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Entry 2019/02/17
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映画『シンプル・フェイバー』感想と評価解説。女優ケンドリックvs.ライブリーの華麗なる対決⁈|銀幕の月光遊戯21

  • Writer :
  • 西川ちょり

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第21回『シンプル・フェイバー』

ダーシー・ベルが2017年に発表したミステリー小説『ささやかな頼み』をポール・フェイグ監督が映画化!

アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーという華麗なるふたりが織りなす傑作サスペンス『シンプル・フェイバー』が3月08日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国順次公開されます。

【連載コラム】『銀幕の月光遊戯』一覧はこちら

映画『シンプル・フェイバー』のあらすじ


(C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ニューヨーク郊外に住むステファニーは夫を交通事故で亡くし、シングルマザーとして一人息子を育てていました。

彼女は、動画で料理の作り方などを配信する個人ブログを運営しており、その日、彼女はフォロワーに向かって、親友のエミリーが行方不明になったことを語り始めます。

エミリーとの出会いは数週間前。息子の小学校の国際料理デーのために学校に行ったときのことでした。

ステファニーの息子マイルズとエミリーの息子ニッキーは放課後も一緒に遊びたがり、ステファニーを困らせます。

ニッキーの母親に許可を得ないと、と困っていたステファニーの前にエミリーが現れたのです。

彼女はステファニー親子を自分の家に招きました。エミリーの家は最先端の洒落た邸宅で、キッチンに座って二人は自分の家庭や秘密を打ち明け合います。

エミリーの夫ショーンは作家ですが、最初の一作のみですっかり書かなくなってしまい、今は大学で文学を教えているのだとか。華やかなファッション業界で働くエミリーが家計を支えているのだそうです。

「破産寸前なの。それに信頼できるシスターもいないし」そういうエミリーにステファニーはいつでもお手伝いするわ、と申し出て、二人の仲は急速に深まっていきました。

ある日、ステファニーがブログの準備をしていると、エミリーから電話がかかってきました。仕事で急用が出来たからニッキーのお迎えをお願いしたいと慌てた調子で助けを求めるエミリーに、「何も心配しないで」とステファニーは応えました。

ところが、数日経ってもエミリーは姿をみせず、何の連絡もありません。どうやら仕事でマイアミに行ったらしいのですが、その後の彼女のことを誰も知らないのです。

困ったステファニーは母親の看病のためロンドンに行っているショーンに電話をかけました。ショーンはすぐに帰国し、警察に捜索願いを出しました。

ステファニーはエミリーの居場所を探すため、彼女の勤め先であるデニス・ナイロン社におもむきました。すきを見て彼女の仕事部屋に忍び込み、彼女を撮った奇妙な写真を発見します。あれほど写真を嫌っていたエミリーが何故?

そんな中、ステファニーのブログにエミリーに似た人をミシガンで見たという目撃情報が書き込まれます。やがて恐ろしい報せがショーンとステファニーに届くのでした…。

映画『シンプル・フェイバー』の解説と感想

ポール・フェイグが初のミステリー作品に挑戦!


(C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

監督のポール・フェイグは、『ブライズメイズ史上最悪のウェディングプラン』(2011年)や『ゴーストバスターズ』リブート版(2016)などで知られているアメリカのヒットメーカーです。

上記の作品はどちらも女性が活躍するパワフルなコメディーでとりわけ後者は、1984年のアイヴァン・ライトマン監督の人気作をメリッサ・マッカーシー、クリステン・ウィグ、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズという女性キャストでリブートした作品です。

両作とも、きわどい冗談を連発し、時にはお下劣なエピソードをふんだんに盛り込みつつ、多幸感溢れるハートフルな作品となっていました。

大学の女性アカペラ部の活躍を描いた音楽コメディー『ピッチ・パーフェクト』シリーズ(2012~2017)など、女性が活躍する映画が盛んに作られるようになったのもポール・フェイグの功績が大きいと言われています。

その『ピッチ・パーフェクト』シリーズの主役を務めたのが、アナ・ケンドリックです。1998年のブロードウェイミュージカル『High Society』でデビューし、史上3番目の若さでトニー賞にノミネートされたほどの実力者。『ピッチ・パーフェクト』はまさに彼女の当たり役でした。

2017年の『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』(パコ・カベサス監督)では、好きになった男性が殺し屋とわかり、自分の内なる殺し屋に目覚めていくユニークな役柄を務めるなど、キュートなコメディエンヌぶりには定評があります。

ポール・フェイグとアナ・ケンドリックがタッグを組むだなんて、面白くないわけがありません。

まず何よりもアナ・ケンドリックが実に可愛く撮られているのです。前半はずっと心の中で「アナケン、可愛い、アナケン、可愛い」とつぶやき続ける人が続出するのではと心配するくらいです。

とりわけ、フランソワ・アルディーの名曲「さよならを教えて」を聴いて思わず踊ってしまうシーンの可愛らしいこと!

しかも、この作品、ラブコメではなく、ミステリーなのです。全米で話題を呼んだダーシー・ベルのミステリー小説「ささやかな頼み」(東野さやか訳/ハヤカワ文庫)が原作です。

ポール・フェイグらしい、コメディー的な要素をアナ・ケンドリックに振りながら、彼女もまた見た目通りの女性ではないのかもしれない、という疑惑を観客に与えていきます。

ポール・フェイグの初のミステリー映画として是非注目してみてください。

アナ・ケンドリックVSブレイク・ライブリーの華麗なる対決


(C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

アナ・ケンドリックが子どもたちの交流を通して知り合うのが、ブレイク・ライブリー扮するエミリーです。

ブレイク・ライブリーは2005年公開の『旅するジーンズと16歳の夏』で注目を集め、テレビシリーズ『ゴシップガール』のセリーナ・ヴァンダーウッドセン役で大ブレイク。

2016年の『ロスト・バケーション』では、たった一人海に取り残され、サメに狙われ絶望的な状況に追い込まれた女性を演じ、“サメ映画”好きを狂喜乱舞させました。

ファッショニスタとしても強い影響力を持つブレイク・ライブリー。キャリアウーマンで、おしゃれでゴージャスな本作のエミリーにこれまたピッタリのイメージです。

周りのママ友たちは、謎めいた美女と、ごく平凡な主婦という不釣り合いな二人にうまくいきっこないと冷めた目を向けますが、そんなことはおかまいなしに二人はどんどん親しくなっていきます。

アナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーというまったくタイプの違う女優が、役柄の違いを強調すればするほど、互いの魅力を引き出していくところにスリリングな面白さがあります。

どちらの役柄も一筋縄ではいかない強かさがあり、女優対決として目が離せないものになっています。

ブレイク・ライブリーの夫役はヘンリー・ゴールディング


(C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ブレイク・ライブリーの夫・ショーンを演じるのは、オールアジアンキャストで大ヒットし社会現象にもなった『クレイジー・リッチ!』(2018)のニックことヘンリー・ゴールディングです。

『クレイジー・リッチ!』ではマレーシアの大富豪の御曹司という設定でしたが、華やかさをまとった雰囲気は本作でも顕在で、ブレイク・ライブリーとはなんともお似合いのカップルとなっています。

『シンプル・フェイバー』では、エミリーとショーンの結婚に際し、代々受け継がれた祖母の指輪を姑から譲られたというエピソードが出てきますが、これを聞いて『クレイジー・リッチ!』を思い出した人も多いでしょう。

『クレイジー・リッチ!』では指輪が受け継がれることが大変重要なエピソードとなっていたからです。

実際は、若干事情が違っている部分もあるのですが、ポール・フェイグが『クレイジー・リッチ』に洒落た目配せをしてみせたのではないでしょうか?

ただ、ちょっとしたパロディだと思っていたら、その後に再びこの話題が出てきて、エミリーの隠れた一面を示すエピソードの一つとなっていました。

このように登場人物が三人三様、見た目とは違う別の面を持っていて、互いが疑心暗鬼となり、その心理戦は予想もつかない結末へと転がっていきます。

まとめ


(C)2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

この作品をユニークなものとしている要素の一つにステファニーのビデオブログがあります。

彼女がブログのフォロワーに向かって話をする画面がスクリーンいっぱいに映し出され、映画の観客もブログをのぞき見ているような気分になってきます。

ミステリーでありながらキラキラした明るく爽やかな色合いが全編を貫いているのも、このブログのイメージによるものが大きいでしょう。なにしろ、料理と育児のブログですから。

それがまた物語とのギャップとなって、新鮮な印象を与えています。

また、え?これって実話に基づいているんだっけ?とほんの一瞬だけ錯覚しそうになるエンディングには思わずニヤっとしてしまうことでしょう。

ママ友のうちの一人に、人気ドラマ『Girl’s』のイライジャ役で知られるアンドリュー・ラネルズが扮しているのですが、ここぞという時にとんでもないアシストをしてくれます。

ママ友にはコメディアンのアパーナ・ナンチャーラも顔を見せており、是非ママ友の面々で、新たな私立探偵ものを作って欲しい!と思わせます。

遊び心満載、スリル一杯の『シンプル・フェイバー』は、3月08日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国順次公開されます。

次回の銀幕の月光遊戯は…


(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

次回の銀幕の月光遊戯は、2019年2月22日(金)公開のバリー・ジェンキンス監督作品『ビール・ストリートの恋人たち』を取り上げる予定です。

お楽しみに!

【連載コラム】『銀幕の月光遊戯』一覧はこちら

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