Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

Entry 2017/08/26
Update

映画『オンリー・ゴッド』あらすじと感想レビュー!ラスト結末も

  • Writer :
  • 山田苺

2012年に映画『ドライヴ』で日本の映画ファンに、その名を知らしめたニコラス・ウィンディング・レフン監督。

ふたたびニコラス・ウィンディング・レフン監督&ライアン・ゴズリングがタッグを組んだサスペンスドラマ。

『オンリー・ゴッド』をご紹介します。

1.映画『オンリー・ゴッド』の作品情報


(C)2012 : Space Rocket Nation, Gaumont & Wild Bunch

【公開】
2014年(デンマーク・フランス映画)

【原題】
Only God Forgves

【監督】
ニコラス・ウィンディング・レフン

【キャスト】
ライアン・ゴズリング、クリスティン・スコット・トーマス、ビタヤ・パンスリンガム、ラター・ポーガーム、トム・バーク

【作品概要】
『ドライヴ』にてカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した、ニコラス・ウィンディング・レフン監督が、バンコクを舞台にした復讐劇。

今作もカンヌで上映されましたが、独特の映像美を賞賛する声もあれば、バイオレンスシーンにブーイングをするものなど、賛否両論を巻き起こした問題作となっています。

2.映画『オンリー・ゴッド』のあらすじとネタバレ


(C)2012 : Space Rocket Nation, Gaumont & Wild Bunch

バンコクのボクシングジムを経営するジュリアンは、兄ビニーとともに裏で麻薬の密売も行いながら生計を立てていました。

無口で感情をほとんど表に出さないジュリアンとは反対に、気性の荒いビニーは道で見つけた16歳の少女を暴行し、命を奪ってしまいます。

現場に駆けつけたのは、裏社会を取り仕切る元警官・チャン。彼は少女の父親を呼び出し、ビニーに復讐するようにいいます。

ビニーは、その父親に撲殺され、見るも無残な姿に…しかも今度はその父親を連れ出し、「自分の娘の商売を黙ってみていた、お前にも責任がある」といって、チャンは何もない背中から、突然刀を取り出すと父親を斬りつけます。

その頃、ジュリアンはホテルの一室で、顔馴染みの娼婦マイと過ごしていました。

しかしそこで、ジュリアンはまだ会っていない、チャンの幻覚を見ます。

気がつくと、部屋にジュリアンらの仲間がひとりやってきて、ビニーの死を伝えます。

ジュリアンは表情を変えずに、その訃報を聞きます…

数日後、ビニーの死を聞きつけた母・クリステルがアメリカからタイへやってきます。

彼女はチェックインの時間よりも早くホテルに着き、受付嬢と揉め、口汚い言葉で受付嬢をののしります。

ジュリアンは、兄を殺したあの父親の所在を突き止め、拘束します。

父親は、チャンに片腕を切り落とされていました。なぜ殺したのか?ジュリアンに問い詰められた父親は、ありのままを話します。

その後、またしてもホテルでチャンの幻覚をみるジュリアン。

部屋に戻ると、そこには母クリステルが座っていました。彼女は長男の復讐をジュリアンに任せており、その結果を聞きにきたのですが、ジュリアンは父親を逃がしていました。

理由を聞かれても、「状況が複雑なんだ」というジュリアンに対し、苛立つクリステルは他のものを差し向けると言い放ちます。

結局父親は、クリステルの金で雇われたごろつきに殺されてしまいます。これで終わったと思うクリステルですが、仲間からチャンの存在を伝えられます。

すると今度は、ジュリアンのジムに、警官が訪れ、父親が殺害された件で聞き込みをします。

何も知らないと、淡々と言うジュリアンですが、そこに幻覚で現れていたチャンが姿を現します。

以下、『オンリー・ゴッド』ネタバレ・結末の記載がございます。『オンリー・ゴッド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
彼は「この事件には黒幕がいる」と言い、ジムを去っていくのでした。ジュリアンは彼の後を尾行しますが、上手く撒かれてしまいます。クリステルは、チャンに刺客を送り込むよう、ある男に頼みます。

ジュリアンはマイに、「恋人のフリをして欲しい」と頼み込み、ドレスをプレゼントします。

そのドレスを着て、クリステルと食事を取ることになりますが、マイはクリステルに雑あしらわれます。

さらに兄の復讐をまともにやり遂げないジュリアンに、およそ母親とは思えない罵声を浴びせます。

帰り道、あんなに言われてなぜ我慢できるの?とマイに問い詰められるジュリアンですが「母親だから我慢できる」と一言。さらにマイの言動に怒ったジュリアンは「そのドレスをここで脱げ!」と初めて声を荒げます。

その頃、屋台で食事をしていたチャンに、刺客が奇襲を仕掛けてきます。

しかしそれは失敗に終わり、一人はチャンにまんまと捕まります。

あの父親と同じように、チャンは背中から刀を取り出し、刺客の腹を掻っ捌きます。

さらに刺客を送り込んだ男の下へ乗り込むチャンたちは、男から更なる黒幕を探ろうと執拗に拷問します。チャンは男の手足をアイスピックで突き刺し、眼球を切りつけ、耳の穴にナイフを突き刺します・・・

その後、チャンは一仕事終えたあとの生き抜きかのごとく、バーのようなところでカラオケを歌います。

そこにはジュリアンもおり、彼はついにチャンに決闘を申し込みます。ところがジュリアンはチャンに拳ひとつぶつけることが出来ず、完膚なきまでぶちのめされてしまいます。

刺客もジュリアンも倒された今、次にチャンの手が回ってくるのはクリステルです。彼女はぼろぼろになったジュリアンを責めながらも、今回だけは守って欲しいと懇願します。

一方、チャンは自宅からクリステルの泊まるホテルに向かいます。それと入れ違うように、チャンの自宅へ侵入するジュリアンと仲間1人。ジュリアンは待ち伏せするも、殺すのはチャンだけだと言います。

しかし仲間は「クリステルからは皆殺しにしろと言われている」と言います。

そこへ、チャンの幼い娘と、家政婦が帰ってきます。家政婦は仲間に撃ち殺され、次に娘に銃口を向けます。銃声が響きますが、それはジュリアンが仲間に向けて撃ったものでした。

チャンはクリステルの泊まる部屋にやってきます。ジュリアンは命乞いをするかのように、身の上話を始めます。

ジュリアンがバンコクへ来たのは、父親を素手で殴り殺してアメリカから逃げてきたのだと。しかし命乞いむなしく、ジュリアンは殺されます。

ジュリアンがホテルの部屋に来たときには、すでにクリステルは亡き者になっていました。ジュリアンはチャンの刀で、ジュリアンの腹部を切り、そこへ手を差し込みます・・・

再び、チャンがジュリアンの前に現れます。もはや現実なのか幻覚なのか分かりません。

ジュリアンはチャンに両腕を差し出し、そこへチャンの刀が振り下ろされます――。

場面は変わり、再びチャンのカラオケシーン。チャンの熱唱で、この映画の幕は下りるのでした。

3.映画『オンリー・ゴッド』の感想と評価


(C)2012 : Space Rocket Nation, Gaumont & Wild Bunch

今作の特徴は、なんと言っても映像美とバイオレンス描写のコントラストです。

青や赤の照明が登場人物を彩りながらも、目を覆いたくなるような惨たらしい場面の数々。

復讐劇なので、フィルム・ノワールというジャンルになると思うのですが、これまでに見たことのないような作風になっています。

他にも適役チャンの、抑制されながらも強烈な印象を残すキャラも注目です。

一般人に合法的に復讐を許可したり、課と思えば許可を出した男に制裁を加えたり…

さらにその制裁を加えるとき、何もない背中に、剣を引き抜くように手を伸ばすと、あら不思議。なんと刀が現れるではありませんか!

おまけに一仕事終えると、バーのような場所でカラオケを熱唱(それを黙って効いている部下…)

決闘シーンでは、クリフ・マルティネスが手がけるカッコいいサントラをバックに、ハリウッドスターであるライアン・ゴズリングをぼっこぼこにしたあと、何食わぬ顔でスタスタと去っていく様は、一度見たら忘れられません。

賛否両論別れている作品ですが、一度ハマッてしまうとやみつきになる中毒性があります…

まとめ

今作『オンリー・ゴッド』は、カンヌ国際映画祭の上映ではスタンディングオベーションとブーイングが飛び交い、大きく賛否が分かれた問題作でもあります。

そのカンヌでは惜しくもグランプリを逃したものの、第60回シドニー映画祭ではグランプリを受賞した作品でもあるのです。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングが再タッグを組んだ『オンリー・ゴッド』。

どのような問題作なのか?

ぜひ、あなたの目でご覧いただくのがよいのではないでしょうか…。

映画『ストレンジシスターズ』ネタバレ感想と考察評価。ホラー妖怪・首だけ女ガスーが現代に蘇る|未体験ゾーンの映画たち2020見破録53

関連記事

サスペンス映画

【ネタバレ】映画マスカレード・ナイト|あらすじ感想と結末考察。キャストの木村拓哉と長澤まさみが再びタッグを組む東野圭吾の小説シリーズ第2弾!

刑事とホテルマンの「異色のバディ」が帰ってきた! ファントムの仮面を被った悲しき殺人犯の正体とは。 東野圭吾のベストセラー小説「マスカレード」シリーズから『マスカレード・ナイト』が、実写映画化となりま …

サスペンス映画

【ネタバレ】夏目アラタの結婚|あらすじ結末と感想評価。本ミスおすすめの原作映画化を堤幸彦監督が秀作に仕立てる

作中に隠されている死を選んだ理由とは…? 今回ご紹介する映画『夏目アラタの結婚』は 、乃木坂太郎の同名ベストセラーコミックを「20世紀少年」3部作、「SPEC」3部作などを手掛けた、堤幸彦監督によって …

サスペンス映画

映画『DAU退行』ネタバレ結末感想とラスト考察。ナターシャ続編は共産主義が生み出す腐敗と狂気をさらにあぶり出す

ソ連の全体主義を再現した『DAU』プロジェクト第二弾は『DAU. 退行』 前作『DAU. ナターシャ』は序章に過ぎなかった……。 映画史上初の試みともいえる異次元レベルの構想で、ソ連の全体主義を再現し …

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』2番ケンイチ役は渕野右登。演技力とプロフィール紹介

ベストセラー作家の冲方丁(うぶかた・とう)のミステリー小説を原作とした映画『十二人の死にたい子どもたち』が、2019年1月25日から公開。 演出を担当するのは、『イニシエーション・ラブ』や『トリック』 …

サスペンス映画

映画『スリーピングビューティー』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

今回ご紹介するのは、川端康成の中編『眠れる美女』を原作とした映画『スリーピング ビューティー 禁断の悦び』。 原作の耽美な世界観をそのままに、舞台を海外へ移して生まれ変わった本作。 オーストラリア映画 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学