督による演出でした。
主人公のドンモモタロウを演じる樋口幸平は、AbemaTVが製作する恋愛リアリティ番組『恋とオオカミくんには騙されない』に出演していました。
「オオカミくんには騙されない」シリーズからは、過去に『仮面ライダーゼロワン』(2019)の高橋文哉、『仮面ライダーセイバー』(2020~)の内藤秀一郎と山口貴也、そして『機界戦隊ゼンカイジャー』の駒木根葵汰を輩出しています。
また驚きだったのは『機界戦隊ゼンカイジャー』の主演・駒木根葵汰の続投です。ただし役名は“五色田介人”でキャストも同じなのですが、彼が変身するのはゼンカイザーではなく“ゼンカイザーブラック”であり、『ゼンカイジャー』の五色田介人とは全く違うキャラクターとのことです。
スーパー戦隊シリーズは『電子戦隊デンジマン』(1980)と『太陽戦隊サンバルカン』(1981)を除いて基本的に1年1作品ごとに世界観を一新しています。
すでにドンモモタロウが『ゼンカイジャー』に登場していることから、『ゼンカイジャー』と『ドンブラザーズ』では何かしらのリンクが試みられることでしょう。
モチーフは“桃太郎”
本作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は桃井タロウ/ドンモモタロウ、猿原真一/サルブラザー、鬼頭はるか/オニシスター、指名手配中の逃亡者・犬塚翼/イヌブラザー、妻帯者のサラリーマン・雉野つよし/キジブラザーの5人が、敵と戦います。
本作のモチーフはおとぎ話の「桃太郎」です。“ドンブラザーズ”の名前も、桃が流れる音の「どんぶらこ」と「ブラザー」をかけた秀逸なネーミング。
またタイトルが「○○(レン)ジャー」ではないのも『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012)以来です。
桃太郎がお供の動物と鬼を退治するという物語は、集団ヒーローであるスーパー戦隊の遠い先祖と言えるかも知れません。
かつて『超電子バイオマン』(1984)では、桃太郎たちおとぎ話の主人公が現代に蘇えるという案が考えられたこともあります。
また桃太郎は岡山県に伝わる吉備津彦命(きびつひこのみこと)の鬼退治伝説が由来ともいわれ、退治された鬼・温羅(うら)は『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001)に登場するハイネスデュークオルグ・ウラの名前の由来でもあります。
スーパー戦隊シリーズではありませんが、円谷プロダクションの『ウルトラマンタロウ』(1973)は“現代のアラビアン・ナイト”をコンセプトに、おとぎ話のような物語が展開されていました。
次作『ウルトラマンレオ』(1974)では終末ブームとスポ根ものを取り入れたシリアスな物語がベースでしたが、“日本民話名作シリーズ!”と銘打ったおとぎ話モチーフのエピソードが7編も製作されています。
おとぎ話や民話はどの世代でも子供時代に触れるものであり、多くの物語の基層にもなっています。
これまでのスーパー戦隊では動物・自動車・忍者・恐竜などが好んでモチーフに選ばれていますが、これはメインターゲットである子供たちの好きな物だからです。
そう考えると、子供たちにも身近なおとぎ話「桃太郎」がモチーフに選ばれたのは自然な流れと言えるでしょう。
初の“男性ピンク”と意表を突く5人のシルエット
現在放送中の『機界戦隊ゼンカイジャー』は人間1人、着ぐるみの機械生命体4人というかなり異例の編成でした。
本作『ドンブラザーズ』ではうって変わって戦隊メンバーは全員人間で、敵である“脳人(ノート)”も着ぐるみではなく俳優が顔出しで演じます。
しかし今回で目を引くのはドンブラザーズの変身後のシルエットです。ドンモモタロウ、マッシブなサルブラザー、オニシスターの3人は例年通りに変身後、着ぐるみのヒーローになります。
一方、イヌブラザーは3頭身のデフォルメされたシルエット、キジブラザーは全長220㎝の長身の有翼で上記の3人とは大きくシルエットが異なっています。
本作ではドンブラザーズの変身のことを“アバターチェンジ”と呼称しており、これまでのシリーズで見られた「変身」とはやや概念が違うのかもしれません。
また『ゼンカイジャー』には、ゾックス/ツーカイザーの弟であるカッタナーとリッキーがデフォルメされたキャラクターで、彼ら2人の表現方法がイヌブラザーへ発展継承されているのかも知れません。
そしてキジブラザーは、初の男性ピンク戦士です。
『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)のゴーカイチェンジや『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)の乗り換えなどで、男性戦士が一時的にピンクに変身することはありましたが、固定のメンバーカラーに配されるのは今回が初。
2022年度放送中の『仮面ライダーリバイス』の主人公がピンクであるのと併せて、ピンク=女性の色という固定観念を破ることになるのではないでしょうか。
まとめ
2022年3月6日(日)から放送開始される『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』。発表された情報からもわかるように、新機軸の要素を多数投入した話題作となることでしょう。
どんなチャレンジングな作品となるのか、放送開始まで期待が膨らみます。