Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2024/02/26
Update

『アイアンクロー』あらすじ感想と評価解説。必殺技を掲げて闘うプロレスラーエリック一家の栄光と悲劇の物語|映画という星空を知るひとよ194

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第194回

巨大な手で敵レスラーの顔をわしづかみにする必殺技‟アイアンクロー(鉄の爪)”を得意技としたアメリカの伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。彼を父に持ち、プロレスの道を歩むことになった兄弟の実話をベースに描いたドラマが上映されます。

映画『アイアンクロー』は、2024年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

プロレス界の頂点を目指すフォン・エリック家ですが、ある時から次々と悲劇に見舞われ、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになっていきます。

本作の監督は『不都合な理想の夫婦』(2020)のショーン・ダーキン。「呪われた一家」と呼ばれながらもプロレスを生業とし続けた、ある家族の物語。映画『アイアンクロー』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『アイアンクロー』の作品情報


(C)2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

【日本公開】
2024年(アメリカ映画)

【原題】
THE IRON CLAW

【監督・脚本】
ショーン・ダーキン

【製作】
テッサ・ロス ジュリエット・ハウエル アンガス・ラモント

【キャスト】
ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソンほか

【作品概要】
本作『アイアンクロー』は映画ファンを魅了する気鋭スタジオ「A24」の作品で、『不都合な理想の夫婦』(2020)のショーン・ダーキン監督が、プロレス界の伝説“鉄の爪”フォン・エリック一家の衝撃の実話を映画化したものです。

「呪われた一家」と呼ばれ、栄光を築き上げながらも相次ぐ悲劇によって引き裂かれていく兄弟の壮絶なドラマを、次男ケビンの視点から描き出しました。

主演は『炎の少女チャーリー』(2022)のザック・エフロン。そのほか、『逆転のトライアングル』(2022)のハリス・ディキンソン、大ヒットドラマ『一流シェフのファミリーレストラン』(2022)のジェレミー・アレン・ホワイトなどが出演し、驚異の肉体改造を披露しています。

映画『アイアンクロー』のあらすじ


(C)2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

元AWAヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)は必殺技“アイアンクロー=鉄の爪”を生み出し、一世を風靡したプロレスラーです。

1970年はじめ頃、悪役レスラーとしてドサ回りに参加していたエリックは、妻と子どもたちを養うために自らのプロレス団体を設立し、息子のケビン(ザック・エフロン)を花形レスラーに育てあげようとしていました。

ケビンに続いて、三男デビット(ハリス・ディキンソン)のデビューが決まり、陸上競技のオリンピック選手を目指していた大学生の四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)も、アメリカ政府がモスクワオリンピックをボイコットしたため、陸上競技を断念し、プロレスラーになることを決意しました。

息子たち全員をプロレスラーに育て上げることになったエリックは、、苛烈な競争が繰り広げられる世界で“史上最強の一家”となる野望を燃やします。

厳格な父を敬愛する息子たちは、レスラーとしての才能を開花させ、次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド(ハリス・ディキンソン)、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)が大活躍した1980年代に絶頂期を迎えます。

ですが、その後、最強への道に悲劇が立ちはだかり始めます。

映画『アイアンクロー』の感想と評価


(C)2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

プロレス界の頂点をめざす、エリック一家の物語です。

アイアンクローの必殺技を持つ花形レスラーの父・エリック。次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド(ハリス・ディキンソン)、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)と、兄弟そろってプロレス界でその名を馳せます。

ですが、強さの絶頂期の中で悲劇が次々とこの一家に襲い掛かります。「呪われた一家」と噂されるのもこんなところからです。

本作はそんなエリック家の実話を基に、息子である次男のケビン目線で事実に沿った物語を作り上げました。

父の厳しいトレーニングに耐え、弟たちとのケンカやすれ違いも体験する次男のケビン。そこにあるのは父を敬い、弟たちを大切に思う、優しい兄の姿です。プロレス一家にある家族愛を語るのには、やはりこのケビンをおいてほかにはいないのでしょう。

ダーキン監督は、幼少期の自分について「プロレス狂」だったと言います。子どもの頃からプロレスに夢中で、フォン・エリック・ファミリーの悲劇に衝撃を受けた一人だったそうです。

監督は長年憑りつかれていた驚きの実話を、見事に家族の愛情と葛藤のドラマに仕立てたと言えます。プロレスに纏わる栄光と挫折を掘り下げ、新たな価値観を誕生させました

悲劇に見舞われる一家ですが、作品ではそれを嘆き悲しむ暗いムードは感じられません。栄光にも運命にも立ち向かっていく強い家族愛がそこにあるからに違いありません。

エリック家の栄光と悲劇をドラマ化するにあたり、プロレスラーを演じるザック・エフロン、ハリス・ディキンソン、ジェレミー・アレン・ホワイトらは、みな肉体改造を試みました。

彼らは本物のプロレスラーのような強靭な鋼の筋肉を纏う肉体でリングに立ち、迫力あるレスリングの試合をしています。

製作総指揮の米プロレス団体AEWのマクスウェル・ジェイコブ・フリードマン、プロレスシーンのコーディネーターを務める元WWE王者のチャボ・ゲレロ・Jr.らが、それぞれレスラー役で劇中にも登場し、白熱した試合を再現しているのも、見どころのひとつです。

まとめ


(C)2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

かつて、「アイアンクロー(鉄の爪)」の必殺技を持ち、アメリカプロレス界にその名を轟かせたフリッツ・フォン・エリックを題材にした作品『アイアンクロー』。“最強”を追い求めたエリックとその家族が織りなす真実の家族愛の物語でした。

事実に基づき、本格的なプロレスシーンが随所にみられる本作では、キャスト陣は見事な肉体改造の成果を披露しています。

またその一方では、栄光を目の前にして悲劇が訪れる兄弟の常に支え合う愛も丁寧に描かれ、単なる悲劇で終わらないエモーショナルな作品です。

プロレス界の出来事を扱った映画ですが、当事者の家族愛に心が温まることでしょう。

映画『アイアンクロー』は、2024年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




関連記事

連載コラム

映画『バリーリンドン』ネタバレあらすじと感想。戦列歩兵が得る金と愛を描くキューブリックの隠れた名作|電影19XX年への旅4

連載コラム「電影19XX年への旅」第4回 歴代の巨匠監督たちが映画史に残した名作・傑作の作品を紹介する連載コラム「電影19XX年への旅」。 第4回は、『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』の …

連載コラム

トルコ映画『湖上のリンゴ』あらすじと感想レビュー。吟遊詩人の少年が忘れることのできない存在|TIFF2019リポート29

第32回東京国際映画祭・コンペティション部門『湖上のリンゴ』 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭が2019年10月28日(月)に開会され、11月5日(火)までの10日間 …

連載コラム

映画『猫、かえる Cat’s Home』あらすじ感想と評価解説。モトーラ世理奈の主演で描く“猫”がつなぐ男女の思い出|インディーズ映画発見伝12

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第12回 日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝 …

連載コラム

講義【映画と哲学】第7講「恋愛・性的欲望・性的行為について:サルトルの観点から『デカローグ6』を見る」

講義「映画と哲学」第7講 日本映画大学教授である田辺秋守氏によるインターネット講義「映画と哲学」。 第7講では、恋愛・性的欲望・性的行為に対してサルトルが展開した「眼差し」論を踏まえた上で、彼の「眼差 …

連載コラム

映画『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』あらすじ感想と評価解説。結末は想像を絶する異世界バトルアクション爆誕|すべての映画はアクションから始まる28

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第28回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学