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【ネタバレ】ティファニーで朝食を|あらすじ結末感想と評価考察。オードリーヘプバーン主演作映画は名曲が彩る“目に見えないもの”への愛の物語

  • Writer :
  • 谷川裕美子

ヘプバーンの新たな魅力が光る珠玉の名作!

作家トルーマン・カポーティの同名小説を映画化した、女優オードリー・ヘプバーン主演のラブストーリー映画『ティファニーで朝食を』。

当時「清純派女優」として人気を博していたヘプバーンが、都会に暮らすコールガールの主人公ホリーを演じたことで、これまでの映画の価値観を変えた1作として知られています。

監督はブレイク・エドワーズ。ヘンリー・マンシーニが生み出した主題歌『ムーン・リバー』も大ヒットしました。

軍隊から戻ってくる兄のために、富豪との結婚で金持ちになることを夢見るコールガールのホリー。彼女はやがて、兄の面影を感じられる売れない作家ポールに心を開いていきます。

孤独で不遇なヒロインが見つけた真実の愛とは、どんなものだったのでしょうか。不朽の名作『ティファニーで朝食を』の魅力をご紹介します。

映画『ティファニーで朝食を』の作品情報


(C)2019 PARAMOUNT PICTURES CORP. All Rights Reserved

【公開】
1961年(アメリカ映画)

【原作】
トルーマン・カポーティ

【監督】
ブレイク・エドワーズ

【脚本】
ジョージ・アクセルロッド

【キャスト】
オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、バディ・イプセン、マーティン・バルサム、ミッキー・ルーニー

【作品概要】
トルーマン・カポーティの同名小説を原作に、ブレイク・エドワーズ監督が映画化した不朽のラブストーリー。ロマンティック・コメディながらも、ヒロインの奥深い心の傷を描くヒューマンドラマとしての魅力も秘めた1作です。

ローマの休日』(1953)『麗しのサブリナ』(1954)などに出演し、当時は清純派女優として知られていたオードリー・ヘプバーンが、コールガールの不遇な主人公ホリーを演じています。

ジョージ・ペパード、パトリシア・ニールが共演。ヘンリー・マンシーニが作曲した主題歌「ムーン・リバー」は世界的名曲として愛され続けています。

映画『ティファニーで朝食を』のあらすじとネタバレ


(C)2019 PARAMOUNT PICTURES CORP. All Rights Reserved

高級宝石店「ティファニー」のショーウィンドウの前でデニッシュを頬張る、ドレスアップしたコールガールのホリー・ゴライトリー。

アパートで猫と暮らす彼女は「すぐに失くしてしまう」という理由でアパートの鍵を自分で持たず、住人をベルで起こして鍵を開けさせるなど、自由奔放な性格の持ち主でした。

そんな彼女のアパートに、作家のポールが引っ越してきます。彼は数年前に出版して以来、長く筆をとっていませんでした。また自身のパトロンであり、夫のある身である女性「2E」と愛人関係にありました。

電話を借りにきたポールに、ホリーはティファニーの素晴らしさを話して聞かせます。ところが、彼から今日が木曜だと聞いたホリーは慌てて身支度を始めます。

彼女は毎週木曜、刑務所にいるマフィアのサリー・トマトに会いに行き、彼の話す「天気予報」をある弁護士に伝えることで、大きな報酬を受け取るというグレーな仕事を引き受けていました。

その晩、酔った男に自室まで押しかけられたホリーは、ポールの部屋に逃げ込みました。彼女は、彼が自分の兄にどこか似ているのを理由に「フレッド」と呼ぶようになります。

明け方、彼女は彼の隣で子猫のように眠りました。しかし、眠りについた彼女は怯えた様子で「フレッド」の名を呼んで泣き始めます。どうして泣くのか聞くポールに、ホリーは「おせっかいはやめて」と部屋を飛び出しました。

翌日、ポールはホリーの部屋で開かれた大勢が集うパーティーに招かれます。そしてホリーから、芸能プロのO・J・バーマンを紹介されました。

しかし、大騒ぎに怒った上階の住人が警察を呼んだことに気づき、ポールはいち早く逃げ出します。ホリーは大富豪のラスティと外出した後でした。

ある日、ポールはホリーと一緒に刑務所のサリーに会いに行きます。ホリーはいつも通り、弁護士に伝えるための「天気予報」を聞きました。

その後、小説を書き始めたポールは、窓辺でホリーがギターを弾きながら歌う声に聴き惚れます。そこに2Eがポールの部屋を怯えた様子で訪れ、「表に立っている男は、夫が監視に寄越した人物かもしれない」と話します。

相手が誰なのかを確かめるために外に出たポールを、その謎の男は追い始めました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『ティファニーで朝食を』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『ティファニーで朝食を』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 PARAMOUNT PICTURES CORP. All Rights Reserved

謎の男の正体は、なんとホリーの「夫」ドクでした。そしてポールはドクを通じて、ホリーの本名が「ルラメー」であり、不幸な生い立ちから14歳で結婚し、継子が4人もいることを知ります。

ドクは突然家出したホリーを、彼女の兄フレッドがもうすぐ除隊になることを機に連れて帰ろうとしていました。

ホリーはドクを笑顔で迎えましたが、その後ポールに「ドクの見送りに一緒に来てほしい」と頼みます。

「自分はニューヨークに残り、軍隊から戻ってくる兄は自分が面倒を見る」と話すホリー。彼女の覚悟を理解し、独り故郷へ帰っていったドクを、ホリーは涙で見送りました。

その後、酔っ払ったホリーをアパートへと連れ帰ったポールは、さらに酒を求めて金を払おうとする彼女に、金のために身を売っているのに無駄遣いするなと言って部屋を出ていきます。

翌朝、仲直りしたポールとホリーは、ポールが書き上げた短編小説が売れたお祝いに「今までにしなかったことをしよう」と言い合って街へ繰り出します。

二人はティファニーを訪れ、10ドル以下の品を探しますが見つけられません。そこでお菓子の景品の指輪に刻印を頼むと、店員は特別に受け入れてくれました。ホリーは満面の笑顔で喜びます。

その後、ストアでチープなお面を万引きするスリルを楽しんだ二人は、熱いキスを交わしました。

ホリーを愛するようになったポールは、2Eに別れを告げます。そしてティファニーで指輪を受け取ったポールは、図書館で南アメリカの本を読みふけっていたホリーに話しかけますが、冷たくあしらわれます。

ポールから愛を告白されたホリーは、ブラジルの富豪のホセと結婚することになったと話します。傷ついたポールは、ほかの男たちと同じように、小切手50ドルを彼女に渡して去ってゆきました。

ある日、ホセを連れて帰宅したホリーは、自室で我を失って暴れまわり大声で泣き始めます。部屋の前を通りかかったポールが驚いて部屋に飛び込み、彼女を抱きかかえました。

彼女は、フレッドが事故で死亡したことが書かれた電報を見たことで取り乱してしまったのです。ホセに彼女を慰めるように言い残して、ポールは部屋を出ていきます。

それからしばらくした後、ホリーは小説家として成功して引っ越したポールを部屋に招きます。しかし、外食にでて夜に帰宅した二人は、待ち構えていた警官に逮捕されてしまいました。

署に連れて行かれた二人は、サリーが麻薬密売を行なっていたこと、実は彼が話す「天気予報」はその密売に深く関わる重要な暗号文であり、ホリーは伝言役として犯罪に加担してしまっていたことを聞かされました。

ポールから助けを求められたバーマンは快く保釈金を出し、ホリーを釈放してくれました。

ホリーはアパートを引き払い、猫と一緒にホテルに身を隠すことに。ホセと南米へ行くつもりだったホリーのもとに「家名を汚すわけにはいかない」というホセからの別れの手紙が届きました。

「独りで飛行機に乗る」と言うホリーに、ポールは愛を告白します。しかし「檻に閉じ込められるのはお断りだ」とホリーは彼をはねつけました。

「自分は猫と同じで、名無しの誰のものでもない女だ」と語るホリー。彼女は雨の降りしきる街中で、タクシーから飼っていた猫を逃がしてしまいます。

ポールはホリーの臆病さを責め、生きることを恐れて自分の檻の中にいるのと同じだと伝えると、ティファニーで刻印してもらった例の指輪を彼女に渡して去ってゆきました。

ホリーは迷いながらも指輪を左手の薬指にはめ、タクシーを飛び出して雨の中を走り始めます。そしてポールと一緒に猫を探し始めました。

見つけられずにいたその時、猫の鳴き声がしました。ホリーは愛猫を見つけ出し、泣きながら抱きしめます。

猫を抱いたホリーとポールは笑顔でキスをして、固く抱き合いました。

映画『ティファニーで朝食を』の感想と評価


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飼い猫に名前をつけられないホリー

オードリー・ヘプバーン演じる猫と暮らす自由奔放なコールガールのホリーと、売れない作家のポールの恋を描くラブストーリー映画の名作です。

ヒロインのホリーは猫をかわいがりながらも、決して名前をつけようとはしませんでした。後にその深い理由が明らかとなります。

彼女には不幸な生い立ち故に14歳という若さで、4人の子持ちの年上の獣医と結婚した過去がありました。夫に傷を治してもらった動物たちが皆自然界へと逃げてゆくのと同じように、成長したホリーもまた、夫から逃げて単身でニューヨークへやって来たのです。

彼女の心の拠り所は、高給宝石店「ティファニー」と、軍隊にいる兄フレッドの存在でした。兄を迎え入れるためにわが身を売って金を稼いで暮らすホリーは、兄に似た面差しを持つポールに心を開くようになります。

初めて出会った晩からポールのベッドで眠るホリーですが、そこに性的な空気はまったくありません。彼女は本当の兄に甘えるかのように、彼の隣で猫のように丸まって安心しきって眠ります。しかし、すぐに悪夢にうなされて目覚めるのでした。

兄のためだけを思って常に金持ちの男性を狙ってきたホリーは、ポールへの恋心に背を向けようとします。何度もポールから愛を告白されても、ホリーは頑なに拒み続けました。

自分は「ホリー」でも「ルラメー」でもなく、猫と同じただの「名無し」で、誰のものにもなりたくないと言うホリー。それは、彼女の孤独な魂が、自分を守るための必死の叫び声でもありました。

興奮したホリーは、大雨の降りしきる街に、猫を解き放ってしまいます。

ホリーは、自分が誰かにとっての「大切なたったひとり」になることをひどく恐れていました猫に名をつけなかったのも、猫が自分にとっての特別な存在になってしまうことを恐れていたからです。

兄のフレッドが事故死して大きなショックを受けたのも、人生への恐怖に拍車をかけていました。愛すれば愛するほど、彼女は臆病にならずにはいられなかったのです。

ティファニーで刻印してもらったおもちゃの指輪をポールから渡されたホリーは、「本物」とは何であるかに気づかされます。そこには、ポールの真実の愛がありました。

雨の中必死でホリーが見つけ出したのは、かけがえのない彼女の飼い猫であると同時に、ポールを心から愛する自分自身の姿だったに違いありません。

陰と陽を演じ分けるヘプバーンの魅力


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ドレスアップしたヘップバーンが、ティファニーのショーウィンドウの前でデニッシュをかじる、あまりにも有名な場面から映画は始まります。

この場面こそが、本作のイメージを確固たるものにしたと言えるでしょう。小鹿のように敏捷な細い体のホリーは、素晴らしく魅力的です。

また、その後描かれるさまざまな衣装をキュートに着こなすヘプバーンの姿も、本作の大きな見どころとなっています。

自分ではアパートの鍵を持たずにベルを鳴らして住人に開けさせたり、ポールの家の植木に酒をやったり、自室に大勢招いてパーティーを開いたりと、どこまでも自由奔放なホリー。

その反面、不幸な生い立ちから14歳で結婚させられ、その後夫ドクのもとを逃げ出してきたという悲しい過去を持ちます。

彼女はニューヨークでコールガールとして生計を立て、刑務所のマフィアに関わるという仕事にも手を出すなど、決して上品とはいえない生活をしていますが、性的な匂いを一切感じさせないのはヘップバーンの持つ清潔感ならではと言えるでしょう。

パーティーのドタバタ騒ぎや、ポールの小説が売れたお祝いでティファニーを訪れる場面、ストアでチープなお面を万引きする場面など、ロマンティックコメディならではのコミカルな描写も魅力的です。

その一方で、ギターを手に名曲『ムーンリバー』をホリーが歌う場面では、彼女の内に秘めた悲しみや孤独が映し出されています。金のために裕福な夫人の愛人をしてきたポールは、ホリーの深い孤独と純粋な魂に気づきます。

そしてホリーも、本当に愛していたのはお金ではなく、お菓子のおまけの指輪を大事にするポールの純粋さや、その指輪に10ドルで文字を彫ってくれるティファニーの心意気など、目には見えないものばかりでした。

大雨の中でずぶ濡れになって猫を探すラストシーンでは、当初は悲しみの涙のように感じられた雨が、いつしか歓喜の雨へと変わります。喪失の悲しみから本物を見つけた喜びに変わるホリーの表情の変化は見事です。

雨の中で生まれ変わったホリーの輝きは、ヘプバーンにしか出せないものだったと言えるでしょう。この輝きあってこそ、この映画が不朽の名作となり得たに違いありません。

まとめ


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オードリー・ヘプバーンの新たな魅力が解き放たれた名作『ティファニーで朝食を』

ひとりの女性のリアルな苦悩と、真実の愛にたどり着くまでの軌跡が丁寧に描かれ、今なお世界中で愛され続ける1作です。

さまざまなスタイルを着こなすファッションアイコンとしてのヘプバーンの魅力とともに、彼女の深い演技力と内面性に魅了されます。

ホリーの孤独な魂が真実の愛に出会うラストには、誰もが胸揺さぶられることでしょう。勇気を出して素直に愛に飛びこむことでしか、人が幸せになれる方法はないのかもしれません。





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