Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『声/姿なき犯罪者』あらすじ感想と評価解説。韓国映画おすすめ!リベンジ復讐劇で描く元刑事が詐欺グループに立ち向かう勇姿|映画という星空を知るひとよ117

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第117回

近年深刻化する犯罪のひとつである振り込め詐欺を扱った韓国映画『声/姿なき犯罪者』。

双子の兄弟キム・ソン&キム・ゴク監督が、詐欺犯罪を徹底的にリサーチし、リアリティあるストーリーと先の見えない復讐劇に作り上げました。

主演は『茲山魚譜 チャサンオボ』(2021)『太陽は動かない』(2021)のピョン・ヨハン。

鬼手』(2020)のキム・ヒウォン、『ただ悪より救いたまえ』(2020)のパク・ミョンフン 、『サムジンカンパニー1995』(2020)のイ・ジュヨン らが脇を固めます。

『声/姿なき犯罪者』は、2022年10月7日(金)新宿武蔵野館他にて、全国順次ロードショーされます。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『声/姿なき犯罪者』の作品情報


(C)2021 CJ ENM Co., Ltd., SOOFILM ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2022年(韓国映画)

【監督】
キム・ソン&キム・ゴク

【出演】
ピョン・ヨハン、キム・ムヨル 、キム・ヒウォン、パク・ミョンフン、イ・ジュヨン

【作品概要】
映画『声/姿なき犯罪者』は、振り込め詐欺の罠にかかり、大金を失った元刑事のソジュンが、家族や同僚のため、奪われた金を取り返すため詐欺組織に潜入し、組織の責任者クァクらに壮絶な復讐を下すスリルに満ちた犯罪アクション。

監督は、双子の兄弟キム・ソン&キム・ゴク。近年深刻な社会問題となっている詐欺犯罪を徹底的にリサーチして作り上げた作品。

主役のソジュンに『太陽は動かない』(2021)のピョン・ヨハン。共演は、 『鬼手』(2020)のキム・ヒウォン、『悪人伝』(2020)のキム・ムヨル、『ただ悪より救いたまえ』(2020)のパク・ミョンフン 、『サムジンカンパニー1995』(2020)のイ・ジュヨン ら。

映画『声/姿なき犯罪者』のあらすじ


(C)2021 CJ ENM Co., Ltd., SOOFILM ALL RIGHTS RESERVED

釜山の建設現場では今日も作業員が働いています。現場の作業員として働くソジュン(ピョン・ヨハン)は、前職は刑事という異色の経歴を持つ男性でした。

愛する妻がいて新しい職場で新しい人生を始めて充実した毎日を送っていましたが、ある日、作業員が高所から落ちかけるという事故が起きました。

そのころ、ソジュンの妻の携帯電話に、「建設現場で事故が起き、ご主人が警察に逮捕されました」と、弁護士を名乗る男から電話が入ります。

驚く妻に今度は警察から「ご主人は今警察署にいます」という電話がかかってきました。妻がソジュンの携帯に電話をかけても通じません。

そして再び弁護士から電話が入り、すぐに示談金を入金すれば、ご主人は釈放されますと言われました。気が動転した妻は、即座に言われた口座にお金を振り込みました。

ソジュンは高所から落ちかけた男性を助け、携帯を見ると、妻から何回も電話がはいっています。先ほどまで電話が通じなかったので、あわてて電話をすると、妻は「今どこにいるの?」と驚きました。

ソジュンが職場にいることがわかり、夫婦は振り込み詐欺にひっかかったことに気が付きました。

韓国社会で多発している振り込め詐欺によって、多くのの人々が大切なお金を失っています。ソジュンの会社社長も会社の全財産30億ウォンを騙し取られます。

ソジュンは自分たちと会社のお金を取り戻すため、振り込め詐欺犯を追跡しはじめました。

犯人の手がかりを掴み、中国のある建物へ侵入するソジュン。

そこでは組織化された巨大な詐欺集団が総責任者クァク(キム・ムヨル)の指示で、毎日多額の振り込め詐欺を行っていました。

愕然とするソジュンでしたが、300億ウォン規模の新たな詐欺計画を知り、元刑事の正義感に再び火が付き、ひとり巨悪に立ち向かいます。

映画『声/姿なき犯罪者』の感想と評価


(C)2021 CJ ENM Co., Ltd., SOOFILM ALL RIGHTS RESERVED

日本では新手のシナリオで行われる振り込み詐欺が深刻な問題となっていますが、韓国でも同様のようです。

元刑事ソジュンを熱演したピョン・ヨハンも「韓国では振り込め詐欺の電話がよくかかってきます」と驚きの実情を明かしたそうですから……。

物語の始まりは、元刑事ソジュンの妻があっという間に振り込め詐欺にあうところから。

全てを失ったソジュンが妻や同じように騙された同僚たちの金を取り返すため、組織への潜入を決意し、事件を追いかける刑事(キム・ヒウォン)らの驚きをよそに組織の中心部へ潜入していく様子がテンポよく展開します。

そこに表されているのは、一市民として詐欺にあって全てを奪われた男と、騙される方が悪いと高笑いをする全てを奪った男の対決。

被害者の動揺や心理的パニックを誘うシナリオに加えて演携帯電話の偽装番号など、巧妙に仕組まれた手口でお金を振り込ませる、知能犯の振り込み詐欺

力でお金を奪うのではないだけに、たちが悪い! しかも役柄を変えて何人もの登場人物がいます。これは組織ぐるみでしかできない大掛かりな犯罪でした。

双子の兄弟キム・ソン&キム・ゴク監督は、韓国でも近年深刻な社会問題となっている詐欺犯罪を徹底的にリサーチしてこの作品を作り上げたそうです。

犯罪組織の中で、どのように振り込み詐欺の筋書きができて実行に移されるのか。

作中では、実物の犯行手口を見ているようなスリルがあります。

大金を奪い取られる被害者の哀しみや絶望感もとてもリアルに描かれていて、犯人への怒りが沸き上がるのと同時に、これが現実という怖さをひしひしと感じます

まとめ


(C)2021 CJ ENM Co., Ltd., SOOFILM ALL RIGHTS RESERVED

映画『声/姿なき犯罪者』は、携帯電話を使った振り込み詐欺の犯罪アクションです。

タイトルが示すように、声だけでお金を奪い取る恐ろしい罠が仕組まれます。

どのようにして犯罪者は被害者を罠にハメるのか。その詳細もストーリーの中でわかってきます。

わかってはいても、人の弱みにつけこんで大金を騙し取るという手の込んだ策略は底知れず、一つの犯罪組織を刈り取ってもまた次の組織が生まれるでしょうから、犯罪撲滅には至らないと思われます。

ですが、犯罪に立ち向かう勇ましい主人公の姿を捉えた本作です。

振り込み詐欺への警告として、ぜひ鑑賞してみてください。

『声/姿なき犯罪者』は、2022年10月7日(金)新宿武蔵野館他にて、全国順次ロードショー

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。





関連記事

連載コラム

映画『ドント・ゴー・ダウン』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。SFタイムスリップに遭遇した特殊部隊の運命|未体験ゾーンの映画たち2020見破録40

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第40回 「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第40回で紹介するのは、戦場から抜け出せなくなった特殊部隊を描くアクションホラー映画『ドント・ゴー …

連載コラム

韓国映画『ブルドーザー少女』あらすじ感想と評価解説。キャストのキム・ヘユンが演技力を魅せた“大人になる”ことへの不安と決断に刮目せよ|大阪アジアン映画祭2022見聞録1

2022年開催、第17回大阪アジアン映画祭上映作品『ブルドーザー少女』 毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も、2022年で17回目。今年は3月10日(木)から3月20日(日)までの10日間にわたっ …

連載コラム

映画『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』キャスト【ジリアン・ベルへのインタビュー】FILMINK-vol.27

FILMINK-vol.27「Jillian Bell Runs a Marathon」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映 …

連載コラム

香港映画『窄路微塵(きょうろみじん)』あらすじ感想と評価考察。経済的かつ政治的に不安を抱える“今の香港”にとって必要な秀作|大阪アジアン映画祭2023見聞録6

2023年開催・第18回大阪アジアン映画祭コンペティション部門上映作品『窄路微塵(きょうろみじん)』 「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに、アジア各地の優れた映画を世界または日本の他都市に …

連載コラム

映画『山〈モンテ〉』解説。ナデリ監督が描く人間の背負う罪とは | SF恐怖映画という名の観覧車34

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile034 技術の進化や意識の変化に伴い、人間は様々な「脅威」を乗り越えてきました。 しかし、如何に防犯の技術や意識が高まっても犯罪が無くならないの …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学