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『仮面ライダーアギト』あらすじと内容解説。三人の群像劇とアンノウンという謎多き敵怪人|邦画特撮大全42

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第42章

『仮面ライダークウガ』(2000~2001)の成功を経て製作された平成仮面ライダーシリーズの第2弾『仮面ライダーアギト』(2001~2002)。

現在放送中の『仮面ライダージオウ』では、津上翔一/仮面ライダーアギト役の賀集利樹、風谷真魚役の秋山莉奈、尾室隆弘役の柴田明良の3人がゲスト出演しました。

今回の邦画特撮大全は『仮面ライダーアギト』を特集します。

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『仮面ライダーアギト』の作品概要

【放送期間】
2001年1月28日~2002年1月27日

【原作】
石ノ森章太郎

【脚本】
井上敏樹、小林靖子(第28話のみ)

【監督】
田﨑竜太、長石多可男、石田秀範、渡辺勝也、六車俊治、鈴村展丈、佐藤健光、金田治

【キャスト】
賀集利樹、要潤、友井雄亮、秋山莉奈、藤田瞳子、柴田明良、山崎潤、田口主将、小川敦史、小谷嘉一、羽緒レイ(現・羽尾明)、菊池隆則(現・樋口隆則)、神木隆之介、升毅

【作品概要】
平成仮面ライダー第2弾となった『仮面ライダーアギト』。本作は「目覚めろ、その魂」というキャッチコピーのもと製作されました。“アギト”とはもちろん主人公の仮面ライダーの名前ですが、劇中では超能力に目覚めた人類の進化形全体のことを指します。“アギト”とはラテン語で「覚醒」を意味する言葉です。

ちなみに英語表記では「AGITO」ではなく「AGITΩ」。これは新約聖書にある「アルファでありオメガである」に由来し、「最初で最後の作品」=「究極」であるという作り手の強い意気込みを感じさせます。

前作『クウガ』のチーフプロデューサーであった高寺成紀、シリーズ構成・脚本の荒川稔久は本作に参加せず、『アギト』のチーフプロデューサーとメインライターは白倉伸一郎と井上敏樹がそれぞれ務めました。この2人はかつて東映が製作したオリジナル特撮ドラマ『超光戦士シャンゼリオン』(1996)でタッグを組んだスタッフです。

本作のパイロットを演出したのは『パワーレンジャー』シリーズの現場から日本に戻った田﨑竜太監督。本作以降、平成仮面ライダーシリーズの演出の中核を担うことになります。

また、前作『クウガ』で仮面ライダークウガのアクションを演じた富永研司に代り、主人公であるアギトのアクションを演じたのは高岩成二です。以降、高岩は『仮面ライダー響鬼』(2005〜2006)を除く平成仮面ライダーシリーズで主人公ライダーを演じることとなります。

3人の仮面ライダーによる群像劇


©︎2001「アギト・ガオレンジャー」製作委員会 ©︎石森プロ・東映

本作の一番の魅力は、3人の仮面ライダーとその群像劇です。

現在でこそ多人数の仮面ライダーが登場するのは一般的になりましたが、前作にあたる『仮面ライダークウガ』までは基本的に仮面ライダーシリーズは単独ヒーローでした。しかしながら、本作はスタート段階から3人の仮面ライダーが登場するのです。

仮面ライダーアギトに変身する記憶喪失の青年・津上翔一。氷川誠は警視庁未確認生命体対策班・G3ユニットのメンバーで、強化服を装着し仮面ライダーG3へ変身。葦原涼は水泳選手として将来を期待されていましたが、交通事故により断念。更に事故がきっかけで仮面ライダーギルスの力に目覚めてしまいます。

この3人が時には協力し合い、時には反目し合いながら敵である“アンノウン”と戦うのです。このような仮面ライダー同士の戦いも本作から導入された要素です。3人の仮面ライダーにはそれぞれのドラマがあり、それらが複雑に絡み合う“群像劇”として『仮面ライダーアギト』は製作されました。

また忘れてはいけないのが、シリーズ後半から登場する木野薫/アナザーアギトです。医師免許を剥奪さたれ闇医者ですが、アギトの力に目覚めました。木野を演じた樋口隆則は当時42歳で、中年男性が仮面ライダーに変身したことも当時話題となりました。

また主人公である翔一の失った記憶、物語の鍵となる“あかつき号事件”、後述する敵の正体など複数の謎や伏線が散りばめられています。これは物語面を強化するため、『ツインピークス』などの海外ドラマのフォーマットを採用した結果でもあります。

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敵は神と天使?


©︎石森プロ・東映

本作の敵怪人は“アンノウン”と呼ばれる存在です。彼らは神に仕えるいわば“天使”とも言える存在で、アギトに目覚めた人間を殺すことが目的でした。人智を超えた存在で、「木の洞に押し込んで殺す」「水のない場所で溺死させる」など人間離れした方法でアギトに目覚めた人類を殺していきます。

そのためアンノウンのデザインや設定には、天使や神を想起させるモチーフが取り込まれています。例えば、全てのアンノウンに共通する造形的特徴として、浮き出た肩甲骨があります。デザインを担当した出渕裕によれば、それは骨が羽になりかけていることと同時に「神になりきっていないもの」であることを表現しているのだそうです。

また彼らは頭上に発生した光輪から武器を取り出すのですが、こちらは天使の輪をモチーフとしています。そのほかにも姿そのものがアヌビスやホルス、ネフェルティウスといったエジプト神話の神々をモチーフにしているアンノウンも登場します。

さらに、アンノウンは天使や神々を彷彿とさせるモチーフのほか、過去シリーズへのオマージュも取り入れられています。アンノウンたちの目元は、初期のショッカー怪人のように人間の目を覗かせたようなデザインになっているのです。

例を挙げると、本作の第1話・第2話にはジャガー怪人、続いて第3話・第4話にはカメ怪人が登場しますが、これは『仮面ライダーV3』へのオマージュです。『V3』の第1話に登場する怪人はハサミジャガー、第2話に登場する怪人がカメバズーカなのです。平成仮面ライダーシリーズの第2作ということもあり、仮面ライダーシリーズの第2作目である『V3』へオマージュを捧げられています。

まとめ


©︎石森プロ・東映

『仮面ライダークウガ』の人気と成功を経て製作された『仮面ライダーアギト』。群像劇や海外ドラマのフォーマットを採用しさらなるシリーズの進化と発展を試みました。

多人数ライダーや、仮面ライダー同士の戦いなど、本作がその後の“平成仮面ライダーシリーズ”の基礎の1つとなっているのは間違いないでしょう。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、大映が製作した歴史特撮スペクタクル映画『釈迦』(1961)と中国史を描いた大作『敦煌』(1988)を特集します。お楽しみに。

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