Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2024/03/20
Update

『記憶の居所』あらすじ感想と評価解説。味覚・嗅覚・聴覚をテーマにする3編の“記憶イメージの連鎖”

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『記憶の居所』は2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて上映

⻑編映画『この日々が凪いだら』がモスクワ国際映画祭コンペティション部門で最優秀女優賞を受賞した26歳の新鋭監督・常間地裕による中編『記憶の居所』が、2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて『朝をさがして』と共に2本立て上映されます。

〈記憶〉をモチーフにした三編からなるオムニバス形式の作品です。

最初の「味の話」には山下リオ、小久保寿人、男女の逃避行を描いた「香の話」にはサトウヒロキ、橘舞衣、二人の女学生を描く「音の話」には成瀬凜、富山雅らが出演します。それぞれ異なるスタッフが制作しているので、異なる作劇、演出アプローチが味わえます。

味覚、嗅覚、聴覚というそれぞれの“感覚”がテーマと密接に結びついている三作品が溶け合い、やがて一つの映画という〈記憶〉になる瞬間をぜひ目撃してください。

映画『記憶の居所』の作品情報


(C)Filmssimo

【公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
常間地裕

【キャスト】
山下リオ、小久保寿人、磯⻄真喜、林裕太、永井彩加、田野真悠、なす(柴犬)、山本奈衣瑠、サトウヒロキ、橘舞衣、山口森広、成瀬凛、富山雅

【作品概要】
長編劇場デビュー作『この日々が凪いだら』が、第45回モスクワ国際映画祭にて最優秀女優賞を受賞した常間地裕監督による最新作。

「味の話」「香の話」「音の話」という三編からなる本作は、〈記憶〉をモチーフにしたオムニバス作品であるのと同時に、一時間に満たない愛おしい中編映画です。

母娘の交流を描いた「味の話」には山下リオ、小久保寿人、磯⻄真喜、山本奈衣瑠らが出演し、男女の夜の逃避行を描いた「香の話」にはサトウヒロキ、橘舞衣らが出演します。

二人の女学生の関係を瑞々しく描き出した「音の話」には成瀬凜、富山雅らが参加。この三編がときに交差し合っては離れ、観客それぞれの〈記憶〉に特別なアクションを起こします。

また、三作品はスタッフも異なり、作劇も演出アプローチもまったく異なっています。

映画『記憶の居所』のあらすじ


(C)Filmssimo

[味の話]
看護師の唄は他者の死に慣れてしまい、疎遠になっていた母の死の報せを聞いてもなんとも思いませんでした。唄は故郷へ向かいますが…。

[香の話]
いっぽう、美術館で出会った男と女は、屋台でおでんを一緒に食べながら美術について語り合っていました。その後、ふたりは月夜の中をプロヴァンスへと向かって車を走らせ…。

[昔の話]
そして、一人の少女がまだ名も無き音楽をピアノで奏でるとき、また一人の少女はその姿を夢中になって見つめ…。

映画『記憶の居所』の感想と評価


(C)Filmssimo

味覚、嗅覚、聴覚を通じて「記憶の居所」を探る、心の旅を描く一作です。

記憶はいったいどこにあるのでしょうか。忘れてしまったこと、忘れたくないこと、忘れたいこと、さまざまなすべてが、それぞれの人の中にたくさん降り積もっていったものを「記憶」と呼ぶような気がします。

無意識下にもたくさん積まれているそれらは、ふとしたはずみに思いがけずに転げ落ちてきて、当人を驚かせるものなのではないでしょうか。

人の感覚はとても敏感で繊細で、季節や気温、湿度からでさえ、思いもよらない記憶を呼び覚まされることがあります。

本編の第1作に登場する「味覚」が記憶を呼び起こす強い力を持っていることは、誰もが知るところです。第1話の主人公は、昔食べていた料理の味を通して、そこに隠されていた過去の秘密に気づかされます。

過去を乗り越えたときに人は成長するものだということが伝わってきて、胸が熱くなる作品です。わだかまりが溶けていくには長い時が必要であるという事実に、共感せずにはいられません。

小説調で語られる2作目は何もかも幻想的です。出会った女に心の中でつけた名前、月に例えるおでんの描写、「プロヴァンス」という遠い地の響き、そして、その非現実的な目的地を目指して月夜を走り抜ける車。

現実とは思えない体験をしてみたいという、誰もがどこかで抱いている夢を実現したかのような一作です。

ラストの作品は、瑞々しいふたりの少女の姿を映し出します。セリフも少なく、片方の少女が熱くもう片方の少女を見つめているだけの本作は、空想の世界かのように美しく切ない空気感を醸し出しています。

まとめ


(C)Filmssimo

記憶の底をさらうかのように、不思議な感覚を呼び起こす作品『記憶の居所』。

異なるキャスト、スタッフが生み出すカラーの異なる三作の小品が、ときに絡み合い、溶け合いながら、さまざまな記憶をするすると手品のように引き出していきます。

観ているうちに、心の奥底にいつの間にか「居所」を見つけて隠れていた記憶がよみがえるかもしれません。

『記憶の居所』がは2024年3月29日(金)から4月11日(木)までUPLINK吉祥寺にて『朝をさがして』と共に2本立てロードショーです。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『詩人の恋』ネタバレあらすじと感想評価レビュー。「息もできない」のヤン・イクチュンが繊細で切ない三角関係を演じる

映画『詩人の恋』は11月13日より、新宿武蔵野館ほか全国順次上映公開! 『息もできない』『あゝ、荒野』で一躍人気を博した、ヤン・イクチュン主演の映画『詩人の恋』。夢見がちな主人公が真実の愛を知り、愛や …

ヒューマンドラマ映画

映画『AK-47』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価。最強の銃誕生の秘密を実話伝記ドラマで明かす

独学で銃器を開発するソ連軍の兵士が、「AK-47」を開発する伝記ドラマ コンスタンティン・ブスロフが監督を務めた、2020年製作のロシアの伝記ドラマ映画『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』。 独ソ戦争 …

ヒューマンドラマ映画

『ノーウェア 』 あらすじ感想評価。デジタルリマスター版でカオスに駆け巡る若者たちの一夜を描く

11月15日(金)より『ノーウェア デジタルリマスター版』が渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国順次公開! 90年代ニュー・クィア・シネマを代表するグレッグ・アラキ監督の『ドゥーム・ジェネレーション』 …

ヒューマンドラマ映画

映画『タイガーテール』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。Netflixで配信されたアランヤン監督のすべての“移民へのラブレター”

Netflix映画『タイガーテール』で描かれた、父と娘の心の溝と交差 人生にはいくつかの岐路があります。自分の頭の中に描いた夢のために、大切なものを犠牲にすることもあります。 アメリカのテレビドラマ「 …

ヒューマンドラマ映画

平手友梨奈映画『響 HIBIKI』あらすじとキャスト。月川翔監督のプロフィール

『響 -HIBIKI-』は9月14日(金)より、全国ロードショー。 2017年にマンガ大賞を受賞した柳本光晴の漫画「響~小説家になる方法~」がついに映画化! 主人公を演じるのは、大人気のアイドルグルー …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学