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Entry 2021/01/21
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映画『カポネ』あらすじと感想解説。人生の結末を史上最悪のギャングはいかに迎えたか【トム・ ハーディ主演作品】

  • Writer :
  • 松平光冬

今明かされる“暗黒街の顔役”アル・カポネの最晩年

1920年代の禁酒法下のアメリカでその悪名を轟かせた実在のギャング王、アル・カポネ

彼の知られざる最晩年を描いた映画『カポネ』が、2021年2月26日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショーされます。

『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたトム・ハーディが、史上最も有名なギャングスターを強烈に演じた話題作の見どころを、徹底解説します。

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映画『カポネ』の作品情報


(C)2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2021年(アメリカ・カナダ合作映画)

【原題】
Capone

【監督・脚本・編集】
ジョシュ・トランク

【製作】
ラッセル・アッカーマン、ジョン・シェーンフェルダー、ローレンス・ベンダー、アーロン・L・ギルバート

【製作総指揮】
ロン・マクレオド、スティーブン・ティボー、アンジェイ・ナグパル、ジェイソン・クロス、クリス・コノバー、アビブ・ギラディ、アリ・ジャザイェリ

【撮影】
ピーター・デミング

【キャスト】
トム・ハーディ、リンダ・カーデリーニ、マット・ディロン、カイル・マクラクラン、ジャック・ロウデン、ノエル・フィッシャー

【作品概要】
1920年代にアメリカで暗躍した実在のギャング、アル・カポネの最晩年を描く伝記ドラマ。

カポネ役を『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)、『ヴェノム』(2018)のトム・ハーディが演じ、『シンプル・フェイバー』(2018)のリンダ・カーデリーニ、『クラッシュ』(2005)のマット・ディロン、『テスラ エジソンが恐れた天才』(2021)カイル・マクラクランといった実力派キャスト陣が脇を固めます。

監督・脚本・編集を、『クロニクル』(2012)で衝撃的デビューを飾ったジョシュ・トランクが務め、自身のイマジネーションをベースに、カポネの知られざる最晩年を構築しました。

映画『カポネ』のあらすじ


(C)2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

1940年代後期。長い服役生活を終えたアル・カポネは、アメリカ・フロリダ州パーム・アイランドの広大な私有地で、妻のメエらや親族たちと隠遁生活を送っていました。

しかしながら、かつて“暗黒街の顔役”と恐れられた威光はすっかり失われ、生活資金も底をつきかけており、10代に患った梅毒の影響による認知症に苦しみます。

FBIのクロフォード捜査官は、カポネが仮病を装っていると疑い、1000万ドルともいわれる隠し財産の所在を探るべく監視を続けていました。

そんななか、幼なじみのジョニーとの久々の再会に喜んだカポネでしたが、病状は悪化の一途をたどり、現実と悪夢の狭間で奇行を繰り返すようになっていき…。

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映画『カポネ』の感想と評価

(C)2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

“ギャング映画のアイコン”の妄想と波乱に満ちた最晩年

1920年代のアメリカで施行されていた禁酒法を利用し、シカゴを拠点に酒の密造、賭博場と売春宿の経営で財を成せば、政治家、警察、マスコミを賄賂や買収で手なずけ、20代半ばにしてギャングの帝王となった男、アル・カポネ。

その一方で、慈善事業にも熱心だった彼は一般市民からの人気も高く、『犯罪王リコ』(1931)、『暗黒街の顔役』(1932)といったノワール映画のモデルとなれば、1947年に死去後も『アンタッチャブル』(1987)やテレビドラマシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」(2010~14)と、その半生が続々と映像化されています。

時代を経てもなお、マフィア、ギャング映画のアイコンとして君臨するアル・カポネは、裏アメリカン・ドリームの体現者でもあったのです。

『アンタッチャブル』(1987)のブライアン・デ・パルマ監督インタビュー

そんなカポネの最晩年にスポットを当てた本作『カポネ』は、これまでの映像化作品に通底する彼のイメージを大きく覆すことでしょう。

脱税の罪で11年の刑期を経て出所したカポネでしたが、刑務所内で恨みを持たれた囚人たちから受けた暴行の後遺症や、10代の時に感染した梅毒による認知症に冒されています。

常に脂汗を流して歩行もおぼつかず、記憶力も乏しくなったその姿は、とても年齢が40代の人間には見えません。

病状が悪化するにつれ、悪夢や幻影に囚われていくあまり、妻メエや監視するFBIのクロフォードら周辺人物を惑わす奇行を繰り返すカポネ。

その異様な様子は、伝記映画にしてサイコスリラーの要素も内包しています。

不遇の監督ジョシュ・トランクの才気

©2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

本作は、監督のジョシュ・トランクが長年温めていた企画に基づいています。

トランクといえば、超能力を得た高校生たちの友情と闘いを描いた2012年のデビュー作『クロニクル』で、一躍評価されました。

しかし、周囲の期待を背負って臨んだ次作『ファンタスティック・フォー』(2015)で製作会社やキャスト陣と衝突してしまい、それが公開前に明るみとなったことで興行的にも批評的にも不発。

この失敗が尾を引いたようで、オファーを受けていた「スター・ウォーズ」の人気キャラクター、ボバ・フェットが主役のスピンオフ企画の監督までも降板してしまいます。

そんな低迷続きだったトランクが、心身ともに疲弊してドン底状態のカポネにシンパシーを感じ、再起作の題材にしたのは当然だったのかもしれません。

トランクは史実をベースにしつつ、認知症により記憶が薄れていく彼の心情に重点を置き、破壊的な凶暴性と人間的な弱さの極端な二面性を持ったカポネ像を構築。

さらに『クロニクル』、『ファンタスティック・フォー』にあった複雑な親子関係を本作でも踏襲しつつ、「無意識だった」と断りつつも、「子どもの頃からのヒーロー」という某有名監督が撮ったスリラー映画へのオマージュを込めています。

そのオマージュ元が何かは、ぜひとも本編を観て推測してもらいたいのですが、トランクが自らのすべてを込めた渾身の一作に仕上がったのは間違いないでしょう。

まとめ

(C)2020 FONZO, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

もちろん、毎日4時間のメイクを施してカポネに扮したトム・ハーディの怪演技を筆頭に、夫を献身的に支える妻メエ役のリンダ・カーデリーニに友人ジョニー役のマット・ディロン、カポネの診察を担当する医師役のカイル・マクラクランら、脇を固めるキャストにも注目です。

はたして、1000万ドルの隠し財産は実在するのか? かつて暗黒街の帝王と呼ばれた男が囚われる妄想は現実なのか?

愛する者と穏やかに暮らす現在と、血に染まった権力を築いた過去の間をさまよう男が到達するクライマックスの衝撃から、目が離せません。

映画『カポネ』は、2021年2月26日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショー


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