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『警官の血』あらすじ感想と評価解説。韓国ノワール映画でチェウシクとチョジヌンが正義をかけて激突!|山田あゆみのあしたも映画日和7

  • Writer :
  • 山田あゆみ

連載コラム「山田あゆみのあしたも映画日和」第7回

今回ご紹介するのは、「このミステリーがすごい!」で2008年第1位となった佐々木譲による同名小説を、韓国で映画化した『警官の血』です。

主演は『パラサイト 半地下の家族』(2019)『その年、私たちは』(2021)のチェ・ウシク。そして、『お嬢さん』(2016)『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)のチョ・ジヌン。

父親を殉職で失った新人刑事が犯罪組織の闇に触れる中で、正義とは何か?という問いにぶつかっていくクライムサスペンスとなっています。

それでは、『警官の血』のあらすじや見どころについて解説していきます。

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映画『警官の血』の作品概要


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.

【日本公開】
2022年(韓国映画)

【監督・脚本】
イ・ギュマン

【原作】
佐々木譲:『警官の血』(新潮文庫刊)

【キャスト】
チョ・ジヌン、チェ・ウシク、パク・ヒスン、クォン・ユル、パク・ミョンフン

【作品情報】
裏社会と繋がる広域捜査隊のエース刑事パク・ガンユンには、『お嬢さん』(2016)『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)のチョ・ジヌン。ハイブランドのスーツを身にまとい、出処不明の巨額の捜査費を使って高い検挙率を誇る汚職警官を熱演。

ガンユンに疑惑の目を向ける潜入捜査官のチェ・ミンジェには、『パラサイト 半地下の家族』(2019)『その年、私たちは』(2021)のチェ・ウシク。警官の父の血を受け継ぎ、骨の髄まで原理主義者の若き刑事を演じ切ります。

さらに、監察係長に『マイネーム:偽りと復讐』(2021)のパク・ヒスン、麻薬王に『ファイティン!』(2018)のクォン・ユル、暴力団の組長に『パラサイト 半地下の家族』(2019)『愛の不時着』(2019)のパク・ミョンフンなどの演技派俳優が集結。

映画『警官の血』のあらすじ


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.

ある夜、一人の警官が殺害されました。裏で糸を引く人物として浮上したのは、出処不明の莫大な後援金を受け、高い検挙率を誇る広域捜査隊のエース刑事パク・ガンユン。

彼を内偵調査するのは、殉職を隠蔽された警官の父を持つ原理主義者の新人刑事チェ・ミンジェ。

広域捜査隊に配属されたミンジェが目の当たりにしたのは、裏社会に精通しながら違法捜査を繰り返すガンユンの姿でした。

ミンジェはガンユンのやり方に戸惑いながら捜査をともにすることで、警察内部の秘密組織やその裏に隠された不正行為、そして父の死の真相にたどりついていきます。

ある日、情報員から高額で情報を仕入れたガンユンは、警官殺しの犯人を逮捕します。しかし、都合よく手柄をあげるガンユンの疑いは解けないままでした。

そんな中、2人は新種の麻薬捜査をするも、捜査費が足りず、ガンユンは暴力団から多額の借金までして逮捕に力を入れます。そして、ガンユンは遂に警官として越えてはならない一線を越えてしまい……。

映画『警官の血』感想と評価


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.

正義とは何か?

『警官の血』は、警察組織の闇に迫る中で異なる信念を持った警官同士がぶつかり合う、クライムサスペンス映画です。

殉職した父をもつ新人刑事のチェ・ミンジェは、実直で曲がったことを許さない性格。その真面目さを見込まれ、不正を行なっていると疑われる広域捜査隊のエース刑事パク・ガンユンの内定捜査を任されます。

警官として規則厳守を第一とするミンジェに対して、ガンユンは捜査の為なら違法な手段も厭わない正反対な人物。

2人が行動を共にする中で「正義とは何か」という問いに直面するのが本作の大きな見どころです。

予告編で登場するセリフで「警官はな、黒にも白にもなれない」とガンユンがミンジェに語っています。ガンユンの覚悟と信念が語られるこのシーンの渋さ、かっこよさはグッとくるものがありました。

犯罪や警察組織に対してガンユンなりに真剣に向き合った結果、そのボーダーラインをあえて超越する姿に、孤高な強さと信念を感じたからです。

何かを犠牲にしなければ、何も得られないとでも言うかのように、容赦なく悪に手を染めるガンユン。それが正義なのか?という疑問を捨てきれないミンジェの戸惑いがどう変化していくのか…というのも本作のポイントに違いありません。

チェ・ウシクの新境地


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.

ミンジェ役を演じたチェ・ウシクの変幻自在な魅力が、本作のドラマティックさを盛り上げる大きな要因となっています。

『THE WITCH 魔女』(2018)では、特殊能力を持つ役柄を独特な色気で演じ上げ、青龍賞ほか数々の新人賞を獲得。

米アカデミー賞作品賞を受賞したパラサイト 半地下の家族』(2019)では、ソン・ガンホ演じる一家の息子役という重要な役所を演じるなど、若手俳優の中でも注目度の高い存在なチェ・ウシク。

本作では、実直な新人刑事という純朴な一面から、高級ブランドスーツに身を包み犯罪者に高圧的に詰め寄る一面も見せ、派手なアクションシーンもこなしています。ガンユン役のチョ・ジヌンとの掛け合いが楽しめるのも見どころ。

パラサイト 半地下の家族』(2019)の次作として本作への出演を決めており、アクションシーンを含め、新たな一面を見せたかったという彼の思惑通り、観客はチェ・ウシクの新たな魅力に惹きつけられるはずです。

また、暴力団組長チャ・ドンチョル役を演じたパク・ミョンフンの癖の強い嫌味たっぷりな演技も存在感を放っており、出番はそれほど多く無いものの、不思議と忘れられないキャラクターでした。

個性的な俳優陣らの演技にも、注目すべき一作となっています。

まとめ


(C)2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.

本作は119分間で、潜入捜査モノバディムービーなど、1つにとどまらない要素がテンポよく展開されます。

見せ場となるアクションシーンも盛り込まれ、バランス感の良い構成になっています。

また、前半でミンジェが広域捜査隊の先輩刑事たちとふざけ合ったり、酒を酌み交わす場面では、和やかで笑える空気もあり、後半のシリアスさと比べると緩急が効いているのも特徴です。

原作は日本の人気小説ですが、韓国版として大きく脚色されています。

しかし、原作者の佐々木譲は「主題、キーとなる台詞、小道具、要所要所のシー ンに、間違いなくこれはあの『警官の血』だと感激した。制作陣の原作への深いリスペクトを感じる」と語り、「舞 台を見事に移し替えての、逆上陸の傑作警察映画だ」と太鼓判を押しています。

原作ファンの人も、新鮮な気持ちで観てみてはいかがでしょうか。

『警官の血』は2022年10月28日(金)新宿バルト9ほか全国順次公開

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山田あゆみのプロフィール

1988年長崎県出身。2011年関西大学政策創造学部卒業。2018年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを計13回開催中。『カランコエの花』『フランシス・ハ』などを上映。

好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を観る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中(@AyumiSand)。



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