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Entry 2020/09/29
Update

『82年生まれ、キム・ジヨン』映画感想と評価解説。チョンユミ演じるヒロインの韓国における女性としての生きづらさ

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

大丈夫、あなたは一人じゃない。

韓国で130万部を突破、社会現象となり、日本でも反響を呼んだベストセラー小説の映画化『82年生まれ、キム・ジヨン』。

女性たちの共感と感動を呼ぶ本作が、10月9日から新宿ピカデリーほか全国ロードショーで公開されます。

子育てを機に仕事をやめ、家事に追われるキム・ジヨン。常に誰かの母親であり、妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ります。そして、次第に彼女は別人のようにふるまい、話し出す。

何者かが乗り移ってしまった彼女を見た夫は自分自身が追い詰めたのではないかと悩み、彼女に打ち明けられず…

平凡な女性である、キム・ジヨンの視点から見た韓国の男女間の問題、日常で感じる些細な生きづらさ。女性として生きることの不公平さ。そんなことが積もり積もって彼女にのしかかっていく様は様々な世代の女性の心に共感と絶望をもたらし、その中で生きようともがく姿が感動をよびます。

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』の作品情報


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年(韓国)

【原題】
Kim Ji-young: Born 1982

【原作】
チョ・ナムジュ

【監督】
キム・ドヨン

【撮影】
イ・スンジェ

【編集】
シン・ミンギョン

【音楽】
キム・テソン

【キャスト】
チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン、コン・ミンジョン、キム・ソンチョル、イ・オル、イ・ボンリョン

【作品概要】
原作小説は韓国で2016年10月に刊行され、社会現象を巻き起こし、130万部を突破する大ベストセラーに。韓国だけでなく、日本をはじめ中国・台湾でも大ヒットし、アメリカ、イギリス、フランス、ベトナムなど22ゕ国・地域での翻訳化も決定しています。

主人公キム・ジヨンを演じるチョン・ユミと夫 デヒョンを演じるコン・ユはヒットを記録した『トガニ 幼き瞳の告発』(2012)、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2017)に続き3度目の共演となり、初の夫婦役となります。

監督を務めるキム・ドヨンは、短編映画が評価され、本作が初の長編監督作となります。自身も2児の母であるキム・ドヨン監督の登場人物の些細な感情の変化をすくいとる繊細な演出が評価され、韓国では初登場一位を獲得するヒットとなりました。

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』のあらすじ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

82年生まれ、夫デヒョンと子供とマンションで暮らしているキム・ジヨン。

彼女は毎日小さな子を抱え育児に家事に奔走しています。そんな彼女は、ある日公園で一休みしていると夫の稼ぎでのんびり暮らせていいなとサラリーマンたちが自分を見て会話しているのを聞いてしまいます。

日常の生きづらさが積み重なり、ジヨンは夫の実家でジヨンの母のような口調で突然話し始めたり、もう亡くなった友人の口調で話し始めたり…と他人が“憑依”したかのように話し始めます。

最初はからかっているのかと思っていたデヒョンも、次第にジヨンが抱える病気の深刻さに戸惑います。当の本人は“憑依”していた間の記憶がありません。

どうしたら良いのか分からず、一人精神科医に相談に行くも、本人に来てもらわないと治療はできないと言われてしまいます。

デヒョンは“憑依”のことを本人には伝えず、精神科医に通うことをすすめますが、ジヨンは「疲れているだけ」と取り合いません。

一人育児と家事をする日々の中で時折閉じ込められていると感じているジヨンは、出産を機にやめてしまった仕事を再会したいと願うもうまくいかず、事態は悪化していき……。

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』感想と評価


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

冒頭映し出されるキム・ジヨンの慌ただしい日々。気づけば日が暮れていることに呆然としながら、ベランダで空を眺めるキム・ジヨンの虚な目が、彼女の抱える生きづらさを体現しているかのようです。

“キム・ジヨン”という名は82年生まれの中で最も多い名前です。

原作小説によると当時の韓国では政府により「家族計画」という名の育児制限政策が行われていました。

当時の80年代初めより10年以上前に医学的な理由での中絶が許可され、胎児の性別鑑定とともに人工中絶が行われ、3番目以降の子供の男児率の高さ、子供の性別比のアンバランスさは社会問題になっていました。

映画では原作に比べ描写は少なくなっていますが、キム・ジヨンの母であるミスク(キム・ミギョン)は貧乏であったため、自身の夢は諦め働いて、男兄弟の学費を稼ぎました。

幼いジヨンに母が「本当は教師になりたかったのよ」という場面が劇中にあります。どうしてならなかったのかとジヨンが尋ねると、家族のために働かなくてはならなかったからと答えます。当時の女はみんなそうしていた、と。

だからこそ、母はジヨンや、ジヨンの姉であるウニョン(コン・ミンジョン)には、自分のやりたいことをやって欲しいと強く願います。

少しずつ世の中が変わってきたとはいえ、ジヨンが生きる世界はまだまだ女性にとって生きづらいものでした。

男女の就職率は大きく異なり、女性が就職するのは難しく、ジヨンも卒業間際まで内定は一つももらえていませんでした。

やっともらえた内定ですが、能力はあっても長期プロジェクトチームに女性が選ばれることはありません。女性は結婚や出産で仕事をやめる可能性があるので選べないというのです。

原作に比べ映画では、夫デヒョンを通し男性側の視点も描いており、それにより男女の視点の違い、問題意識の差異が浮き彫りになっていきます。

印象的なシーンは、出産に対する認識の違いです。ジヨンは私の“人生が変わる”問題だけど、あなたは何が変わるのとデヒョンに問いかけます。それに対しデヒョンは、“生活が変わる”と発言するのです。

ジヨンの姉は甘やかされ、当たり前のように良い待遇を受けてきた弟に対し、厳しい姿勢で指摘し認識を変えようとするシーンが描かれており、デヒョンも“憑依”してしまうほど追い詰められてしまったジヨンに寄り添い、助けようとします。

原作には描かれていなかった男性側の視点を描くことで、原作が浮き彫りにした問題意識、男女間の格差に対し、歩み寄りの姿勢、すなわちこの問題に対する一つの希望の形を描こうとしたのではないでしょうか。

まとめ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

82年生まれに一番多い名前がキム・ジヨンであったことからもわかるように、これはキム・ジヨンの物語であると同時に様々な世代の今を生きる女性たちの物語であるとも言えます。

出口を探そうともがき、最初から出口などなかったのではないかと思わされ、絶望するキム・ジヨン。幼い頃からそういうもの、女だから仕方ないと思い続けてきた彼女の「苦しみ」。

本作はそんな些細な、女性であるということだけで感じる生きづらさを浮き彫りにしていきます。その数々はもしかしたら問題だとすら思わず甘んじていたことかもしれないと、はっとさせられます

一方で、無神経に傷つけ追い詰めてしまったのかもしれないと気づき、悩むデヒョンの姿を見て苦しいと思うと同時に、そこに観客は希望を見出すでしょう。デヒョンは未来を見ており、観客もデヒョンに未来を見出すのです。

本作は女性のためだけでなく、様々な世代に問いかけ、希望を与える感動の映画です。






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