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『眼の壁』原作小説ネタバレとラスト結末の解説。松本清張の犯罪ミステリーで手形詐欺を扱った真犯人とは⁈

  • Writer :
  • 星野しげみ

小説『眼の壁』がドラマ化され、2022年6月よりWOWOWにて放送・配信スタート!

推理小説界に“社会派”の新風を生みだし、生涯を通じて旺盛な創作活動を展開した大作家松本清張。

彼の代表作『点と線』や何回も映画やドラマ化された『砂の器』にならぶ傑作ミステリーの『眼の壁』が、『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』として初めて連続ドラマ化されます。


(C)WOWOW

小泉孝太郎を主演に迎え、数多くのクライム・サスペンス作品を手掛けてきた内片輝監督と深沢正樹が脚本を担当しました。

『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』配信に先駆けて、小説『眼の壁』をネタバレ有りでご紹介します。

小説『眼の壁』の主な登場人物

【萩崎竜雄】
昭和電業製作所の社員

【田村満吉】
萩崎の友人で新聞記者

【舟坂英明】
右翼団体の親分

【上崎絵津子】
高利貸・山杉商事の社長秘書

【山本】
バーテンダー

【瀬沼弁護士】
昭和電業製作所の顧問弁護士

小説『目の壁』のあらすじとネタバレ


松本清張『眼の壁』(新潮文庫、1971)

昭和電業製作所の会計課次長の萩崎竜雄。

厳しい資金繰りに頭を悩ます上司の会計課長・関野徳一郎から帰宅の際に、東京駅で人と会う約束があるからそれまで付き合ってくれないかと、誘われました。

萩崎は東京駅一二等待合室まで関野に同行し、萩崎は関野が男性2人組と挨拶をかわすのを見届けて帰宅しました。

次の日、関野宛に堀口という男から連絡が入り、関野は3千万円の約束手形を用意して堀口と共にR銀行へ赴きます。銀行では案内された応接室で、大山と名乗った常務と面談しました。

大山は約束手形を現金に換えてくると堀口と応接室を出たきり、30分たっても帰ってきません。

心配になった関野は応接室を出て近くにいた行員に大山のことを聞きますが、「大山常務は5日前から北海道へ出張中です」と言われ、唖然としました。

それは、割引手形の金を預かって逃げる「パクリ屋」の仕業でした。

負債を背負うことになった一連の責任を感じた関野。その後、奥湯河原の山中で、縊死しているのが発見されます。

関野の萩崎宛に残された遺書から、萩原は関野の自殺が給料支払のための金融工作でパクリ屋一味の詐欺にかかって手形を奪われた責任をとったのだと知りました。

関野は堀口というパクリ屋を東京駅の待合室で高利貸・山杉商事から紹介されていたのです。

東京駅まで同行した萩崎は面談の席に自分がいなかったことが悔やまれ、なんとか上司の無念の思いをはらそうと誓いました。

萩崎は客になりすまして、山杉商事を訪ねました。そこで応対した美人秘書の上崎絵津子という存在が気になります。

萩崎が見張っていると、絵津子は車で出かけ、荻窪の「舟坂」と表札のある邸に入りました。萩崎は新聞社の友人・田村満吉を訪ね、舟坂英明が右翼の親分の一人であることを知ります。

萩崎は単なるパクリ屋の仕業ではなく、バックに右翼という大きな組織がからむ奥の深い事件の匂いを感じました。

それでも独自の捜査を辞めない萩崎は、舟坂の愛人の開いている銀座のバー“レッド・ムーン”に行き、ベレー帽の男と知り合います。

ある日萩崎は、ベレー帽とバーテンの男が競馬の話で盛り上がるのを、何となく聞いていました。

その時、絵津子が白髪の紳士と現れます。彼らを追おうとした萩崎は、待ち伏せた暴漢に袋叩きにされました。

田村の調べで、白髪の老紳士が代議士の岩尾であることが判明。岩尾の名刺が詐欺の舞台になったR銀行の応接室借用に使われていたのです。

代議士が事件に関与しているのではないかと、岩尾を訪ねて事件のことを問いただしますが、「何も知らない」と言われました。

萩崎と田村は舟坂をも訪ねましたが、山崎という事務長に追い返され、萩崎は昭和電業製作所の顧問弁護士・瀬沼から「危険なことに手を出すな」と警告されます。

その頃、深夜の新宿で、ベレー帽の男が射殺されました。

殺されたベレー帽の男は田丸という元刑事で、瀬沼弁護士の法律事務所員でした。瀬沼は、田丸のお通夜に出かけた後から行方不明になります。

ベレー帽の男・田丸殺害犯人は、“レッド・ムーン”のバーテン山本が妖しいとにらんだ萩崎。

絵津子が羽田空港に人の見送りに行った情報をつかむと、乗客名簿を調べて、山本が名古屋へ飛んだことをつきとめました。

萩崎と田村が山本を追っているころ、東京駅の旅客係室では外部からの相談を受けていました。

岐阜から23名の団体で東京見物に来たのだけれど、一人急病人がでたので担架で連れて帰りたい。担架は改札口から出し入れすると他の方に迷惑かかるだろうから、地下道にある小荷物運搬口から搬入できるか。というものでした。

しかも、東京発13時30分の下り急行乗車を希望し、岐阜到着19時52分であることを確認します。「問題ない」と駅員側は判断。

当日、実際に腕章をした一団が毛布でくるまれた人を担架に乗せて、列車に乗り込みました。もちろん、小荷物運搬口から担架を運び入れ、4人掛けの席は皆で取り囲んでいます。

毛布でくるまれた病人はその顔を露出することなく、誰にも怪しまれずに列車は岐阜に向かいますが、岐阜についたとき、その一団は誰一人として残っていませんでした。

腕章をはずし、少人数でばらけて停まる駅で降りれば目立ちませんし、急病人も一人が肩を貸して歩かせれば、病人に見えません。なぜ一行は消えてしまったのでしょう。不自然な話に駅員室はもちきりです。

東京駅に詰めていてその話を耳にはさんだ警官が、ベレー帽の男殺人事件を担当する捜査本部へ情報提供しました。

殺人よりもそれは瀬沼弁護士誘拐事件に繋がるのではないか。いろめきだった捜査陣は、名古屋方面へと向かいました。

その後の調べで、不審な一行の急病人は瀬沼弁護士で、一行が誘拐犯とわかります。田丸の体内からでた銃弾から銃の持ち主である黒池健吉という人物が浮かび上がって来ました。

年齢や容姿から、黒池はバーテンダーの山本である可能性が高くなりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『眼の壁』ネタバレ・結末の記載がございます。『眼の壁』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

片やその頃、長野県中央アルプスの国有林摺古木山の西麓の急傾斜面で、転落死体が見つかりました。

警察による検死の結果、身元不明の死体は転落死ではなく‟餓死”とされます。

身元確認で呼び出された瀬沼の実弟によって、死体は誘拐された瀬沼弁護士と判明しました。

4、5人の登山者グループがバスに乗り込み、摺古木山の方へ登って行く姿も目撃されています。けれども、その目撃証言と死体の死亡時刻にズレが生じ、捜査はかく乱します。

その頃、萩崎は三重県の宇治山田へ舟坂を追って行った田村と別行動をとり、山本を追って岐阜の瑞浪の町へ来ました。

萩崎は瑞浪の郵便局に絵津子が現れたのを知り、一足違いとなったのを残念に思っています。彼女は山本のために舟坂からの送金を受取りにきたと思えます。

舟坂からの送金……、言わずとしれた昭和電業製作所の約束手形の一部に違いありませんし、山本の逃走資金に充てるお金なのでしょう。

その後萩崎は、山本の故郷・長野の春野村へ行き、戸籍を調べて、山本の本名が黒池健吉であることを突き止めました。絵津子は山本の妹らしいということもわかりました。

その頃、春野村附近の沼で首吊り死体が発見されました。警察は死体はバーテンダーの山本こと黒池健吉であり、腐乱状況から3カ月前の自殺と判断。

ここでもまた黒池の生存情報と死亡時期のズレが生じて捜査陣は困惑します。

一方、宇治山田に行った舟坂は、そこから消息を絶ち、精神病院に入院しているようでした。

しかも半年ほど前から、玩具や薬品、ほうき、皿、空き瓶、子供の野球帽などをやたら買い込んでは、東京の自宅や知人宅に送っていると言います。

精神を患った買い物依存症? いやそうではないだろう。田村から話を聞いた萩崎は考え込み、そしてあることに気がつきます。

舟坂はたった一つの欲しいものを得るために、目くらましとしていろいろなものを買いあさっているのではないだろうかと……。

舟坂の買い物を調べて、おびただしい数の濃硫酸と重クローム酸加里を買い込んでいたことを突き止めます。

この2つの薬品を使えば、人体を溶かしてしまうことは簡単なのです。

舟坂は、パクリ屋として荒稼ぎをしている実状を瀬沼弁護士に気付かれたので、誘拐して餓死させました。

登山者の一行に瀬沼の替え玉として黒池を送り込み、いかにも瀬沼が歩いて転落現場まで行ったように見せかけ、死亡推定時刻とのズレを演出して捜査をかく乱させます。

そして、一連の事件に深くかかわって真実を知り過ぎた黒池を殺し、薬剤を使って溶かしたボロボロの白骨遺体にして、沼地に首吊り死体としてさらしたのです。

さらに萩崎は、舟坂が黒池健吉・絵津子兄妹の従兄・梅村音次であることも突き止めます。それから、萩崎は黒池の故郷に戻りました。

黒池一家をよく知っている近所の加藤老人に、若い頃村を飛び出した音次に会わせてあげると、言い、舟坂がいるという精神病院に加藤老人を連れて行きました。

驚くべきことに、その精神病院の院長は代議士の岩尾でした。

全ての糸が繋がったような気がして入り口で待つ萩崎のところへ、山崎が出て来て、舟坂は病気だと言いました。が、加藤が彼を舟坂その人と見破ります。

窮地に立たされた舟坂は、「きさまは誰だ?」と萩崎をにらみました。

「あんたに3千万円を詐取された昭和電業の社員だ」と萩崎も射るように舟坂を見返します。

舟坂は穴があくほど彼を顔を凝視しましたが、「よくやった。よく、ここまで調べたな」と言いました。

そして、舟坂は逃げ出し、建物の地下室の1室に用意した硫酸の風呂に落ちて溶けてしまいました。

小説『眼の壁』の感想と評価

推理小説の大御所松本清張の社会派ミステリー『眼の壁』。

白昼の銀行で巧妙に仕組まれた手形詐欺にあい、責任を一身に負って自殺した上司の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て、詐欺の黒幕を暴こうと必死に手がかりを求めます。

『眼の壁』は、昭和32年(1957)に発表された推理小説ですが、事件の犯人の心理描写やそれを追う主人公の心の動きなどが緻密に書き表され、‟勧善懲悪”をモチーフとしながらも、犯人に対する哀れみを多少匂わせたヒューマンミステリーでした。

松本清張お得意の交通機関の時刻表を使ったトリックや、奇想天外な誘拐の移動方法、目撃情報を得るための登山者一行を装う計画なども含め、ストーリーはスリリングな展開を示します。

現代風なトリックは何もありませんが、人間がしやすい錯覚や誤認などを上手く利用した伏線もあちこちに用意され、清張作品の持つ世界観へ引き込まれていくことでしょう。

ただミステリーだけで作品が終わるのではありません。

事件が解決した後に空虚感を感じる萩崎は、自分が抱いた絵津子への憧れに気がつきます。

自分の命も顧みずに事件解明に乗り出しながら、ラストに女性に抱く淡い恋心。

主人公は、刑事でも探偵でもないごく一般の男性です。名も無きヒーローである上に、事件関係者に恋心を抱くあたりがとても人間っぽく描かれ、親しみが感じられます

建物も、電車も、自動車も、人も、彼の視界にさりげなく映っている。眼にうつっていることが現実なのか。しかし、じっさいの現代の現実は、この視界の具象のかなたにありそうだ。眼はそれを遮蔽した壁を眺めているにすぎない。

清張はこのような文章でラストを飾りました。

全てを解決した主人公の心の奥まで入り込んで切り取った心理描写と言えます。

ドラマ『眼の壁』の見どころ

『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』は、社会派推理小説の起点になった『眼の壁』(新潮文庫刊)を、清張没後30年となる節目の2022年にあわせて、WOWOWにて待望の連続ドラマ化したものです。

強い正義感を持ち、手形詐欺の真相を追いかける萩崎竜雄役には、『七つの会議』(2019)や『まともじゃないのは君も一緒』(2021)にも出演している小泉孝太郎が決定!

昭和32年(1957)に発表した小説の背景をバブル終焉期の1990年に設定し、手形詐欺という社会悪とその裏組織の存在を浮き彫りにします。

異なる時代設定にしたけれども、松本清張作品の世界観を損なわないよう、芝居、映像、音楽含めてこだわったという内片監督。その手腕に注目です。

ドラマ『眼の壁』の作品情報

【配信】
2022年(日本ドラマ)

【原作】
松本清張『眼の壁』(新潮文庫刊)

【脚本】
深沢正樹

【監督】
内片輝

【キャスト】
小泉孝太郎

まとめ

松本清張の代表作『点と線』『砂の器』にならぶ傑作ミステリー『眼の壁』が、初の連続ドラマ化されます。

清張没後30年を記念してのドラマ化と言いますが、原作の持つ社会悪への憎悪は今でも健在と言えます。

正義感の強いサラリーマンが手形詐欺事件の謎を追究していく本作を、小泉孝太郎がどう表現してくれるのか。

名作ミステリーの現代復帰版に期待は高まります。

ドラマ『連続ドラマW 松本清張 眼の壁』は、2022年6月よりWOWOWにて放送・配信スタート!




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